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何気ないこと(3)

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何気ないこと(3)こなた視点



 いつもの帰り道。寄り道して、クレープ屋でいつものクレープを食べる。
 私はチョコバナナクレープ。チョコとバナナと生クリームがたっぷりでおいしいはずなんだけど、今日はどうしてだろう。あんまりおいしく感じない。まぁまだ一口も食べてないんだけどネ。
「ねぇ、こなちゃん。具合悪いの?」
つかさが不安そうな表情でこっちを見てる。
「そんなことないよー!」
「でも、一口も食べてないよねぇ?」
む、つかさの癖に追い討ちを掛けてくるとは・・・。やるな、お主。
 確かに、私は買ったクレープにまだ一口もつけてなかった。具合が悪いわけでも、お腹が空いてないからでもないんだけどさ。
「ちょっと考え事してたんだヨ。アニメの録画がずれてないかとかさ」
適当なことをいっていると思う。今日は、アニメなんて深夜アニメだけでこの時間にやっているものはないんだから。
 なんかだかなーこのモヤモヤした感じは。思うにそれが私を物思いにふけらせている気がするヨ。
「泉さん、本当に大丈夫ですか?」
片方の頬に手をあてて、心配そうに私を見つめているみゆきさん。いやーいつもながら、萌える仕草ダネ。
「だから大丈夫だってば、二人ともどうしたの?」
私はいつものように明るく切り返した。
「いえ、大丈夫なら良いのですが・・・」
元気な姿を見せてもちょっと心配そうな顔のままなみゆきさん。私って今日、そんなに変カナ?
「はぅぅ、こなちゃーん、ゆきちゃーん、クレープが」
バサバサという音が聞こえたと思ったら、つかさが涙声を上げていた。見ればカラスが器用にも、つかさからクレープを奪っていっていた。つかさの頼んだ、ミックスフルーツクレープは、よくカラスが持っていくんだよね。なんでかわからないけどさ。
「つかさ、これあげるヨ。私、今日なんか食欲ないからさ」
そう言ってから、つかさに自分のクレープを渡す。
「ほんとに?ありがとう、こなちゃん」
つかさが笑顔に戻った。なんだかほっとした気がする。でもいつもならこの役回りは私じゃないんだけど・・・。
 しばらく、もくもくとクレープを食べる二人を凝視にならないように見つめていた。みゆきさんは、イメージ通り上品な食べ方ダネ。つかさも、ほっぺたにチョコレートと生クリームが少しついてるところがなんだか、つかさっぽいなぁ。
 今、つかさとみゆきさんは、バルサミコ酢をつかったパフェについて検討中だ。といっても、つかさが少し目をきらきらさせながらしゃべっているのを、微笑を湛えたみゆきさんが相槌を打っているだけなんだけど。
 なんだか、今日は物足りないなぁ。こう、なんていうか・・・んー。なんでかな?すごくモヤモヤして物足りない。二人にあって、私に無いもの。
 クレープじゃないことは確かだね。つかさがおいしそうに食べてるのをみてるとあげたことが良かったことにしか見えないし。
「今日、おねえちゃん。どうしたんだろうね。お昼はちょっと変だったけど、調子が悪そうには見えなかったんだけどなぁ」
つかさがふと思い出したようにいう。
 そうか、かがみがいないんだ。だから物足りなくて、もやもやして。私は二人に心配をかけてしまうような元気のない表情をしちゃってるのかもしれない。
「かがみがいたら、カラスも恐れをなして寄ってはこないだろうにねぇ」
私がそう言っても、あの怒っているように見えて、その実、うれしそうで寂しそうな吊り目の友人からの突っ込みはない。
「あはは、こなちゃん。それはひどいよー」
つかさが笑いながら言う。実際、かがみがいてもカラスは来ただろうけどネ。でも何かを期待していってしまう。
 何も気兼ねしなくていい存在に甘えてつい、少しきついことを言ってしまう。
 かがみが相手なら絶対大丈夫。そんな根拠のない核心を勝手に作って。

 もしかしたら、お昼に言った事はかがみを傷つけてしまったのだろうか。それで、かがみが一人で帰ってしまったとしていたら、どうなってしまうんだろう。
 なんだか言いようのない不安が競りあがってくる気がした。
 それを紛らわすために、みゆきさんに抱きついて、ちょっとかがみに言わせればセクハラ発言をして場を盛り上げた。
 二人は笑ってくれるし、受け止めてくれる。でも・・・なんか物足りない。モヤモヤしたままだった。
 帰りの電車も、座れなかったから私はみゆきさんに抱きついたり、つかさに寄りかかったりいろいろ悪戯してみたけど、もやもやは晴れることは無かった。

「ただいまー」
って言っても、今日は返事は無いんだっけ。お父さんは、締め切り間近の所為でホテルに担当の人と缶詰だし、ゆーちゃんは風邪をこじらせて部屋で寝てるはずだし。
 私は電話の受話器をとって、元に戻した。電話をすれば長くなるかもしれないから、その前にゆーちゃんの様子を見に行かなくちゃ。
 そっと、ゆーちゃんの部屋のドアをあけて中をみると、ぐっすりと眠っていた。机の上には小さめの土鍋が空になっておかれていた。
 もしかしたら、ゆい姉さんきたのかな?いくら、ゆーちゃんが心配とはいえ、仕事中なのに世話をしにきて大丈夫なのかねぇ。
 でも、モヤモヤで頭がいっぱいで、ゆーちゃんのことを忘れて寄り道していた私が言えた義理じゃないよね。部屋に入って土鍋を確認するとまだ中は乾いてなかった。それに薬を飲んでぐっすり眠っているこの様子だと、ゆーちゃんの晩御飯は終わりと考えても問題ないかな。
 そのあとのことはゆーちゃんが起きてから考えよう。
 私は子機を取りにいくのももどかしくて、携帯で、かがみの家に電話をかけた。携帯にかけなかった理由は自分でも良くわからなかった。
 何コール目かわからないけど、しばらくして出たのはつかさだった。
「もしもし、柊ですが」
なんだかそういう事務な答え方をするつかさが珍しく感じる。つかさにいうと、こなちゃんのくせにーといわれそうだけどネ。
「あ、つかさ。さっきぶりー」
「あー、こなちゃん、さっきぶり~」
事務的な声がいつものつかさに戻った。それだけで少しほっとする。でも、モヤモヤはとれない。こびりついたシミのように取れない。
「ねぇ、つかさ。かがみ、今いるかな?ちょっと話したいことがあるんだけど」
何を話したいのか、明確にはわからなかった。ただ、そう、このモヤモヤして物足りない感じはかがみの声をきけば消える。そんな気がしていた。
「ごめんね、こなちゃん。お姉ちゃんもう寝ちゃったみたいなの」
体調が悪かったからかな。それとも寝た振りで私を避けているのかな。よくわからないけど前者は心配で、後者は突拍子もない不安だった。
「そっかー。じゃぁさ、かがみが起きたら電話してもらえるように言ってもらえるカナ?」
「うん、わかったよー、こなちゃん」
「じゃぁ、また明日ね」
「うん、また明日~」
電話を切って机に放り出して、私はベッドに転がった。
 なんかすごく物足りない。すごくモヤモヤする。
 私は考える。かがみのことを。
 明日は、話せるかな?少しふざけるのやめたほうがいいかな?
 でもかがみには、素直には無理だけど甘えられるんだよね。くっついたり、だきついたり。それで顔真っ赤にして怒らせちゃうこともあるけど、かがみがいれば、こんなモヤモヤも不安も。
 明日謝ろう。きっと昼休みに反応が冷めていたのは私の所為。多分、傷つけちゃうことを言ったんだと思う。だから謝ろう、できるだけ素直に。

 が、しかし。柊かがみが、私達三人を避け始めたのは、この次の日からだった。

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