Happy Birthday konata

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ザアッ……一陣の風が、吹き抜けた。
今はもう花を散らし、新緑を芽吹かせた桜並木を、私とこなたは、歩く。
私がこなたの手を引いて、こなたは私に手を引かれて。
ふと、桜を見上げた。桜の葉、その碧は、こなたの碧。葉を透かして見える空の蒼は、こなたの蒼。

陵桜学園には、一本だけ、名前のついた桜の樹がある。
――星桜の樹。
名前の由来は、知らない。
何でここに来たのかも、分からない。
でも、そんな事はどうでも良かった。こなたと、朝の僅かな時間、こうやって、一緒に、いられるのだから。

星桜の樹の前に、2人で並んだ。手は、繋いだまま。
また、風が吹いた。私から、こなたに向かって、流れる風。
トクン……トクン……こなたと一緒にいる事で、高鳴ってしまっている私の心音も、こなたへと、流れているのだろうか。
そう思うと、いても立ってもいられない。
急かされて、いるのだろうか。
私は、こなたから手を離すと、前に出て、桜の樹を背後にこなたと向かい合った。
「こな――」
こなたが、少し、首を振る。
焦らないで……微笑みが、語っていた。
息を、一つ、二つ……よし!
「こなた」
今度は、止められなかった。こなたは落ち着いて、微笑んでいた。
「何? かがみ」
「えっと……随分、待たせちゃった、わね」
「言いたい事。かがみが本当に言いたい事、見つかったんでしょ?」
「うん……ゴメンね、本当に、待たせた」
「気にしないでいいよ。かがみが言いたい事。本当のかがみを、私は受け止めたいから。どんなに時間が掛かっても」
こなた……やっぱり、アンタって、凄いよ。
私をこんなに嬉しくしてくれる、私をこんなに楽しくしてくれる、今だって、私を、その小さな体で包み込もうと、してくれてるよね。
「ありがと、こなた」
「うん……」
2人で、ふと、空を見上げた。真っ青な、雲一つ無い、快晴。
「こなた……」
「うん……?」
落ち着け、落ち着け。でも、ドクドクと早鐘のように打つ心臓が、痛い! 気持ちが、加速しそう!!
こなたの顔へと、視線を戻した。
ハッとした。
いつだったか、紅い、黄昏の世界で見つめた、見惚れた、笑顔が、そこにあった。
スッと、体中から力が抜けた。気持ちを縛る焦りも、鎖だった緊張も、解きほぐれていった。
こなたに、微笑み返した。
「……好き」
「……え?」
「こなたの事が、大好き」
たった、それだけの、告白。
でも、それが、私の本当に言いたい事。

その時、呆然としていたこなたの顔が、一気に紅くなった。
ボッと擬音が聞こえるんじゃないかというくらい、それはもう、見事なまでに、真っ赤になった。
こなたは、俯いて、肩を震わせている。
「えと……それが、かがみの、言いたい、事?」
「そ、そうよ? 悪い?」
「えと、えと、え~……悪くないよ。うん。全然。でも、えっと……」
さっきまでの落ち着きぶりはどこへやら、妙に歯切れが悪くなったこなたは、時折私を見上げては、視線が会うと、慌てて、視線を落とす。そんな事を、繰り返した。
もしかして……。
「こなた、照れてる?」
「! ~~~っ!!」
これ以上紅く成り様が無い、と思っていたのに。まるで湯気でも噴出しそうな勢いのこなたに、つい、笑みが零れてしまう。
「クスッ……」
「う~、笑うな~」
「だって、まさか、こなたが、こんなに照れるなんて」
「だっ……~~っ、あ~、もうっ」
頬を膨らませて、横を向いたこなた。でも、その頬は、やっぱり紅くて。
私は、そんなこなたの表情を見れるのが、嬉しくて。
「私は本気、だよ。こなた」
「かがみ……」
「恋なのかもしれないし、友情なのかもしれない。分からない。でもね、こなたが好きって気持ちは、確かに私の中に、あるんだ」
「……」
「こなた。ありがとう」
「え、な、何が?」
「私、ずっと、この気持ちに振り回されてきた。焦って、周りが見えなくなって、でもこなたは、そんな私に気がついてくれたよね。
焦らないでって、言ってくれたよね。
信じてって、言ってくれたよね。
いつでも、見ていてくれたよね」
私がそう言うと、こなたはお腹の前辺りで両手を組みながらもじもじとして、
「だって、かがみが、心配、だったんだもん。かがみには笑っていて欲しかったし、私を頼って欲しかったし、何より……私も、かがみが、好きだから」
ちょっと唇を尖らせて、言った。
「ありがとう、こなた」
「……うん」

桜の樹に凭れて、2人で、肩を並べた。
触れ合った所から伝わる体温が、心地良くて。
これ以上無いほど、安心できた。
「ねえ、こなた」
「な~に」
「今日、何の日か、覚えてる?」
「……なんだっけ?」
ガクっとした。コイツは……さっきみたいに、私を包み込んでくれる大きな存在だと思えば、妙に抜けていて。
クスッと笑いながら、こなたの頬を突付く。ぷにっとして、柔らかかった。
「アンタの誕生日でしょ?」
「? え、あ、あ~あ~、そだね~」
「そだね~、じゃないわよ。全く。ハイこれ」
差し出したのは、ずっと前に用意したプレゼント。紅い包装紙で装飾した、小さな包み。
受け取ったこなたの顔は、また、うっすらと色づいていた。
「あ、ありがと……開けていい?」
ニヤッとした。
「ダメ」
「え~!」
「家に帰ってからにしなさい」
「そんな~、ひどいよかがみ様」
「かがみ様はやめんか。アンタ、前に全プレの楽しみ方、言ってたでしょ?」
急な話題の転換についていけず、キョトンとするこなた。
「一度で二度おいしい。もう一個、あげるプレゼントがあるんだから、今は、そっちを楽しんで」
そう言って、私は、髪を留めていたリボンを解いた。パサ、と広がる私の菫。手にしているのは紅いリボン。
それを、こうやって、結んで。
「小指、出して」
「こう?」
小指に巻いて……私の小指にも。
「出来上がり」
「ちょ、かがみ!?」
私達を結ぶ、紅いリボン……ううん、紅い糸。
「気に入らない?」
こなたが赤面するのは、今日で何度目だろう? この顔が見られただけでも、この瞬間を迎える価値はある。
紅く染まったこなたは、ポソリと一言、
「気に入った」
呟いた。
「良かった」

キーンコーン……予鈴だ。そろそろ授業が始まっちゃう。
私とこなたは、繋がったまま、立ち上がる。
この時間が終わることに、寂しさを覚えていた。
何か、まだ、何か、こなたと、この時間を……。
そう思ったら、体が、勝手に動いていた。
こなたの膝裏に左腕を、腰に右腕を廻す。そうして、持ち上げた。所謂、お姫様抱っこ。
「うぉっ!?」
そのまま、校舎に向かって、歩き出す。
「か、かがみ、誰かに見られちゃうよ!?」
「構わないわよ」
「え?」
「だって、私はアンタのことが好き、なんだからね」
「……も~、今日のかがみ、反則だよぉ」
ふふっ、と笑って返す。
そうして、こなたの耳元に、唇を、近づけた。

5月28日。

――ハッピーバースデー。こなた。


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コメント:
  • この作品の、こなた視点も読んでみたいですね! -- クローバー (2013-02-20 21:25:53)
  • ハッピーバースデー -- 名無しさん (2010-08-13 18:36:39)
  • すごい、文章すっごい上手い… -- 名無しさん (2009-04-26 18:02:53)
  • な、なぜか涙が…
    -- こて (2009-01-30 09:01:31)
  • かがみが自分の気持ちや感情に振り回されて、葛藤したり苦しんだりと、前半は読んでいる自分までも、もどかしい気持ちになりました!
    最終的には2人の気持ちが通じ合って、読んでいた自分もうれしくなりました! -- チハヤ (2008-09-11 12:05:59)
  • GJでした -- 名無しさん (2008-05-29 00:08:04)
  • 赤くなって照れるこなたがかわいい!!w毎日ほんとうにおつかれさまでした!とても心理描写が丁寧で心惹かれる作品にGJです。おもしろかったです。 -- 名無しさん (2008-05-29 00:06:35)

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