私を守る人 貴方を守る人(2)

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『私を守る人 貴方を守る人(2)』

何でだろう。
最近、かがみとの会話が少ない。

話しかけても、うん、とか、あぁ、とか、必要最低限の言葉しか発しない。
常に無表情で、元気が無い。
最近はラノベも少し読み始めたので、さりげなく話題を振ってみても、全然楽しそうじゃない。
休日だって、一日中寝てばかりだ。
(疲れてるのかな…本当に倒れるんじゃないかな、心配になってきた…)
かと言って、無理に聞き出すのもかわいそうな気がして、何も言い出せなかった。

そんな日が続いたある夜。
仕事が早く終わった私は、家で手料理を作っていた。
(かがみには健康でいてもらわなきゃ…未来の敏腕弁護士なんだから)
その時、玄関のドアがゆっくり開いた。
「…」
「あ、かがみ、おかえりー」
なるべく明るい雰囲気を出すようにして言った。かがみを暗い気持ちにさせたくない。
「…」
「…どしたの?」

「……う…あぁ…あああああああああ!!!!!!」

突然、床にへたり込むと、親に殴られた子供のように大声で泣き始めた。
「…どしたの?」
私は同じ言葉を繰り返し、ただ、動揺するだけだった。
「うううう…うーーー…わわ…私…あぁ…ああ…あぁああああん!!!」
慌てて私はスポーツタオルを手に取ると、かがみに差し出した。
「ほ…ほら、これ…」
「う…グズッ…あぁ…」
かがみはスポーツタオルを顔に当てると、嗚咽を漏らし始めた。

「んうーーー…」
「え、何?」
「グスッ…わ、私っ…うぅ…」
私はかがみを抱きしめて、頭を軽く撫でた。
「心配しないで、何でも話してよ…私とかがみの仲じゃん…」
「うぅっ…こな…た…あぁ…」
ただ、かがみを抱きしめ続けることしかできなかった。
心の深い傷を癒してあげたい。
でも、今の私に何が出来るだろう。こうして抱きしめること以外、思いつかない。

「…こなた」
「何?」
「もう…私、疲れた…」
「仕事が?」
「全部、人間関係とか含めて…」
「嫌なことされたの?」
「うぅん…そんなんじゃない…もう、なんか…限界まで来ちゃってる」
「…」
「こなた、私って駄目な女?」
「…」
しばらく沈黙した後、私が口を開いた。
「ねぇ…かがみ、今度、旅行行こうよ。休暇取ってさ」
「え…」
「かがみは頑張りすぎちゃったんだよ。それで今、心が悲鳴を上げているんだ。一旦、仕事を離れてリセットしよう」
「…」
涙でくしゃくしゃになった顔で、かがみが私を見つめる。
「人間、休息も必要だよ」
「……」
かがみはただぼんやりと、こなたを見つめている。
(あちゃー…こりゃ重症だ…)

「ちょっと待ってて」
こなたは流しのほうに歩いていくと、マグカップに牛乳を注ぎ、レンジに入れた。
ブーンいう機械音をだけが聞こえ、しばらくすると出来上がりの音が鳴った。
「これ飲んで落ち着きなよ…ね?」
かがみはマグカップを両手で受け取ると、こくん、こくんと、少しずつ飲み始めた。
(子供みたい…かわいいな…)
「ねぇ、かがみ?」
「…?」
無言で目を合わせる。
「今日…一緒に寝ようか」
「……」
かがみは小さく頷いた。

夕飯を食べながら、かがみは少しずつ話してくれた。
仕事が半端なく増えたこと、
所長から気に入られたと思ったら、先輩から嫌味を言われたこと、
我侭な依頼人に振り回されていること、
半端じゃないストレス、重圧、責任感…。
そういったことが積み重なって、今日一気に決壊してしまったらしい。

今、私はかがみのベッドの中にいる。ベッド自体はそんなに大きくないが、自分の体が小さいので、割と余裕はある。
今日ほど小さい体で生まれて良かったと思ったことはない。
かがみは泣き疲れたのか、横で静かに寝息を立てている。
(かがみ…)
私はかがみの背に体を当てた。
(きっと…大丈夫だよね…)

しばらく経ってから、私は何とか有給休暇を取ることが出来た。
比較的暇な時期ということもあり、意外とあっさり許可された。
正直、お給料よりも人間関係が大事だと思う。
かがみはしばらく休職ということになった。
ぼんやりしていると思ったら、急に怒り出したり、感情のバランスが取れなくなっているらしい。
この状態が続くようなら、カウンセリングを受けるよう言われたそうだ。


北関東の某県。
私たちは今、平日でほとんど人のいない温泉街を歩いている。今は貸しきり状態だ。
「いやぁ…温泉街はいいですなぁ!」
「…そうね…」
どこかの宇宙人のように、無表情で淡々と答えるかがみ。
「ほらほらぁ、温泉饅頭!!買ってよぉ~~」
「フッ…しょうがないわね…」
ほんの少しだけ笑うと、財布を取り出した。

「かがみって甘いもの好きなのは変わらないよね~」
「まぁね…勉強の気分転換にもなるし…小さい頃から好きだったな」
「歯磨きやってんの?」
「は?当たり前よ。そういうのはキッチリやらないと気がすまないの」
「そっかー…こっそり入れ歯を作ってるかがみを想像していたんだけど」
「アホか!そんなわけないだろ」
少しだけ明るくなった。これでいい。

その後、名所巡りをしたが、かがみから以前ほどの元気は感じられなくなっていた。
時々クスッと笑う程度。それもきっと、私に気を遣ってくれているんだろう。目は笑っていない。

なんで…こんなに優しいかがみが壊れちゃったの。
私は、どうしたらいいの。

誰でもいい、私に教えて欲しい。

(続く)




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コメント:
  • 最後の1文、何か怖い -- 名無しさん (2012-12-16 00:01:43)
  • 辛いですね -- 名無しさん (2010-10-08 16:28:10)

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