終わりと始まりの間に(続き)

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「終わりと始まりの間に(続き)」

高校生活最後の日が終わった。

今、部屋のベッドの上で仰向けになっている。
そして、ただぼんやりと天井を眺め続けている。

(こなた…)

あの事が頭から離れない。
いきなり私に抱きついてきて、涙を流しながら、胸元に顔を埋めてきたこなた。
普段のあいつからは想像も出来ないほど、繊細で壊れそうだった。

あの後は結局、いつものこなたに戻って、教室でワイワイ騒いでいた。
愛らしくて、時々ちょっと憎らしくて、それでも放っておけないあいつ。
四月からは、離れ離れ。

(会いたい…)

さっきから同じことばかり頭の中を駆け巡っている。
ほんの数日前まで、ごく普通の友人として見ていた。いつもアニメやゲームの話ばかりして、こちらの事情なんてお構いなしに、わけのわからないことをしゃべり続け、気がつけばあいつと同じ世界に足を踏み入れていた。あいつと知り合わなかったら、同人誌を手に取ることもなかったかもしれない。
それでもあいつは、私を友人として見てくれた。特に構えたりせず、自然に付き合ってくれた。そして、親友と呼べるような関係になった。


あいつの無邪気な笑顔が思い浮かんでは消える。


こなたに会いたい

こなたを抱きしめたい

こなたと一緒に過ごしたい


どうして?
あいつのことを考えると、胸の辺りが熱くなってくる。
なんで?

(会いに行こう、あいつに、そして自分の気持ちが何なのか確かめよう)

私は携帯電話のボタンを押し始めた。

(頼む、出て、お願いだから…)

「もしもし~」
いつもどおりの、眠そうな声が聞こえてきた。
「こなた、今なにやってんの?」
「ん~、アニメのDVD見てるよ」
「ちょっと、時間作れないかしら」
「え、いつ?」
「今日!今から!!」
「え、ちょっと待って!今何時だと思ってんの??」
「抜け出しちゃえば平気よ!」
「待って、落ち着いて冷静になろう。こんな時間に表を歩いちゃ危ないよ」
「……」
「かがみがそこまで言うなら、大事な用なんだろうけどさ、やっぱり、友達を危険な目に遭わせるわけには行かないよ」
「……」

友達

私たちの関係は、やはり友達。
それ以上は、望めないのだろうか。

「でも、今、すごく、こなたに…会いたい」
「う~ん…困ったな……」
しばらくお互いに沈黙する。
「じゃあさ、朝になったらうちに来なよ。始発が出る時間なら大丈夫だと思うよ」
「……」
「かがみん、聞いてる?」


「優しいのね、あんた…」
「え?」
「…本当に嬉しい」
「いやいや、別に普通の事じゃん」
「そんなことないよ、そこまで私のこと心配してくれるなんて…」
この場にこなたがいたら、抱きしめている。
いや、あいつに抱きしめられたい。
あいつの胸に飛び込んでいきたい。

「…わかった。そうする」
「うんうん、素直な子はいいね。ポイント高いぞー」
「フフフッ」
こなたらしい表現だ。
(明日こなたに会える、こなたに…)
枕を抱きしめながら布団に潜り込んだ。

(ん…?)
カーテンの隙間から陽の光が差し込んでいる。
(あ、何時だろ…)
時刻は12時半。
(しまったーーーー!!!!)
いかん、卒業したからってたるみすぎだ。
慌てて下に下りた。
「あ、お姉ちゃん、おはよう」
つかさの方が早起きしている。しかも着替えている。ショックだ。
姉の威厳も何もあったものじゃない。
「二度寝したの?」
「え、いや、そういうわけじゃないんだけど…」
「じゃあ考え事してたのかな。私にもそういう事あるからさ」
「ん…まぁ、そんなところね」
「ふーん…」
いたずらっ子のような目でこちらを見つめる。
「な、何よ、言いたいことがあるならはっきり…」
「こなちゃんの事でしょ」
「な?」
「あははは、図星だね~」


(おいおい、一体何なんだ、私がつかさにいいように扱われてる…)
「昨日の夜、電話してたじゃない、聞こえちゃった」
「あ、あ…」
(どこの神様でもいい、つかさの記憶を消し去ってください…)
「気にすることなんて無いよ、春休みなんだしさ、いっぱい楽しんじゃえば」
「え…?」
「二人でどこか遊びに行くんでしょ?なんか盛り上がってたからさ」
にこにこと無邪気な笑顔のつかさ。
(昨日の会話、どこまで知っているんだ…)
軽くため息をつくと、椅子に座って、トーストにかじりついた。
「私は用があって行けないけど、お姉ちゃんと一緒なら、こなちゃん退屈しないだろうな…」
どうやら、私とこなたがどこかへ行く約束でもしたと思っているらしい。
「え、まぁ、その…そんなところね」
「すごく相性が良さそうだしねー」
ブッ!
口に含んだ牛乳を吹いてしまった。
「ひゃあ!!な、何なの~」
「ご、ごめん!!今タオル持ってくるから」
(…何を考えているんだつかさは、全然わからん)

食事の後、こなたに電話してみることにした。
(怒ってるかな…)
自然に手に力が入る。
「…もしも~~し…」
数回のコール音の後、今にも寝てしまいそうな低い声が聞こえてきた。
「こなた?遅くなってごめんね!寝坊しちゃって…」
「ん~…かがみん、受験が終わってたるんでるんじゃないの?」
「べ、別にそんなことは…ない…と思う」
「…まぁ、いいや、で、うちに来るの」
「え、うん…だめ?」
「いいよ~」
「てかあんた、すごく眠そうだけど、ずっと起きてたの?」
「…ん~、なんかDVD全巻見たらこんな時間になっちゃって…」
「相変わらずね…とりあえず、今から向かうわ」
「…ほーい…」


電話を切った。
私は着替えを済ませると、駅のほうへ向かった。

こなたの家に着いた。
ピンポーン
呼び鈴を押しても応答は無い。
(どうしたんだろう…)
何度か押して見たが、誰も出てこない。
「こんにちはー、柊でーす、こなたさんいますかー」
物音ひとつしない。
「すいませーん、誰かいませんかー」
何の反応も無い。
(こなた、確か家にいるはずよね…来てもいいって言ってたし)
このまま上がりこんでしまおうか…しかし、人の家に勝手に入るなんて…。
(寝てるのかな?でも、もしかしたら、ケガでもして倒れてるかもしれない…ここで帰って、後で大変なことになったらどうするの…)
言い訳のような事を自分に言い聞かせると、私は意を決して、こなたの家に上がりこんだ。
(確か、部屋はこっちだったわよね…)

(続く)


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