ホロコーストのパロディ

Motion1: This house regrets the popularity of films that parody the Holocaust
訳:ホロコーストのパロディ映画の人気(支持)を悔みます
○前提知識
 ・ホロコーストって?
  第二次世界大戦中に起きた、ドイツのナチス政権によるユダヤ人を中心とした差別的な大量虐殺を指します。

殺害された人数は、一般的な認知として、600万人とされています。これは当時の“ヨーロッパ”におけるユダヤ人の実に2/3に当たります。ユダヤ人以外では、ジプシーであるロマ族、障害者、同性愛者、エホバの証人(宗教)の信者や、共産主義、社会主義者、反体制者も対象とされました。

※ホロコーストの根拠は、有能な種(アーリア人)によって、迫害された人々は支配されるべきという思想です。権利制限、強制移住、収容所への収容、虐殺という流れでエスカレートしていきました。

※ちなみにHolocaustは、冠詞theが抜けると広義解釈で、「虐殺」の通用語になります。また、この名は、もともとGenocideが一般的だったところに、米NBCのドラマ「ホロコースト」の社会現象化が発端となって普及しました。
※1-3 当時のドイツはThird Reich(第三帝国)と呼ばれています。もとは、史上2つのドイツでの大帝国に並ぶほどの帝国だという、ナチス・ドイツ喧伝用の文句でした。

 ・世界での認識
  1-1ホロコーストは世界各国で、その虚偽を主張することが禁じられています。(イスラエルはもちろん、ドイツにもあります)。というのは、ホロコーストに関しては、その証拠などが不十分であることなどから、ホロコーストの一部、あるいは大部分が虚偽の内容であるという文書・発言があるためです。1-4 当然論者は、表現の自由を根拠に撤廃を主張していますが、自由は、他者の権利を害しない上で成立するもの、と訴えは棄却され続けています。

 ※こういった主張はホロコースト否定論というのですが、論者の中には、ユダヤ人が自らに同情をひき、民族への蔑視を避けたり、イスラエル建国・居住の正当性を高めたりするための策謀だという立場をとっているものもあります。

 ・放送倫理、映画倫理
  日本における放送倫理・映画倫理に関しては、修正を勧告するための組織が存在しています。放送ならば、放送倫理・番組向上機構(BPO)、映画ならば映画倫理委員会(映倫)です。映倫は15歳未満視聴禁止(R-15)とかそういったのを決めてるところです。1-5 ただ、最近その審査基準が、(特に外国の)映画表現の現状に対応できていないことを示す案件がいくつかあり、現在、見直しが図られています。

※これらは、放送される内容をチェックし、問題のある表現などについて修正を要請する機関ですが、前者は事後勧告で、これはこれで問題があるのですが…今回関係あるのは後者ですね。

※問題となった案件は、ストーリーとはほとんど関係ない場面の暴力表現で、R-15指定をくらってしまった映画や、内容に関するチェックしたかないために、画面の明滅による意識障害(通称ポケモンショック)を引き起こしてしまった映画など。


○方向性
 ・組立
 さて、議論はホロコーストの真偽ではありません。上のはあくまで予備知識です。議論の中心、方向性は、(ホロコーストに関して)「パロディは是か非か」ということです。恐らく視聴か、制作かに規制もするんでしょうね。しないと、実質現状維持。反対側の不戦勝です。肯定側にとって一番やり易いのは被害者感情でしょう。自分たちが死ぬ目を見た現実を茶化されて、いい気分はしません。否定側にとっての武器は、後世に惨状を認知させる重要性や、パロディは笑いの持つとっつきやすさで、認知を促す入口になるというところですか。

肯定側はまず必要性を訴えなければいけません。ホロコーストに関する配慮が十分行われていない、と。悲しきかな、そういった資料は見つかりませんでした。ただ、やはりこういった苦境を認知させる目的を持った映像は、だいたい被害者や、関係者からクレームが来ます。「そんなものじゃなかった。ちゃんと描け」って。
そこで、パロディは被害者感情を無視している、パロディが生んだ偏見は第二の悲劇を生むといった方向で組み立てる線が有力でしょう。

 ・歪曲のもたらす影響
  映像や放送の欠陥は、描くことより、描かないこと、描けないことにあります。戦争映画でなくても、障害者のサクセスストーリーなどは、辛い部分、マイナスイメージなどを意図的に制限して編集してあるので、当事者からは「偏見・誤解につながる」という意見がでることもしばしばです。肯定側は、ここを掘り下げていきましょう。

 ※1-5原爆被害者のドキュメンタリーで、「味わった人間にしかわからない」という発言がありました。(ソース失念です、確かNHKのドキュメンタリー) 僕が個人的に知能障害者を描いたドラマにいい印象を持ってるんですが、やっぱりやる度に当事者の家族の方からクレームがくるみたいですね。


 ・偏見
  で、具体的には偏見が生む恐ろしい事例をあげていくことが一番でしょうね。で、パロディが偏見を生むんだというイメージを作り上げましょう。「映像が偏見を生む」って印象にするとうまくないので、パロディってのが面白いが第一使命の俗悪なものだってイメージは作らなきゃいけません。

2-2. せっかくホロコーストの話題なので、ホロコーストの事例を使います。ユダヤ人は絶対に信じるなという小学生向けの漫画教本を、18歳の女学生が書いたというエピソード。漫画という易しい媒体で偏見を形作っている好例です。パロディは笑いを餌に、偏見を作るものだと説明することになりますか。

2-3. ユダヤ人の収容所移送に関して、理由・目的を問うことなく従う、独裁政治下でのエピソード。ユダヤ人蔑視は段階的に、じわりじわりと広まり、段々と皆が疑いや呵責をなくしていきます。1-6 ミルグラム(アイヒマン)実験などが具体例ですが、恐怖や風潮に流されて、取り返しのつかない事例に至るというのは説得性があります。ただし、パロディから恐怖で縛る要素が生まれるということは怪しいので、現代にあてはめるには、いじめのエスカレートや、そこから発展した犯罪・自殺などを挙げる方がよいかもしれません。

 ・否定側は…
まずは、表現の自由ですね。これは言っておく。じゃあ、なぜパロディを残さなきゃいけないのかってところになります。難しいですが、パロディの方が真面目なやつよりすごいってことを言えたらよいのです。

まず、面白いってことはそれだけ多くの人が見てくれるってことです。多くの人に認知させられます。情報が間違ってる、偏ってるという指摘は、ドキュメンタリーにもそういう要素はあるということを挙げた上で、次のように展開しましょう。

寧ろ中途半端に、それでいて真面目なドキュメンタリーなどは、「可哀そうな人もいるんだね」という同情や感傷をもたらしこそすれ、「この事件とはもう向き合った」という感覚を持つ人々を量産するだけです。
もともとが、この平和な現代では理解しがたい凄惨な事件です。むしろ情報が不十分であるとか、内容が不可解であった方が、記憶に残って、「まだ何も知らないからもっと知りたい」といった意欲を残してくれるのではないでしょうか?

 ちょっと苦しいですが、やっぱり退屈なものは心に残りませんし、負の遺産というのは誰もが目をそむけたがるものです。本当に多くの人に伝える気があるなら、向き合いやすいようなアレンジというのは、必要であるとは言えると思います。

パロディはあくまで入口。表現の自由を規制せずに、真面目な資料や伝承と、入り口としてのパロディの両輪でいけばいい。本当に問題が全世界、未来の世代に伝わっていくなら、被害者としては忘れられるよりはずっと良い結果のはずといったところですか。

○展望
 全部言えたことが前提で話します。被害者感情と表現の自由、パロディが(あるいは“だけ”が)事実をゆがめるか否かが争点になるでしょう。この内容でディベートすると基本双方に確たる証拠はないです。ゴチャります(泣)

○資料
 1.Wikipedia(アドレス貼ると長くなるので、キーワードで検索してください。)
  -1.ホロコースト
  -2.ニュルンベルク法(ユダヤ人の人権を制限する法律)
  -3.第三帝国
  -4.ホロコースト否認
  -5.バベル(映画。映倫の問題と、聴覚障害者の意見)
 -6.ミルグラム実験

2.NPO  ホロコースト教育資料センター  コラム
 evidenceというレベルのものではないですが。

 その他:
☆ 米国国立ホロコースト記念博物館 資料ページ http://www.ushmm.org/wlc/en/
  おそらく一番体系的にまとめてあります。あんま読んでませんが(爆)
  1枚だけの日本人向けページはこちら。 http://www.ushmm.org/wlc/ja/

☆ホロコースト記念館 解説ページ http://www.urban.ne.jp/home/hecjpn/what.html
  やさしいホロコースト史。読んで字のごとく。日本の資料館のページです。

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最終更新:2009年10月01日 05:08
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