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こなかが観察日記!~序章~

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匿名ユーザー

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「はぁぁああああーーーーっ」
陵桜一の同人作家――とまではいかないが自称・中堅同人サークルの
漫画描きの、私こと田村ひよりは、昨夜からもう何度目になるか分からない
溜息を吐いた。一度目の溜息を吐いた時には真っ暗だったカーテンの向こうも
今は隙間から早朝の柔らかい光が零れている。
んんーっと大きく伸びをすると、背骨が音を鳴らし凝りが幾分か解れるのが感じられた。
数時間座りっぱなしの椅子から立ち上がり、一睡もしていないせいで腫れぼったくなった
眼を擦りながらカーテンを勢いよく引くと、普段ならば心地よいと思える太陽の光が
目に染みた。
「ぅあ……っ。黄色い…太陽が黄色いっス…」
間抜けな感想を漏らしつつぼふん、と重力に逆らわず自分のベッドに倒れた。登校までの時間は
後二時間ほどしかないが、完徹で学校に行くよりはマシだろう。最悪朝食を抜けばいい。
横になることで、どっと疲れが押し寄せ急激に睡魔が襲ってくる。ふわりと意識が
夢の中にたゆたうのを認識したのを最後に私は深い眠りの世界へと旅立っていった。


「ギ…ギリギリセーフっス…!!」
言って、教室の扉を開けるのとほぼ同時に始業のチャイムが鳴った。こんな光景は
一週間ほど前からほぼ毎日繰り返されている。
駅から校舎まで全速力で駆けてきたので口から吐き出される息はぜえぜえとひどく荒い。夏本番と
いうわけでもないのに、額から汗が一筋、もう一筋と流れてくる。
「Oh!Good morningヒヨリ、また徹夜明けデスカ?」
「おはよー、パティ…いやー二時間ぐらい仮眠しようとしたら寝過しちゃって」

ぐったりと机に突っ伏すと呆れたような溜息が頭上から降ってきた。その意味するところを正確に
分かるだけに何か言い返すこともできない。担任はまだ来る気配がなく、岩崎さんと小早川さんが
心配そうな表情を浮かべてこっちに近づいてくるのが見えた。
うぅ…二人に悪いことをしているわけではないのになんでか申し訳ない気持ちになってくるっス…。
「おはよう、田村さん。…あの、だいじょうぶ…?」
「顔色が…悪い…」
あぁ…癒されるっス…岩崎さんと小早川さん二人で居る所を見ただけで和むというか…
眼福、眼福っス…。
「って痛ぁ!!?」
べしん、と大きい音とともに頭の天辺に衝撃が走った。実際には音だけでそんなに痛みはないのだけれど
いきなりのことで驚いたから反射的に叫んでいた。右上をみるとパティが呆れた顔で左手に数学の教科書を握っていた。
どうやら衝撃の原因はそれらしい。怨みがましく半眼で見上げると、パティがふう、と軽く息を吐いた。
「ヒヨリ、妄想もそれはそれでniceなことですガ、節度を守らないといけマセンヨ?」
「ぐ…パティに節度とか言われる日が来るとは思わなかった…!!」
「失礼ナ。物事には大抵の場合限度がアリマス。それをprotectしないと、niceがnice boat.に
なっちゃうかもしれないデスカラ。それに、さっきからミナミとユタカがとても困った
faceをしてイマスシ」
「そうっスね…。この年でひより氏ねとは言われたくないっスし…。
ごめんごめん、おはよー小早川さん、岩崎さん」
パティと二人で一般人には到底分らないだろう会話を終了させ改めてこのクラス随一の
百合ップル……もとい、仲の良い二人の方に向き直る。案の定、二人とも
クエスチョンマークを顔中に浮かべていた。あぁ…オタクと一般人の間にある見えない壁が
チョモランマの如く聳え立っているのが分かるっス。まぁ、これも自分で選んだ道。
一片も悔いなんて無いっスけどね!

「あの…目の下にすごい隈が出来てるけど…本当に大丈夫…?」
「…約…一週間前から…」
小早川さんと岩崎さんの優しさが乾ききった心に染みるっス…!!萎んだ体に空気を入れて
膨らますイメージで、ゆっくりと机に突っ伏していた上半身を起こして
パタパタと体の前で手を振った。
「ダイジョーブっス。いつもみたいに締め切り前、ってだけっスから」
「でも…」
今回は本当にヤバいけど、という言葉はこれ以上余計な心配をさせたくないから
喉の奥で飲み込んで、尚も言い募ろうとする小早川さんをはぐらかす。
「あ、ほら先生来たっスよ!早く席に戻らないと」


「ヒヨリ!lunchをトゥギャザーしようゼ」
後半だけ怪しい英単語を使う某有名人みたいな口調で、パティが私の机に
大手コンビニチェーン店の袋を置いた。時間は12時を半分ちょっと回ったところで、10分程前に
午前中最後の授業が終わり、教室は昼食を摂りに学食にいったり、友達と一緒に食べるために席を立つ
クラスメイト達でざわついている。

「あれ?小早川さんと岩崎さんは?」
「Uh…食堂でdate timeデスネー」
「成る程…」
パティが、小早川さんと岩崎さんと同じように食堂に行っているらしい、私の前の席の人の
椅子をこっちに寄せて座った。コンビニの袋からとサンドイッチとクリームパン、そして
カフェオレを取り出した。カフェオレにストローで穴をあけ、サンドイッチの方の
ビニール包装をペリペリと?す。私も自分のお弁当の包みを解いて箸を持った。

「今回はいつもよりもdangerなんデスネ?」
「うあ…やっぱパティにはバレてたか…。もー、締切までもう日がないのに
全然進んでなくて…」
母特製、少し甘めの卵焼きを口に含んだところで、パティの言葉がここ最近の
最重要懸案事項を思い出させて、舌に乗せた甘味とは裏腹に思わず苦い顔をしてしまった。
教職員の方々には本当に申し訳ないことだけど、授業中も一生懸命ネタになりそうなことを
考えようとして――睡魔に屈してしまった。
「ユタカとミナミのlove lifeは描かないんデスカ?」
「んー…それはこの前描いたばっかりでネタのストックがないんだよね…」
本人たちに聞かれたらマズイ会話をぽんぽん重ねつつ、ご飯を一口。結局、朝ごはんも
食べられなかったのでいつもよりも美味しく感じられる。空腹は最大の調味料、っス。
「あ゛ー今回こそは落としちゃうかもなぁ…」
半ば諦めモードで投げやりに呟くと、サンドイッチを食べ終えたらしいパティが
二つ目のパンの包装を開けてちっちっちっと指を振った。

「ヒヨリ、forgetしていまセンカ?このschoolの2大coupleのもうひと組の方ヲ…!!」
「……!!そうっス!!わ…私としたことが…こな×かがを失念していたなんて…ッ!!」
「そうデスヨ…ヒヨリ…百合は至高にして究極…今こそこなかがで●●で
×××で△△△なstoryを描くのデス!!You copy?」
「あ…I copyっスけど…声がでかいっス!!ほら、検閲で微妙にモザイク掛かってるじゃ
ないっスか!!後、プラネ●スって中々古いところを持ってくるっスね…」
「プラネ●スは不朽の名作デス!!」
ガタン、と音を鳴らしつつ椅子から立ち上がって、唇の端にクリームをつけながら
力説するパティを慌てて抑え込む。女子高生として危ない発言をしていることに
気づいていないのか、それとも気づいていながら言っているんだろうか。
…なんとなく、後者っぽいっスけど…。

「でも…あの二人とはクラスどころか学年も違うっスし…ウオッチングは難しくないっスか?
締め切りまで厳しいっスし…」
そこで、パティがにやりと妖しい笑みを浮かべた。ぞくりと背中が震え、いやな予感が
胸をよぎる。
「ま…まさか…!」
「ソウ…そのまさかデスヨ、ヒヨリ。ワタシたちがwatching出来ないのなら
協力者がいればいいんデス」
「い…いいのかなー…」
「今更何を言っているんデスカ。alwaysユタカとミナミの仲を観察してるクセニ」
「それは…そうだけど…さぁ…」
指摘されたことは、心当たりがありすぎて反論も出来ない。他人の仲を観察することに
罪悪感がないと言えば嘘だけど、見ていて和むのは本当だし、それをついついネタにもしてしまっている。
パティの押しに、爛れた脳と寝不足で判断力を失った頭がそれもいかな、なんて思い始める。
普段なかなか確認することが出来ない、二人の先輩の進展具合が気にならないわけがないし
なによりそろそろネームぐらいは取りかからないと本気で落とす。

「…分かったっス…覚悟を決めましょう…!!」
「…!!じゃあ、ヒヨリ…!!」
「やるっス…田村ひより、やってやるっスよ!!」
「さすがヒヨリ!ワタシ達に出来ないことを平然とやってのけるッ!
そこに痺れる憧れるゥ!」


善は急げ。思い立ったが吉日。頭の中でそんな言葉を並べつつ、私は普段行くことのない
三年生の教室の前にいた。ちなみにパティはというと、留学生ということで目立ってしまうから、と
教室で待っている。三年B組の教室の扉から顔を覗かせると目的の人は、いつもの三人と
喋っている所だった。
(どうやって呼び出すっスかね…)
なるべくなら、泉先輩と柊先輩には勘付かれたくないし…。じぃーーーっと、目でこっちの方を
向かないかと念を送っていると、ちょうど向かいに居たつかさ先輩と目が合った。
まず口元に人差し指をあてて声を出さないように
というポーズをとってから、ちょいちょいと手招きをする。つかさ先輩が私?
と自分を指差したのを見てこくりと頷いた。幸い他の先輩方は話に夢中になっているせいか
私のことはバレていないみたいで、つかさ先輩が三人に何か言ってこっちに来るのを確認してから
出していた頭を引っ込めた。


二人で廊下の隅に移動するとつかさ先輩の方から話しかけてきた。まぁ、当たり前っスよね。
私からつかさ先輩に話かけることは滅多にないし、それはつかさ先輩から私にという意味合いでも
同じだったから。

「どうしたの?…えと…田村さん」
「えーと、折り入ってお願いがあるんス!!」
「え…?私に?」
「そうっス!!というかつかさ先輩にしか出来ないんス!!」
ガシッとつかさ先輩の手を握りながら力説する。もう私にはこれしか無いんっス!
そんな私の情熱――えらく曲がったものかもしれないけれど――が伝わったのか
つかさ先輩が大きく頷いた。
「わかったよ、田村さん!私に出来ることなら協力するね…っ」
「ありがとうございます!!神様、仏様、つかさ様っス!」
目から滂沱の涙を流しながらお礼を言う。ここは廊下で、周りの視線が突き刺さるけれど
今はそんなの関係ないっス!!
「そんなぁー、大袈裟だよぉ。…んと、それで何をすればいいの?」
「日記を書いて欲しいんス」
「日記?」
途端に疑問符を浮かべるつかさ先輩に、そうっスと呟いて一緒に持ってきていた
トートバックからB5のノートを取り出した。ノートは美術室に常備してあるものを
一冊拝借してきたものだ。
「情けない話なんスが、新刊の締切が迫ってまして…。で、つかさ先輩に柊先輩と泉先輩の
日常を書いてもらえないかなーと思ってまして。恋び…ゲフンゲフン…仲の良いお二人を
客観的に見ることで良いネタが出来るんじゃないかなぁと…」
「うん、そういうことなら協力するよぉー」
にっこり笑ってノートを受取るつかさ先輩のあまりの純粋さに、心の中で何度も謝る。
ノートを腕に抱きながらとてとてと自分の教室に戻るつかさ先輩を手を振り、感謝の意を
伝えつつ最後まで見送った。
ありがとうっス!つかさ先輩!このご恩は一生忘れないっス!!

期間は時間がないから四日間だけ。今日はもう昼休みも過ぎてしまったから大きな成果は望めないと思う。
だけど、今日が木曜日だから金・土・日とちょうど平日と休日の
先輩たちを知ることができる。あぁ、今から月曜日が楽しみでならないっス!!
これで漫画の方も何とかなりそうだという思いと、期待感で帰りの足取りは軽く、
おそらく小学生以来ののスキップをしつつ、私は自分の教室へと戻っていったのだった。



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コメント:
  • (≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-03-02 13:31:54)
  • これはwktkせざる終えない
    続きを激しく希望 -- 名無しさん (2008-06-14 00:15:57)
  • ワクテカワクテカワクテカアアァァァ!!!!!!!! -- 名無しさん (2008-05-30 23:05:15)
  • wktk -- 名無しさん (2008-05-30 23:04:12)

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