こなた×かがみSS保管庫

携帯電話の表示の為に

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匿名ユーザー

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携帯電話の表示の為に


それはひどく簡単な事のはずだった。
携帯電話を開き、アドレス帳表示のボタンを押す。
そして画面に一番最初に表示される『泉 こなた』の名前を選択する。
そして名前の編集を選択し、『泉 こなた』の『泉 』の文字を削除。
そして、その後に決定ボタンを押し……


決定ボタンを押し……


決定ボタン


…の代わりに電源ボタンを押した。

アドレス帳の表示は消え、待ち受け画面が表示される。

「はぁ……」

思わずため息ももれる。
これで一体何度この行為をしたのだろうか。

それはいつもと同じはずだった。
私は履歴ボタンから『泉 こなた』を選択して、こなたに電話をかけようと思ったのだ。
まったく、どうして今日に限って気になっちゃたのよ?
その画面に表示されている『泉 こなた』に。

『泉 こなた』

…私達の関係から思うに、少し他所他所しいんじゃないかしら?
ほら、私達『泉さん』、『柊さん』で呼ぶような関係じゃないじゃない?
私達……恋人同士だし……
それに、今更こなたに『柊さん』とか言われたら立ち直れないわ……

うん、だからこそ『泉 こなた』の『泉 』はいらないんだ。

「まったく、意識しすぎよね。こんなの誰が見るわけでもないんだし。」

そう笑いながら呟いて、アドレス帳の『泉 こなた』を選択し、名前の編集を行う。
『泉 こなた』の『泉 』の文字を削除する。
そして、その後に決定ボタンを押し……

決定ボタンを押し……

「ああっ、もう!」

決定ボタンは押す事は出来ず、代わりに押されたのはやはり電源ボタン。
アドレス帳の表示は消え、待ち受け画面が表示される。

「なにやってるんだろう、私。」

私はそう言ってベットに倒れこんだ。
それでも携帯電話は離さない。
画面の表示を見ると、時計には23時30分の文字。

「もう1時間もこんなことしてるのか。」

私はもう一度アドレス帳を表示させた。
アドレス帳の一番最初には、相変わらず『泉 こなた』の文字が表示されている。

「それもこれも、すべてこなたの所為よ。」

画面に表示されている名前の恋人に対して、一人そう呟く。

そんな風にこなたの事を考えていたからだろうか。

「こなたはなんて登録してくれてるのかな?」

ふと、そんな事を思ってしまった。
普段ほとんど持ち歩いていないだろうこなたの携帯電話。
それに、私の名前はどのように登録されているのだろう?

普通に考えれば、『柊 かがみ』よね。
でもそれだとちょっと余所余所しいから、『かがみ』かな?

それとも、『かがみ様』とか『かがみん』?
うわ、『かがみん』はともかく、『かがみ様』はやめて欲しいな。

他には………

『ツンデレ』とか最初につけてないだろうな。
『ツンデレかがみ』とか登録してあったら、本当に怒るぞ。

後は………

もしかして『嫁』とか『泉 かがみ』とか!!

いやいやいや、いくらこなたでもそこまではしないだろ!
でも、あいついつも「かがみは俺の嫁」とか言ってるしな~。
もしかして、本当にありえるのか?!

『泉 かがみ』の方は………

やっぱり、それは駄目よ!!
そりゃあ、将来的にはそうなるのだろうけど……
ほら、こなたの方が『柊 こなた』になる可能性だって十分ありえるじゃない!
ん?それだったらどちらでも大丈夫なように、互いに『かがみ』『こなた』で統一しておいた方がいいんじゃないかしら?

「って…なに考えてるんだ、私?」

そう呟いてみたものの、私の想像はとまる事はない。
頭の中は『こなたが私の名前をどう登録しているのか』そればかり考え続けている。

「…仕方がない、本人に聞きますか。」

本人に聞いたほうが早いだろうし、考えていても埒が明かない。
今は夜の11時50分。つかさやみゆきなら寝ている時間だが、こなたなら大丈夫だろう。
私はずっと見つめていたアドレス帳の『泉 こなた』を選択すると、そのまま通話ボタンを押した。

「やふ~、かがみんどうしたの?」

数回コールした後、こなたの声が聞こえてきた。

「ああ、こなた。ちょっと聞きたいことがあって、電話したんだけど。」
「ふ~ん、なになに?何でも聞いてくれ給え。」
「実は……」

ここで言葉が詰まった。
よくよく考えたら、『あんたの携帯電話に私の名前がなんて登録してあるのか?』なんて馬鹿みたいな事、聞けるわけないじゃない!

「おーい、かがみ~ん?」
「………」

どうする?思い切って聞く?聞くの?そりゃあ、聞きたいけど…

「かがみさま~?」
「あっ、あのさぁ…」
「うん。」
「こっ、こなたの携帯電話のアドレス帳。私のやつ、何て名前で登録してるかな~って思って…」

ああ、結局聞いてしまった。
でもこれでどういう風に登録してるか聞ける。そう思うと、心臓がどきどきしてきた。

「えっ?『かがみ』だけど?」

私の緊張に対して、こなたの返事はひどくあっさりしたものだった。

「あっ、そう。」

思わず気の抜けた返事をしてしまう。

「うん、かがみは『かがみ』で、つかさは『つかさ』、みゆきさんは『みゆきさん』。」
要するにいつもの私達の呼び方そのままと……

「ふ~ん、そうなんだ。それもそうよね。」

そうだ。それが普通。私みたいに、携帯電話に表示される名前一つに意識なんかしたりしない。

「かがみ、何で怒ってるの?」

こなたが心配そうな声で聞いてきた。
まったく、なんでこういうことだけは気がつくのが早いのか?

「怒ってないわよ。」
「嘘だ~。その口調、その声、絶対起こってるじゃん!」

別に怒ってなどいない。ただ、ちょっと期待していた。
もしかしたらこなたもそうだったんじゃないかって少し期待していた。

私みたいに妙に表示された名前を意識してしまって…

登録した名前を変えようとして…

でも結局出来なくてそのままで…

そんな行為をこなたもしてくれてるんじゃないかって、私と同じなんじゃないかって。
本当に、本当に少しだけれど期待していた。

「別に怒ってないわよ!ただ、私の番号を登録するとき、登録する名前とか悩んだりしなかったのかなって思っただけよ。」

私は何を言っているんだろう?これじゃあ、答えを催促しているのと同じじゃない!

「う~ん、名前の登録は別に悩まなかったけど、かがみ絡みで悩んだ事はあるよ。」
「えっ!」

私の心も現金なものだ。その事を聞いただけで、先ほどの気持ちなど吹き飛んでしまう。

「それって、一体何よ?」
「う~んとね、私の携帯の壁紙、かがみの写真にしてるんだけど、どの写真のかがみにしようかな~って!」
「なるほど……って、ええええっ!」

驚いた、心底驚いた。
それくらい気付きそうなはずなのに、何で今まで気がつかなかったのか?
って、そういえば、こなたの携帯の待ち受け画面を一度も私は見たことがない。

「ちなみに、写真はかがみと私のツーショットのやつにしました!」
「『しました!』じゃない!誰かに見られたらどうするのよ!」
「大丈夫だって、どうせ誰も見てないし。」

まあ、いきなり人の携帯の待ち受け画面を見る人はいないわね。

「それはそうだけど……でも、もしもの時があるでしょ!」
「う~ん、でもまあ、その時はその時ってことで。」

後先なにも考えてないわね、こいつ。
でも、こなたらしいと言えばこなたらしいのか。

「本当にしょうがないな、あんたも。でも、どうしてそんなことしようと思ったのよ?」

軽い雑談、なんてことない質問のはずだった。
どうせ『いや~、かがみは私の嫁だからね。』なんていういつもの言葉が返ってくると思っていた。

だが、それは間違いだった。

「……実感したかったからだよ。」

こなたの声色が変わった。

「こなた?」

「今でも信じられないんだよ。
かがみが私のことが好きだなんて、かがみと私が両思いだなんて。
今まで絶対無理だと思ってたんだよ。
かがみが私を好きになるはずがない、どんなに想っても、この気持ちが届くはずがないって、ずっと思ってた。
だから、どんな事でもいいから、どんなタイミングでもいいから、実感したかったんだよ。
携帯を開いたらかがみの写真が出てきて、ああ、私とかがみは恋人なんだなって、思いたかったんだよ。
だから……」

こなたの声は震えていた。声も小さくて、最後の方なんかほとんど聞こえなかった。

「こなた…」

かける言葉が見つからなかった。私はこの女の子になんと言ってあげればいいんだろう?

「いや~、でも壁紙をかがみに変えてから、携帯をちゃんと持ち歩くようになったよ。これもかがみへの愛の力だね!」
いつもの口調でこなたがそういった。だけど、そんな涙ぐんだ声で言われても意味がない。

「こなた。」

私はこなたにそう呼びかけた。

「何?」

こなたがそう聞き返す。声はまだ涙ぐんでいる。
他の言葉なんて思いつかなかった。
ただ、こなたがそれを実感できるように、ありったけの気持ちをこめてこう言った。

「好きよ。」

少しだけ、ほんの少しの沈黙。

そしてその後に…

「うん、私もかがみのこと好きだよ。」

こなたが嬉しそうに返事をしてくれた。
その嬉しそうな声を聞くだけで、こっちも嬉しくなってくる。

「こなたが私を好きな事ぐらい、ちゃんと知ってるわよ。」
「わたしだって、かがみが私を好きな事ぐらい知ってるもん。」
「…本当に好きだから。」
「うん、私も好きだよ。」
「嘘じゃないから。本当に、本当に好きだから。」
「嘘だったら許さないよ!私も本当に好きだよ。」
「私だって、嘘だったら許さないだから!」


好き。


私たちは睦言のようにその言葉を繰り返す。

ふと時計を見てみると、その針は12の文字を示していた。
今日という日が昨日に変わり、明日という日が今日に変わる。

だけど私たちの言葉は変わる事はなく、何時までも何時までもつむぎ続けた。

その日の朝、私とつかさは駅でこなたを待っていた。
相変わらずの遅刻。
まったく、あいつの遅刻癖にも困ったものね。
そういえば、あいつが私達より先に待ち合わせ場所にいたことなんてあったけ?

「こなちゃん、遅いね。」

なんてことを考えていたら、つかさが私に話しかけてきた。

「どうせいつもの寝坊でしょ。まったく、いつもいつも進歩がないんだから。」
「そんなに夜中まで起きてるのかな?いつも何やってるんだろう?」
「どうせ、ゲームやら深夜アニメやら、インターネットでしょ。分かりきってるわよ。」

でも、今日に限っては『あの電話のせい?』なんて思っていた。
けれど、一緒に電話していた私が今ここに遅刻せずにいる。
よって、それは理由にならない。
なので、つかさにはそのことは言わない。
というか、言えるわけないじゃない!

「意外と勉強とかしてるんじゃないかな?」
「つかさ……それは冗談にしても、絶対にありえないわ。」
「えへへ、だよね~。」

それから5分程待っただろうか、ようやくこなたが駅から姿を現した。

「ごめ~ん、遅れた。」

手を振りながら、こなたがこっちに向かってやってくる。

「おはよう、こなちゃん。」
「遅い!まったく、何してるのよ!」

私はそう言いながら、携帯電話を取り出す。そして画面を開き、撮影モードのボタンを押す。
よし、準備万端だ。

「いやいや、色々事情があるのだよ。」

こなたがそう言って、先を歩き出そうとする。

「はい、こなた。こっち向いて。」

それを止めるように私はこなたに話しかけた。

「ほえっ?」

こなたが私の方に振り向いたその瞬間。私は携帯のボタンを押した。
パシャッ!

私の携帯電話から、シャッター音が鳴り響く。
画面を確認すると、振り向き姿のこなたがしっかりと写っていた。
写真を取られるとは思っていなかったからだろう。その姿は妙に幼くあどけない。
その写真を保存し、そして壁紙の設定をおこなう。
設定した壁紙の画像は、言うまでもない。

我ながらなんて恥ずかしいことをしてるんだろう?
顔は熱くなってるし、こなたを正視することは出来ず、視線ははるか彼方だ。
だけど、携帯の画面だけはこなたに見えるように真っ直ぐに突き出してこういった。

「ほら、これであんたと同じだから。」

こなたはそれを見ると、いつもの眠そうな目を見開いた。
そして恥ずかしそうに顔を俯けた後…

「うん。」

いつもの人をからかう時の顔ではなく、心底嬉しそうに、そして飛びきりの笑顔でそういった。
その笑顔はとても可愛くて、愛おしくて、今すぐにでも抱きしめたくなった。
つかさがいなければ、きっとそうしていただろう。ちょっと残念。

「なにが同じなの、おねえちゃん、こなちゃん?」

何も知らないつかさが、私たちに聞いてくる。

「何でもないよ。ほら、行こう。遅刻しちゃうよ。」

こなたはそう言って、バス停に向かって歩き出す。
つかさも不思議そうな顔をしながらこなたについていく。

私も携帯電話をしまって、こなた達のところへ……

「あっ、そうだ。」

私は携帯をしまうのを止め、もう一度画面を開いた。
アドレス帳表示のボタンを押し、『泉 こなた』の名前を選択する。
そして名前の編集を選択し、『泉 こなた』の『泉 』の文字を削除する。

「かがみ~、何してるの?早くしないと置いてくよ~!!」
「ああ、ちょっと待って!」

先を歩いているこなたに返事をしながら、編集の決定ボタンを押す。
躊躇いなどはまるでなく、昨日の夜が嘘のようだった。
『泉 こなた』の文字は消え、代わりに『こなた』の文字が現れる。
私はそれを確認すると、携帯電話をカバンにしまった。

こなたたちの方を見ると、大分遠くを歩いていた。

「まったく、少しは待つとかしなさいよ!」

私はそう言いながら、こなた達の方に向かって走る。
遠いと思っていたその距離は、走ってみるとなんて事もない距離だった。

「おお、かがみ。朝からダッシュとは元気だね。」
「あんた達がさっさと先に行っちゃうからでしょ!」
「だって、バスに遅れちゃうも~ん。」
「でもおねえちゃん、すっごく走るの速かったよ。」

他愛のない会話をしながら、私たちはバス停に歩いていく。

それはなんてことのない、よく晴れた朝の出来事だった。



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  • GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-08-16 19:13:20)
  • ほっこりします。 -- 名無しさん (2012-11-27 18:32:57)
  • お幸せにしてください! -- かがみんラブ (2012-09-23 15:54:17)
  • 幸せムード満点な二人がいいね -- 名無し (2010-07-15 02:18:21)
  • これからも大作に期待してます -- 無垢無垢 (2008-12-19 23:49:34)
  • 幸せなこなかがに完敗しながら乾杯を捧げます。
    GJ!! -- にゃあ (2008-12-18 07:59:45)

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