第1話:二つのほくろ

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(管理人注:こちらの作品には鬱要素等の表現がございます。そのような展開や描写が苦手な方はご注意ください。
詳しくは作者さんの発言こちらをご覧ください)

【第1話:二つのほくろ】

私は誓います。

こなたは私のものです。永遠に私のものです。

ビッグバンの前から宇宙が終わって次の宇宙が始まっても私のものです。

たとえあなたの場所に行っても、こなたには私の名札がついてます。

もしあなたが24時間365日背後霊でついていたら、私はこなたに25時間366日つきます。

もしあなたがこなたを呼んでも、私はあなたより大声でこなたを呼べます

もしこなたを幸福な天国へ連れて行くのなら、私はこなたのために現世で天国をつくります。

もしあなたがこなたに母親としての愛情を与えるなら、私は来世でこなたの母親になってあなたより愛情を与えます。

もしあなたがこなたを無理やり連れて行ってしまったら、私も無理やり居候として一緒にいます。

もし私達が生まれ変わり、互いに相知らない存在になるなら、私はこなたの体の奥深くにひそむ未知の細胞に生まれ変わります。

もし生まれ変わりもなく、天国も地獄もなく、あなたがただの幻で
死ということが、単にこの宇宙から消え去るだけのことならば
私達は笑顔で同時に……



「徹夜でコミケに並ぶのは邪道だよね~。常識ある人間なら始発だよね」
「いやいや常識ある人間はそもそもコミケなんてものにはいかないから」かがみはただちに突っ込む。
こなたとかがみ、つかさはゆりかもめに乗っていた。
午前5時、すでに車内はまるでラッシュアワーのように客でぎゅうぎゅう詰めであった。
「そもそもなんでこの人たち、みんな同じかっこうしてるの……」
つかさはかつてのトラウマに震えていた。
「地味なチェックのシャツとしわだらけのGパンとメガネとリュックor紙袋たまにバンダナと指ぬき革手袋はヲタクの指定制服みたいなものだよ」
「う……カートの角が当たる」
「もっとも、最近は秋葉がマスコミに露出して一般人に染まり出し
そのせいで妙にファッショナブルな邪道があらわれだしてこま…る」
モノレールが揺れ、こなたはふらついた。「おっととと…」
「ちゃんと手すりにつかまってなさいよ…どうしたのこなた」
「……」かがみはこなたの目がうつろになっているのに気づいた。
「どうしたのよ、酔ったの?顔色悪いわよ」
「……いやいや、最近貧血気味なんだよね…ときどきフラフラするんだ」
「毎晩深夜アニメ見てるからよ…ほとんど寝てないでしょ。録画かニコニコにすればいいのに」
「いやいや、実況や放送直後の感想書き込みが……ニコニコはあくまでリアルタイムのように見せかけているだけで
真の実況とはやっぱり別物だしね。それにすぐ削除されちゃうし」

「うー…」こなたは手すりによっかかった。
「やっぱりちょっと寝不足かな、熱もあるんだよね少し」
「体調悪いのに、常識人ならこんなところ来ないで家で寝てるわよ」
「いやいやコミケだけは別だよ」
「あんたね…」
「あれ?」つかさは気づいた。「こなちゃん、ほくろが2つあるよ?」
「え?」こなたは窓ガラスに映った自分の顔を見た
「ほんとだ、2つあるね」
「ほくろって…増えるの?こなちゃん」
「さあ、でもこれは新しい属性が生まれたと考えればいいねー」
こなたはにんまりしながら新しいほくろをナデナデした。
「ちょっとこなた、その手…」
かがみは気づいた。こなたの手の甲に、同じようにポツポツとした点のようなものが多数広がっているのを。
「これもほくろ?」
「ん??」
こなたは腕を回した。手のひらのほうにも赤いポツポツが広がっていた。
「ああ、これ、二・三ヶ月前くらいからあるんだよね。足にもあるよ、ほら」
両足の膝から太腿にかけて、ボールペンでさしたような1ミリ前後の赤い点が無数に広がっていた。
さらによく見ると、斑点だけでなく青黒いあざが体のあちこちにたくさんあった。

「こなた、それ、階段からでも落ちたの!?それともなんか変なもの食べたんでしょ」
「まさか、かがみんじゃあるまいし。んー、蕁麻疹?なんだろ?変なものは食べてないんだけどね。
まあ痛くもかゆくもなんともないし、そのうち治るでしょ。ま、いまはそれよりコミケが優先だよ」
モノレールはやがて運河を渡り、有明地区に入った。テニスの競技場が車窓を流れた
「うう……」
こなたの顔色がいっそう悪くなった。
「ちょっとあんた大丈夫?次で降りたほうがいいわよ」
かがみはこなたの額に手を当てる。……少し熱い。
「大丈夫だよかがみん、一駅くらい我慢できるし」
その言葉とは逆に、こなたは手すりに身体を目いっぱいもたれさせながら、ハアハアと大きな呼吸をしはじめた。
「こなちゃん、やばいよ、休んだ方がいいよ」
「次は有明か…まあ、待機列の位置まで…歩いてもたかが知れてるし。降りちゃおう……」
ドアが開いた。大量の乗客が駆け足で降りていった。
駅が小さい分ラッシュアワーの新宿駅を越えるほどの人いきれが構内を包んだ。

こなたは駅のベンチでぐったりと座った。ゼイゼイと息を荒げて、声を出すのも辛そうなようすだった。
「なんだろこれ、目が回る。気持ち悪い…」

かがみはペットボトルのお茶をこなたに渡した。
「ほら、ゆっくり飲みなさい」
こなたは手にペットボトルを持ったままうつろな目をしていた。
「……吐きそう、頭がいたい」
「トイレ行きましょ、ほら」
「うー、かがみんおんぶしてー」
「なっ!!」
かがみは一瞬ドキリとした。
しかし、どうみてもこなたは一人で歩けないことになっているのは明らかだった。
「しょ、しょうがないわね、……ほら、おんぶしたげるわ」
「いやーすまんねーかがみん」
こなたはいつものように目を糸目にして甘え声を出した。
しかしその甘え声にいつものように力が入ってないのをかがみは感じた。

「ねー」
「なによ」
「このままさー、もし」
「さっさと言いなさいよ、重いんだから」
「私が、死んだらどうする?」
「へ?」
「だから、私が死んじゃったらさ」
「何言ってるのよ」
「かがみん泣いちゃうだろうなあ」
「はあ?」
「ケータイ小説みたいにさ、変空だっけ?」
「……こいそらでしょ」
「やりながら私を置いて死なないでとか叫んでさ」
「……。落とすわよ」
「どうどう、かがみん、たしかそんな話だったような気がするんだよね? あれちがったかな?イケメンが闘病しながら四十八手を極める話だったような…まあいいや、とにかくスイーツ(笑)」
「私は馬か!いきなりスイーツとか意味不明だし!」

こなたを有明駅のトイレに入れて約10分───
「いや~みんなおまたせ~」
こなたはさっきとは打って変わってすっきりした顔でトイレから出てきた。
「いやーすまんすまん、ちょっとえずいただけ。心配掛けてごめんかがみん~」
駅の階段を下りて、外に出る。すぐ先にあるりんかい線の駅前方面への信号待ちをしている人々でごった返していた
こなたはかがみの背中に抱きついた。
「……なによ」
「いやさ、かがみんの背中あったかくてさー」
「もうおんぶなんて絶対しないからね」
「あれ?おねえちゃん、こなちゃんをおんぶして登校したいとか」
「つつつかさ、そういうことは言わないの…」
「ダイエット目的とか言ってたよね」
「そ、そそうよ。ダイエットの運動としてのおんぶなら、ちょうど、こなたくらいが……」
急に背中のこなたがずりおちる感触。
ドサリと何かが落ちる音がかがみの耳に入った。

「こなちゃん…!」つかさの叫び声。
かがみが後ろを振り返る。

地面にこなたがうつぶせになったまま動かなくなっていた。
青く長い髪が、夏の朝のまだ冷たいアスファルトの上に広がっていた。


───目の前には「癌研有明病院」と書かれた、薄ピンクの病棟がそびえたっていた。



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