こなた×かがみSS保管庫

第16話:再会

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【第16話 再会】

その日の無菌室も真っ暗闇のなかにあった。
テレビの明かりだけで照らされたこなたはベッドの上に膝を抱えてひたすらアニマックスを見続けている。

突然入口のドアが開く。

「!!」
こなたは貝のように大急ぎで布団の中にもぐりこむ。
「な、なんですか、入らないでください……殺される……」
こなたは片手だけ出してナースコールのボタンをさぐる。
何度も何度も押すが、返事がない。
「残念ね」
そこにいたのはかがみだった。
「あらあら、フ……そんなものは、邪魔だと思わない?」
ボタンを奪い取る。
「……!」
地震のようにグラグラ震える布団。
かがみはテレビの明かりを反射させた妖しい瞳で見下ろす。
「あら、何を、そんなに怖がってるの……これからは、私達だけの世界を作るのよ」
「助けて、助けて……先生、看護師さん……!!」
「もう来ないわ。私が殺しちゃった。邪魔だし」
「うそ!!うそつかないで!!先生!!先生!!」
「病院って、意外と薬品管理が甘いのね。びっくりしちゃったあ……。和歌山カレー事件って知ってる?
まああんたは自分の過去の記憶すらそもそもないけど……」

「くるしい……だれか」
無菌室の外からうめき声が聞こえ出す。。
ドン、ドン、ドンと壁を叩く音。爪で壁紙をこする音
「ぐがああ、ぐぐぐるぐ……」
「心臓マッサージを……」
バタバタと人が走り回る音。
「解毒剤を……誰か……けいさつ……けいさつ……」
廊下から唸り声と悲鳴が聞こえてくる。
「嘔吐や吐血で外は地獄絵よ。そこらじゅうにお医者さんやら患者やらが倒れてるわ。完全密閉の無菌室じゃわからないだろうけど」
グアーッ!という唸り声が聞こえた。
1,2,3,4……という心臓マッサージの掛け声が重なる。
「ねえ、これからは、私達だけしかいないのよ。私はもう18で、少年法適用年齢外だから死刑なのよ。……だからここで、最期まで、一緒に……」
かがみは薬品の入ったアンプルを光らせる。
「やめてください、お願いします、どうか」
「ねえ、あんた、自分が死んだほうがいい?」
「いやです!!」
「……いっそ死んじゃったほうが幸せということはない?」
「死にたくないです」
「……ほんと?」
「ほんとです!!助けて!!助けてください!!」


かがみの眼から妖しい光が消えた。
カーテンを全開し、電気をつけた。

「おめでとう!!!!」

面会用窓の向こうに、そうじろう、つかさ、ゆたか、成実姉さん、黒井先生、みゆき、みさおなどが全員勢揃いで並んでいた。
みんな笑顔で、一斉に拍手をはじめる。

「おめでとう」

「おめでとう」

「おめでとう」

「おめでとー」

「おめでとうさん」

「おめでとうございます」

「よっおめでと、ちびっこ」

祝い言葉がつづく。

こなたはあっけにとられた顔でその様子を眺めていた。
「おめでと」
かがみは笑顔でこなたの肩をたたいた。
「おめでと」
もう一回、今度はやさしくたたく。
「なんですか?……あなたたち、今私が見てるアニメの最終回のパクリをはじめるんですか?」
そのツッコミが全員にグサッと突き刺さる。


なんとか体勢を立て直す。
「いやー教員研修の救命講習の心臓マッサージの掛け声が初めて役に立ったわー」と黒井先生
「こんなところで病苦のうめき方が役に立つとは思いませんでした……」とゆたか
「いたた、爪が痛い……」とつかさは手をさする。
「うまく演技できるかどうか心配でした」とみゆき。
「つーか、柊のシナリオやばすぎ……医者まで抱きこんでさ。私叫び声で声枯れちゃったぞ」とみさお。
ガヤガヤ言いながらみんな無菌室の扉を大きく開けて中に入ってくる。
「そこのあなた、いけませんよ!!無断で無菌室に入ったら!!」とこなたが叫ぶ。
「医者曰く、白血球の数が増えたので今日から無菌室を出ていいそうだよ」
そうじろうはこなたのすぐ脇に立ち、にっこりと微笑む。

「誕生おめでとう、君の名前は『こなた』。
ようこそ、泉家へ。よく生まれてきてくれたね」

そうじろうは「寿」と書かれた引き出物をこなたに渡した。
「オレはお父さんだよ。これからよろしく。この世界にはたくさん楽しいことがある。これからたくさんそれを経験しような」
「……?」
こなたは引き出物を開く。
……新作のエロゲであった。
「……気持ち悪い」
こなたの返答がグサリ!とそうじろうの胸に突き刺さる。
「あ、あはは、なあに、おまえもそのうち面白さがわかる。Fateは文学、クラナドは人生だということがきっと分かるさ。はは、あはは、はは……」
ひきつった顔でヒクヒク笑うそうじろう。
「……でも、絵がかわいい」
「そ、そうだろ!?かわいい子がいっぱい出てくるぞー。しかもあれやこれやとしてくれるんだ。たとえば……」
そうじろうはペラペラとフラグやら属性やら萌えの概念やら語り出したのだった。

「はじめまして!成実ゆいっていうよ。私はあなたのいとこのお姉さんだよ!ゆい姉さんって呼んでね。いやあ、とうとう私にも従妹ができたんだねえ」
ゆい姉さんはブンブンと手を振った。
「はじめまして。小早川ゆたかといいます。お姉ちゃんのいとこの妹だよ。ゆうちゃんって呼んでね」ゆたかは顔を赤くして照れくさそうに挨拶した。
「……なんで私生まれたばかりなのにもう従妹がいるの?」
こなたが怪訝そうな顔で突っ込んだ。
「はう……どうしよどうしよ」とあたふたするゆたか。
「そ、それはだね!!……この世界には、なぜか妹キャラというものがはじめから存在してだね……」とそうじろうが大慌てで必死に取り繕う。


「よー、どーも、はじめまして。ウチはあんたが通うことになる学校の担任、黒井ななこと言う者やっ」黒井先生がこなたに挨拶した。
「ウチの横にいるのは泉の同級生になる子たちや。どーもよろしゅーな♪」とつかさたちを指差した。
「あなた、初対面のくせになんでそんなに態度でかいんですか?しかもインチキ臭い関西弁だし」
「!!!ぐうっ……」黒井先生は拳を握り締めるも、必死に怒りをこらえる。
「と、とにかく、夜中にネトゲやると必ず会うから、よ、よろしうな……(怒)」

「はじめまして、柊つかさといいます。よろしくね」
「……よろしくおねがいします。つかささん」とこなた。
「つかさって、呼び捨てにしていいよ。ねえ、私はこなちゃんって呼んでいい?」
こなたはそれに答える前にジロジロとつかさの顔を眺め、かがみの顔と見比べた。
「まさか、双子?いや、ありえないですよね……まるで怪獣とひよこ」
「……あのな」とかがみのドスを聞かせた声
こなたは「ひいっ」とかがみから飛びのいたあと「うん、いいよ。……つかさ」と言った。

「高良みゆきです。はじめまして。よろしくおねがいします。『みゆきさん』って呼んでくださいね。困ったことがあったらなんでも質問してください」
「……初対面で、自分から『さん』づけしろって、……なんかあなたお金持ちっぽいし、スタイルもいいし、(糸目になって)ひょっとして威張ってるの?」
「え、え、あの、その……」
「まあいっか……その、メガネ……属性っていうんだっけ?それに免じるよ。んじゃよろしく。みゆきさん」
「は、はい……よろしくおねがいします」

「よっ、ちびっこ。私日下部みさおっていうんだ。よろしくなー」
こなた「(……ムカッ!!)」
「……うっ!しまった、初対面ってことなんだっけ……この呼び方じゃやべえよな……ごめんごめん」
こなた「背景になっちゃえ……」
「と、とりあえず、私のことはみさきちって呼んでくれよな。ちびっ……いやいやこなた」

かがみの番になった。
「次は私ね。私は柊かがみ。つかさの姉よ。よろしくね」
こなたはかがみを見ると顔が青ざめ、布団にもぐりこもうとした。
「ちょ、ちょっと、待ちなさいよ」
「怪獣怖い……」
「そ、そんな……な、何言ってんのよ」
「あなたは出て行って、はやく……」
こなたは布団の中で丸くなって震える。
「怖い、怖い……」
かがみが手を触れようとすると、こなたはひっ!と声を上げビクリと震え、さらに小さく丸まった。


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