それは自然なことだから

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きっかけはつかさの一言だった。

「おねえちゃんの部屋、最近なんだか変わったよね。」

私の部屋に宿題を教わりに来ていたつかさが、突然そんな事を言いだした。

「そうかしら?って、その問題、答え違うからね。」
「わわっ、ごめんなさい。」

私の指摘をうけて、慌ててノートの答えを消すつかさ。
そしてもう一度、一から答えを書き始める。
残念だけどつかさ、今度は公式の使い方が間違ってるわ……

うんうん唸っているつかさを尻目に、私は自分の部屋を見渡した。
…特に変わったものなど置いていないし、もちろん模様替えなどもしていない。
最近買った本やら雑誌やらが机の上に置かれているけれど、それぐらいで変わったとは思わないだろう。
どこからどうみても、何てことのないごく普通の部屋だ。
よって、つかさがそんな風に思うような要素は一切無いはず。
だとすると、一体何が変わったんだろう?ちょっと気になった。

「さっきの話だけど、別に変わったところなんて無いと思うけど?」

つかさはまだ同じ問題に悪戦苦闘していた。そろそろヒントぐらい教えてあげようかな。

「そんなことないよ。なんていうか…」

そして少し時間を置いて…

「そうだ!こなちゃんだ!」

それはそれは予想外の答えを言ってくれた。

「はぁ?ちょっと、なんでこなたが出てくるのよ。」

思わず疑問の声を上げてしまう。
なんでこのタイミングでこなたの名前が出てくるのだろう?
そしてその疑問に対してのつかさの答えは……

「だから、お姉ちゃんの部屋、なんだかこなちゃんの部屋みたいになった!」

だった。

うん、私の妹ながら、なにとんでも無い事をさらっと口にしてくれるのかな。



『それは自然なことだから 』



日曜の午後、天気は快晴だった。太陽の暖かな光が部屋に差し込んでくる。
その光を受けながら、私は部屋の窓を開けた。途端、冷たい空気が部屋に入り込んできた。
この空気の冷たさが、もう冬なんだなということを自覚させる。
そんな事を考えながら、私はエプロンと三角巾を身につけた。

「こんな格好するなんて、大掃除ぐらいだと思ってたけど。」

でもこの格好は決意の表れなのだ。そう、つかさのあの言葉の元凶を捜しだすという決意の。

「しかし、なんでつかさはあんな風に思っちゃったわけ?」

私の部屋とこなたの部屋。はっきり言ってまったく違うはずだ。
こなたの部屋はパソコンを中心に、ラックやらでっかい本棚やらテレビやらが置いてある。
しかもそれだけ物がいっぱい置いてあるのに、部屋の真ん中にテーブルとかも完備されてるし。
なにもなかったら、きっとすごく大きな部屋なんだろうな。なんてうらやましいやつ。

………いけない、話がそれた。
そんなこなたの部屋と、極々普通の私の部屋。
本棚はあるけど、こなたの部屋より大きいわけじゃない。
ラックなんてないし、テレビなんてない。共通点なんて、普通はどこにもないはず。

「だけど、もしってことがあるしね。」

気がついたら、こなたと趣味嗜好が似ていたっていうのはありえるかもしれない。
たまたまこなたが買いそうなものを、私が買ってきたりとかね。
なにしろ、私とこなたは友達でも親友でもなくて…
恋人同士なのだから、そういったことも十分にありえるわけで。
もしそうだとしたら、つかさがあんなことを言ったのも納得できる。

けど私達はこの関係がばれないように、細心の注意を払ってきたつもりだ。
こなたが冗談で抱きついてきたときも、必死で今までと同じように振舞った。
やってみたくて仕方がない、こなたへのお弁当作りだって我慢してる。

……それは、いつかはみんなにも話すつもり。だけど、今は駄目。
こういうのはもっとゆっくりと、時間をかけないといけないのよ。
だからこそ、あのときつかさから『こなた』って言葉が出てきたときは驚いた。
もしかして気付かれてる?バレてる?って思って。

「あのつかさがそんなこと言うんだから、必ず何か変なところがあるはずよ。」

そう、必ずあんな事を言う理由があるはず。今日は絶対にそれを見つけ出す。
要するに、こなたっぽい物、こなたグッズを探せばいいのよ。簡単簡単。

「さて、それじゃあ始めますか。」

本当に大掃除をするときのような気分だ。妙に張り切ってしまう。
こなたグッズを探し終えたら、本当に大掃除をしてしまおうか。

「まずは机から…っていきなり見つけてしまった。」

目に入ったそれは人形だった。大きさは5cmぐらいだろうか?
それが机の上に綺麗に飾ってあった。それも何体も。
…なんでいままで気がつかなかったんだろう?

「ていうか、いつから飾ってあったんだ?」

こんなもの私が飾るはずが無いし、もちろん買うはずも無い。
ということは、これを飾っていったのはこなたということになる。

ん?そう言えば……

――――――

「はい、かがみ。プレゼントだよ。」

こなたはそう言いながら、テーブルの上に人形を一つ一つ並べていった。

「なによこれ?」
「ガシャポンのダブり。いや~、目当てのやつがなかなかでなくてね。
 ああいうのって欲しいのが残り一体になると、妙に出にくくなるよね。」
「知るか!っていうか、知りたくもないわ。」
「まあそんなわけで、私のダブりの数々、受け取ってくれたまえ!」

いつの間にかテーブルには何体もの人形が並べられていた。しかも同じ種類のが何体も。

「いらない。持って帰れ。」
「え~!いいじゃん、もらってよ!!ほらこれ、かがみの好きな作品だよ!」

人形を手に持ったこなたが、身を乗り出しながら力説する。
それはともかくとして……ねえ、こなた。顔がものすごく近いんだけど。

「いっとくけどな、私はその作品は好きだけど、そういったのには全然興味がないからな。」
「でもゲーセンでこの作品のぬいぐるみ取ろうとしてたよね?」
「うっ…」

まったく、そんなところだけはしっかり覚えてるんだから。

「分かった、分かったわよ。そんなに言うなら、貰ってあげてもいいわよ。」
「おお、その言い回し!かがみは相変わらずツンデレだね!」

こいつはまたそう言ったことを。

「ツンデレいうな!とにかく、その人形は貰ってあげるから。」
「うんうん。それじゃあ、机に飾っておくからね。」

こなたは人形を持って立ち上がると、勝手に机に人形を並べ始めた。

「何勝手に飾ってるのよ!恥ずかしいでしょ!」
「えっ?だってこういうのは飾ってこそ価値が……」

――――――

そんなような会話を、つい先日したのを思い出した。
あの時はなんだかんだ言ったけど、やっぱりうれしかったので、そのままにしておいたんだっけ。

「…と、とりあえずこれはしまっておきましょう。」

件の人形達を手に取り、机の引き出しに入れる。とりあえずこれで大丈夫なはずだ。

「さて、次は…って、もう見つけてしまった。」

私が手にしたもの。それは目覚まし時計だった。

――――――

「かがみ、これあげるよ。」

そう言われてこなたから受け取ったのは、四角い箱だった。

「開けていいの?」
「もちろんだよ。」

そう言われたので開けてみると、中には時計が入っていた。
盤面にはアニメで使われていた紋章みたいのが描かれている。

「どうしたの?時計なんか?」

なんの脈絡なしにいきなり時計なんて貰っても困る。
それともネクタイみたいに、プレゼントすることに特別な意味があったりするのかな?
例えば、『私の時間をあなたに』とか?

……だとしたら、うれしいな。

というか、こなたがそんなことを考えるわけがないな。

「いや、かがみがその有り余るパワーによって、目覚まし時計を破壊したって聞いたから。」

ほらやっぱり……あれ?有り余るパワーで破壊?

「ちょっと、有り余るパワーって何よ!!」
「えっ?だってみさきちがそう言ってたよ。寝ぼけて目覚まし時計を破壊したんでしょ。」
「あいつめ……」

よりにもよって、こなたにそんなことを言うとは。やっぱり、もっと釘を刺しておくべきだったわ。

「というわけで持ってきたんだけど、どうかな?デザインとかもアニメっぽくないから、大丈夫だと思うんだけど。」

ちょっと顔を赤くしながらそう言うこなた。
やっぱりこなたでも、人にものをプレゼントするときはデザインとか気にするのかな?
そう思うと、ちょっとこなたが可愛く見えた。いや、いつも可愛いんだけどね。

「くれるんだったら、遠慮なく貰うけど。でもいいの?これって結構高いんじゃない?」

私の中では、こういったキャラ物のグッズは高いってイメージがある。
もしそうだとしたら、受け取るのをちょっと躊躇ってしまう。

「大丈夫、布教用だから。それに…かがみが使ってくれるとうれしいな。」

ああ、その微笑と、その言葉と、その声は反則だから。
そんな風にこなた言われてたら、断れるわけがない。

「それじゃあ、遠慮なく。ありがとね、こなた。それと、別に目覚まし時計は破壊したわけじゃなくて………」

――――――

……と言う事で、もらった次の日から喜んで使っていたのをすっかり忘れていた。
おかしい、こんなの真っ先に気が付くはずなのに。

「まあ、これはいいか。無いと困るしね。」

手に持った目覚まし時計を元の位置に戻す。

「さてと、次は何があるかな?」

私は次のこなたグッズを探し始めた。

――――――

「もう……やめよう。」

開始から2時間。たった2時間しかたっていないが、ここまでにしよう。
もう無理だ。これ以上細かいところを調べていったら、きりがなくなりそうだった。

「まさかこんなにこなたグッズがあったとは……思いもしなかったわ。」

私の本棚にはこなたがもってきた漫画がちゃっかり整列していた。
しかもシリーズ物、全巻だ。まあ、私も嫌いじゃないから別に構わないけど。
私のゲームソフトを並べた棚には、こなたの美少女ゲームが。
これはこの前こなたが忘れていったものだ。というか、私の家でそういうことするな。
ペン立てにはこなたのシャーペンに消しゴム。勉強会の時に忘れていった。
こなたが毎週来るからと持ってきたマイクッション。私の分も買ってきたのでペアになっている。
極めつけは、こなたのどてら。これが私のクローゼットにしっかり納まっていたときは我ながら呆れた。
これは何であるんだっけ?……ああ、あいつが泊まりに来たときに持ってきたのよね。
最初に片付けた人形も、結局机の上に戻してしまった。
これだけいっぱいあると、一つ片付けてもどうしようもない。

「これじゃあ、つかさがあんな風に思っても仕方がないか。」

思わず苦笑してしまう。あーあ、どうして気が付かなかったのかな?

「……本当に、なんで気が付かなかったのかな?」

今までの私だったら気が付いているはずだった。
それがなんでこんな風になってしまったのだろうか?

私はつかさに言われたときと同じように、自分の部屋を見渡した。
何度見直しても、変わったところなんかどこにもなかった。
『こなたの持ち物が部屋中にいっぱいあると分かっているのに』だ。
机上の人形も、本棚の漫画も、棚の中のゲームソフトも、クローゼットの中のドテラも、
私の部屋では異彩を放っているはずなのに、どれも収まるべき場所に収まっているように見えた。

「そっか。」

やっと分かった。どうして言われるまで気がつかなかったのか?
それはこなたの物が……いや、こなたが傍にいることが、私にとって自然になっていたからだ。
だから気付かないし、分からない。空気や重力を意識する人はいない。
水だって電気だって、使えなくなって初めて意識する。それと同じだ。
私にとって、こなたがいるのが自然なのだから、それと同じようにこなたの物が私の部屋にあるのはごく自然なんだ。
そう思うと、このこなたグッズの数々がちょっと輝いて見えた。
だってこれは、こなたと私の関係を表すものだから。
でも、美少女ゲームだけは持って帰らせないとね。というか、恋人の家にこんなもの持って来るな。そしてするな。

「……こなた、何してるのかな?」

急にこなたの声が聞きたくなった。
そう思ってベットの上に置いてある携帯電話に手を伸ばす。
手に取った携帯電話を開き、こなたに電話をかける。

よし、こなたが電話に出たら、私の今日の出来事を語って聞かせよう。
そして話し終わったら、こう言ってやるのだ。

「こんなに自分の物を置いていくなんて、こなたは本当に私のことが好きなのね。」って。

一体こなたはどう反応するだろう?
素直に「そうだよ」と言い返してくるか、言い訳のオンパレードか?
どっちにしろ、顔は真っ赤になってるんだろうな。
こなたのやつ、こういうのに意外と弱いから。
そんなこなたを想像をするだけで、顔がにやけてくる。

「かがみ?どうしたの?」

こなたの声が聞こえた。電話越しとはいえ、今はこの声を聞くだけでうれしい。

「うん、ちょっとこなたと話がしたくなったのよ。」
「ふ~ん。」

そっけない返事をするこなた。あーあ、つれないな。でも、まあいいか。

「あのね、こなた。今日さ……」

さ~て、からかってやりますか。


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  • かがみのからかいターイム! -- かがみんラブ (2012-09-23 16:28:09)
  • いいですね!
    あなたの作品を
    原動力として生きていくので
    次も期待してます。
    頑張ってください! -- 無垢無垢 (2009-01-03 23:04:46)
  • いいなぁ~2828が込み上げてきますぜ。
    こういうSSは大好きです。 -- kk (2009-01-03 18:22:35)

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