記憶の欠片-1年生、春

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夢を見ていた。

いつか見た、その夢。
私が失くした、光の欠片。

『もう大丈夫だよ‥』
『‥ヒック‥こわかったよぉ‥‥』

切り取られた時間。
遥か遠くて、懐かしい記憶。
王子様を、私は探していた‥。


『記憶の欠片―1年生、春』



優等生...
たとえばそんな言葉が私には似合っていただろう。
いつからかは分からない、
だけどいつしか、私は妹のために、家族のために生きるようになっていた。

いつから…?
そんなのはわからない。
気が付けば、そういう風に生きていた。
妹の、あの笑顔を守るためならば、またそういう生き方も良かったのかもしれない。だけど……

振り向けば―…
そこには誰もいない。
あるいは、誰もいないかのように見えてしまう。

いつから…?
どうして私はこんなにも虚しさを抱いているの?
順風満帆な生活を送っているはずなのに、何かが足りない。
虚無感に覆われた毎日を繰り返している。
何かが、足りない。

だから…


「かがみー!一緒に遊ぼう!」
「うん、今行くよこなた」

この子は、私が失くした光なんだと思った。


‐‐

何も無い。
この世界はガラクタの集まり。
いつも、そう思う。

入学式が終わって数日した日の事。

「はじめまして。かがみって呼んでもいいかな?」

この子が、私の前に現れた時に、私の世界に光が満ちた。
ああ、そう…私は、この子を待っていたんだ。
心のどこかで、そう思う。

‐‐

どうして…
あの子は私に構って来てくれるのだろう?
初めて会った時から、私に親しくしてくれてた。

つかさの、姉だから?
ううん、たぶんそんな理由なんかじゃない…と思う。
きっと、もっと違う理由…。

―――ピンポーン。

玄関のチャイムが鳴って、待っていたその子を出迎える。

「やあ、かがみ」
「いらっしゃい、こなた」

‐‐‐



ガチャガチャ...
ピコピコ...

部屋に響き渡る、ゲーム機の音。
この子はさっきから何も喋らない..。

「ねえ、もっと自分の家のように寛いでいいのよ‥?」
「………うん。」

互いの間に漂う沈黙。
どうして…いつも学校ではあんなに私に喋りかけて来るのに。
今日に限って何も言って来ないのだろう?

「あーもうっ!!」
「………!?」

スッと立ち上がって
隣のこの子に襲い掛かる。

「うりぁ!!」
「ちょっ、かがみ……!?
 やめ…っ…あははは!!」

足の裏やら脇のあたりを執拗に擽り出す。
コイツの緊張が、少しでも解けるのなら……

「…笑いなさいよ?」
「かがみぃ…わかった!わかったからぁ!」

笑顔が可愛い。
うん、やっぱりコイツは笑ってる顔が1番よく似合う。
いつも私の傍ではそうやって笑っていてほしい‥‥。


「そういえば、さ‥」
「………?」

 …………ドクンッ..

「あんた、私が自己紹介する前に私の名前言ってなかった?」
「うーん、そうだっけ?」

………。
まあ、大した事ではないのだろう。。
つかさから私の名前を聞いていたのかもしれない。

......。


ガチャガチャ...
ピコピコ...


「この前の小テスト、どうだった?」

ガチャガチャ...ガシュッ...

「うーん、あんまり。かがみは?」

ドッドッドッドッ......

「そこそこ…かな。」
「ふーん・・・」

ガチャガチャ...ピコピコ...


「で、点数は?」
「………98点」

ガチャガチャ...ピコピコ...

       バシュッ!....

「ねぇ、かがみ、勉強教えてくれない?」


‐‐‐


「ここは……こう……うん、そう……」

「かがみ、すごく解りやすい! 教えるの上手いんだ!」

難しかったテストの問題を解説して教えていく。
この子は、それをスラスラと理解していく。
ねぇ、あんたほんとは全部解ってたんじゃないの…?

「かがみがいれば私、授業なんて受けなくても平気だね!」
「おいこら……何を言ってるんだあんたは」

教えるのが上手い、か…。
それはきっと、妹のおかげだろう。

“絶対にお姉ちゃんと同じ学校行くんだから!”そう、口癖のように言っていた。

こうやって、よく妹に勉強を教えていたな。
なんでだろう……私達は双子だから?
なんで…………

「ねぇ、あんたは何でこの学校に来たの…?」

 ………ドクンッ…ドクンッ..


「…‥かがみに会うためだよ~?」

コイツは、そう言った。
そう、小さく微笑みながら…。


あぁ…そうね。
そうだったなら良かったのに。。

「……かがみ?」
「…動かないでね...」

使うわけでもなく、ただ興味本位で買った口紅を取り出す。
キャップを抜いて、中身の先端を出して、この子の唇を赤く塗り始める。
この子の顔が、頬が、みるみる内に朱に染まっていく。

「あんたは…‥可愛いわね」

「………かがみぃ…‥」


そう..この子は私を救いに来た...王子様。
このどうしようもない虚無の世界をぶち壊すために。
私を探して、私に光を見せるために現れた、王子様。

女の子だから、お姫様かな?
どっちだっていいわね...

「ねぇ、あのね…」
「うん、なあに?」

この世界はガラクタの集まり。
でもそれは今日でお終い。

「これから、ずっと友達でいてくれる‥?」

私の目の前には、この子が現れてくれた。
私の日常に、光が射し込んだ。
この・・泉こなたが…‥

「うん、当たり前でしょ!」

私の日常は、これからきっと、楽しくなる。
きっと、楽しい事がいっぱい待っている。
この子が、傍にいるならば・・・。


――私が不思議な夢を見るようになったのは、この日からだった‥。



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コメント:
  • つづききぼん


    -- 名無しさん (2010-12-08 23:15:46)
  • 心にとても響きました! -- 名無しさん (2010-11-15 22:27:48)
  • もしかして、元ネタはKanonにCLANNADでしょうか? -- 名無しさん (2010-05-13 20:21:31)
  • かがみの幼少期(こなたとの)の記憶が戻る所を是非とも読みたいのですが・・・作者様~お願いします。 -- kk (2010-05-13 01:49:55)
  • 文章に引き込まれていきました。
    是非続きをお願いします! -- 名無しさん (2009-10-04 00:14:36)
  • このシリーズ大好きです。続きをお願いします! -- 名無しさん (2009-04-27 23:37:18)

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