プロジェクト・こなかが 外伝『子狐こなたんの物語』

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今ではないいつか、ここではないどこかに一匹の小さな狐がいました。
その狐は蒼みがかかった毛が特長で、頭の上から一房、ピョンと突き出していました。
狐は、まだ子どもで、更に子どもの狐の中でも殊更に小さな狐でしたが、悪戯心盛んで、よくよく悪さをしては、近くにある村の人たちを困らせていました。

そんな、ある日のことです。狐の悪戯が目に余った近くの村の人たちが、狐を捕まえようと狐の通り道に罠を仕掛けました。
そんな事とは露知らず、狐は、今日もちょっと悪戯をしてやろうと村へ続く細道を歩いていきました。
バチン!
大きな音がして、狐は村人の仕掛けた虎バサミに引っ掛ってしまいました。さあ、大変です。暴れようがもがこうが、足に食い込んだ虎バサミはその鋭利な歯を足に深く突き立てていくだけです。
それでも、狐は必死に暴れました、しかし、外れません。

丸一日経ったでしょうか。狐は力も尽きて、もはや虎バサミに抗うことすら出来なくなっていました。このまま、朽ちていくのだろうか、。狐は、覚悟をして目を瞑りました。その時です――

「お姉ちゃん、ここに狐がいるよ」
人の声がしました。薄目を開けると、薄い紫色をしたショートカットにリボンのワンアクセントが可愛らしい少女が1人立って、誰かを手招いていました。
「ん~?」
手招かれてやってきたのも、また少女。同じく薄紫色の髪の毛を頭の両脇で留めて垂らした髪型に、少し吊り上った目が特徴です。
「本当……狐ね」
「でしょ。そういえば最近、この辺りで悪さばかりする狐さんがいるって聞いたことあるよ」
ショートカット少女の言葉に、吊り目少女は狐に一瞥をくれると、
「もしかしたら、この狐かもね。相当悪さをしたんだったら猟師さんが罠を仕掛けるだろうし」
容赦なく言いました。その態度からこちらに善意があるとは、とても思えません。
狐は、悪戯者であると同時に、負けず嫌いでもあったので、人間なんかに弱みを見せるものかと、刃に挟まれて傷む足を支えながら立ち上がり、唸りました。
強く唸ったつもりでしたが、一晩中虎バサミと格闘していた上に怪我をしているのです。実際には、弱弱しい鳴き声しか出ませんでした。
それを見て、吊り目少女は、フン、と鼻を鳴らすと。
「つかさ、アンタちょっと先に行っててくれる?」
と言いました。ショートカットの――つかさ、と呼ばれた少女は驚いて、
「え、お姉ちゃんは?」
と聞き返します。
「後から行くから。お母さん達に遅れるって言っておいて」
それを聞いたつかさは、こくんと頷いて。
「あんまり遅れちゃダメだよ?」
と言い残し、去って行きました。後に残されたのは狐と釣り目の少女。

狐は警戒しました。この少女がここに居残った理由は何だろう。もしかしたら自分を食べるつもりかもしれない。
ですが、狐の予想に反して釣り目の少女は屈みこむと、狐の足を縛っていた虎バサミを外し、懐から布と薬を出すとそれを狐の足に強く縛り付けました。
狐は驚きました。一体何の理由があって少女は狐を助けるのでしょう。そう思い、少女の顔を覗き込みます。すると少女の髪と同じ、薄紫色の瞳とぶつかりました。
少女は、狐の想いを見透かしたように、再び鼻を鳴らすと、
「別に、深い意味なんてないわよ。弱っている動物を見たら放っておけなかっただけ。布には薬塗っといたから、2,3日で傷は良くなるわよ。じゃあね。もう捕まったりしたらダメなんだからね」
そう言って立ち上がりました。最後に、狐のほうに先程まで見せなかったような微笑みを向けると、そのままつかさが行った方向へと歩いて行きました。


狐は、傷ついた足を見、少し匂いを嗅ぎました。まだ、あの少女の匂いが残っています。
狐にとって、人間は悪戯の対象でもあり、また、同胞を狩る恐怖の対象でもあったのです。しかし、あの少女は違いました。猟師の仕掛けた罠に嵌り、動けなくなっていた自分を助けてくれた。

狐は、少し迷った後、少女が去った方向へ歩き出しました。
自分に残った少女の匂いを頼りに半日ほど。人に見つからないように街道から外れて獣道を行きました。
そして、匂いが追いついた先には神社が広がっていました。狐にとってそれは意味を成すものではありませんでしたが、その佇まいと荘厳さは伝わってきます。

しばし眺めていると、人の話し声が聞こえました。狐は、慌てて近くの茂みに隠れます。すると、
「かがみ、ちょっと手伝って~!」
「どうしたの?」
あの少女です。狐の心の臓が跳ね上がりました。少女は、巫女服を着てパタパタと境内を走ると、社の裏に回ります。狐も、悟られないよう、そっと後をつけました。
「ちょっとそっち持って」
「うわ、まつり姉さん。御神輿1人で持てないんだから無理しないでってあれほど言ったのに……」
「だって早く終わらせたかったし。ほら、かがみそっち持って」
「ハイハイ」
少女は、もう一人の人間と一緒に御神輿を担ぐと境内まで歩いていきました。お祭りが近いみたいです。
ですが、狐にはそれ以上の関心事が生まれました。あの少女の名前です。
――かがみ
あの少女は、そう呼ばれていました。
「か……が……み……」
狐は、人間の口を真似て、その名を呟いてみます。
「か……がみ」
さっきよりも、強く。
「かがみっ!」
はっきりと。

姉のまつりの横着のせいで、御神輿を担がされていたかがみはその声に振り向きました。
しかし、誰もいません。気のせいかと御神輿を担ぎなおした時、また聞こえました。自分を呼ぶ声が。
はっと振り向くと、そこには、足を抱えて丸まった狐が倒れていました。


「そっか~、あの時お姉ちゃんがあそこに残ったのって、この狐さんを助けてあげるためだったんだね」
狐の足に包帯を巻きながら行ったつかさの言葉に、かがみは頷きました。
怪我をしたまま歩いてきたせいか、狐は衰弱し、弱弱しく震えています。かがみが、そっと頭を撫でると微かに、コンと鳴きました。
「懐かれちゃったのかしらね。全く、無茶するわよコイツも」
そうは言いながらも、かがみも満更そうでもありません。それを見てつかさは、
「じゃあ、家で飼ってあげられないかな?」
と、提案しました。
でもかがみは首を横に振ります。
「ダメよ。動物を飼うのって大変なんだから」
その言葉に、つかさはちょっと唇を尖らせると、
「じゃあ、こんな怪我したままのこの子を追い出しちゃうの?」
と、反論しました。それを言われると流石にかがみもこれ以上は言い返せません。ふう、と溜息を一つついて、
「じゃあ、怪我が治るまでって事で。お母さん達にも後で言わなきゃね」
「やったぁ!」
姉の許可が降りて、つかさは大喜びです。いそいそと狐に近寄ると、
「よろしくね、こなちゃん」
と言いました。
「こなちゃん?」
「うん。狐の鳴き声って、コンコンだから。名前はこなたん。縮めてこなちゃん」
早速、狐に名前をつけたつかさに苦笑しながら、かがみも、
「こなたん、だと少し語呂が悪いかも。こなた、でどうかしら」
そう言って狐改め、こなたを持ち上げました。
「よろしくね、こなた」
すると言葉が通じるはずないのに、こなたは頷きました。少なくとも、かがみにはそう見えました。

さて、その後両親や他の姉妹を説得し、こなたを怪我が治るまでの制限つきで飼うことにしたかがみとつかさ。
かがみに一番懐いていると言う理由で、こなたはかがみの部屋に落ち着くことになりました。
「お休み、こなた」
夜。こなたの為に座布団を敷き、毛布を掛け、就寝の挨拶をして眠りに落ちたかがみ。

そして朝。かがみが目を覚ますと、自分の隣に、果て、見知らぬ女の子が布団に入っているではありませんか。
そして、その女の子はかがみが目を開けたのを見て、
「おはよう、かがみ」
と言いました。




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  • 続き‥‥続きが見たい!!
    -- フウリ (2008-04-30 01:05:34)

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