第24話まで

三戦英雄傅


第二十二回~晋国に英雄集い、袁家軍は天の時を待つ~




 晋国の摂政にして後漢の相国・袁紹は群臣を前に思慮深げに黙したままでした。
群臣は、二人の男を囲むようにして立ち尽くしていました。
 人々の見つめる視線の先には、袁紹の乾いた唇。重い空気が、群集の肩に寄りかかり、
時だけが過ぎてゆきます。

男1:「袁紹様、ご返答をいただきたく存じます」
 沈黙を破ったのは、円の中にいた二人の男のうちの一人でした。
袁紹は、男の声に僅かに首を傾けたまま、沈黙を守ったままでした。

 時は南漢(晋)暦:栄安二年一月。所は、晋国の南陽城。
正月を迎えたばかりで、後漢には様々なできごとが起こりました。
①荀攸が小魔玉暗殺を謀るも、失敗し、晋国へ亡命
②漢朝の忠義の士・丁原は小魔玉の手により歴史上から抹殺された上に
、不幸にして小魔玉の先妻に顔が瓜二つだったことから性転換手術をさせられ
監禁される(当事者以外知らず)
③奇矯屋onぷらっとが甘寧を倒し、ひょーりみと共に晋国へ亡命
④協皇子の生母・アダルト日出夫が小銀玉皇后の女の嫉妬を買い、
何進により暗殺される

 まこと、栄安二年は激動の時代でございます。



ひょーりみ:「袁紹様、ご英断を」
 先ほどより袁紹に決断を促している男の名は、ひょーりみでございます。
ひょーりみと、奇矯屋onぷらっとは晋国の群臣に囲まれた中、大尉の小魔玉討伐を
袁紹に献策したのでした。
 ひょーりみと奇矯屋onぷらっとの様子に固唾を飲む聴衆。その中には、天性の
博打打・荀攸もおりました。
荀攸:「(ひょーりみ・・・・奴はただの男ではない。勝負師だ。しかも、かなり
重症の。同じ臭いがする・・・・しかし、奴の言うことを聞いてもいいのか?
信頼するに当たるのか?そもそも奴は、大尉・小魔玉の義兄弟だ。これは、小魔玉の罠
とも考えられる。奇矯屋onぷらっとは武勇に優れているが、根が優しすぎる。
ひょーりみに騙されたと考える方が自然ではなかろうか)」
曹操:「ひょーりみ、大尉・小魔玉の義兄弟が何をしに来たかと思えば・・・・
洛陽にはまともな謀臣がいないと見える。こんな見え透いた嘘、皆の目は騙せても、
この曹孟徳の目は誤魔化せぬぞ!」
郭図:「ひょーりみ殿、仮に貴公の大尉暗殺の意図が真であったとしよう。しかし、
貴公と大尉の間柄ならいくらでも暗殺の機会はあろうに。わざわざ大軍を以って
一人の男を殺すまでもありますまい」


 突然やってきた怪しい男、ひょーりみの心中を探らんと晋国の群臣はひょーりみに
議論を投げかけようとしてきます。奇矯屋onぷらっとは、武官という身分のためか敵意を持たれぬ
人徳のためか群臣からは何の議論も投げられませんでした。



ひょーりみ:「はははは!!」
曹操、郭図:「何がおかしい!」
ひょーりみ:「これが笑わずにおられようか。いや、おかしい。可笑しい。とんだ初笑いだ」
曹操:「・・・申してみよ。答えによっては、三族皆殺しも覚悟されよ」
郭図:「(後で讒言してやる・・・・覚えてろ・・・・ひょーりみ)」
ひょーりみ:「俺の進言が、言葉が嘘だと思われるのか?」
曹操:「当たり前だろう。何を根拠に信用しろというのだ。大体、自ら信用しろという輩にろくな
奴はいない。まして、お前は小魔玉の寵愛厚い義弟だ。信用しろというほうが無理ではないか」
ひょーりみ:「我が横には、漢朝きっての武人・奇矯屋onぷらっと。何か不審な動きがあったなら、この
細首、繋がって晋国には入国できまい。俺は、確かに未だに小魔玉の兄上を思っている」
 ひょーりみの言葉に群集が動きました。そこへ、ひょーりみの一喝が飛びます。
ひょーりみ:「黙らっしゃい!! 最後まで聞かれよ。義兄の小魔玉を愛しているからこそ、
俺は、この手で、小魔玉の悪徳に終止符を打ってやりたいのだ。そして、故郷の南海に立派な墓を
建ててやりたい」
郭図:「愛しているなら、生を望むのが本当ではないか?この嘘つきが!」
ひょーりみ:「死んだ人を悪く言う奴はいない。大尉・小魔玉も死ねばこれ以上人の恨みは買うまい」
曹操:「・・・・・・なんと・・・・それほどまでに」



ひょーりみ:「俺は、漢を、小魔玉を救うために敢えて小魔玉討伐を提案した。しかも、独立政権とはいえ
事実上漢の領土である晋国でだ。無論、死の覚悟はしている。このまま、大尉暗殺を企てた謀反者として
小魔玉に差し出せば相応の報奨金は得られるだろうよ。だが、諸君はどうだ?
肥沃な土地に、袁家軍、曹家軍合わせて百万。文武に優れた憂国の士数千。ただ、徒に
時間を潰しているだけだ。これが笑わずにおられようか。あ?どうだ?」
郭図:「詭弁はいい。そんなに小魔玉様を殺したければ、単身、洛陽へ帰り毒殺でも何でもなさるがいい。
ひょーりみ殿なら疑われずに容易くできましょうぞ」
ひょーりみ:「昔、伯夷・叔斉の兄弟は互いに国を譲り合い国の皇子といく身分にも関わらず餓死を選びました。
兄弟の愛情とはかくの如き強き物。たとえ、義理であろうとも何でこの手で兄を殺せましょう」
郭図:「(史記を持ってくるとは・・・・・・くっ・・・・逢紀!)」
 郭図は親友の逢紀に助けを求めましたが、逢紀はニヤニヤするばかりで助けてはくれませんでした。二人の友情は、所詮このようなものでした。
ひょーりみの独り勝ちかと思われたその時、一人の少年がひょーりみの前に進みでました。
 田豊の食客の果物キラーの長男の無双ファンでございます。



無双ファン:「先ほどから聞いておりますと、ひょーりみ殿は我が軍を頼って、ご自分は何の危険も
被ることはない。我が晋国からすれば、とんだ疫病神ですね」
ひょーりみ:「くっ・・・・・」
果物キラー:「おやおや、どうした?無双ファン。ひょーりみ殿はノーマルのようだから手加減してやりなさい」
 無双ファンがひょーりみを追い詰めるのを、父親の果物キラーは公開言葉責めと勘違いしたようで、
息子の成長に目を細めておりました。
果物キラー:「(初対面の男に公開言葉責めとは・・・・・無双ファン、我が息子ながら恐ろしい子だ)」
審配:「実は、我が家の家計も晋国の予算も、内情は厳しくてな。どうしても、年度末の調整がうまくいかないようだ。
ここは、ひょーりみ殿、貴公の首一つでやりくりしようかと思うのだが。行け、顔良!」
顔良:「はっ!!」
 審配の指示に、晋国一の猛将・顔良が立ち上がりました。ひょーりみの危険を奇矯屋onぷらっとが察知し、
奇矯屋onぷらっとと顔良、二人の武人が対峙します。袁紹は、未だ言葉を発しません。
顔良:「俺と出合ったのが運の尽きだな。しねえええええええ!!」
荀攸:「止めてくれ!!!!!!」
ひょーりみ:「!!!!」
奇矯屋onぷらっと:「!」
 顔良の剣がうなりをあげたその時、ひょーりみと奇矯屋onぷらっとの衣が真っ二つに切り裂かれ、
二人は生まれたままの姿を群集に晒しました。



奇矯屋onぷらっと:「何のつもりだ!!」
顔良:「殿、審配殿、二人は今、過去を捨て生まれ変わりました。どうでしょう?ここは、過去のしがらみを
捨て、真に漢朝を考える時が来たのではござらぬか?」
無双ファン:「しかし、漢朝の鼎はとうに折れている。いっそ、我が殿の晋国で新しい王朝を作り、学徒殿の
自治を徹底したなら民草のためにもなりましょう。わざわざ漢朝に拘る必要もありますまい」
顔良:「無双ファン、見損なったぞ。この売国奴が!!」
無双ファン:「何とでも言え」
袁紹:「そこまでだ」
 袁紹は、やおら立ち上がり腰に差した長剣を頭上に振りかざし、机を真っ二つに斬りました。
一同:「おおおー!!」
袁紹:「元より、この袁本初の心は常に漢朝と共にある。漢朝の佞臣は生かしてはおかぬ。
しかし、今は時が到来していない。以後、これより余計なことを口にする輩と漢朝の佞臣は
この机と同じ末路になると覚悟せよ!!」
 こうして、袁紹は反小魔玉軍を水面下で結成し、訓練することにしました。
晋国と洛陽は関所で隔たれただけの距離、当面は袁紹と小魔玉の化かし合いが続くでしょう。
しかし、ただの演技では為せない熱いものが袁紹の心には燃え盛っているのでした。
 三戦英雄傅、つづきはまた次回。



三戦英雄傅


第二十三回~曹操は天下を案じ、果物キラーは不審な動きを見せ、丁原は計略を練る~



 袁紹の机斬りから、一月ほど経った栄安二年二月。
曹操は、月下で従兄弟の夏侯惇と曹洪を相手に酒を酌み交わしておりました。

夏侯惇:「孟徳。相国殿の机斬りもあるから、かようなことは言いたくないのだが・・・・
訓練ばかりで実戦が無くては兵士の士気を保つのも難儀なことだ。それにいつ来るかとも
知れぬ小魔玉討伐の時期を待てというのも。ここは、俺たち曹家軍単独で小魔玉討伐を
しないか? なあに、こちらは精鋭。向こうは訓練も忘れ贅肉のついた名ばかりの兵。
恐れるに足りないだろう」
曹操:「元譲。お前のいうことにも道理はある。だが、相手は仮にも漢の大尉。大義を
欠いては逆に、曹家軍が逆賊の謗りを受けよう。ただでさえ、我等一族は宦官の末裔と
いらぬ中傷に耐えてきたのだ。お前は忘れたのか。幼き頃から受けてきた屈辱と
いじめの数々を」
曹洪:「あれは、いじめの満漢全席だった・・・・・」
 辛い幼少期を思い出し、銭ゲバの曹洪は珍しく涙を浮かべました。
 最終的に曹洪は学生時代にこともあろうか、「曹洪って、援交してるって」と書かれた紙を
市中にばら撒かれ退学に追い込まれた過去がありました。今でいう、学校裏サイトのような
ものです。この頃から、曹洪は心を閉ざし、「信じられるのは金と親戚だけ」と貯金に精を出しました。



夏侯惇:「子廉。済まぬ」
曹洪:「いいんだ。それに学校だけが社会じゃないさ。寧ろ、学校のいじめなんか今にして思えばかわいいものさ。
宮仕えなんかしてみろ。小魔玉による脱衣麻雀に鷲巣麻雀。拒めば逆臣と言われ、家族は路頭に迷い、
世間から遮断される。受ければ待っているのは屈辱と死だ。一番辛いのは仕官先での理不尽な中傷や要求だよな」
曹操:「子廉も大人になったな。泣きまくって顔がいつも濡れていた餓鬼の頃が嘘みたいだ」
曹洪:「兄上」
 曹洪は照れたように頭を掻きました。
曹操:「それにしても、いったい洛陽はどうなっているのだろうか。袁家十人衆から情報は入ってはくるものの
漢に王允殿と丁原殿と陳羣殿がいれば漢も持ちこたえるだろうとは思っていたものの。甘かったか」
夏侯惇:「陳羣殿は、名士・まあcの孫。徒に洛陽に止まっているわけでもありますまい」
曹洪:「王允殿は荀攸殿の小魔玉暗殺に手を貸したとか。彼は演技が上手いので事後の処理は
なんとでもできるでしょうが」
曹操:「問題は丁原殿だ」
夏侯惇:「孟徳は何か知ってるのか?噂では鷲巣麻雀で殺されたとかなんとか」
曹操:「儂の懸念は丁原殿の容姿だ」
夏侯惇:「確かに酷い女顔だったな。それも極上の美女のような。でも、女顔と天下の形勢とどう関係があるんだ?」
曹操:「ただの女顔ではない。丁原殿は、小魔玉の亡くなった奥方に生き写しだ」



夏侯惇、曹洪:「なにぃ!?」
夏侯惇:「孟徳、それは真か?」
曹操:「ああ、あそこまで似ていると空恐ろしいものがある。まるで何か、天が小魔玉を滅ぼすために
遣わした遣いか何かのようだ」
曹洪:「亡くなった妻女に瓜二つの丁原を小魔玉は黙って殺さない。つまり、兄上は丁原殿は
生きているとお考えなのですね?」
曹操:「それが、丁原殿にとって良いことかはわからぬ。しかし、母に似た丁原殿を子のリンリン友は黙って殺させることはあるまい」
夏侯惇:「気骨の士、丁原が生きていたなら小魔玉を許すことはあるまい」
曹操:「うむ・・・・・・・」
曹洪:「おや、あれにおわすは果物キラーと無双ファンの親子」
 曹洪の目線の先には果物キラーと無双ファンがおりました。見ると、二人して仲良く庭石に腰掛け、肩を並べて月明かりで書物でも読んでいるようです。
曹操:「詩でもひねっているのだろうか?」
夏侯惇:「なかなか風流ですな」
曹洪:「感覚的に少し受け入れ難いものがありますが、あの親子、本当に仲が良いですね。
微笑ましいくらいです。普通あの年頃になれば父親をうざったく感じるものですが」
曹操:「文学という共通点があるからだろう。どれ、儂らも参加するか」
 曹操一行は果物キラー親子と合流することにしました。



果物キラー:「よし、できた!!息子よ、これでどうだ?」
無双ファン:「・・・・・・すばらしい!!さすがは父上です」
 果物キラーと無双ファンは、果物キラーの書いた文章を絶賛し合っておりました。
果物キラー:「いやー我ながら我が文才が恐ろしくなるよ。夜じゃないと頭が働かんのだがな」
 そこへ曹操たちが現れました。
曹操:「月夜の詩会とは風流ですな。儂らもお仲間に入れてくれませんかな」
果物キラー:「こ、これは曹操殿・・・・いや、拙作は曹操殿のお目汚しに・・・・」
曹操:「いやいや、果物キラー殿のご高名は耳にしておりますぞ。陳琳か果物キラーかと
洛陽の紙価は高まるばかり。どれ」
果物キラー:「あああ!!! 」
曹操:「蒼天已死 黄天当立・・・・・これは!!」
曹洪:「今、流行っている黄巾賊の歌です!!なぜ、果物キラー殿が」
夏侯惇:「未発表の続きがあるぞ!!歳有甲子 天下大吉、俺の股間も正に勃っている。
俺の一物も屹立す・・・・・なんたる卑猥な!!」
無双ファン:「あなたがたには関係ありません。これは、父上の、袁家十人衆の任務ゆえ」
曹操:「袁家十人衆の」
曹洪:「袁家と黄巾賊は関係があるのか?」



夏侯惇:「孟徳、ここはやはり曹家軍が単独で!!もはや袁家は頼りにできん」
曹操:「いや、兵法に敵を騙すにはまず味方からと言う。袁紹も袁術も何か考えがあるに違いない」
無双ファンは曹操の言葉に薄い唇を上げました。
果物キラー:「では、我々はもう寝るか。行くぞ。無双ファン」
無双ファン:「はい。父上。では、皆さん、ごきげんよう」
 果物キラーは無双ファンを肩車して帰りました。
夏侯惇:「15を超えた息子を肩車・・・・・果物キラー、やはりただものではない」
曹洪:「肩車される無双ファンも無双ファンです」
曹操:「まあまあ、それだけ仲のよい親子なんじゃないか。ハハハ」

 曹操たちが笑いあっている頃、洛陽の小魔玉邸では噂の丁原(媚嬢)に危機が迫っておりました。
丁原は好色の小魔玉の夜の誘いを「今日は、あの日だから」と毎晩断っていたのですが、
もう一ヶ月も拒み続けていたので、さすがに小魔玉も丁原に疑念を抱くようになっていました。
小魔玉:「媚嬢、オイラは流血プレイもお前相手なら構わないよ。って、生理が一月も続くなんて
学会でも発表されてません( ^∀^)ゲラゲラ」
媚嬢(丁原):「(しまった!こいつ、医師だったんだ!!仮病は使えまい・・・・どうしよう)」
小魔玉:「生理が一ヶ月も続くなんて、それは病気だよ。媚嬢。オイラの太~い御注射を打てば
一発で治るよ( ^∀^)ゲラゲラ」
媚嬢(丁原):「(もう嫌だ。こんな変態と暮らすなんて。小魔玉の奥方の実家、
加ト清正に助けを求めるか?離縁して・・・・・)あ、あなた。私、薬も注射も苦手なの」
小魔玉:「媚嬢の大好きな御注射だよって、一発じゃ済まさないぞ( ^∀^)ゲラゲラ」
媚嬢(丁原):「薬物を取ると二人目を作るときに良くないわ・・・・う・・・・」
小魔玉:「どうしたんだ?媚嬢!」
媚嬢(丁原):「ご、ごめんなさい・・・つ、つわりかもしれないわ」



小魔玉:「悪阻って・・・・・オイラのはそんなに強いのかな。まだ交わってもないのだが( ^∀^)ゲラゲラ」
 丁原は悪阻を装い、厠に駆け込み、己の不遇を嘆きました。
媚嬢(丁原):「もはや、月のもの作戦も押し通せまい。このままではあの変態の物ぐさみに陥るだけ・・・・
かといってこんな体では・・・・いっそ、清い体のまま・・・・」
 丁原は腰帯を解き、厠の梁で首を吊ろうとしました。
リンリン大友:「どうしたの?ママ・・・・」
 そこへ現れましたのは小魔玉の息子のリンリン大友でした。
媚嬢(丁原):「(こいつ・・・・確か、小魔玉が目に入れても痛くないほど可愛がっている息子であったな。
天運、未だ我にあり。こいつを利用して小魔玉の命を!!)」
 さてさて、気骨の士・丁原は何やら陰謀を考え付いた様子。
小魔玉は、袁家は、果物キラーの不審な動きの正体は?
 三戦英雄傅、つづきはまた次回。



三戦英雄傅


第二十四回~攻めのムコーニン登場し、丁原は復讐を天に誓う~



 栄安二年二月。丁原(媚嬢)が悪阻を装い、小魔玉の魔手から逃れ、
自害を思い立った厠にて、また後漢の歴史が変動の兆しを見せておりました。
リンリン大友:「ママ・・・・泣いてるの?どうしたの?」
 目の前で己の身を案ずる優しき青年・リンリン大友。丁原は、漢朝の未来のため、
打倒小魔玉のため、この純粋な青年を利用しようというどす黒い陰謀を抱いておりました。

媚嬢(丁原):「リンリン大友ちゃんね・・・・いいのよ。子供はもう、寝なさい。
ママは・・・・ママのことはいいの」
 丁原は、手にしていた帯を投げ捨て、厠の床に崩れました。
リンリン大友:「ママ!!」
 リンリン大友が母親を抱き起こすと、母の着衣は乱れ、美しい顔は青ざめ、
紅はすっかり落ちていました。
 綺麗な瞳は充血し、涙が止まる様子を見せません。



リンリン大友:「まさか、パパと何かあったの?」
媚嬢(丁原):「子供はね・・・・知らなくていいこともあるのよっ」
 丁原は、堪えきれなくなったように嗚咽を漏らし始めました。
リンリン大友:「僕は、ママの味方だよ。ママを虐める奴はパパでも許さないよ!」
 リンリン大友の言葉に丁原は、一瞬目を光らせました。
媚嬢(丁原):「リンリン大友ちゃん、本当?」
リンリン大友:「本当だよ!」
媚嬢(丁原):「ああ、でもだめよ。可愛いあなたまでパパに、あの人に何か
されたらと思うと・・・・・」
リンリン大友:「僕、ママのためなら、人だって殺せるよ」
媚嬢(丁原):「ありがとう。その言葉だけでもママは生きていけるわ・・・・でも、
あの人に、小魔玉に・・・・・とても変態的なことを強要されるの。拒めば薬物を
使うぞって暴力まで・・・・力ずくで・・・・もう、毎晩よ。いくら夫婦でも、
もう限界だわ」



リンリン大友:「ママ・・・・・」
 リンリン大友は泣き崩れる母を抱きしめ、力強く言いました。
リンリン大友:「待っててね。僕がママを助けてあげるから」
媚嬢(丁原):「(フフフ・・・・これぞ、連環の計。可愛がっている我が子に殺される・・・
世にこれほど滑稽で悲惨な末路はあろうか。逆賊のお前には、ちょうど良い。
お前の悪事も今日までよ。今まで散々な目に遭わせおって)」
 丁原の復讐、それは、大尉・小魔玉を己の命よりも大切にしている息子・リンリン大友の手により
殺させることでした。
 世の男は、全てマザコンと言います。母が嫌いな男は皆無と言っても過言ではありますまい。
そこを突いた、丁原の謀略や、如何に・・・・・・。
 厠の事件より十数日、大尉の小魔玉はまた愛息のことで悩んでおりました。
リンリン大友が小魔玉と口を利かなくなってしまったのです。
小魔玉:「う~ん・・・・媚嬢は悪阻とか言って夜の生活を拒むし、リンリン大友からは無視されるし
遅い反抗期か( ^∀^)ゲラゲラ」
 小魔玉は( ^∀^)ゲラゲラという割には、額に皺寄せ、貧乏揺すりをし、とても心に余裕がないようでした。
ムコーニン:「なんだよ。お前ら、やっぱり俺がいないと何もできねえんじゃないの」
小魔玉:「む、ムコーニン!?」
中山幸盛:「ムコーニン、久しいな」
 現れました、この男。名をムコーニンと言いまして、『攻めのムコーニン、守りの中山』と言われた
小魔玉の二大知恵袋でありました。



ムコーニン:「え?何?後漢の大尉が嫁とのセックスレスで悩んでるだあ?馬鹿かお前?
呂后の故事知らんわけ?」
中山幸盛:「戚夫人の故事のことですかな」
小魔玉:「・・・・・・なるほどの。さすがは、ムコーニン。オイラの前職も考えた上での
発言・・・・・上手く行った暁には褒美を取らせよう( ^∀^)ゲラゲラ」
ムコーニン:「息子のことは、俺が言い含めてやる」
小魔玉:「オイラのリンリン大友に何かあったら、たとえお前でも容赦しないぞ( ^∀^)ゲラゲラ」
 一方、丁原は自室で髪を梳かしながら、リンリン大友が小魔玉を殺すのは今日か明日かと待ちわびておりました。
小魔玉:「媚嬢、待たせたね( ^∀^)ゲラゲラ」
媚嬢(丁原):「ご・・ごめんなさい・・・まだ悪阻が酷くて・・・・」
小魔玉:「いいんだよ。媚嬢はオイラの大切なお嫁さんだからね( ^∀^)ゲラゲラ
オイラとしたことが戚夫人の逸話を忘れていた・・・・・人間って手足を切断しても生きていられるんだよね
( ^∀^)ゲラゲラ。オイラたち夫婦が愛し合うのに手足なんか必要ないよね?媚嬢?」
 小魔玉は人の顔ほどある大きな肉切り包丁を持って丁原の前に立っておりました。
応戦しようにも、豊かな胸が邪魔になって思うように動けません。
ムコーニン:「奥様、悪く思わないでくれよ」
中山幸盛:「これも、大尉様の御所望なのです」
媚嬢(丁原):「いや、やめて!!リンリンちゃん!!助けて!!」
 丁原は、己の駒のリンリン大友を呼びました。
リンリン大友:「ママ・・・パパがママを愛しちゃどうしていけないの?パパは
ママを愛しているのに。ママの方がおかしいよ。パパから逃げようとするなんて」
小魔玉:「そうだな。リンリン大友よ。よし、パパとお前でママの悪い、お手手と
足を切っちゃおう( ^∀^)ゲラゲラ」



リンリン大友:「愛してくれるパパから逃げようとする足なんて、悪い足だよね」
 リンリン大友は、すっかりムコーニンに洗脳されていました。丁原の叫びは
市中の誰にも届きませんでした。小魔玉は、手足を斬った丁原をよりいっそう
愛するようになりました。
 無いはずの手足が訴える鈍痛、遠のく意識。抵抗もできぬまま受ける陵辱。
それでも丁原が正気を保っていられたのは、漢朝への忠義と小魔玉への憎悪だけで
した。
 栄安二年六月。小魔玉邸で宴会が催されました。宴には、晋国の者も招待され、
袁紹、袁術、曹操、学徒出陣、袁家十人衆が来場しておりました。
 厠へ立った曹操と学徒出陣が廊下を歩いてゆくと、なにやら美しく物悲しい歌が
聞こえてきます。
曹操:「なんだ?」
学徒出陣:「大尉の屋敷の妾か何かでは?」
曹操:「小魔玉は好色だが、奥方一筋。奥方亡き今は、つまみ食いはしても
妾は置かぬはずだ」
学徒出陣:「では、ますます変です」
無双ファン:「小魔玉の奥方の幽霊、とか」
曹操:「無双ファン、お主いたのか?」
無双ファン:「オカルト好きが逃すはずはありません。こんなネタ」
 こうして三人は無双ファンを先頭に声のする方へ行きました。



 歌声は屋敷の奥から、聞こえています。
学徒出陣:「帰ってこれないんじゃね?」
曹操:「この声・・・・どこかで聞いたことのあるような」
無双ファン:「この部屋からです!!やはり、女人の部屋でしょうか?」
 見ると、豪華な、貴婦人のために作られたような部屋でした。
どこからともなく歌声は聞こえてきます。
「お待ちしておりました。晋国の、漢を真に思う忠義の士たち・・・・」
 三人の目の前に現れたのは、小銀玉皇后にも劣らぬ絶世の美女でした。
学徒出陣:「女・・・・・・」
無双ファン:「甕に入れられている」
曹操:「お主、もしや、丁原か!?」
媚嬢(丁原):「ええ、その通り話せば長く思い出したくもない。私を晋国に連れて行って欲しい」
 曹操は、丁原の強い視線で全てを理解し、衣装箱の中に丁原を隠し、晋国へ連れて行きました。
 丁原は、袁紹に全てを話し、袁術の計らいにより晋国の軍師となりました。
手足がないために特注の車椅子に乗り、丁原は洛陽を目に捉え、次なる策を練っておりました。

 車椅子の軍師・丁原の救国の策とは? 小魔玉の悪運はいつまで続くのか?
まだ出ていないコテの活躍はあるのか? 小銀玉皇后と小魔玉の愛憎の行方は?
後漢と晋の運命は? 弁皇子と王允の運命は?謎が謎を呼ぶ歴史物語。

 気になる続きは、第二部へ。
三戦英雄傅、第一部はこれにて閉幕! 第二部は五月あたりに連載再開予定。
 それでは、第一部、ご愛読ありがとうございました。


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最終更新:2008年03月30日 18:44