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真・ひいらぎレールジャーナル中部ローカル物語編第1話

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前々回が西、前回が東とだったから今度は真ん中だ!ということで選んだのは日本アルプスを眺められるローカル線。その乗車レポートをお伝えします。



始まりの駅は共用ホーム


▲豊橋~飯田を結ぶ特急「伊那路」

豊橋市は愛知県で名古屋市に次ぐ人口を誇り、三河地方の中心都市として栄えています。

その玄関である豊橋駅は東海道新幹線も停車し、在来線は8番線まであり、さらに地元ローカル鉄道である豊橋鉄道への乗り換えもできるターミナル駅です。


この豊橋を起点とし、奥三河や長野県伊那地方へ結ぶ路線が飯田線です。


いわゆるローカル線ですが、その長さは実に195.7km
地方交通線としては北海道の宗谷本線が最長ですが「本線」でない、本物のローカル線として日本一の路線です。



その飯田線は普通が駅北側にあたる1・2番線から、
特急は4番線から発車します。


ちなみにこの写真の左側の電車はJRの車両ではありません。
名古屋鉄道(名鉄)の電車です。


ご存じない方に解説すると・・・

▲豊橋駅構内は共同というより間借りと言った方が正しい

3番線は名鉄線用のホームとして使われています。

それと言うのも飯田線と名鉄名古屋本線は豊橋~平井信号場の3.9kmに渡って線路を共有しているのです。

そのためこうやってJRと名鉄の車両が顔を合わせています。


駅のコンコースではこんな会場がセッティングされている真っ最中。

119系という電車はこの飯田線専用車両として30年間走り続けていた電車でしたが3月17日のダイヤ改正でついに引退。
その引退イベントをやるのがこの日だったのでした。


この写真は去年(2011年)に撮影。
この時まさか、こんな短期間で全廃になるとは思ってもみませんでした・・・・

飯田線全線走破列車に乗り込む



▲名鉄の特急が到着し、飯田線の特急が発車。隣の東海道線にも列車が発着し結構忙しいです。

今回はこの119系引退イベントを見に来たわけではなく、この飯田線を走るある列車に乗りに来ました。


それは豊橋を10時42分に発車する、列車番号519M列車です。


▲風の音に注意!

ターゲットの列車が入ってきました。


今回の列車旅のお供である、213系電車です。

顔は東京の東海道線や高崎線、名古屋や静岡でも走ってる211系と同じ顔をしてますが、片側2ドアで車内が転換クロスシートになっているのが大きな違いですね。

さて、213系を用いた519Mの最大のトピックが行き先です。


この列車は上諏訪行き

こういうのに慣れてないとピンと来ないかもしれませんが、
この列車飯田線を全線走破したうえに中央本線に乗り入れて長野県の諏訪市にある上諏訪まで足を延ばしてしまう列車なのです。

飯田線全線を走破する列車は全部で1日3往復しかないのでレアなのです。

▲業務用の荷物スペースが設けられてたので一番前にはあまりつけそうになかったです。


と言ってもスケールの大きいのか小さいのかよくわからない話。
順を追って話していきましょう。


街中の路線から奥三河の山の中へ



豊橋10:42発

豊橋を定刻通り出発した上諏訪行き普通列車。
小坂井までその進行方向右側の様子を撮ってみました。

なお最初の2駅、船町と下地は通過です。

1.船町通過
2.下地通過


豊川水系を越えると名鉄と別れ最初の停車駅小坂井に到着。

3.小坂井10:47着
4.牛久保10:50着

ローカル線とは言っても、豊川までは比較的需要の多い区間で本数も多く、複線となっています。
スピードもこの区間で一番飛ばせます。

5.豊川10:54着




豊川を過ぎると単線になりちょっとローカル線らしくなりますがそれでもまだ街中の平坦を通ってるって感じですね。

6.三河一宮10:59着
7.長山11:03着
8.江島11:06着
9.東上11:09着



▲野田城駅で列車交換待ち

ただ、やはり走れば走るほど民家が少なくなってきます。

10.野田城11:13着
11.新城11:18着


新城を過ぎたあたりから徐々に山の中に入って行く感じです。

12.東新町11:22着
13.茶臼山11:24着
14.三河東郷11:27着

それにしてもまたしても雨です。
ホントついてないです。
自分が雨男なんじゃないかと思えてきました・・・

15.大海11:32着
16.鳥居11:37着
17.長篠城11:40着




列車は本長篠駅に到着。
豊橋からここで折り返す列車もある駅です。


そしてやっぱり雨です。

18.本長篠11:43着

ここで反対列車が来るまで15分の停車です。




時間的にもお昼が近いので豊橋駅で買ったお弁当を食べます。

選んだのは「春の稲荷寿司弁当」

豊川稲荷が近いせいでしょうか、稲荷ずし関係が充実してました。
普通の稲荷ずしのほか、レンコンやウナギの乗ったのもあって豪勢でした。


宇連川沿いから天竜川沿いへ


本長篠11:59発

長い停車を終え、上諏訪行き列車はようやく発車。

この先、左手に鳳来寺山をのぞみながら宇連川沿いを北上してゆきます。
この辺りは奥三河屈指の温泉地帯です。


19.三河大野12:03着
20.湯谷温泉12:07着
21.三河槙原12:11着
22.柿平12:17着
23.三河川合12:20着
24.池場12:27着
25.東栄12:29着

東栄を過ぎると、次の出馬(いずんま)から静岡県内に入ります

26.出馬12:35着
27.上市場12:36着
28.浦川12:39着
29.早瀬12:41着
30.下川合12:44着
31.中部天竜12:48着

中部天竜はかつて佐久間レールパークがあったところでした。
ここには数々の車両が展示されていましたが、それらは現在名古屋にあるJR東海のリニア鉄道館に移されました。


って、住所調べると飯田線の静岡県内の駅は全部浜松市天竜区になってました。

今や高山市に次いで日本2位の面積を誇る浜松市。
その勢力はこんなところまで及んでいたのですね。
浜松駅周辺とはイメージがすごい違う山の中です。

ちなみにここら辺はノーフォトです。
雨で撮れなかったんです、すみません。



次の佐久間から大嵐(おおぞれ)までの区間は川からそれたところを走っています。


元々はもっと川沿いを走っていたのですが、1955年に佐久間ダム建設に際しこの区間を廃止し、現在のルートに切り替えられました。

当時の路線は今ダムの底に眠っています。

32.佐久間12:52着
33.相月12:57
34.城西13:00着
35.向市場13:04着
36.水窪13:07着
37.大嵐13:14着






そして県境となる小和田駅。
全国秘境駅ランキング2位、ザ・ベストハウス123「一度は降りてみたい美しい秘境駅」では堂々の1位に輝いた秘境駅なのにノーフォトです。

38.小和田13:19着

この駅の近くに愛知・静岡・長野の3県の境となる点が存在します。


ちなみにここら辺はトンネルが多いせいもあるのですが秘境と言うくらいあって、電波が全く入りませんでした。
GPSなどをこのあたりで使う場合は使えないことが多いので注意する必要があります。


小和田を出て長野県に入りようやく撮った車窓。

天竜川ですけど結構濁流で勢いあります。
中井侍駅(なかいさむらい)のあたりでようやく雨もおさまってきました。

39.中井侍13:24着


さらに次の伊那小沢では反対列車待ちのために少々停車。
崖沿いに咲いているこの景色が気に入って今回の表紙にも選んでいます。

40.伊那小沢13:28着

伊那小沢を出るとまたトンネルに入って出て駅に停まってトンネルに入って・・・・という状況が繰り返されます。

トンネルの外に出ればそれなりに良い景色がのぞめますが、短時間ではカメラを向けている暇もないですね。

41.鶯巣13:34着
42.平岡13:37着
43.為栗13:44着
44.温田13:50着
45.田本13:53着
46.門島13:58着
47.唐笠14:03着
48.金野14:07着

金野を出てようやくトンネルだらけの景色とおさらば。

森の中を走り千代に停車

49.千代14:10着


そして列車は天竜峡に到着

50.天竜峡14:13着

ここまでで50駅目に到達、所要時間も3時間31分。

ちょうど折り返し地点に来たということですね。

飯田線を作った4つの私鉄



「おいでませ」
「こんにちわ」

天竜峡駅のホームに小舟に乗りながら待ちかまえていた、通称場違いな美男美女

駅近くにはライン下りのスタート地点があり、それをPRするためのマスコットです。

天竜峡駅の停車時間は2分ながらこの二人を撮りたいがために結構多くの乗客が降りてシャッターを切っていました。

さりげなく後ろに伊勢志摩の観光ポスターがあるのがシュールですね。


上諏訪行き列車は再び走り出します。
旅もいよいよ後半に入って行きますよ。


▲まだ天気はどんより

51.川路14:17
52.時又14:20着
53.駄科14:23着
54.毛賀14:26着
55.伊那八幡14:28着
56.下山村14:31着
57.鼎14:34着
58.切石14:37着


列車は飯田線の名前にもなっている飯田駅に到着。
ここで10分と長めに停車します。

59.飯田14:41着

豊橋からここまで129.3kmの距離を走ってきましたが、この間に60もの駅があるとは相当駅間距離が短い印象があります。

この飯田線は4つの私鉄が戦争中の1943年に国有化されたことで出来ました。

それまでは各私鉄会社の路線だったのです。


明治30年(1897年)、豊川鉄道によって吉田(現・豊橋)~豊川が開業したことがことの始まり。
豊川鉄道は順次路線を拡大し1900年には長篠(現・大海)まで延伸され、東三河の地域をつなぐ路線が完成しました。

1925年には今の名古屋鉄道の前身の一つ、愛知電気鉄道が豊橋に乗り入れを開始。
豊川にかける橋梁の建設費をケチるため、豊川鉄道と線路を共有することにしました。
さらに翌年には小坂井支線(現・廃止)によって愛知電気鉄道は豊川にも乗り入れを開始。
これによる本数の増加から豊橋~豊川は複線化されています。

そしてそれらの名残が今のJR・名鉄の共用区間と豊橋~豊川の複線と言うことです。


時を2年ほどさかのぼって1923年、鳳来寺鉄道と言う会社が長篠からさらに線路を北へ伸ばし、今の大海~三河川合が開業しました。
この鳳来寺鉄道は豊川鉄道の子会社でしたが、1943年に国鉄に路線を明け渡した際は、豊川鉄道共々名古屋鉄道に吸収されています。


ところ変わって1909年に伊那地方。

辰野から松島(現・伊那松島)の間にfont(#ff0000){伊那電気軌道}が軌道線(いわゆる路面電車)を開業させます。
伊那地方の町々を結ぶためこちらも順次路線を延長。
1919年には社名を伊那電気鉄道と改称し、1923年には飯田まで、1927年には天竜峡まで到達80kmを超える路線となりました。


そして最後に開業したのが残る三河川合~天竜峡の区間。
この区間は三信鉄道によってまず天竜峡~門島が1932年に開業。
これは主に天竜川を利用して水力発電をする計画の一環で資材や人材の運搬のために建設されました。
同時に三河川合からの工事も進められて1933年に三輪村(現・東栄)まで開通。
測量はアイヌ人、工事は主に朝鮮半島からの人材が行っていましたが天竜川沿いの断崖絶壁での工事は危険で犠牲者も多く出て、資金繰りも悪く遅々として進まなかったのですが1937年についに全通。

これが今の飯田線全てが貫かれた瞬間でもありました。


1943年に国有化された際は主に豊川の海軍工廠への物資運搬に利用されました。
戦争が終わり海軍工廠がなくなるとその跡地は国鉄名古屋工場豊川分工場となり、さらには日本車輌豊川製作所と変化し今に至っています。


夕方の伊那谷を列車は行く



飯田14:51発


飯田を出発するとだんだん雲が高くなっていることに気づきました。


というかもうかなり良い天気になってきましたね。
どうも今回はそこまで見放されてなかったようです。

60.桜町14:53
61.伊那上郷14:56着
62.元善光寺15:00着
63.下市田15:03着
64.市田15:06着
65.下平15:10着
66.山吹15:12着
67.伊那大島15:18着

▲伊那大島駅。待合室の後ろがすぐガケ

68.上片桐15:29着
69.伊那田島15:32着


天気も良くなってきたので伊那田島から撮影開始。
今回列車を全然乗り換えないのでこういう車窓動画が必然的に増えていってます。

最初のGOKOとまと村ってなんじゃろな~?

伊那田島と高遠原の間には大沢信号場という交換設備があり、ここで反対列車を待ち合わせてから発車。伊那田島・高遠原とも1面1線で交換できないのでこんなことになってます。


70.高遠原15:42着

そう言えば高遠原って
この娘の中学校がここらしいですね

※今季、咲が放映されるのを知ったのはこの乗り鉄のずっと後であって、咲がやるから飯田線乗りに来たわけじゃないんだからねっ
あしからずあしからず・・・・



▲南アルプスを眺めながら・・・

71.七久保15:45着
72.伊那本郷15:50着
73.飯島15:55着
74.田切16:00着
75.伊那福岡16:05着

▲伊那福岡駅の出入り口

伊那福岡16:16発
76.小町屋16:18着


列車は駒ヶ根に到着。
ここも伊那地方の主要都市で、かつては新宿から駒ヶ根まで走る急行「こまがね」がありました。

辰野方面からはこの駒ヶ根止まりの列車も多くあり、いよいよ終盤近くなってきた気がします。

77.駒ヶ根16:20着

▲ホームにあった七石・・・別に七つ集めると願いを叶えてくれる龍が現れたりはしないようです。


JR最急勾配40‰を下ってついに辰野へ



既に夕方4時を過ぎちょっと日も傾いてきました。

78.大田切16:24着
79.宮田16:27着
80.赤木16:30着

赤木駅から次の沢渡(さわんど)駅までの間には40‰の下り坂があります。
この勾配はかつてJR最急勾配であった信越本線の横川~軽井沢(通称:横軽)の66.7‰が廃止された現在、JRでの最急勾配となります。


箱根登山鉄道の80‰の半分ですけど、結構目に見てわかる急坂です。
ってまた降ってきましたね・・・・


81.沢渡16:34着


82.下島16:39着
83.伊那市16:44着
84.伊那北16:46着

急勾配を抜けた後は伊那市や上伊那郡の街中を走りぬけてゆくだけです。
かつて路面電車だっただけに勾配や曲線も今までほどきつくなくなってます。

85.田畑16:50着
86.北殿16:53着
87.木ノ下16:56着
88.伊那松島16:59着
89.沢17:06着
90.羽場17:09着
91.伊那新町17:12着
92.宮木17:15着


そしてついに飯田線の終点である辰野に到着。

93.辰野17:18着

ここまで豊橋から6時間36分かけ、2駅通過91の駅に停車したことになります。

が、しかし。


列車旅は終着駅まで終わらない


この列車は上諏訪行き

そう、辰野に到着してもまた続きがあるのです。


というか飯田線の列車で辰野どまりと言うのはほぼ皆無で必ず岡谷までは一体系で運転されています。


辰野駅の所属路線は中央本線になっており、管轄もJR東日本。
駅名票の帯もオレンジから緑色に変わり、乗務員もJR東日本の人に変わります。


飯田線内は下り列車でしたが、中央本線に入ると新宿・東京方面へ向かうため上り列車の扱いになります。

94.川岸17:26着


中央本線に入ったとたん、今までの駅間の短さとうってかわって駅間も長くなっており列車の性格がガラリと変わります。


ちなみに岡谷~塩尻が現在のみどり湖経由になっていらい、この区間は旧線と呼ばれています。

岡谷で新線と合流、中央東線に入ります。

95.岡谷17:30着

岡谷からさらに中央線を進み、下諏訪、そして終点上諏訪の順に停車します。

96.下諏訪17:35着


下諏訪から上諏訪までは右側にかすかに諏訪湖が見えますね。



ついに終点の上諏訪に到着。
7時間に渡る普通列車の旅もついに終わりを迎えました。

97.上諏訪17:40着


ホームの様子です。
愛知に比べてこちらはまだ寒かったです。



乗ってきた列車は折り返し、飯田線直通の駒ヶ根行きに。
7時間走ってきたばっかりだというのに働き者です。


今まで乗ってきたこの213系5000番台。
飯田線に来るまでは非常に不安定な人生を送っていました。

当初は関西線での車両グレードアップを狙い、ライバル近鉄からの乗客奪取に成功した電車。
しかし増えた乗客を2ドア転換クロスシートではさばききれなくなってラッシュ時にはお荷物に。
中央線や東海道線で朝の増結用として使われたり中央線の中津川~南木曽の短距離区間で細々と使われたりと窓際に追いやられた運用ばかりでした。

飯田線への転属は213系にとって久々に前線で活躍するチャンスを与えられたわけで今こうして存分に能力を活かした運用についています。

この電車にとって飯田線が最後の安住の地になって欲しいですね。


第1話終わり



  • 213系・・・。マリンライナー運用をお忘れですか? -- 名無しさん (2012-08-21 07:39:17)
おなまえ:
ひとことあればどうぞ:
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