無題(17-113)

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晴れ、日曜、昼下がり。
外出するのにはこれ以上ない好条件だ。
そんな日に私は、部屋に閉じこもってラノベを読み耽っていた。


「かがみぃー、暇だよー」
「いきなり押しかけたあんたが悪い」
絶好の散歩日和にラノベを読みあさる、というのは変えようのない決定事項で。
さぁ、読むぞ。と意気込んだところに乱入してきたのはこなただ。
直前に来られても、私の頭はラノベのみに絞られていて、他の事が入る余地は皆無だった。
つまり、だって暇だったんだもんなんてふて腐れてる子供――いや、同い年だった――はほぼ無視。
……まではいかないが、ずっと本を読みながら会話していた。
「てゆーかかがみもひねくれてるなぁ……」
「何がよ」
自分でも素直になれない性格なのは分かっているが、ひねくれているとは初めて言われた。
まあ、こんないい天気の日にあえて外出しない辺り、そうなのだろうけれど。
「こんないい天気に部屋に閉じこもって本読んでるなんてさ」
ツンデレなのは私に対してだけで十分だよ、と付けたし一言。
……ツンデレの用途として、それは正しいのか?
そんな疑問と、思考が被った事が気恥ずかしくて、少し強引に話題を逸らそうとする。
「いいじゃない。もし私が外に出てたらどうする気だったのよ」
そう、今家族は出払っていて私しか居ないのだ。
何の連絡も無かったし、私が居ない可能性だってあっただろう。
「ずっと待ってたかなー」
「そこまでするか」
呆れながら言葉を放つ。
「私はものすっごくかがみに会いたかったのだよ」
「そうですか」
「……そうなのです」
そこで一旦会話が止まり、こなたの顔を覗いてみた。
なんだか複雑そうな表情を浮かべている。
「どうしたの?」
「……かがみ、何か冷たい」
「今日は一日ラノベ読み耽ろうと思った頃にあんたが来たからね」
本に視線を戻し、頭の中がラノベ一色になっちゃってるのよ、と付け足す。
「そりゃさ、邪魔されたら腹立つのも分かるけど……」
困ったように漏らしている声。顔は見ていないので分からない。
「怒ってはいないわよ? ただ今は本以外の事になかなか集中出来なくてね」
あくまでも本から目を逸らさずに返答。
「……そっか、私も目に入らない訳かぁ」
は? と声を上げた頃にはもう目の前にこなたは居なかった。
どこ行ったのだろう、と部屋を見渡そうとすると、後ろ向きに倒される。
倒した犯人は一人しか思い浮かばない。
……一回くらい殴ろう。そう決心して、来るであろう衝撃に備えた。
しかし、伝わってきた衝撃は想像していたのより全然やわらかくて、おかしいな、と思いつつ天井を見上げる。

「かーがみんっ」
「……私が見上げたのは天井なんだけど」
目の前にはこなたの顔がドがつくほど大きく映っていた。
もしかしなくても、これは。
「ひざ枕だよー」
「いちいち言わんでいいっ!」
理解した途端に、顔が真っ赤になるのを感じて。
慌てて体を起こそうとするけれど、こなたに肩を掴まれてそれは出来なかった。
「ささ、早く読もう」
こんな状況で読めるか! とも思ったが、ほぼ意地で読み続けてやろうとした。

「…………」
「…………」
沈黙が、痛い。
たった数分なのだが、私の顔は真っ赤に染まったままだし、本にも集中出来ない。
こなたから顔を隠すように、掲げてある本を支えている腕も疲れてきた。
「やっぱこんな状況で読めるか!」
ついに根負けして体を起こす――が、また阻まれる。
「あー、もう本読む気分じゃないし。他の事しない?」
「私はもう少しこのままでいたいのだよ」
正直恥ずかしいのだけれど……さっきまでの事を根に持たれているのだろうか。
「なんでよ」
言葉に詰まったように停止。数秒してから「なんでも」と答えた。
「……起きよう」
「わ、待って! 分かったよ! 言うから!」
強引に体を持ち上げようとすると観念したように叫ぶ。
「怒らない? 笑わない? 引かない?」
「内容にもよるわよ」
ここまで悩むこなたも珍しい。一体どんな理由があるのやら。
言いにくそうに数秒迷った後、口を開く。
「えっとね、私は、かがみが、好き、です」
「……………………はい?」
ぶつ切りで、しかも段々声が小さくなっていくので聞き取りずらかったのだけれど。
私を、好き? こなたが?
「えー……、今、なんと?」
「あー、えっと、脳内補完で何とか!」
この反応からすると、聞き間違えではないようだ。
顔を真っ赤に染め、少し涙目になりながら顔を背けるこなた。本当にレア物の表情だな。
しかし好き、というのはLOVEの方だろうか。いや、この状況でそれ以外はほぼ有り得ない。
というよりこれでLIKEの方だったら少し嫌だ。

「……ごめん。やっぱり迷惑だった、よね」
私の沈黙を否定と受け取ったのだろう。こなたが気まずそうに言う。
「そんな事ないわよ。それだったら即逃げてるし――あれ?」
「ど、どしたの?」
「今なんか無意識に言葉が……えーと、」
そういえば突拍子もない告白に気を取られていたが、私はどうなんだろう。
普通はどん引きするだろうけど、気にならないどころか無意識にフォローまでする始末。
人生初の告白――この言い方だと自分がしたみたいだ――には
戸惑うかとも思っていたが、それもない。
むしろ頭の中が澄み渡っていて余計な事が考えられない。
何なんだろう、この気持ち。
少なくとも嫌なものではないのは確かなのだが、素直に喜んでいるのとも微妙に違う。
この感情にぴたりと当て嵌まる言葉が分からない。
何だか考えるのが辛くなってきて、それでも中断出来ない。
これはつまり、そういう事なのであろうか。いや、自分でも理解出来ないけれど――
「悪い気は、しないわね」
「やっぱ友達から言われても迷惑……じゃないの!?」
「迷惑。何か頭の中ぐるぐるしてるし」
「うぐ」
「でも嫌だ、とかそういうのは無いから」
私はこなたが好きなのかもしれない。恐らく、顔を真っ赤にしながら、告白した。
こなたはこなたで頬をつねって「いたっ」と呟いてから、こちらを見直す。
「……かがみは、いいの?」
「さっき言ったみたいに悪い気はしないし、分からないんだからいいのよ」
「で、でも……」
いつもからは想像できない縋り付くような顔と声。
告白までしてきたのに何でそんな後ろ向きなんだろう。
私はいいと言ってるのにな。
つい、ため息を吐いてしまう。
「……そんなに心配なら、本気で私を惚れさせてみなさいよ」
ほぼ不意打ちのようなセリフにきょとんと目を丸くして。
「そんなの、ずるいよ」
なんて、頬を真っ赤に染め上げながらもいつもの笑顔を見せてくれる。
「ね、かがみ。ちょっと目閉じて」
言われた通りに目を閉じる。
実は未だにひざ枕されたままだったので、こなたが動いているのが分かった。
息が額にかかるほど近くで、ゆっくりと囁かれる。

「かがみ。私はかがみが大好きです」

じわじわと顔が真っ赤になるのを感じる。
次は、やっぱり……されるんだろうな、と思うと少し体が硬くなった。

「もう、目開けてもいいよ」
「あれ?」
「ん? どうかした?」
「いや、こういう時って普通……するもんじゃないの?」
にやぁ、とこなたの顔がいやらしく歪む。
……もしかして、私、地雷踏んだ?
「かがみ様はしてほしかったんだー?」
「ち、違うっ!」
「――そうだね。キスはかがみが本気で私に惚れてくれてからだよ」
「……そう」
「かがみん、顔真っ赤ー」
はにかんだように笑って、私の頬をつつく。
「こなたこそ」
私達、今日は何回顔真っ赤にしてるんだろうね、と笑いあう。
ずるいのは、そっちの方だ。
この調子だと私はすぐにほだされてしまいそうで。
けれど、それを素直に認められるような性格でもなくて。
うん。こっちから『大好きだ』と言ってやるのは散々焦らしてやってからにしてやろう。
そんなひねくれた結論を出して、もう少しだけ、こなたのひざに頭を乗せている事にした。


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  • GJ!甘かったです!!ニヤニヤしっぱなしですww -- 幸星 (2009-09-23 23:47:52)
  • 内容が、ものすっっっごく甘くて読んでて脳が半分溶けた!!!! -- チハヤ (2008-07-19 15:25:23)
  • 最後のレスの半角になっていた部分を修正しました。 -- 17-113 (2008-04-08 07:40:01)

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