私を守る人 貴方を守る人(3)

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『私を守る人 貴方を守る人(3)』

「おーはらっきー!!」

私たちは旅館の一室で、テレビを眺めていた。人気アイドルの小神あきらちゃんが、いつもの口調で話している。
ちらりとかがみの方を見ると、ぼんやりと画面を見つめている。その表情は能面のように無表情で、不気味にすら思える。

「ではまた次回お会いしましょう。バーイニー!!」

私はテレビを消すと、かがみに話しかけてみた。
「かがみ」
「ん?」
「…何て言えばいいんだろう、こんな時」
「…?」
「私じゃ…かがみの力になれないかな?」

「……そんなこと、ないよ」
少し沈黙してから、かがみが言う。
「こうして一緒にいてくれるだけでも、すごく嬉しいし、なんか…つかさとか、家族とは違うものがあるって言うか…」
「…ねぇ?」
「ん?」
「本当に辛かったらさ、逃げてもいいんだよ」
「え…」
「バリバリ仕事してるかがみもかっこいいけど、やっぱり昔みたいに、ツンデレで、たまに怒るけど、基本的には優しくしてくれるかがみの方がいいよ…」
「こなた…」
「生活の心配ならいらないよ。私、一応総合職だし…それに、今までの預金もあるから当分大丈夫だよ。いざとなったら親を頼ればいいんだし」
「でも…」
私は無言でかがみの傍に行くと、思いっきり抱きしめた。
「え…?」
「辛かったら、泣いてもいいし、弱音吐いたっていいよ、人間、そんなに強くなれないもんだよ…」
「こなた…?」
「かがみはよく頑張ってるよ…だからさ、不満とか溜め込まないで、思いっきり発散しちゃえばいいんだよ。話を聞くくらいなら、私にだって出来るよ…」
「…」
「もう…これ以上、かがみが壊れていくの…耐えられない…」

(あれ?何で泣いてんだろ…)
涙が止まらない。どんどん溢れて来る。
かがみの胸元に顔を埋めて、声を上げて泣き始めた。

「こな…た…!」
かがみが私の背中に手を回した。
「ごめん…本当に…私のせいで…」
ふと顔を見ると、涙を流して私を見つめている。
「かがみ…お願いだから…そんなこと言わないで…かがみはもっと人生楽しんでいいんだよ…」
私は浴衣の裾で、かがみの涙をそっと拭った。
「笑ってるほうが可愛いよ」
「ふ…あんたもね…」
「え?「も」ってことは、結構自分に自信あるんだ…」
「え…あ…いやその…」

そのとき、口付けした。

「…」
「びっくりした?ショック療法なんだけど…」
「こ…なた…」
突然、布団に押し倒された。
帯を解かれ、下着を捲られ、肌が露になる。
「え…ちょっと、かがみ?」
「お願い、何も言わないで…」
首筋に柔らかい唇の感触を感じたと思ったら、思いがけないところに指の感触を感じ、体の全てが、かがみに支配されていく。
全く抵抗する気なんて起きなかった。嬉しいとすら思える自分がそこにいて、怖いくらい冷静だった。



今、荒い呼吸をしながら、布団の上で呆然としている。
今起こったことが、うまく理解できていない。
少し体を起こして自分の体を見ると、所々に赤黒い痕がついている。

「ねぇ…かがみ、どうせこの時間誰もいないし、お風呂入って来ない?」
「こなた……」
「何?」
「なんでこんなに、私に優しくしてくれるの?」
「そりゃね…かがみのこと好きなんだから、当然だよ」
「好きって…その…」
「友達以上の関係になりたいって、ずっと思ってたよ。かがみって真面目すぎるから、なかなか言えなかったよ…こういう事になって切り出せるっていうのも皮肉だよね」
「こなたっ…」
かがみが私に抱きついてくる。
「よしよし…」
「お願い…私、こなたと一緒にいたい…」
「大丈夫だよ…それに、かがみには今までいっぱい助けてもらったし」
「私に出来ることだったら、何だってするわよ…」
「ん?なんかデレすぎちゃって怖いな…」
「そういう事もあるのよ」

次の日、回りきれなかった名所へ出かけた。
昨日よりは、会話が増えた気がする。
かがみはずっと私の手を握りっぱなしだった。怖いところを一緒に歩くように、しっかりと。

山道に散歩コースがあったので、登っていくと休憩所らしきものが見えてきた。ちょうどお腹が空いていたので、さっき買ったお弁当を食べることにした。
「ねぇかがみ?」
「ん?」
「ごはん食べるときは、手離そうよ…」
「あ、ごめんごめん!!」
「どうしたの?なんか、すごい怯えてるように見えるけど」
「…なんかね、怖いのよ。こなたがいきなりいなくなったらどうしようって」
「大丈夫だって。私は犬じゃないんだからさ」
「そうよね…」
そう言って手を離した。
「ま、これ食べて元気出そう」
「…うん!」

綺麗な景色、静かな環境、時々聞こえる動物の声。
時間がゆっくり流れていく。
平和だ…。

「かがみ、ごはんついてる」
「あぁ、ごめん」
ヒョイと手でつまんで、口に入れた。
「んー…なんかこういうのよくアニメや同人で見るから、新鮮さがないような…」
「別にいいじゃない。細かいこと気にするとストレス溜まるのよ」
「なるほど、説得力ありすぎるよ」
「言うわね、あんた…」
「かがみだって」
本当にちょっとずつだけど、元に戻ってきている。


翌日から、会社に通い、家に帰るという生活が再び始まった。


ただひとつ違うのが、家にかがみがいるということ。

(おかしい、かがみに養ってもらおうと思っていた頃もあったんだけどな…。
なんで逆転しちゃったんだろ。ま、いいけどさ)

「ただいま」
「おかえりー」
「かがみん、そういう時はね、『ご飯とお風呂、どっちにします?それとも…あたし?きゃっ!!』ってやらなきゃ」
「こなた…なんか、ばかっぽい」
「…そだね…」

「まぁ…それはともかく、どうだったの。新しい職場は」
「うん、多分やっていけると思うわ。パートだけど、手当てが結構充実してるしね。仕事も6時には終わるし」
「そっか、それならいいんだ」
「まぁ…結局仕事も悪くないかなって思えてきちゃってね。せっかく司法試験に通ったんだし…やっぱり信じられる人のコネ使ったほうが利口だと思ったわ」
結局、かがみは仕事を辞めて、しばらく専業主婦になっていた。だが最近、かがみのお父さんから電話があって、知り合いの弁護士が事務員を募集していると言う話を聞き、思った以上にいい条件だったので、再び働くことになったのだ。
弁護士って、探せば結構いるんだな。
「ずいぶん家族にも心配かけちゃったな…私もまだまだね」
「たった2×年生きたくらいでしっかりするわけじゃないよ。私だって未だにしょっちゅう小言言われて…」
「あんたはそういうの大丈夫でしょ。世渡り上手そうだし」
「フン、私だって大変なんだよ。今度いきなり出張だし…めんどくさ」
「それは失礼しましたー。お土産よろしく」

やれやれ…
何となく、私が最近、かがみのペースに乗せられている気がする。前は逆だったのに。
まぁ、こんな人生も悪くないかな。

「ねぇ…かがみ」
「ん?」
「久々にさ、一緒にお風呂入ろうか」
「え?うん、いいけど」
「もう体洗うのめんどくさくてさー」
「…はいはい。先に入ってな」
大金持ちってわけじゃないけど、毎日ささやかな幸せを感じられる。それで十分だ。


あえて、断言しよう。


か  が  み  は  私  の  嫁


(終)


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  • とりあえず、こなたさん、有り難う。 -- 名無しさん (2012-07-20 11:54:37)
  • 心が壊れると感情が死ぬ。
    感情が死ぬと人間性が狂う。
    人間性が狂うと人生が捻じ曲がる。


    かがみんにはこなたがいて本当に良かったよ( ; ; )


    -- 名無しさん (2010-10-08 04:10:11)
  • いやはや素晴らしい、自分が抱いていた理想と理不尽な現実の間で壊れてしまったかがみを元気付けようとするこなたの姿に感動しました。


    弁護士って単純な勧善懲悪じゃない複雑で因果な職業ですからね…。 -- 名無し (2010-08-04 03:22:37)
  • 心身共に疲弊してしまったかがみに対して、
    献身的に尽くすこなたの姿及び心情に心打たれました。
    最後に2人共幸せになれて良かったです。
    (立ち位置がこなた:妻→夫、かがみ:夫→妻に変わっているのも面白かったです)。 -- 名無しさん (2008-10-13 00:00:07)
  • GJしか言えないけど良かった… -- 名無しさん (2008-09-24 02:10:21)
  • いや感動した -- 名無しさん (2008-08-14 02:24:50)

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