数年越しの悪戯返し

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あんたは忘れたかもしれないけれど、私は確かに覚えている。

そう、悪戯だろうがなんだろうが、された方はしっかりと覚えているものだ。

それは、私だって例外じゃない。

あの時の感情は、今でも忘れることなく、そして消えることなく覚えている。

さあ、この日この場所このタイミング。

いまこそあんたに仕返ししよう。


数年越しの悪戯返し


「こなた、終わった?」

私はそう言って部屋のドアを開けた。

ドアをあけると、こなたが私の机の上で、ノートパソコンと睨めっこしていた。
パソコンの数は2台。それがこなたを中心に、左右に置かれている。
そしてその周りにはパソコンの説明書やら、CDやらが散乱していた。

私の声は聞こえていなかったらしく、説明書を読んだり、それを見ながらキーを打ち込んでいるこなた。
女の子にも関わらず、その姿はなかなか様になっていた。
いや…、様になっていいのか、女子高生?

さて、どうしてこなたが、そして私の部屋がこんな状況になってしまったのかというとだ。

高校2年の夏、私とつかさ用に両親がノートパソコンを購入してくれた。
家にはすでにパソコンが一台あるが、それは家族用だ。
肝心なときに誰かが使っていたり、またはメールを勝手に見られたりしていたので、少々困っていた。
特に、こなたのトンデモメールをまつり姉さんに見られたときはもう……

というわけで、このノートパソコンは非常に嬉しい贈り物だった。
が、そこで問題点が一つ。

それは、私たち家族の誰一人として、パソコンに詳しくないと言う事だ。
だからといって、業者の人をわざわざ呼ぶのもお金と時間がかかる。
そこで、白羽の矢が当たったのがこなたというわけだ。
パソコン中毒のこなたのことだ、この手のことも詳しいに決まっている。
案の定、『それくらいなら大丈夫。大船に乗った気持ちでいてくれ給え~』なーんて言ってきた。
『あんたの場合、大船でも泥舟でしょ。』くらい言ってやろうかと思ったが、それは流石にやめておく。
こっちはお願いしている立場だしね、一応。

……というわけで、今に至るというわけだ。

さて、私の声も聞こえないほど熱中していると言う事は、もしかして終わってないだろうか?
何をしているのか観察するため、こなたの後ろに移動する。
こなたの後ろからモニタを見てみると、なんだかよく分からない事をしていた。
うん、やっぱりこういうのは、私には向かないわ。

私の気配に気がついたのか、こなたが私の方に顔を向けた。

「ああ、かがみ。つかさの分はもう終わったよ。あとはかがみの分だけ~。」

どうやら、後少しでおしまいらしい。

「よしよし、頑張れ頑張れ。」
「え~、それだけ?それだけじゃあ、頑張れないんだけど?」

こなたが不満そうな声を上げる。

「じゃあ、どうすれば頑張れるのよ?」
「そうだね……やっぱりツンデレっぽく、『こんなことしてくれたって、別に嬉しくもなんともないんだから!』とか?」
「言うか!」
「え~!!それじゃあ…」
「言っとくけど、あんたの喜びそうな事は、全部駄目だからな。」
「……かがみのケチ。」
「ケチじゃない!」

なんていつもの掛け合いをしているうちにも、パソコンの設定は着々と進んでいたようだ。

「…………よし、これで繋がったよ!」

こなたはそう言うと、アイコンをクリックし検索サイトを開いた。

「おお、すごいじゃん!」
「うむうむ、もっと褒めてくれ給え!」

いや、こなたにとっては当然なのかもしれないけれど、本当にすごいことだと思うわ。

「でも、持つべきものはパソコンに詳しい友達ね。私なんかさっぱりだからさ、こういうの。」
「それは聞く人が聞いたら、とんでも発言だよかがみ。」
「そうなの?けどまあ、あんたになら問題ないでしょ。」

そんなことを話していると、部屋のドアからノックの音が。

「おねえちゃん、こなちゃん。クッキー焼けたから一緒に食べようよ。」

うむ、我が妹ながらちょうどいいタイミングね。

「それじゃあ、お茶にしましょうか?」
「そうだね。それじゃあ私は、先にこれをつかさの部屋に置いてからいくよ。」

こなたはそう言って、パソコンの電源を二台とも落とした。そして片方を両手に抱える。

「了解。それじゃあ、行こう。」

そして私たちはつかさのところへと向かっていった。
さて、その後の出来事はなんてことはない。
つかさのクッキーを食べて談笑し、部屋に帰ったら、散らかった部屋を片付けた。
それからまたいつもの世間話をしたり、ゲームをしたり……
要するに、いつもの楽しい日常だった。

その夜の事。さっそく調べ物をしようと、私はしまっておいたノートパソコンを取り出した。
が、取り出したパソコンは私のものではなかった。

「このパソコン、つかさのじゃない。……こなたの奴、間違えたな。」

まあ、間違えても無理はない。
つかさのパソコンと、私のパソコンは同型の機種なのだ。
違いと言えば、名前用のシールが貼ってあるかどうかくらいだ。
ちなみに、名前用のシールが貼ってるのがつかさのパソコン、貼っていないのが私のものだ。
このことは教えておいたはずなのだが、見落としていたのだろう。
仕方がない、心の広いかがみさんだ。ネットにまで繋げてもらったし、今回だけは多めに見てやろう。

「さてと……それじゃあ、つかさに教えてあげないと。」

そう思い、私は部屋を出ようとドアを開けた。
すると、目の前につかさが立っていた。両手には私のノートパソコン。
どうやらつかさも、自分のパソコンじゃないということに気がついたらしい。

「ああつかさ、丁度いいところに……」
「おねえちゃん!」

私の言葉を、つかさがそう言って遮った。しかも大声で。
つかさ、今は夜中だから、大声を出すと周りにも迷惑だぞ。

「おねえちゃん、大丈夫、大丈夫だから!」
「はい?」

……いったいなんだと言うのか?
いきなり大丈夫とか言われても、訳が分からない。

「私、おねえちゃんがそんな風に思ってたなんて、全然気づかなかったよ!」

うん、私も私がどんな風に思ってたか全然わからないわ。

「だけど、もう大丈夫だから…私はいつまでも、おねえちゃんの味方だよ!」

優しい眼差しで、うれしい台詞をありがとう。
だけど、いい加減何がどうなってるのか説明してくれないかな?

「つかさ、あのさぁ……」
「大丈夫だよ、言いたいことは全部分かるから。私たち双子だし!」
「おーい……」

駄目だ、もうこの妹は何も聞いていない。

「というわけで、これからは全力で応援するからね!」
「はあ、なんだか知らないけどありがとう。」

とりあえずお礼を言っておく。

「はいこれ、おねえちゃんのパソコン。」

私はつかさが両手に持っていたパソコンを受け取る。

「それじゃあ、おねえちゃん。お休みなさい。」
「うん、お休みなさい。」

つかさは言いたい事だけ言って、自分の部屋に戻っていった。
帰る途中に「そうだ、ゆきちゃんにメールしておかなきゃ。」なんて言っていた気がする。

「まったく、一体なんだって言うのかしら……って、あの子自分のパソコン持って帰ってないじゃない。」

パソコンは明日にでも返せばいいけど、本当に何をしにきたのだろうか?

「……とりあえず、自分の用事を済ますか。」

つかさの事は一旦保留。私は机に戻ると電源のコンセントを接続し、パソコンを起動させた。
そして検索サイトにアクセスし、キーワードを打ち込んで、検索ボタンをクリックした。

「……うん、これでいいかな。」

2、3ページ検索したところで、なんとかめぼしいページを見つけることが出来た。

「こういう時って、パソコンって便利よね。本だと探すの面倒だったりするし。」

なんて呟きながら、私はノートに内容を書き写す。
いっそのことプリントアウトでもすればいいのだろうが、残念ながらこの部屋にはプリンタはない。
よって、私はせっせと画面に映し出される文字を書き写すしかないのである。

「よし、あと少し……って、あれ?」

書き写す部分が残りわずかというその時、急にモニタの画面が暗くなった。
そしてその後に映し出されたのは………

「な、なによこれ………!!!」

映し出されたのは、スクリーンセイバー。だけど、ただのスクリーンセイバーではない。
次々に画面に表示されては切り替わる写真はすべてこなた。
それもご丁寧に、スクール水着やら、メイド服やら……要するにオタクっぽい格好のオンパレードだ。
それが数秒ごととに切り替わる。全部カメラ目線ってことは、全部自分で撮ったのか?
そしてここが最も重要なのだが、その写真の下にはとある文章が右から左へと流れていっている。


その文章とは…



「こなたは私の嫁」



……………

………

……


ああ、分かった。

おお、分かった。

よし、分かった。

つかさのあの挙動不審な行動は、すべてこいつの所為と………
私のパソコンだと気付かず使ってしまい、そしてこれを見てしまったと……

「~~~~~~~~~!!!」

私は思いっきり声を溜めに溜めると……

「こなたあああぁぁぁぁああああああっっ!!!」

あらぬ限りの大声で、あの馬鹿の名前を叫んだ。

もちろん、あいつに聞こえるわけがなく、代わりに家族が全員集合。
さて、その家族に対して、私がどう受け答えしたのか?どう言い訳したのか?
それはお願いだから聞かないで欲しい。



「かがみ~、終わった?」

私はそういって部屋のドアを開けた。
部屋の中では、かがみが私のパソコンのモニタと睨めっこしていた。

「ええ、丁度終わったところよ。ネットにもつながるし、問題ないわ。」

そう言って、かがみが私の方にイスごと振り返えった。

「おお、これで私の新型も戦えるわけか~」
「戦うって、一体何とだよ。」

大学3年の夏。
新型パソコンを購入した私は、かがみにパソコンの設定をしてもらっていた。

「それはそれとして、ありがとね、かがみ。助かったよ~」

私はそう言って、かがみに抱きつく。

「まったく、これくらい自分でやりなさいよ。」
「いや~、こういうのはやってくれる人がいると、やりたくなくなるものなんだよ。ちなみに、パソコンにはどんな事したの?」
「う~ん、ドライバのインストールとか、無線LANの接続とかかな?
あとはウィルスソフトのインストールとかその程度よ。」
「え~、OSの書き換えとかしてないの?『なんだ、このWINDOWSって!滅茶苦茶じゃないか!』とか言って。」
「するか!っていうか、またアニメのネタか?」

いつものやり取り、いつもの会話。この家での日常も、もう3年になる。
そう、色々あって両思いになった私とかがみは、高校卒業後、一緒に暮らしている。
それはもう、本当に、ほんっとうに色々とあったのだけど、ここで語る事ではないだろう。
初めて入居してきたときは違和感があったこの家だが、今ではすっかり私たちの居場所だ。

「ああ、そうそう。私これから、ちょっと買い物にいってくるから。」
「ふ~ん、何買いに行くの?お菓子?」
「どうしてすぐに食べ物に繋げるんだ?大学の講義で必要な物が出来たから、それを買ってくるだけよ。」

かがみはそう言うとイスから立ち上がった。それに合わせて、私も抱きしめるのを止める。

「1時間くらいで帰ってくるから。何かついでに買ってくるものある?」
「う~ん、今日は買い物にも行ったしねぇ……」

ちなみに、今日の献立は肉じゃがにほうれん草のおひたし、それに卵焼きと大根の味噌汁の予定。

「ああ、そうだ。味噌が足りないかもしれないから買って来てよ。いつものやつね。」
「いつものね、分かったわ。」

ああ、『いつもの』っていうだけで、かがみはちゃんと分かってくれるんだ。
そんな関係になれたのが、今でもすごくうれしく思うよ。絶対にかがみには言わないけどね。

「駅前のスーパーで特売やってるから、そこでよろしく。」
「はいはい。それじゃあ、言ってくるわ。」

かがみはそう言って、買い物へと出かけていった。

かがみがいなくなったので、家には私一人。
さて、これからどうしようか?
そうだ、せっかく新しいパソコンを買ったのだ。早速動かしてみよう。

「さて、見せてもらおうか。新型パソコンの性能とやらを。」

なんてことを言いながら、パソコンの電源を入れる。
起動音と共にOSが立ち上がる。

「こいつ、動くぞ!」

誰が聞いているわけでもないけれど、とりあえずもう一つのお約束の台詞も言っておく。
そんな事をしている間に、OSが立ち上がった。

よしよし、流石は新型。起動も早いね。
ええい、パソコンの新型は化け物か?!
私はアイコンをクリックし、インターネットに接続する。

「おお、ちゃんと接続できてる。さすがかがみだね。」

お父さんにインターネットの接続だとか、パソコンの設定などをしてもらっていたからだろうか?
私はそういったのが極端に苦手だ。だから、かがみがこういった部分が得意でとても助かっている。
まあ逆に、私はソフト的なところは得意だけどね。

しかし、かがみはどういう経緯でこんなスキルを身につけたんだろう?
パソコンが得意って訳でもないのに。

「そういえば、設定って言ったら……」

パソコンの設定で思い出した。確かあれは高校2年くらいだっただろうか?
かがみに頼まれて、かがみの家にパソコンの設定をしにいったことがある。
あの時はかがみに頼られた事がうれしくって、出来ない事も出来るって言ってしまったんだった。
それで、必死にネットでインターネットの接続方法とかを探したりして…。
結局設定はうまくいったけど、もしうまくできなかったらどうするつもりだったんだろう、私?

「というか、なんでそんな約束しちゃったんだろう?」

まったく、その通り。出来ないなら出来ないって言えばよかったのだ。私らしくもない。
かがみだって、そう言われたら納得してくれるはずだ。

「やっぱり、かがみに頼られたっていう部分が大きかったのかな?」

でもその頃は、まだかがみに恋愛感情を持っていなかった。
ただの友達、ただの親友。そう思っていた。
……思っていたけれど、やっぱりその時から特別な想いを抱いていたのかな?

「…………」

今更ながら気付いた気持ちに、思わず顔が熱くなる。
ああ、かがみがいなくて本当に良かった。目撃されていたらなんと言われるか。
いけない、いけない。気恥ずかしいし、なにか他の事を考えよう…

「ええっと、そういえばその時、かがみのパソコンに何かしたような……」

とそのとき、急にモニタの画面が暗くなった。

スクリーンセイバーかな?

そう思った後に映し出されたのは………

「ちょっ………」

映し出されたのは、やはりスクリーンセイバー。だけど、ただのスクリーンセイバーではない。
次々に画面に表示されては切り替わる写真はすべてかがみだ。
色んなかがみの写真が次から次へと切り替わる。知ってる写真もあれば、知らないものもある。

「もしかして、これかがみが作った?」

なんで?
どうしてこんなもの作ったの?

そんな混乱を他所に、写真の下の文章が右から左へと流れていく。


その文章とは…



「かがみは俺の嫁」



……ああ、全部思い出したよ。
私はかがみのパソコンに悪戯をしたんだ。
私の写真が次から次へと切り替わり、そしてその写真の下には「こなたは俺の嫁」の文字が流れるスクリーンセイバー。今流れているこれとまったく同じものを、かがみのパソコンにしておいたんだ。
違いといえば写真の人物と文章の主語が私からかがみに変わっている事ぐらいだ。


つまりこれは、あの時の仕返しと言うわけだ。

ああ、まさかかがみがこんな事を覚えているなんて、思いもしなかったよ。

「う~ん、でもどうしたものかな?正直反応に困るよ……」

そう思いながら、このスクリーンセイバーを見つめる。

でも………

かがみはどうやって、これを作ったんだろう?
こ専用のフリーソフトがあれば簡単に作れるけど、それだってかがみには大変な労力だっただろう。

今こうして切り替わって表示されている写真だって、きっと一枚一枚かがみが自分で選んだんだ。

あの文章はどうだろう?
かがみのことだ。きっと恥ずかしがって、最後の最後まで入れようか入れまいか悩んだに決まっている。

それもすべては、私に数年前の悪戯の仕返しをするため……

そんなことを考えていると、このスクリーンセイバーもなんだかとても愛おしいものに感じてくる。

「………それに、書いてある事は事実だしね。」

そんなことを思っている間にも、スクリーンセイバーは次々とかがみの写真を切り替える。
今ここには私しかいないけど、そのままにしておくのはやっぱり気恥ずかしい。
すぐにでも止めてしまいたくなってくる。

だけど、

かがみが買い物から帰ってくるまで。

それくらい……

その短い間くらいは、このままでもいいんじゃないかな。

私はモニタに表示されているかがみの写真を見つめながらそう思った。




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  • ・・・その、スクリーンセーバーを想像すると・・・  ぐばっっ!! -- 名無しさん (2010-01-15 21:56:34)
  • そしてこっそり帰って来たかがみにモニタの写真をうっとり見つめているところを見られて真っ赤になるんですね?わかります! -- こなかがは正義ッ! (2009-01-25 12:39:47)
  • GJ!
    願わくば、二人の結婚生活までの過程もぜひぜひ! -- にゃあ (2008-12-11 04:54:21)

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