花火大会

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カナカナカナ……ひぐらしの鳴き声が聞こえる夏の夕暮れ。
日の入りが早くなって来たとはいえ、まだまだ、残暑は身に沁みる。
ふと、周りを見れば、道往く人は、皆浴衣を着ている。
そして、往来の真ん中を行く私達も、その例には漏れていない。
今日は、夏の花火大会。

人の川の流れに身を任せて、私と彼女も、歩く。歩く。ただ、前を見て、歩く。
どうしてだろう? いつもだったら、他愛の無い話して、じゃれ付いたり、じゃれ付かれたり。
何でかな? 私も、彼女も、無言で、歩く。
決して、居心地が悪いわけじゃない。寧ろ、安心する。彼女といると。
ただ、いつもと違う。それだけ。

ちょっと、横目で隣を歩く彼女を盗み見た。私と彼女の身長差は17cm。こうやって見ると、結構、離れて見える。
周りの人が私達を見たらどう見えるのかな。姉妹? 親友? それとも……?
それとも、なんだろうね。
こう思うのは、彼女の横顔が夕日に照らされていつもと違う雰囲気だからかな。
私の視線に気がついたのか、彼女がこっちを見た。目が逢った。
お互いに、クスっと笑った。
いつもの、私達だ。

彼女が、手を差し出した。私は、それを取る。いつもこうだ。彼女は、私を引っ張ってくれる。肉体的にも、精神的にも。

いつも4人組の、私達。でも、その中でも彼女は、私にとって、特別、だった。
いつからかな、こう思うようになったのは。
初めての出会いは、平凡だったけど。逢う度に過去の誰よりも惹かれていった。
少しずつ、少しずつ……。ゆっくりと、私は、彼女に巻き込まれていった。
いつから、なんて、覚えてない、か。
気がついたら、一緒にいるのが当たり前で、毎週長電話。
私が言って、彼女が呆れて。私が呆れて、彼女が言って。
楽しいね。口に出してはいえないけどさ。

花火は、近所の河川敷。
私達は、芝生に並んで腰掛けた。
辺りはもう、暗い。
彼女の目鼻立ちだけが、かろうじて、見分けられた。
ふと、女の子特有の甘い匂いが鼻腔をついた。
彼女が頭を私の肩に凭せ掛けてた。
ビックリした。
見ると、彼女は寝息を立てていた。
きっと夜更かししたのだろう。
私は、苦笑する。

――いいよ。花火始まったら、起こしてあげる。
私は、彼女の耳元で囁いた。
彼女は、少し、頷いた、気がした。

蒼と紫は重なっていた。


……ヒュルルル……ドーン!!
一発、あがった。
花火が色為す幻想的な空間。その光に照らされた彼女の横顔は夕暮れと違って、あどけなかった。
――起きて、花火、始まったよ。
少し、肩を揺すってやると、彼女は起きた。
でも、まだ眠いのか瞼をこすっている。

ちょっと、ムッとした。今日、一緒に行こうって言ったのはそっちなのに。
思い切り、睨みつけてやる。彼女は、その意味が良く分かっていないのか、私の方をきょとんと見つめるばかりだ。
――どうしたの?
困ったように、慌てたように、私を覗きこむ彼女。時折、年齢より大人びて見えることのある彼女だが、今は、子どもみたい。
私の悪戯心が芽生えた。
私は、目を逸らして、そっぽを向いてやる。あたかも怒っている様に。本当は、怒ってなんかいないのに。
――え? え?
彼女が慌てている。それを思うと、内心、くすぐったいような、こそばゆいような。
そろそろ、許してあげようかな。
彼女をからかって、もうちょっと楽しんでいたいけど、2人で見る花火の方が、きっと、楽しい。

――なんでもない。
そう言って、振り向いた。

ヒュ~……ドォン!
花火の、紅い光に照らされた彼女の顔が、零距離にあった。

――え?

身長差、17cm。その壁は、並んで腰掛けた瞬間に砕け散っていた。
私が、振り向く。
彼女が、覗き込む。
たったそれだけで、どんな呪いからもお姫様を救い出す奇跡が、私たちに、かかっていた。


パスッ……バアァンッ!

――あ。

慌てて、離れた私達。でも、唇に残る感触は、私と彼女が繋がっていた事を示していた。
あぁ……どうしよう。
彼女は、怒っているだろうか。それとも、悲しんでいるだろうか。
嫌な想像が次々と頭をよぎる。
どうしよう、どうしよう……。

ドォオォン!!!

一際大きな花火が、私を、現実へ引き戻す。
一瞬の光輝。彼女の顔は……私と同じだ。相手が怒っていないか、悲しんでいないか、心配している顔だ。
それを見て取ったら、何だか、力が抜けた。
何だ……同じじゃん。
彼女も、微笑んだ。

――ゴメン。
2人で、謝った。
笑いあった。
彼女が相手だったから、まぁ、良いか。お互いに、そう思った。
いや、寧ろ、相手が彼女だったから、良かった。

今日、最後の花火が、上がった。
蒼と紫の色が複雑に交わって、夜空に大輪の花が咲いた。
――今日、泊まってかない?
彼女が、聞いた。
――いいよ、私は、答えた。
地上でも、蒼と紫は重なっている。

私たちの花火大会。

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コメント:
  • 花火大会俺も行きてぇ~ヽ(;▽;)ノ
    でも仕事あるし、彼女いないしどうしようもねぇ~
    _φ( ̄ー ̄ )
    GJでした! -- 名無しさん (2010-08-01 20:21:41)
  • 二人で花火は恋人の定番ですね -- 名無しさん (2010-07-18 18:58:35)

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