繰返す私達の恋愛感情 (前編)

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 何かがおかしい。


「ちょっとこなた」「消しゴム取ってって言うんでしょ?」
遮るように言うこなたに、かがみは不思議そうな顔をした。
「よく分かるわね」
「そりゃあね」
 いつもの平和な教室の休憩時間、いつもの四人組で机を囲んでいる。今はた
またま、つかさが授業で分からなかった所を姉に質問し、かがみはツンデレツ
ンデレしながらも、妹にその答えを教えているところだった。
「ねえねえ、かがみん、つかさ」
 いつもはそういう勉強風の空気の時には、まぜっかえすような事しか言わな
いこなたが、そらみたことかと食いついてきたので、かがみは邪険に言った。
「なによ、こなた」
「それの答えは、x=6だよ」
「あんた授業聞いてたの!?」
珍しいこともあるものだ、とかがみは思ったが、そういう変な日もあるかも、
だってアメリカ西海岸に魚が降るような事件が起こったこともあるんだし、と
自分を納得させた。
「うーん」
 しかし、答えをずばっと言った筈のこなたの方が難しい顔をして、問題が解
決したつかさの方が安心して子犬みたいな顔になっている。まあ、大体いつも
子犬みたいな顔してるけど、姉妹なのに、なんか微妙に似てないのよね、とも
かがみは思う。それはともかく、問題はこなただ。
 なんかさっきから、こなたは変じゃないだろうか?
 そう思ったので素直に言うことにした。まあ、こなたはある意味いつでも少
し変ではあるけれど。

「「こなた、あんた何か変よ」」
 声が重なる。
 完璧なタイミングで、こなたがかがみの声に合わせて同じ台詞を発したのだ。
全くずれることなく完全に重なっている。
「「なに?!おちょくってんの!?」」
 それに対する抗議の声さえ、完全に被る。この番組は、ステレオ放送でお送
りしております。
「うーむ、かがみん、これはなかなか大変だ」
「何が大変なのよ」


「私、今日を過ごすの、三回目だ」

 とこなたは、いつもと同じような何を考えているかわかりづらい、
(≡з≡)みたいな顔で言うのだった。


「三回目~~?何言ってのこなた、とうとう本気で現実とゲームの区別がつか
なくなっちゃった訳?」
「違うのだよかがみん~、確かにオタクはギャルゲーなんかでループに対する
耐性はバリバリ高いから、プラグマカティギュレーション(うろ覚え)な訳だ
けど、これはマジなんだよー、かがみの下着の色まで分かるのだよ」
「なんで同じ日を三回繰返したからって私の下着が分かる!?」
「真っ赤になっちゃって、かがみん可愛い~、青と白のストライプ」
「殴るぞ!」
 なんとはなしにスカートを抑えるかがみを見ながら、つかさとみゆきは視線
を合わせてしまうのだった。みゆき、ここまで全く台詞なし、違う、みゆきさ
んは要らない子なんかじゃないんだ・・・・。
「まあ、仮に同じ日を三回繰返してたと信じるとしても・・・」
「お、下着の色があたったから信じた」
「そういえばおねえちゃん、朝、確かに・・・」
「なんでつかさが知ってる!?」
「あらあら、つかささんとかがみさんは、仲の良い姉妹なんですね」
「え!?このタイミングでなんでその台詞!?」
 このあと、ちょっと全然関係ない方向に話が逸れて紛糾しましたが割愛しま
す。何故かツンデレのキャラクターにはストライプの・・・下世話な話ですが
、縞模様の下着のイメージが作者の中で定着しつつあります、おたく産業の影
響力怖ぇー!
「ともかく、こなたが同じ日を繰り返しても、私達には関係なくない!?」
「えー、冷たいよかがみーん、それに、かがみんが認識できないだけで、かが
みたちも同じ日を繰返してるのかも知れないじゃん」
「ふむ、それはそうだな、反論できん」
「なんだか、哲学みたいだねー」
 つかさがほわほわ、と言うのを、みゆきさんが微笑みながら受けて言う。
「そうですねぇ、同じ日を繰返しても、記憶がリセットされれば論理上は認識
できない訳ですから、いついかなる時でも、その可能性は否定できませんけど
      • 逆にいえば、記憶がリセットされるなら何の問題もないのかも知れませ
んね」
「いや、そっちの方向の話に踏み込んでいくのはやめようよ。みゆき」
 ふふん、と何故かこなたが格好をつけた。自分を指差し、自信ありげに言う。
「問題なのは記憶がリセットされない私がいる事なのだよ、かがみん」
 なぜそこで自信にあふれる?
「なんとなくだが、まずお前がその繰返された二日でどんな悪行をしたのか確
認したいのだが」
「ノンノン、過去を振り返っちゃ駄目だよ、かがみん」
 こいつ、既に話せないレベルで色々やってやがる・・・!
 末恐ろしい事になりそうなので、早くこいつをループから出すべきだ、とか
がみは決意を新たにしたのだった。
「大体、まあ、あんたの言い分を信じるとして、何かきっかけみたいなものは
ないわけ?」
 半分は、新たな話のネタ、遊びだと思ってかがみは言う。こういう遊びに付
き合うのがかがみの良いところ。声を合わせたのは、一緒にいる時間が長いか
ら反応を先読みできただけかも知れないし、下着は・・・見られる可能性は0
ではない。しかし一方で、本当にループしているという夢あふれるSFにも魅力
を感じずにはいられないかがみなのだった。だってラノベ好きだし。
「きっかけ・・・そういえば、あれかも」


あれはそう、ループが始まる最初の日だ。
かがみがきわどい感じのメイド服を着て、その短いスカートをふりふりさせな
がら「こなた!アキバに行こ!アキバに!ゲーセンで遊びまくり、エロスな1
8禁ゲームを買っていっしょにやろう!あとネトゲ」と言ってきたので、私は
「しょうがないなあ、かがみ、じゃあ、お願いしますご主人様、って言ってみ
て?」と答えた。
 するとかがみは頬を染めながら、俯き、私の手の甲に口付けしながら、言う。
「お、お願いします、ご主人さ」「ふざけんなあああああああああ!!!」


回想シーンのこまをぶち破る勢いでかがみが叫んで回想中断、そういう漫画的
演出を想像してくださったら分かりやすいほどのかがみの怒りっぷりです。
「それ妄想!全部お前の妄想だろうが!?」
「なんだよかがみーん、いいとこだったのに」
 得意げに語っていたこなたは不満そうだ。
「ふざけんな!同じ日が千回繰り返されたってそんな事はおきん!」
「いやいや、そんな事わかんないじゃんかー」
「分かるわ!」
 がみがみ言い合う二人を見ながら、つかさは首を傾げます。
「こなちゃんは、お姉ちゃんにそういう事してほしいのかな?」
 何気にきわどい質問に、みゆきは「ふふふ」と笑ってごまかしました。みゆ
きにもその辺の事はよく分からないのです。あと、あんまり突っ込んでは薮蛇
的にきまずい事になりそうなので誤魔化します、みゆきは賢い子なのです。
「ともあれ、泉さんは、思い当たる事はないんですか?」
 かがみにしかられていたこなたは、救い主を見るようにみゆきに振り返って
答えた。
「うーん、パッとは思いつかないなあ。でもこれって、タイムトラベル?」
 同じ日をループしているのですから、そう言えない事もない。
「そうですねえ、タイムマシンは制作日より以前には戻れないタイプの仮説も
結構ありますから。有名なところではフランク・ティプラーのティプラーの円
筒なんかもそうですねぇ。そして製作日より以前に戻れないから、現在で未来
人を見かけない理由の説明にもなるんですよ」
 出ました、みゆきさんの解説です。これが、これがみゆきさんの存在意義だ
というのか・・・・?
「なにそれ、えっと、それだと、今日がタイムマシンの発明日で、こなたがそ
れを使ってずっとループしてるって事にならない?」
「いえいえ、そうとは限りません、時間やタイムマシンはまだまだ未知の部分
が多いですから……こなたさんだけが、なんらかの時空のねじれに巻き込まれ
ているとか、四次元やワームホールなど、さまざまな可能性が考えられます。
もちろん常識的にはありえない確率の話ですが、現に常識ではありえないルー
プをしている、という泉さんの主張に根拠を置くなら、常識的発想では解決で
きない訳ですし……それに、タイムマシンは不可能であると確定する科学的根
拠はないんですよ。あのスティーブン・ホーキンスもタイムマシンが可能かど
うかについては「私は誰とも賭けをしないだろう」と言っているほどですから
、単純にSFではなく、タイムマシンについては、まだまだ科学の研究領域なん
ですよ」
 みゆきさんの台詞が、十話分くらいまとめて喋られた、気がする。
「あ、お姉ちゃん、そういえば、そういう映画あったよね」


「時かけかあ、私は筒井康孝の原作読んだな」
 さすがかがみ、小説派です。
「私はもちろん映画だよー」
 こなたはにやりと自身満々。
「あー、あれ確かに面白かったもんね。同じような時期にやってた○ド戦記よ
り面白かった」
 かがみは当然、ゲド戦記の原作も読破しております。
「ノンノン、かがみ、時かけの映画といえば、原田知世の方だよ」
「1983年公開の方かよ!なんであんたが見てるのよ!監督・大林宣彦」
 かがみも妙に詳しいです。してやったり顔のこなた、なんでオタクってこう
いう時に、有名じゃない方を見たって言って得意顔になるんだろうね?
「あの映画みたいにさあ、ぐるぐるーって回って自由に戻れるなら、もっと色
々できるのにさあ」
「お前にそんな力与えたら、大変なことになるだろ」
「いやかがみん、意外と一日をループするだけじゃ大したことできないんだっ
て。たとえば競馬とかしても、増えたお金もなくなっちゃうじゃん」
「それ以前に、お前の年齢では馬券は買えない筈なんだが」
 こなたが無言になる。・・・・・、って感じ。
「まあ、もちろんやってないけどね!」
「こいつ・・・既にやってやがる・・!」
 こなたはニヒルに笑って言う。
「今日の第三レースは、2-4だから」
「うわあ!?余計な情報を知った!?ループしない私は、その情報を利用でき
てしまう!?わわわ・・・」
「私たちの年齢じゃ、馬券買っちゃ駄目だよねえ、かがみ?ちなみに33倍く
らい、倍率」
 良心が心の内でせめぎあうかがみだった。33倍って、一万円なら、30万!?
あ、ありえない、あわわ・・・。
 みゆきさんが不思議そうに首をかしげる。
「でもこうやって、ループする泉さんが、私たちに色々な情報を渡したら、こ
の一日だけ私たちの情報量が増え続けるんでしょうか、それとも、今日のレー
スの答えを知るかがみさんと、知らないかがみさんが居て、無限に分岐してい
ってるという事なんでしょうか。量子力学のエベレット解釈によれば・・・」
「いや、みゆきさん、そこは掘り下げなくていいから」
 作者も掘り下げる気はない。というか、何もかんがえてはいない。
「ねえねえ、こなちゃん、こなちゃんはじゃあ、これからどんな一日を過ごし
たの?」
「え、それは、お昼にみんなでご飯食べて、ふつうに授業受けて、普通に放課
後になったなあ」
「でもでも、1983年の映画では、火事とか瓦が落ちてくるとかあるし、最
近見た方でも、あれを変えなきゃこれを変えなきゃ、って感じの事が目白押し
で、それがループものの醍醐味だし・・・」
 なぜかつかさまで詳しくなってしまいました。キャラ崩壊ってこわいね。
「それは確かにつかさの言うとおり、そういうループ醍醐味的な重大事件・・・あっ!」
 こなたが何かに気づいたような声をあげ、かがみが身を乗り出します。
「何かあるの!?今日、これから重大なことが!?」
「アニメの録画予約忘れた」
「そんな事かよ!!」
 それが原因でループしてるなら、ループ現象は各家庭で頻発してしまう・・・!
「いやでもこれ、今日・・・ややこしいなあ、三回目の今日忘れただけだから、
一回目二回目は忘れてないけど、さすがに三回目になるとねえ、だんだん惰
性みたいになっちゃって」
「ほんとどうでもいい話だな」
 そしてチャイムが鳴ったのでみんな授業を受ける体勢に戻る、ふとかがみは
自分の教室に戻る前に振り返り、こなたの方を見た。
(あんな風に振舞ってるけど、ほんとに同じ日が繰り返してるなら、不安じゃ
ないのかな?)
 遠めに見たこなたは、やはり感情の分からない(≡≡)みたいな顔をしてい
た。




「あれ?」
かがみはふと、自分の机に手紙が入っていることに気づく。
それには、(今日の放課後、屋上に来てください)と書かれていた。
「え、え」
これは、まさか、果たし状、などというベタな前ふりではなく、あれじゃない
のか、ラとかブとかつく、レターではないのか。あわわ、あわわ。
 かがみは内心テンパりつつ、周囲を見回した、差出人が誰なのかは分からな
い。かがみは、そんなに親しい男子がいる訳でもない。いつも女子グループと
一緒にいるタイプなんで、心当たりがない。
 そして悶々としながら昼休みが来る。

 ・・・・・・・・・・・・・

「み、みんな、あ、あのさ・・・」
一緒にお弁当を食べながら、しかしかがみは考えこむ、こういうのって、他人
に相談したりせず、自力で・・・こう、胸の奥にしまっておいた方がいいのか
な、それとも、などと迷っていると、こなたが言った。
「お、ラブレター来た?かがみん?」
「なんで知ってる!!!」
殆ど首を絞めんばかりの勢いで問い詰めるかがみに、つかさが間に入って二人
を止めた、ブレイク、ブレイク。
「げほげほ、そりゃ知ってるよ、三回目だもん。冷静に考えると、これがルー
プの原因じゃないかなー、って気がするんだよね」
「だったら最初に言え!!」
「いやいや、ラブレターが来てうろたえてるかがみん、かわいかったよ」
「こなたーーー!!」
争いだす二人をあわあわ、と見ているつかさと、ほわほわ笑って見ているみゆ
き、というワンカットを挿入すると考えて下さい。情景描写まで手を抜き出し
た!
「でも、お姉ちゃん、どうするのかな?」
「それは、泉さんに聴いてみましょうか。泉さん、かがみさんは、この後、ど
うしたんですか?」
「うぎゅ?」
 かがみに掴みかかられていたこなたは、いったん動きを止めてかんがええる。

「うーん・・・会いに行ってたよ、結果は知らない。だって、今日のかがみは、
どう答えたのか教えてくれなかったもん」
「そりゃ、すっぽかしはしないだろうけど・・・」
 自分のことなのに、何か他人事のようにどきどきしてしまう、じっとしてい
られないような気分のかがみなのだった。
「でもこれ、かがみさんの事情で、こなたさんがループする理由にならないで
すよね」
 みゆきの鋭い指摘に、こなたがうっ、と言葉に詰まった。
「まあ、そうかも・・・だってさ、かがみん。だから好きなようにしてくれた
まえ」
「こっちにとってはあんたのループよりもおおごとなんだよ!」
 かがみはいっぱいいっぱいです。
「まあ、かがみさんの好きなようにされるといいですよ、後悔しないように」


そんな事いわても・・・
「あの、みゆきさんは、告白されたこと、ある?」
 すごいありそうだ。みゆきさんからはなんというか、モテそうなオーラをび
しばしと感じる。
「うふふ」
 と笑って答えないみゆきさん、この反応は、ある!明らかにありまくる匂い
がびんびんしやがるぜぇぇぇっ・・・!
「お姉ちゃん、実は、私もあるよ」
「え、マジで?!!?」
 おそるべし妹、知らない間に姉を追い抜いているっ・・・!
「幼稚園の頃に」
「おい!今、そんなボケはいらねえっ!」
 だんだん口調が荒くなるかがみなのでした。
「でも、その時、ケンタ君に告白されて思ったんだけど」
「まだその幼稚園のエピソード続けるの!?」
「愛とか恋とか結婚とか、ぜんぜん早すぎるなあ、って思っちゃって・・・も
ちろん、恋愛にも興味はあるけど、本当に興味本位でそういう風になっていい
のかなって。もちろん経験として恋愛を体験しておいた方が色々良いっていう
のは分かるんだけど・・・そういう風に割り切って恋愛できるような大人には
、私はなれなかったから・・・無理して背伸びして恋愛ごっこしても、結局二
人とも傷つくだけだって、断ったの」
「怖いよ!どんな幼稚園児だよ!!」
 妹が末恐ろし過ぎる、そんな断り口上を幼稚園の時からしてたの?!
「お姉ちゃんも、後悔しないようにがんばろうね!えへ!」
 いまさら、えへ、とか言って笑われても、ぜんぜんつかさっぽくないですね、
そうですね。分かってます。
 でもそう、今、恋愛に興味津々なお年頃だから、好きかどうか分からなくて
も、とりあえず付き合ってみる、という選択肢はかがみの中にあった、だって
何事も、やってみなくちゃわからないものだから・・・
「彼氏が出来ても、友達でいてくださいね」
 なんてみゆきさんは笑っている。冗談、だよね?
「いやいや、みゆきさん、女の友情なんて彼氏の前では紙切れだよー」
 といつもの調子で言おうとしたこなたは、何故か、不思議と意気消沈してみ
えた。
「あわわー、お姉ちゃんが彼氏持ちになって、お兄ちゃんが出来ちゃうよー」
「いや、まだ付き合うって決まった訳じゃないから」
 とりあえず、相手だ、相手を見てからかんがえよう。


 そんな訳で放課後です。
 かがみが教室を出て行くのを、出陣を見送るように三人は見送ります。
「こなちゃん」
 不意に、つかさが奇妙なほど真剣な表情で、こなたに声をかけた。
「なに?」
 ひやりとするほど、真剣な顔のつかさが尋ねる。
「いいの?」
 こなたは、何が?とは聞き返さなかった。
「かがみんに彼氏が出来るって、いいことじゃん。女子高生っぽい生活、かが
みには合ってる気もするし」
「こなちゃん……」
 つかさは色々、思うところがあるようで、ところでみゆきさんは沈黙を死守
してました。なんとはなく、何を言っていいのか分からないのです。ばしばし
発言できるつかさが、ちょっと羨ましかったりしました。
「なんかつかさ、勘違いしてない?」
もうなんか、BLとかに出てくる、何故か何の違和感もなく平然と同性愛カッ
プルを突如応援しはじめる友達みたいになってます。もちろん、応援してもい
い訳だけど、カミングアウトもされてない段階で、既に同姓二人をカップルと
みなす思考は不自然というか都合よすぎますよねー、の意味(少数者への配慮
的文章)
「え、でもななこ先生も、かがみはこなたの嫁、って言ってたし・・・」
「いやそれネタだから!女の子同士だし!」
「でもこなちゃん、男の子がするようなえっちぃゲームとかしてるし・・・」
「それはお父さんの影響で、それにストーリーが泣けるんだよ!?ほんとだよ
!?」
 まさかこんないい訳をする日が来るとは思っていなかったこなただった。
「螺旋回廊2をやっておいてそれはないよこなちゃん・・・」
「あれもある意味泣けるよ!っていうかなんでつかさはそんなの知ってるの!
?」
「こなちゃんの部屋で見かけた、あと、最終痴漢電車2も・・・」
「あいたー!いたたたた!でも違う、そういうんじゃないから、いわゆるそれ
も萌えなんだよ!」
 本当は絶望~青い果実の散花~とかも見かけていたが、それらについては発
言を控えるつかさだった。
 あとみゆきさんは、帰ったらこれらのタイトルを検索しようと記憶するのだ
った。そして検索して顔を真っ赤にしたのは別のお話。
「あ、戻ってきました」
 かがみが、俯いて、表情を隠して戻ってきた。しばらく肩で息をして、ずい
ぶん時間をかけて顔をあげると、そこには笑顔があった。
「みんな、帰ろ?」
「あの、お姉ちゃん・・・?」
「ごめんね、心配かけて。さあ、帰ろ!」
 まるで急ぐように鞄を持つかがみに、みんなぞろぞろついていくように下校
しはじめる。なんとなくみんな、かがみの勢いに押されて、結果を聞きづらく
なってしまっていた。





「ちょっと寄り道していかない?」
とかがみが言った。
不思議とその笑顔が痛々しくて、こなたは見たいアニメも忘れて、アキバに寄
っていくことにしたのだ。無理してはしゃぐようなかがみが、放っておけなく
て。
「ねえこなちゃん、お姉ちゃん、変だよね」
とみんな分かっているけど言いにくい事をつかさが言って、こなたは小さく頷
いた。みゆきさんは、困ったように笑っている。
「あ、かがみん、ちょっと」
 こなたは不自然なほど音ゲーに熱中するかがみを待って、二人だけでゲーセ
ンの片隅へ移動した。うるさいくらいの筐体の音が、熱気と一緒にこっちまで
響いてくる。
 ふと昔、かがみがUFOキャッチャーに熱中して、貯金箱にお金を入れるよ
うに夢中になっていた横顔を、切ないようなまぶしい思いで眺めていたことを
こなたは思い出した。そして今、ゲーセンの暗がりで隣に俯くかがみの、見え
ない表情をこなたは覗き込もうとする。
「かがみ?」
 不意に黙り込んだかがみが、小さく肩を震わせた。
 彼女は泣いていた。
「かがみ……!?」
「……あはは、なんだろうね、変なの。私ね、結局、断ったの、振っちゃった」

 そう言って微笑むかがみは、無理しているように見えた。
 こなたは何を言っていいかわからず、泣いているかがみを見ながら沈黙した。
かがみの目からは、大粒の涙がぽろぽろとこぼれた。
「変なの、振った私が泣いてるなんてね」
「かがみ・・・無理しなくていいよ、何も言わなくても・・・いいよ」
 こなたはそっとかがみの手を握り、思い切ってかがみを抱き寄せた。それは
三回目だからできる事だった。一回目の時、こなたは何もできずただかがみを
見送った。そして、付き合う事になったという報告を、暗澹たる気持ちで聞い
た。二回目の時、かがみはどうなったか答えなかった。そして、どういう結果
になったのか、狂おしいほど気にしながら、ただ眠った。そして三回目、かが
みは相手を振ったといい、こなたは何故、自分がこの日を抜け出せないのか、
その理由を知る。




 かがみが手の届かない所にいくのが嫌だから、私はこの日から抜け出せない。




 かがみは、こなたの胸の中で泣いている。
 こなたはただ、かがみが泣き止むのを待っていた。
 その長い髪を、いとおしむようになでながら。

 こなたは心の内で、この先どうするかを、決めた。

 私がかがみを閉じ込めようとして、その結果、かがみが見知らぬ誰かを振っ
たなら、そんな事は認められない。

 かがみは誰よりも、幸せになるべき女の子だから。

 一回目の時に付き合う事にしたんだから、本当はかがみはその見知らぬ男の
子と付き合うべきなんだ。
 私のわがままで、かがみを閉じ込める事は出来ない。
 リアルで誰とも仲良くなることのなかった私と、こんなにも仲良くしてくれ
る……かがみがいなかったら、きっと私は全然違う高校生活をしていた。
 かがみ、誰よりも、かがみの事が好きだよ、とこなたは心の中でつぶやいた。

「ごめん、こなた」
 泣きやんだかがみが、こなたからそっと体を離す。
「いいよ、大丈夫、泣いてるかがみに、存分に萌えさせてもらったし」
「バカ」
 かがみの言うバカ、はいつもよりぜんぜん元気がなかった。全く、全然、元
気ではない。でもその繊細さ、弱さが、こなたの胸を息ができないほどに締め
付けた。それでいて、かがみがこなたの手を握っているその手には、ぎゅっ、
と力が込められている・・・。
「あのね、こなた……」
 かがみが、泣いたばかりの顔でこなたを見つめた。その切なげな表情に、こ
なたは一瞬、心臓を直接つかまれたような気がした。
「……なんでもない」
「なにそれ?」
「なんでもないってば!ちょっと、お手洗い行ってくる、ひどい顔になっちゃ
ったし!」
 怒ったような、いつものツンデレな態度でお手洗いに行くかがみを見送って、
こなたは、ひとつの覚悟を決めた。

「またね」
分かれ道で挨拶して、別れようとする時に、つかさはふと、首をかしげた。
「でも、こなちゃんのループ、解決してないよね?」
「ええ、そういえばそうですねえ、どうしましょうか?」
こなたは笑って首を振った。
「いい、大丈夫、自己解決した」
「え!?そうなの!?」
「あらあら」
つかさとみゆきは不思議そうながらも納得したようで、そもそもどうしようも
ないので、こなたの言う事を信じる事にした。ただかがみだけはどこか不満そ
うだ。
「どう解決したのよ」
「何でもいいじゃん、かがみ、ふふふ、泣き顔かわいかったよ」
「次言ったら殺す!」
ぎゃあぎゃあと喚きながら過ごす楽しい時間、もしかしたら、この時間を手放
したくなかったから、ループは始まったのかも知れない。
 かつて自分が卒業する、長い夢を見たことが、こなたにはあった。それ以来、
ずっと高校生を続けているような、そんな気さえ、する。
 分かれ道で別れて、一人になったこなたは、自分の覚悟を反芻するように脳
裏に浮かべた。


 自分は、このループから抜け出さない、抜け出せない。


 かがみに彼氏が出来るのを、自分は見届ける。そう決めた、そしてそう決め
た以上、自分はこの日から出られないのだろう。彼氏の出来たかがみを見るの
に、自分は耐えられないから・・・だから、私は、


 永遠にこの一日を繰り返す。


 それでかがみが幸せになれるなら、それでいい。

 かがみと楽しく過ごせる最後の一日を、永遠に繰り返す。それが発狂しそう
な苦しみを伴う牢獄だとしても、それが、かがみの幸せのためならば。
 いつか、抜け出せない一日の苦しみに、自分は負けてしまうだろうか?
永遠の長さに、かがみを思う気持ちは負けてしまうだろうか。
 それでも、自分は……。

 こなたは永遠に続く今日を思いながら、家に帰って目を閉じた。



















 翌日、こなたは、かがみから驚くべき言葉を聴いた。


「私、この日を過ごすの、二回目」


 驚きに口をパクパクさせながら、何とかこなたは答えた。


「あはは、私は、四回目」


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