11節から20節


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第十一節


謁見の受付は比較的滞りなく進んだ。というのも、堕落した学徒に謁見を申し込む者は
今ではほとんど居らず、賄賂を扱って順番を早めてもらう必要がなかったからである。
中には舎人風情が無礼な、と息巻く者もいたが、状況を察した小魔玉がこれを制したことで
さしたる問題にもならず、謁見の日が訪れた。

果物キラー「いいか、私情を交えず簡潔に事態を説明するんだぜ。」
ザビエル「失言は命を失うもとになりましょう。言葉はお選びくださいませ。」
ひょーりみ「……………。」

二人の同胞の言葉を背に、ひょーりみが傾首の礼を取ると、学徒は彼に声をかける。

「何て服着てやがんだ! 場ぐらい弁えろや、ボケ!」

その言葉を受け、ひょーりみは用意していた言葉を全て捨てると、学徒の視線を直視して返答を述べた。

「陛下。陛下はいったい、何をご覧になっていらっしゃいますのでしょうか。」

ザビエル&果物キラー「!?」

「思うに、美しい宮殿の景色でしょうか。また、美しいご寵姫さまでしょうか。」
「陛下がご覧になるべきは、新党朝…いや、広い広い厨国のはずではないでしょうか。」

故事の引用をすることもなく、言葉を飾ることもなく、ただ率直に述べられた疑問。
それゆえにひょーりみの言葉は学徒の胸に鋭く突き刺さったが、
もはや皇帝は過日には戻れないところまで堕落しきっていた。

張春華「くすっ…」

学徒の気色を伺い、先が見えたと笑みをもらす春華。
学徒は言葉をつまらせていたが、口の中で斬れ、早く斬れと呟いていた。



第十二節



「いや、まことに怪しからぬことです。この寒人の処分は、私にお任せください。」

張り詰めた静寂を破ったのは、そう述べながら昇殿した小魔玉であった。
処刑であれば私がと渋る春華であったが、早く連れて行けとの学徒の鶴の一声で
一行の命は小魔玉に預けられることになった。
小魔玉は彼らを洛陽の郊外へ連れて行くと、人払いをして縄を解き口を開く。

「困ったものだよ。未来への希望の芽を、刹那の憤りで摘み取ってしまってはね。」
「クマッタに何を頼まれたのかは知らないが、これではその役目も果たせまい。」
「まあ、問い詰めずとも容易に想像はつくことではあるが。…孔明のことは、可能なかぎり善処しよう。」

何か言いたげなひょーりみであったが、果物キラーとザビエルが同時に彼の頭を押し下げ、
めいめいにお礼を述べて場を収めようとはかった。

「いや、彼の申さんとすることはよくわかっている。私が陛下をお諫めしないのを、責めているのだろう。」
「これは大人になれば分かることだが…肝要なのは外形ではなく、ただ本質なのだ。」
「私が何も考えていないとは、思ってほしくないものだね。…それから、これは金子だ。」
「しかるべき時のために、とっておきなさい。」

一行は改めて謝して辞去すると、益州への帰路につく。
直後に受難が待ち受けていることを、誰一人として予想してはいなかった。



第十三節



時を同じくして、善政が敷かれていた広漢にも暗雲が立ち込めていた。

「あまり清廉な顔をしてると俺みたいなのに付け入られるんだぜ、太守さんよ…」

怪しげな雰囲気の酒場でひとりごちる山賊の名は向こうの888。
寒門ながらぷらっと、KowLoonに認められて政界に入ったものの、
権力を得ると反対派を次々に粛清したことで忌み嫌われ、宮廷を追われた男である。
元来卑しい性根を持ち、山賊入りをしてからは同じような男達とともに略奪に明け暮れていた。

「又吉、お前は屋追族が不穏な動きを見せているとの偽報を用いて州軍を州境あたりに釣り出せ。」
「AaAは要所要所を打ち壊し、州軍…とくに騎兵隊の帰還を遅らせろ。」
「この首府を戦力の空白地にしてやれば、一郡を得ることも容易いからな。」
「肥沃な広漢があれば、ひいては一州、一国を得る足がかりにもなるだろうよ。」
「これでようやく政界に復帰できるというものだ。もう一度民の怨嗟を肴に酒が飲みたいねえ。」

賊軍の目論見は完璧といっていいほどに図に当った。
クマッタは民政の手腕こそ一流であったが、善良であるがために偽報を偽報と見抜くことができず、
また善良であるがために積極的に大規模な援軍を編成し、首府は空き家も同然となったのである。
888を先頭にした賊軍は人気の無い夜間に広漢の政庁に突入し、クマッタを追い詰めた。

「やれやれ。この政庁の物資は、それなりの由緒あるものばかりなのだ。」
「もう少し大切に扱ってはくれないかね。」

そう言って動じる様子も見せないクマッタに冷笑を浴びせると、888はただ一言のみを発した。

「やれ。」

無残に切り刻まれたクマッタの屍骸は秘密裏に廃棄され、その死は隠された。



第十四節


クマッタを殺害した888は彼に成り代わってその名を用い、
広漢を怨嗟のこだまする生き地獄へと作り変えていた。
口でこそ版図の拡大をうたっていたものの、器の小さい偽クマッタは
覇業よりも民を虐げることに快感を覚えていたのである。
民は過日の善政を思い出しては、太守の変貌ぶりを嘆いていた。

「ああ、どうにも刺激が足りないな。もっと盛大な阿鼻叫喚を聞きたいもんだが。」
「いっそ州城を燃やしちまうか。広漢郡は不穏分子のたまり場だったからな。」
「ちょっと“言い繕って”孔明に報告すりゃ、歓心を買えるだろうしな…。」

自分の良からぬ思い付きに酔いしれると、偽クマッタは早速腹心に仔細を言い渡した。
すなわち四方の門に魚油を滲みこませた枯芝を配置し、三更に火を放てと。
もちろん、その直後に888は郡城を抜け出すと、遠望のきく山へと向かったことは言うまでもない。

三更の頃。
たちまちに放たれた火はその勢いを増し、風に煽られて郡城を埋め尽くした。
逃げ場を失い焼け死ぬ者、城壁から飛び降りて死ぬ者は数知れず、
偽クマッタはそれを眺めながら大いに笑い、孔明の赴任している成都へと発った。

一方、とある山中にて。

果物キラー「おっ、見ろよ。すっげえ流れ星だぜ!」
ザビエル「ほお…これは見事な。いったいどれほどの数が降り注いでいるのでしょうな。」
ひょーりみ「本当に綺麗だ。そうだ、願い事でもしちゃおうかなあ~」



第十五節


広漢の郡城に帰り着いたひょーりみ一行は、その惨状を目の当たりにした。
もはや区別もつかないが、累々の焼死体の中には彼らの知人も多いことだろう。

「ちっ…畜生、畜生、畜生!」 瓦礫を蹴り、行き場のない怒りをぶつける果物キラー。
「どなたも、助かってはおりますまいね。」 肩を震わせ、静かに涙を流すザビエル。
「多くのものを、失ってしまったね。」 無感動に、ぽつりとこぼすひょーりみ。

三人はしばらく無言のまま立ち尽くしていたが、やがてひょーりみが口を開く。

「…僕は関中に向かおうと思う。自分に力がないことが悔しくて、苦しむのはもう嫌だから。」
「関中に行って強い力を味方につけようと思う。広漢の、天下の仇を討つためにさ。」
「ザビエル、果物キラー、君たちとはここでお別れかな。今まで、ありがとう。」

「何を仰るのです。ひょーりみ殿がお立ちになるなら、私もぜひお手伝いをいたしますぞ。」

そう反論するザビエル。その隣で激しく首を縦に振って同意を示す果物キラー。

ひょーりみ「君たちの気持ちは嬉しい。でも、人生は二度とめぐってはこないんだよ。」
ザビエル「…ええ、ひょーりみ殿。二度と再びめぐってこないから、人生とは甘美なのです。」
果物キラー「ああ、その通りだぜ。安穏と暮らしてても、世がこんなじゃあちっとも安まらねえや。」

二人の言葉を聞くと、ひょーりみは嬉しそうに微笑む。

「ありがとう。それじゃあ、いずれ君たちの力を借りようと思う。必ずね。」
「だけど、今はここで別れたほうがいいよ。三人がそれぞれの行き先で自分を磨き、」
「味方を見つけ、力を得て、そしてまたここで会おう。次に会うときは、出陣の時だね。」

三人はしばらく友の顔を惜しむように眺め、やがて異なる道を歩みだした。決して振り返ることなく。



第十六節


時代錯誤的な復古政治で混乱していた揚州の転換期は、まさにこの日であった。
かつて朝廷の高官であり、現在は職を辞して地方に下っていたKowLoonと会見した雷音は
切々と現状の打破のために力を貸して欲しいと説いたが、
徹底した原則主義者のKowLoonは建前上法を遵守している金の排斥をよしとしなかった。

雷音「…ですから、是非にKowLoon殿のお力が必要なのです。どうか、何卒…」
KowLoon「困りましたな。現状に些かの問題はあれ、金侯は何ら法を犯してはいないのですよ。」
雷音「KowLoon殿、揚州の深刻な飢餓を「些かの問題」とは、お言葉が過ぎましょうぞ!」
KowLoon「…私が心配するのは民草の飢餓よりも、むしろ無法な政変がまかり通ることでござる。」
雷音「KowLoon殿!」
KowLoon「雷音将軍。そもそもあなたは分を弁えられよ。一武官が政治に介入するなど、前例がない!」
雷音「……。何を申しても暖簾に腕押しのようでございますな。御免!」

雷音は席を蹴って退席し、自宅へとって返す。
隠れ麋竺オタは雷音の気が鎮まるのを待ち、次善の策を説いた。

「『江南の二絶』と呼ばれる名文家、渦中の司馬懿とsleepknotをご存知でしょうか。」
「上からの改善が成り立たぬのであれば、下からの改善をなすほかはあるまいかと。」

雷音はこの提言を受け入れると、家人の星英をして秘密裏に二人を呼び寄せ、
大衆の心を巧みに煽動するように文面を凝らした檄文をしたためさせた。
金宰陽自身の行状はおろか、父・金正日、祖父・蕎序に及ぶまでの誹謗中傷を連ねた
この檄文は本来非難されてしかるべきであるが、非常に美しい修辞を用いて書かれていたため
後世では名文とされ、漢文の教科書にも採用されることになるが、それはさておき。
この文章が揚州全土に流布すると、各地の太守はおろか、民衆までもが義勇兵となる
大規模な反乱が勃発した。



第十七節


古今東西、反乱軍は指揮系統が惰弱だという弱点を内包している。
まして豪族の連合体である揚州にあって指揮系統を一本化させることは
中堅の武官である雷音には到底不可能であったため、彼女は、
かつて鬼神と称されながら病を得て昏睡状態にあるムコーニン将軍を旗頭に擁立し
その代理という名目で各地の太守に命令書を発行した。その陣容は以下のとおりである。

【総大将】 車騎将軍のムコーニン
【機密担当軍師】 会稽太守、討逆将軍の雷音
【書記官】 記室参軍の渦中の司馬懿
【書記官】 記室参軍のsleepknot
【金銭糧食担当頭領】 盧陵太守、威虜将軍のはいだらー
【騎兵軍頭領】 豫章太守、破虜将軍の宇喜多直家信者
【歩兵軍頭領】 ?陽太守、宣徳将軍の仙台藩百姓
【水軍頭領】 新都太守、討寇総軍の無双ファン
【騎兵軍将校】 義勇軍のリンリン大友
【歩兵軍将校】 義勇軍のはにわ様
【水軍将校】 義勇軍のアダルト日出夫

序列が定まった後、反乱軍は一斉に丹陽郡へと侵攻する。
攻勢を維持できるか否かは、丹陽を落とせるかどうかに懸かっていた。



第十八節


陣幕にて、反乱軍の諸将による会談が行われていた。

宇喜多直家信者「…ついにこの時が参りましたな。武者震いがいたします。」
仙台藩百姓「ははは。臆病風に吹かれたの間違いではないですかな?」
宇喜多直家信者「何だと!?」

いつものように口論を始める二将。雷音はやめないか、と嗜めた後に口を開く。

「揚州の危急存亡の秋に際しての諸将の義挙、ムコーニン将軍に代わって御礼申し上げます。」
「至らぬ身ではございますが、粉骨砕身努力いたしますので、何卒お力添えをお願いいたします。」

雷音が一礼すると、暖かい拍手が挨拶を締めくくる。陣幕には良い雰囲気が流れていた。

無双ファン「それにしても両先生の檄文には感動したぜ。なんかこう、熱くなってくるんだよな。」
リンリン大友「分かりますよ。私も、仕官を断られた時は諦めて故郷に帰るつもりだったのですが…。」
渦中の司馬懿「なんの。思いのたけを紙にぶつけただけですよ。そうでしょう、sleepknotどの。」
sleepknot「(うほっ、いい男が多いな…)」

はにわ様「そうだ、これからの団結を期して酒盛りと参りますか!」
アダルト日出夫「おお、良いですなぁ!」

この二人の提言に続き、そうだ、そうだという声があがる。
雷音はこれを一蹴すると、その理由を説明した。

「古来、いくさの勝利は、将才をもって天運を引き付けて初めて得られるのです。」
「一瞬の油断は将才のある者のすることではないし、天運にも見放される行為でしょう。」

この諸将はこの言葉に納得すると、おのおのの持ち場に着いた。



第十九節


交州に派遣された八戸ロコ金四郎という男をご存知だろうか。
出自は不明ながら処世術に長け、婚姻を利用して八戸家、ロコ家、金家の戸籍を得た男である。
当人にはさしたる才知はなかったが、日の出の勢いの八戸家、名門ロコ家・金家の家格は
彼にとって大いに有利に働き、今では交州の軍政を統括する侯となっていた。

「ほ~お、揚州の南部が決起、宰陽大人が苦境に立たされている、か。」
「ここは静観して勝ったほうに恩を売るのが賢いが、俺が流れを変えるのも一興だぜ。」
「どのみち俺が宰陽大人につけば反乱軍は挟撃を受けてにっちもさっちもいかなくなる。」
「ハハハハハッ、また出世の神様が俺に微笑んでるのかもしれねえな。」

金四郎は出陣を即断、二万余の軍勢を率いて揚州の南部に向けて出陣。
北上した反乱軍の虚を突き、一気に瓦解させるのが目的である。
一方、反乱軍の陣幕では。

はいだらー「雷音将軍。念のため斥候を放っておいたのですが、厄介な報せが届きましたぞ。」
雷音「厄介な知らせ。というと…?」
はいだらー「交州の八戸ロコ金四郎が、血縁と新党朝への忠義を楯に揚州南部へ進撃中とのこと。」
雷音「…なるほど。それは迂闊でしたね。」
はいだらー「酒盛りをお止めになったことが、不幸中の幸いでした。今ならばまだ間に合います。」
雷音「ええ。一挙に丹陽を落とし、短期決戦で揚州を席巻できなかったのは悔しいけれど…。」
はいだらー「長期戦は必至、ですな。…兵站と財務はお任せを。」

こうして、雷音は諸将に撤退を命令する。反乱軍は烏合の衆とはいえ、この危機に際してよく団結し、
南北に抱える敵の侵入を決して許さなかった。まさに呉越同舟の言葉どおりだろう。
これ以後、金軍と雷音軍は睨みあいを続けたまま、時を過ごすこととなる。



第二十節


漢中の豪族、剥家の当主剥離は仁者として知られ、よく旅人を遇することで知られていた。
ひょーりみは関中への途上でここに立ち寄ると、剥離と歓談して宿舎の提供を受ける。

「気楽でいいねえ。やっぱり旅は一人に限るよ。」

義舎で空腹を満たしながらそんな事を考えていると、一人の書生風の青年が声を掛けた。

青年「いや~、突然すみませんね。話し相手が欲しかったものですから。」
ひょーりみ「いえいえ。どちらからいらしたのですか?」
青年「ああ、僕は先月まで鮑家荘に逗留していたのですが、そろそろお暇して…関中へ向かおうかと。」
ひょーりみ「関中へ! 偶然ですね、僕もこれからそちらの方に。」
青年「あはは、そのようですね。旅のご無事をお祈りしますよ。それでは。」
ひょーりみ「ええ、僕もお祈りしています。ところで、お名前をお聞かせ願えますか?」

青年は、自らを諸葛均と名乗った。ひょーりみも名を名乗ると支度を済ませて
邸を出ようとしたところ、そこで家人に呼び止められる。
どうやら主人剥離がひょーりみに興味を持ち、少し時間を割いて欲しいということであった。
彼はこれを承諾すると、剥離に面会した。

「いや、申し訳がございませんな。慌しいところを引き止めてしまいまして。」
「それにしても…あなたをひと目見た時から、不思議に思っておりましてね。」

そう述べる剥離。ひょーりみが詳細を訪ねると、彼はさらに言葉を続けた。

「このようなことは滅多にないのですが…先日あなたのお話を伺い、五行に照らし合わせて」
「みましたところ…あなたは必ずや大望を果たし、至尊の位に就かれると出ました。」
「いえ、これのみならば良いのです。気がかりなのは、この後のこと。」
「私は些か人相見のわざも心得ているのですが、相を見ます限り、あなたは類稀なる凶相の持ち主です。」
「かならずや本懐を遂げられず、非業の死を遂げることになる…としか読めないのです。」
「いや、不可思議なことです。」