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『ふぁん☆すた』 第一話

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oyatu1

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ラジオは夢うつつの私にぴったりな曲を聴かせてくれていた。

Oh, I could hide 'neath the wings
Of the bluebird as she sings.
The six o'clock alarm would never ring.
But it rings and I rise,
Wipe the sleep out of my eyes.
My shavin' razor's cold and it stings♪

明るくて、どこか悲壮な曲。

なんだっけこの曲…聴いたことあるんだけどな…。

Cheer up, Sleepy Jean!
Oh, what can it mean
To a daydream believer
And a homecoming queen♪

元気で、どこか不安定で。
まるでベトナム戦争やキューバ危機をはじめとした1960年代の世界情勢を象徴するかのよう…
とまで考えて、まだ受験生から切り替わっていない自分の頭に苦笑。


ああ、『Daydream Believer』、だったっけ?
誰かが口ずさんでた気がするわ。


それにしても随分と眠い。そしてだるい。


もう朝だっけ?


そこで私は興味深いことに気付いた。

――…あれ?私の部屋にラジオなんてないぞ?


『ふぁん☆すた』 第一話 


やけに重い意識を引き上げると共に、これもやけに重い目を開ける。
なんだか私と私の周りの世界の境界線が曖昧だ。
現実が夢になり、夢が現実になる。
私は今そんな状態。
だから私の目の前に広がる見覚えのないくすんだ白い天井も、夢であってほしい。
しかし徐々に覚醒していく意識が、
お節介にもそれがまぎれもない現実だということを教えてくれた。

「ちょ、ここはどこなのよ!?」

バッ、と勢いよく飛び起きた私の腕につけられているのは、…点滴。
右手には閉じられたカーテン。それに遮られて見えないが、窓もあるようだ。
周りの壁は白く、明るい光を反射している。
色気のない部屋。
それを見て私は現時点で自分が置かれているだいたいの状況を把握できた。
つまり、

「病院の中…?」

でもなぜ?


確か、ええと…、あれ??


今の状況につながる記憶が見当たらない。
というよりも昨日や一昨日といった新しい記憶らしきものが見つからない。
相当焦る。動悸も速まる。
仕方ないのでとりあえず覚えているところから順にたどっていくことにした。


―受験が終わって、3月3日に卒業式があって…


そう。私は3月3日に陵桜学園高等部を卒業した。
あの日の空には雲が一つだけ浮かんでいた。
快晴の下、私はみゆき、日下部、峰岸をはじめとする学校の面々に別れを告げた。
高校生活はそれなりに楽しかった。
つかさの世話を焼いたり、日下部を叱ったり、
みゆきのうんちくを聞いたり、峰岸と他愛のない話をしたり。
みんなのいろんな顔が浮かんでくる。
眠たげだったり笑っていたり嬉しそうだったりしょんぼりしたり…。
変わったことはなく、穏やかだった。


今考えてみると、どうやら私は平凡な高校生活を送ったらしかった。
それも悪くはない気もするが、少し寂しい気もした。

 その後、都内の大学へと進学する私は引っ越しの準備を完了させて…

 そこから先が分からない。


まるで時間を蹴り飛ばしたみたいね。


そこで軽く伸びをする。
下ろした右手がカーテンにあたった。


ベッドとベッドを隔たるカーテン。


――向こうに誰かいる…?


人の気配がする。
おそらく向こうもこちらに気づいているだろう。
それか無邪気に寝ているかだ。
私は恐る恐るカーテンに手をかけた。
そして深呼吸をする。


覚悟を決めて…!


カーテンを持つ手に力を込め、横に払った。


…そこにいたのは、青い髪をした少女。
そしてその髪は相当長い。
頭頂部には元気そうにぴょこん、と飛び出した一束の髪。
楽しげな目。
猫のような口。
細見の体。


そんな子がベッドに腰かけてこちらを見ている。

―…かわいい…

瞬間、私の心は高鳴った。

―まてまてまて!!なんでこんなに心臓バクバクなのよ!?
この子は女の子で、私も女の子で、だからそんなはずは…

よく分からない言い訳を繰り返す。
しかしこんな思いに関わらず、私の心にはどうしようもないほどの幸福感が広がっていた。
この感覚は、まぎれもなく、アレだ…。

ここまできたら認めるしかない…。
つまり、その…、私は、彼女に…
『一目惚れ』…をしてしまったらしい…。


「おはよ~」

一人で葛藤していた私に彼女が声をかけてきた。

「えっ!?あ、おはようございます!!」

いきなりのことに裏声になりながらも返事を返した。
…これじゃただの変な人じゃないのよ。
でも彼女から話しかけてくれた。
それだけなのに凄く嬉しい。

「大丈夫?気分は?」

そして脊髄反射的に私は答えてしまった。

「さ、最高です…。」




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  • 春日部… -- 名無しさん (2008-03-10 20:29:14)

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