ココロの距離

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今日はこなたの誕生日。

「ハッピーバースデー、こなちゃん!」
「うわわっ、つかさ!?そんな飛び付いてこなくていいからっ」

それはとても特別な日。

「おめでとうございます、泉さん」
「むふふ、歩く萌え要素に誕生日を祝ってもらえるなんて…世界中の男を敵に回しちゃうねー!」

昼休み、教室には沢山の人が集まった。
こなたの誕生日を祝うため、みんなが思い思いの言葉をかけている。その中にはこなたのクラスの人だけじゃなく、日下部を含む他のクラスや従姉妹である後輩等もいた。

「いやー、こんなに祝ってもらえるなんて…人生初の出来事だよ!」

こなたはみんなに囲まれて凄く嬉しそう。教室の雰囲気はとても楽しいものになっている。そして私も…こなたにおめでとうって言わなきゃいけない。

「ねぇ、かがみー」
「…っ!?」

だけど、何故か私の頭の中にはお祝いの言葉が一つも出てこなかった。
こなたの誕生日を祝いたくないハズもない。寧ろ私は恋人として一番に祝うべきだと思う。それなのに…

「…どしたのさ」
「私…ちょっと用事があるから、行くね」
「あ…待って!」

私はこなたの呼びかけに答えることなく、お祝いムードいっぱいの教室を後にした。勿論…用事なんてものはない。ただ、この空間に居たくなかった。

―――。

「はぁ、何してんのよ…私」

生暖かい風が吹き抜ける。私は気分的に、教室から屋上へと場所を移していた。屋上なんて場所に誰かがいるはずもなく、私は心を落ち着かせる。

「早く、戻らないといけないのに…」

昼休みを過ぎれば、何かタイミングを失ってしまう気がする。いや、もう既にタイミングも何もかも失ってしまったとも言える。

「誕生日…」

あえて言葉を区切るのは、まだ何かしらの抵抗感がある証拠かもしれない。

「おめでとう…か」
「それは誰に言っているのかな?かがみん」
「えっ…」

突然の返答に後ろを振り返ると、そこにはいつもと変わらぬ表情のこなたがいた。

「屋上にいたとはね…探したよ」
「ごめん…」
「いいっていいって」

それから暫く沈黙が続く。こなたは私から目を逸らさないし、私もこなたを瞳を見つめる。時が止まった様な錯覚を覚える。

「…ねぇ、かがみ」
「…ん?」

その沈黙を破ったのはこなた。呼び掛けに意外とはっきりと反応してしまう自分は、早く沈黙という時から抜け出したかったのかもしれない。

「私がみんなにちやほやされて、嫉妬した?」
「違う…」
「…何か嫌なこと、あったの?」
「………」

嫌なわけ…ないのに。それでも私は、その質問に答えられなかった。
ああ、最低だ。折角の誕生日なのに、こなたはきっと機嫌を悪くするだろう。

「…かがみが嫌じゃないなら、話してくれると嬉しいな」
「………」

それなら少しだけ、話してみよう。もしかしたら気が晴れるかもしれない

「何だかね…あんたが凄く遠くに離れて行っちゃう気が…したの」
「ふぇ?…遠く?」
「うん」

誕生日を迎えたら、こなたは私より一つ年上になる。それは当たり前であり、とても嬉しいこと。そして…悲しいこと。

「離れるも何も…こんなに近くにいるよ?」

こなたはゆっくりと歩み寄ってくる。今の私達の身体の距離は、確かに近い。
こなたはいつでも私の側にいて、私を幸せにしてくれる。だけどさ…

「そういう意味じゃなくてっ…」

そんなんじゃない。

「なら、どんな意味?私には分からないよ…」

私の感じる距離は…。

「それは…」

言ってもどうにもならない。
だって、生まれた月日までは…変えられないでしょ?当たり前のことだけど、今まで生きてきた時間というものは私達の関係で唯一変わることの無い距離。

悩んだってどうにもならない。こうしている間にもそれぞれの時は刻まれ続けている。

ねぇ、こなた。
私はいつだって…こなたと並んで歩きたいの。私達の間にある、こんな僅かな距離が煩わしい。

「はぁ~」
「私…馬鹿みたいでしょ?」

こなたが溜め息をつくのは当たり前。ワケが分からない話をされて、うんざりなんだろう。いっそ馬鹿にしてほしいくらいだ。

「ううん、でも相変わらずの堅物だと思ってね」
「え…」

けどこなたは…笑っていた。とても優しい笑顔で、私を見つめていた。

「かがみが何を考えてるか、私にはあんまり分からないよ」
「…うん、だと思う」
「だけどさ、かがみが何か不安を………距離を感じてるなら」
「…なら?」

こなたは私の肩に手を置く。その手の暖かさに、私の鼓動は早くなる。

「そんな距離は、今ここで埋めちゃえばいいよ」

言うと同時に、こなたは私を押すように前へ出てくる。その力に抗うことが出来ず、私は自然に壁の方へと押し寄られていく。

「ちょっ、こなたっ…」

私の言葉を無視し、こなたは私を壁際へと追い込んだ。背中には鉄柵の無機質な感触だけがある。

「かがみ…」

私の名前を呼ぶと同時に、こなたはゆっくりと私の方へ顔を近付けてくる。
それも、とても近い距離まで。

「こなた、このままじゃ………」
「なーに?」

悪戯っぽく笑いながら、こなたは更に顔を近付けてくる。こなたの息が顔にかかり、くすぐったい。自分の顔が熱くなってくるのが分かる。

「その…唇が………」
「唇が、どうしたの?」

身体が少し強ばる。
胸の鼓動がうるさいくらい鳴り響く。それは当たり前。だって、この距離は…

「き、キス…しちゃいそうな………」

私の言葉を聞いた直後、こなたはいつもの悪戯っぽい笑みを全開に浮かべた。
ここでやっと、こなたの行動の意図を理解する。

「初めからそのつもりだよ、かがみん」

ほら、やっぱり。
こうして静かに、だけど確かに私達の距離は無くなった。

―――。

「なんだか…私がプレゼント貰ったみたいじゃない………」

一段落して、私達は屋上のど真ん中に座っている。
こなたは相変わらず笑っているけど、私はそうもいかない。
折角のおめでたい日に悩んで、心配をかけて…挙げ句の果てにはこなたに慰めてもらったなんて、全く自分が情けない。

「気にすることないよ」
「けど…」

私はまだ何も出来てない。とても大事なことを…言わないと。

「私はね、嬉しいことや楽しいこと、悲しいことや幸せなこと…」
「…?」
「ぜーんぶ、かがみと二人で分け合うって決めてるから」

何の迷いもなく、そんなことを言えてしまうこなたに嫉妬しそう。でもそれ以上に…愛しく思えた。
そっか。私の感じていた距離なんて、ただの嫌な幻だったに過ぎない。

「こなた…っ」
「今日はある意味、私達二人のためのお祝いなんだよ」

嫌な気持ちも何もかもすべて、どこかへ流れてしまえばいい。

「…遅くなって、ごめんね。おめでとう、こなた」
「ありがと。じゃあかがみも…おめでと」

だってさ…心はこんなに近くにいるじゃない。
それだけでもう十分でしょう?

「私はいつだって、かがみの側にいるよ」

こなたの言葉を聞いて、自分の誕生日が…ほんの少し、楽しみになった。


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  • これを屋上の入り口でひよりんたちが覗いて・・・ないかw -- 白夜 (2009-10-20 23:49:11)

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