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らき☆すた OVA こなかがEdition ~星に願いを~

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匿名ユーザー

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らき☆すた OVA こなかがEdition ~星に願いを~


私たちが泊まっているコテージから、歩いて10分程度。
どうしても眠れなかった私は、キャンプファイヤーやバーベキュー用の広場にやって来ていた。
今は夜中の2時過ぎ。キャンプファイヤーどころか人一人いない。

静かだ。

草木も眠る丑三つ時と昔の人は言ったそうだか、まったくその通りだと思う。

かがみもつかさもみゆきさんも先生もみ~んな眠って、今は私一人。
私だけの時間だ。

私は手ごろな場所を探すと、そこに座り込んだ。
服が汚れるかなと思ったけど、気にしない。

空を見上げると、そこにはたくさんの星。
普段とは違うその夜空に私は少し息を呑んだ。

そうやってどれくらい星を眺めていただろうか?

「助かってよかったな。」

つい、本音がこぼれてしまった。

そう、今日行われたオリエンテーリング、そこで私たちは遭難してしまったのだ。
結果からいうと助かったわけだが、それでも私の気持ちは晴れない。
なぜなら、その遭難の原因は私にあったからだ。

「ああ…なんでこんなことに。」

私以外の誰かが言う前に、先にそうつぶやいた。
かがみたちに先に言われでもしたら、私はきっと立ち直れなかった。

「それはあんたが地図も磁石も、バスの中に忘れたからでしょうが!」

ああ、まったくその通り。なぜよりにもよってその二つを忘れるのか。
口にこそ絶対にしないが、私は本当にこのキャンプが楽しみだった。
まだ卒業旅行や文化祭はあるものの、私たち4人で一緒にというイベントはもう残り少ない。
だからこそ、残り少ないイベントを楽しいものにしようと思っていた。
密かにこのオリエンテーリングでも、絶景ポイントなんかを調べていたのだが…
この失態で、全てが水の泡。泡沫の夢となって消えてしまった。

「なぜと言われれば…そこに山があるから。」

なぜ山道を選んだのか?と言うかがみの質問に対する私の答え。
苦しすぎる言い訳だ。いつもの私なら、もっとうまく答えただろうに。
磁石と地図こそ忘れた私だが、道順は前日の予習ですべて覚えていた。
私が選んだその道は、行く道こそ上り坂だが、
少し歩くと下り坂になっていて、無事にキャンプ場にたどりつく道だったのだ。
まあ、その道が本当に正しかったらだけど。

あの道を選んだとき、間違ってるとは微塵も思っていなかった。
そしてこんな事を考えていたのだ。


私が選んだ道を歩いていって、無事にキャンプ場にたどり着く。
そうしたら、みんなびっくりするだろう。

「泉さんの言うとおりにしたら、ちゃんとたどり着けましたね、キャンプ場。」
「こなちゃん、すご~い!」
「ふっふっふ、こんなこともあろうかと、ちゃんと道順を覚えておいたのだよ。」
「ま、まあ、無事にたどり着いたし、地図とコンパスを忘れたことは大目に見てあげるわ。」

そうして笑いながら、夕食に向かう。


な~んて、そんな他愛のない妄想だ。

現実には、そんなことにはならなかったわけだけど。
一夜漬けが得意だから、暗記物は得意だと思っていたが、どうやらそんなことはなかったらしい。

途中で取り出したビスケット。
あれは本当にたまたま持っていたのだが、そのたまたまにどれだけ感謝した事か。
あれでみんなの空気も和んだし、私の心も少しは救われた。

北斗七星の語り、遭難ごっこ、百物語。

この緊張した空気が、少しでも和むようにと思ってやったことだ。
結局、どれもこれもかがみを怒らせただけに終わってしまったが…

正直に言おう。私は怖かった。傍から見れば、なんてことはないという風に見えたかもしれない。
それでも私は怖かったんだ。遭難する事じゃない、みんなから非難される事が怖かった。
かがみから一足先にそれを聞いたとき、おどけながらも私の体は震えていた。
かがみだったからそれはまだ本心じゃないって分かったけど、
つかさやみゆきさんに言われていたらどうだったか?

もし、あの時携帯がつながらなかったら…
最悪のシナリオを想像する。

きっとかがみたちは私を恨んだろうな。

あの時はまだ危機感が足りなかったけど、もし今のような真夜中になったらどうだろうか?
食べるものもない、道も分からない。携帯電話もつながらない。
ないない尽くしの本当の遭難だ。これで怒らない、恨まない人なんていない。
みゆきさんやつかさだってそうに決まってる。
ああ、かがみはもうすでに怒ってたから除外で。

助かったとしても、いつも通りには戻らない。きっとしこりが残る。
それでだんだん疎遠になって、私は今みたく一人きりになるのだ。

それを考えると、あそこで携帯が鳴ってくれたのは本当にギリギリ。
この遭難が笑い話で終わってくれる、ボーダーラインだったのかもしれない。

「はぁ…」

そんなことを思いながら、私は一人ため息を吐く。
いけない、一人で変な事を考えて、一人で暗くなっている。

気持ちを切り替えようと、なにか明るい話題でも考えようと思った。

けど、何も浮かばなかった。
何時もならくだらない話がいくらでも思いつくのに、どうして肝心な時になにも思いつかないのか。
夜風が強く吹いてきた。私の周りの草木をザワザワと揺らす。
真夏とはいえ、今は真夜中で、ここは山の中。さすがに少し冷える。
上着を羽織りたかったが、もちろんそんなものは持っていない。

「寒いな。」
「だったら、こうすれば暖かい?」

誰もいないはずなのに、誰かがそう言って後ろから私を抱きしめてくれた。
誰かと言っておきながら、その誰かは分かっているけれど。

「かがみ。」

草木も眠る丑三つ時。だけど、私の恋人は眠らないでいてくれたらしい。
まったく、なんで傍にいて欲しいと思うときに、ちゃんと傍にいてくれるのか。

「なに一人でいじけているのよ。」
「いじけてないよ。」

そうだ、私はいじけてなどいない。

「嘘付かない。どうせ、今日のことは自分のせいだーとか、もしあの時助からなかったら?とか、
ずっと馬鹿なこと考えていじけてたんでしょ。」

やっぱりかがみはお見通しだった。
そりゃあ、今日のメインイベントはそれだったわけだから、想像するのは難しくと思う。
けど、かがみはきっと私の気持ちを分かってる。
分かってて言ってくれている。そんな気がするんだよ。

「ごめん、いじけてた。」

オーケー、わかった、降参だ。たまには大人しく素直になろうかね。

「よろしい。」

後ろから抱きしめられてるから顔は見えないけれど、声はうれしそうだった。

「あのね、こなた。私も、つかさも、みゆきも、怒ったりなんかしてないから。」
「でも、かがみはあの時、すっごい怒ってた。」
「あれは、あんたがあまりにも緊張感がないから、つい…」
「うん、分かってる。」

私だってかがみの恋人だ。それくらいのことは分かるつもりだ。

「分かってればいいのよ。で、さっきの続きだけど、もしあの時携帯電話が鳴らなくて、
そのまま歩き通しだったとしても、私たちは別にこなたを責めなかったわよ。」
「どうして?」
「だって、友達ってそういうものでしょう?」

暗い気持ちが一気に晴れる。
私が考えていた想像は、とんでもない勘違いだったのだ。

「ああでも、私とこなたに関してだけ言えば、恋人同士だからね。」
「わざわざ友達から恋人と言いなおす、かがみ萌え~。」
「うるさい!あと、どうしても気になるんだったら、つかさとみゆきには謝っておきなさい。」
「わかったよ~。」

うん、いつもの調子が戻ってきた。
全部かがみのおかげだ。

「かがみ、離してくれる?」

私がそういうと、かがみは私を抱きしめるのをやめてくれた。
私は立ち上がって、かがみのほうを振り返る。
夜風が私の髪を揺らした。だけど、大丈夫。もう寒くない。

「あのさあ、かがみ。」
「なに?」
「実はこのキャンプで、かがみと一緒にしたいことがあったんだよ。」

キャンプに行くと決めたとき、是非二人でしたいと思っていたことがあった。
けど、今日の事件のため、そんなこと言える状態じゃなくなってしまったため、言えずにいたのだ。
でも、今なら大丈夫だろう。ちょうど二人っきりだし。

「星、よく見えるよね。」

私はそう言って星空を指差した。

「そうね。」
「かがみも知ってると思うんだけど、こうして見えていなくても、
空にはたくさんの流れ星が流れているんだよ。」

見えないけど、確かに存在してる。私とかがみの想いと一緒だ。

「だから、流れ星にお願いしようよ。『ずっと二人で一緒にいられますよう』にって。」
「それが一緒にしたいこと?」
「うん。」

恥ずかしくなって、つい顔を下に向けてしまう。

そう、それが私がかがみと二人でしたかったこと。
こんな事子供っぽいし、なによりわざわざここでしなくてもいい。
約束だけなら、学校でだって出来るし、家の中でだって出来る。

けど私は、この山の中の、この星空の下で、どうしてもかがみとしたかった。
こんなことを思うなんて、私にも乙女心が残っていたという事かな。

「な~んて、子供っぽいよね。もちろん、かがみが嫌だって言うんならやらないけど。」
「ううん、お願いしましょう。『星に願いを』なんて、歌の歌詞みたいで素敵じゃない。」

よかった。私はそう思いながら、かがみの手を取りかがみの横に移動する。

私はかがみの指に私の指を絡める。
ずっと一緒。離れないし、離さない。


空には星空、横にはかがみ。


さあ、星に願いを叶えてもらおう。




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コメント:
  • (≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-05-31 17:11:37)
  • センチメンタルなこなた。かわええなぁ
    -- 名無しさん (2012-12-08 21:34:20)

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