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Cavalleria」(2009/03/06 (金) 18:26:12) の最新版変更点

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【Cavalleria(騎士道精神)】 「……何それ」  珠月は眉間に皺を寄せ、おぞましい物を見たかのように唸る。  対して藤司朗はいつも通り満面の笑みを浮かべながら。 「いらっしゃいませにゃ、ご主人様」  滅多に感情を見せない珠月でも、こればっかりはと額を抑える。  本気で頭が痛い。 「あぁ、間違えたにゃ。こういう場合は、おかえりにゃさいませ、お嬢様だったにゃ」  平然と口にする藤司朗の頭には、本物かと思うほど精巧な金色の猫耳。 「……何、罰ゲーム?」  期待を込めて問うが、あっさりと首を振られる。 「猫耳期間中なんだよね、今。猫語とご主人様云々は篭森さん限定のサービス」 「……そんなので喜ぶ趣味はない」 「だろうね。喜ばれたら、ビックリして過剰にご奉仕しちゃったかも」  本気かどうか判断しにくい笑みを浮かべ、後ろを指差す。  そこには、一枚のポスターが。  『渡り鳥さんは猫耳しないとダメだぞ★』  明らかに沙鳥の直筆で。 「万具堂だけじゃないの!?」 「今ごろ、うちのお偉いさんたちが猫耳付けて会議してるんだよ。ホントにバカだよねぇ」  自らも猫耳を付けているというのに、他人事のようにクツクツと笑う。  が、幹部達の猫耳を想像すると、同感としか言えない。 「何でそんな事を……」 「原因は沙鳥で、元凶は女切で、ユキの作戦勝ちってところかな」  曰く、霞から「女王騎士団は好かれてない」的な事を言われ、ショックを受けた沙鳥が「女王騎士団をより可愛くしよう」と思い立ち、提案した「猫耳」 メイドイン幸成。沙鳥の指示により、一晩で全員分を作り上げた本人は、現在お休み中。勿論、猫耳付きで。  当初は騎士団だけの予定だったが、想像以上に精巧な作りと「他の人の分も作ってあげたけど、何か文句ある?」と言わんばかりに押し付けられた大量の「猫耳」を見た沙鳥の「折角だからw」の一言で、レイヴンズワンダー全員が巻き込まれる結果となった。 「それで拒否もせず付けてるのか……」 「俺らが好かれてないのなんて当たり前なのにね」  何せ、沙鳥以外に好かれる気がないのだから。  それでも、沙鳥からの指示であれば「人気者になろう!」というモノでも二つ返事で従う。間違った方向であると気付いていても、一切訂正せずに。 「プライドとかは?」 「ないよ」  はっきりとした即答。本心からなのは、今までの付き合いからよく分かる。 「ユキはちょっと嫌そうだったけど、沙鳥と俺ら以外見ないだろうって事で承諾してくれたし、マサ姉は照れてたけど、満更でもない感じ。スズと丈は当然。俺もこの通り、似合ってるでしょ?」  確かに、無駄に整っているせいか違和感がない。 「何でも似合っちゃうのも罪だよね。この間なんか……十二単だっけ? 昔の日本女性の格好をしたんだけど、異様に美人で自分でもビックリしちゃった」  そうカウンターの奥にあるコルクボードを指差す。そこには童話のヒロインの格好をした女王騎士団の写真が。 「それ売れば? 高値付くんじゃない?」 「猫耳姿も込みでうちの店長が検討中。さっきも弓納持さんが大量に写真撮って行ったから、結構な儲けになりそうかなって」 「あー……」  その光景が目に浮かぶ。 「とんでもない使い方されるかもよ?」 「それはそれで面白いよね。彼女の作品は嫌いじゃないし。不死川と不死原なんて、本人見る度に笑いそうで困っちゃうんだよね」  藤司朗はハルの蔵書読破を目指すほどの読書家である。おまけに雑食なので、読む本の種類に拘りは無い。 「俺としては眼福なんだけど、酷い目に遭ったーって思ってる人は多いかもね」 「嫌なら断れば良いのに」 「女王陛下のお言葉は絶対ですから」  その言葉に嫌がっている気配は無く、むしろ至上の幸福を自慢するように。 「どんな小さなワガママでも応えられるだけで嬉しいから。俺はね」 「騎士の鑑ってヤツ?」  からかうような声色に、苦笑いを浮かべて首を振る。 「俺らは騎士にとって当たり前の事が出来ない」 「当たり前の事?」 「君主のために命を懸ける」  溜め息と共に吐き出された言葉。 「俺らは沙鳥を弔うまで死ねないからね。沙鳥に自らの命と血を捧げる事は許されない。一分一秒程度の長生きでもダメ。きちんと弔わなければ」  彼らしくない本気の憂い顔。 「猫耳さえなければ絵になるのにね」 「……ダメ?」  小首を傾げる仕草に、思わず小さく吹き出す。 「酷いなぁ。そんな篭森さんに幸せお裾分け」  そう強引に何かを被せられる。 「ちょっと……」 「うん。可愛いよ。よく似合ってる」  そのまま撫ぜられた頭には黒い猫耳が。 「余り物なんだけどね、ちょうど黒だったから。篭森さんが来てくれるの期待してたんだ」  そっと触れると、流石としか言いようのない手触り。一度触れたら、止まらなくなるほどの――。 「……貰っても良いの?」 「気に入ると思った。篭森さんなら沙鳥も喜んであげると思うよ」

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