みゆきさんを着せ替え隊・中篇

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『みゆきさんを着せ替え隊・中篇』

                        ──浮気なんて絶対赦さない──

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 そして日曜の朝。
「うわー、もうこんな時間! じゃあお姉ちゃん、私、先に行くから」
「おー。気をつけて行ってきな。ああ、こなたには、昼前には顔出すって言っといて」
 つかさの声に、かがみは軽く片手を上げながら反応する。机の上には教科書、ノート、参考書などが雑然と広げられていた。普段は二階の自分の部屋で勉強するかがみだが、ごくまれに小学校時代のように無性に居間に居たくなる病が発病する事がある。今朝も彼女はそんな気分に陥ってしまい、わざわざ自室から宿題セット一式を持ち出してきたのだ。
「うん、わかった~」
 上着のボタンを留める手ももどかしく、つかさは居間を飛び出していく。

「あれ、めずらしいね。日曜だってのに、つかさのほうが早く出かけるなんて」
 入れ違いに、眠い目をこすりながらまつりが居間に入ってきた。かがみの顔を見るなり、にひひ、と笑う。
「いつもはかがみが、こなたちゃんの所に朝一番で飛んでいくのに」
「そんなわけないでしょ、子どもじゃあるまいし」
 そんなまつりの挑発を、かがみは軽くあしらう。これもすっかり日常と化した朝の光景である。
「それにつかさは、こなたのところへ、みゆきの誕生パーティの手伝いをするからって先に出ただけよ。あとでちゃんと合流するんだから」
「ふーん、そうなんだ。らしくもない。別にいっしょに出かけてもよかったんじゃないの~」
「私は宿題を片付けてから出かけようと思っただけよ。きっとこなたもつかさも、そんなの忘れて遊び呆けてるに決まってるんだから」
「そっかそっか。かがみは宿題でこなたちゃんに貢いでるわけだね、わかります」
 さすがにカチン、ときた。先ほどから喋りながらも動かしていたペンを置き、まつりを睨みつける。
「朝っぱらからケンカ売ってんのか、あんたは」
「別に~」
 ニヤニヤと笑いながら、まつりは肩をすくめる。さらに反撃しようとするかがみの機先を制するように、まつりが口を開いた。
「あ、そういえばみゆきちゃんって、あのメガネかけててスタイルのいい娘だよね」
「そうだけど……それがどうかした?」
「なるほど、そうですかそうですか」
 我が意を得たりという感じで、まつりは大きく首を上下に振る。
「……何よ、気持ち悪いわね」
「ずばりそれは、浮気ね」
「……は?」
 意外な言葉に、かがみの眉が一センチほど寄せられる。
「だから、浮気よ浮気。やっぱ同い年の女の子同士なら、胸のおっきい方を選ぶもんじゃないの~」
「ななななな、何言ってんのよ。こ、こなたは、そんな軽い奴じゃ……」
 そう言いかけて、まったく否定する根拠を持ち合わせていない事に気づき、かがみは愕然とする。
 たちまち脳内で膨れ上がる、かがみの幻想世界──。

『おー、ゆきちゃんって着やせするタイプなんだね。胸のあたりとか』
『え、ええ? そんな、恥ずかしいです。そういうつかささんだって』
『え~、そんなことないよ。私なんて全然だよ~』
 泉邸のこなたの部屋で、つかさとみゆきがお互いの胸を比べっこしている。
 だがそんなみゆきの背後に忍び寄る、身長一四二センチの悪魔の姿があった。
 彼女の日本人離れした豊満な双丘を包み込むように、小さな手のひらが踊る。
『あっ……!』
『みゆきさん……』
 こなたの艶っぽい声が、みゆきの耳朶を焦がす。
 その巧みな指使いに、彼女は戸惑いを隠せない。
『あ、そ、そんな。ダ、ダメです。いけません、そんな。つかささんが見て……あっ!』
 頂を強く刺激され、桜色の唇から恥ずかしい声が漏れる。
『ふふ、いいじゃん。今日はつかさもいっしょに。ね』
 突然、目の前で展開される異様な光景に、つかさはどう対処すればいいのかわからない。
『あ、あの、こなちゃん、ゆきちゃん。いったい、何を……?』
『オトナの女の子のヒミツの事。さ、つかさもおいで』
 エメラルドグリーンの瞳に見つめられたつかさは、痺れるような甘い感覚に襲われる。そのまま抗うすべも知らず、絡み合う二人の元に歩みはじめる。
『オ、オトナ……』
 すっかり呆けたつかさの表情からは、もはや理性の欠片も感じられない。

 こうして、三人の爛れた饗宴は──。

「だあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!」
 思わず頭をかかえ、かがみは机に突っ伏した。
「……何、どうしたの。急に雄たけび上げたりして」
「あ……」
 冷静なまつりのツッコミに、かがみはようやく我に返る。しかし内心の動揺は収まらない。
「あー、私、急に用事思い出しちゃった。ちょっと出かけてくる」
「おんや、宿題は?」
「こなたのところでやってくる」
 そう言うなり、広げられていた宿題セットを慣れた手つきで片付けると、かがみは自分の部屋へと姿を消した。

「うーん、わかりやすい、わかりやすいぞ。我が妹よ」
 一段とニヤニヤ笑いを大きくしたまつりは、誰に聞かせるでもない独り言をつぶやく。
「ま、せいぜい頑張れ。若者たちっ」
 あくまでも、ちょっといい話でまとめようとしているまつりだった。

  ◇

 ほどなく。
 泉邸。
 こなたの部屋。
「あ、あの、泉さん。本当にこの服を着るんですか?」
「大丈夫だよみゆきさん、ちゃ~んとサイズは合わせてあるから」
 戸惑いの色を隠せないみゆきに、自信満々のこなたが妖しげなコスチュームを片手に迫っていた。ちなみにそれは『超昂天使エスカレイヤー』のヒロインのものである。
「で、でも、その、ずいぶんとスカートの丈が、短いのですが。そ、それに、胸元だってその……」
「いやいや、このくらいの方がインパクトがあっていいのだよ。インパクトが」
「で、ですが……」
「ほれほれ、いいからお姉さんに任せなさいっ」
「あ~れ~!」
 その時だった。部屋の扉が力任せに開かれる。二重に鍵を掛けておいたはずなのに。

「こ~~な~~た~~っ!」

 二人の見たものは、怒りに我を忘れて攻撃色を浮かべているかがみの姿だった。
「かがみさんっ!」/「げ、か、かが、みっ」
 歓喜のみゆき/驚愕のこなた。二人は好対照な反応をみせる。
「いや、かがみ。だからさ、これはね、誤解、誤解なんだヨ。話せばわかる……」
 だがもちろん、そのようなこなたの言い訳を聞くようなかがみではない。
「あんたなんか、あんたなんか……水でもかぶって、反省するっちゃ~!」
「って、それって、水星とうる星のツープラトン攻撃ですか~~~~~~~~~~~!」
 べきょ、という聞いた事のない音とともに、かがみの電撃を受けて無残にも黒焦げになったこなたの身体が床に転がった。



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  • たまりますんな! -- かがみんラブ (2012-09-26 00:28:40)

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