二人の時間 5話

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『二人の時間』

電車を降りた私は、まっすぐ自宅へ向かっていた。
今日は週末だからと、上司に飲みに誘われた。結構気を遣って疲れた。
帰ったらすぐに寝よう。

春から社会の一員になった。
本当は実家に帰りたかったが、会社から遠いので、都心のアパートで一人暮らしをしている。
今住んでいる街は、都内の人気エリアだ。お父さんが、危ない街には住ませられないと言うので、このアパートを見つけてくれた。
実際、街の治安は良く、駅から近いので、結構気に入っている。
自宅の前に来たので、鍵を開けようと、ポケットに手を入れた。
(ん…?)
鍵がない。反対のポケットにも、上着の中にもない。バッグの中身を全部出して中を確認したが、やはりない。
「あああああああ」
思わず声を出してしまった。どうしよう。ネットカフェにでも泊まるか。それともコンビニで時間を潰そうか。
どっちにしても鍵がないなんて最悪だ。家に入れない。
「どうしよう…」
「どしたの」
ふと、背後から声をかけられた。はて、どこかで聞いたことが…。
「あ、やっぱりかがみんだ」
そこにいたのは、コンビニの袋を提げた、長髪の小柄な女性。
「こ…な…た…」
「おいおい、私はお化けじゃないんだよ。足もちゃんとあるぞー」
「そ…そうじゃなくて!なんでここにいるの」
「…だって私、ここに住んでるし」
どうやら、ちょうど私の部屋の上に住んでいるらしい。
ただの偶然なのか…それとも、どこかの団長が望んだのか。
何を考えているんだ私は。

「いやー、助かったわ」
こなたの家で私はくつろいでいた。ビールまで飲ませてもらっている。
「むふふ、鍵をなくすドジっ子かがみん萌え~」
「ふふっ、あんた、変わんないわねー」
「萌え探しは私の一生の課題なのだよ」
「アッハッハッハ!!!面白いそれー」
「かがみーん…もしかして、酔ってる」
「ぜーーーーーんぜん」
饒舌になっているのはわかるが、ビールのせいなのか。別にいいか。
「そういえばさ、仕事のほうはどうなのよ」
「んー、やっぱきついね。周りが優秀な人ばっかりでさ。ついていくだけでいっぱいいっぱいだよ」
「そっかー、私もそんな感じよ。社会人ってそんなものかしら」



会話が弾む。こなたと二人っきりの時間。楽しくてたまらない。
この時間がもっと続けばいいのに。いつかは終わってしまう…。

「んでさ、セバスチャンが声優デビューしたらしくてさ」
「あぁ、白石君でしょ?なつかしー」

あの日、夜空の下でこなたに抱いた感情。
胸の辺りが熱くて、締め付けられるような感情。
一体、何なんだろう。

「あ、そうだ、峰岸が結婚するらしいわよ」
「え、えーと…誰だったかなぁ…」
「おいおい、学祭で一緒に踊っただろ」

離れたくない。もっと一緒にいたい。
でも、そんな事言ったら、嫌われる…。
嫌だ、でも…。

「どうしたの、かがみん。ボーっとしちゃって」
「え、あ、あぁ…少し飲みすぎたかな。ちょっと水飲ませて」
そう言って立ち上がり、流しのところへ向かおうとした。

「ねぇかがみん」
「何?」
「卒業前にさ、二人で遊びに行った日のこと、覚えてる」
「えぇ、覚えてるけど」
「本当に…あの日は楽し……」
急にこなたが黙り込んで俯いた。
「どうしたの」
「かがみ…」
少し潤んだ目で私を見つめる。
「…今日さ、かがみに会えて、本当に嬉しかったんだ。
大学卒業したらもう二度と会えないんじゃないかって思ってたんだ。でも今日、会えた」
「こなた…」
「変だと思うだろうけど、私さ、ずっとかがみの事気になってた。高校で会って、一緒に遊んだり、一緒に笑ったり、
たまに怒られたりしたけど、毎日楽しかった」
「…」
「でも、正直なこと言ったら、嫌われるんじゃないかって思って…
もうかがみと一緒にいられなくなると思って、ずっと、自分を誤魔化してきたんだ」
「…」
「でも、もうこんなもやもやした気分のまま、生きていくのは嫌なんだ。だから、言っちゃう…」

「…かがみのこと……好き」


こなたは涙を流している。そしてすすり泣き始め、机に突っ伏した。


「こなたっ」
私はこなたを背後から思いきり抱きしめた。
「私もずっと、こなたのこと好きだった」

なぜだろう。急に心が軽くなった。私のバカ。こなたを泣かせてしまうなんて。

「うえ…え…かがみ…」
こなたは顔を上げると、私の方を振り向いた。
私はそのままこなたを正面から抱きしめ、唇を重ね合わせた。
「ん…」
二人の舌が生き物のように絡み合い、口の中の唾液が全てこなたに吸い取られていく。
「んぅっ…ハァ…」
「ハァ…こなた…んっ…」

長い口付けがしばらく続くと、こなたの体が私から離れた。
互いの唇を離しても、まだ唾液の糸でつながっている。
気が抜けたように虚ろな目をしているこなたが、私を見つめている。
「かがみ…」
「こなた…」
互いの名前を呼び合うと、今度はこなたが唇を重ねてきた。
「んっ…かがみ、大好きっ」
「…ハァッ…こなたぁ!」

人を好きになるって、こういうことなのだろうか。私にはわからない。
でも今はただ、こなたの傍にいたい。
先のことは、後々ゆっくり考えたらいい。
今はただ、この夢のような時が止まらずに続いて欲しい…。




翌朝…。
「…んあ、こなた」
「おはようございますお嬢様」
どうやら、あの後寝てしまったらしい。
テーブルの上には、二人分の朝食が用意されている。トーストやコーヒーのいい匂いが混じっている。
「あ…ごめん。悪いわね。気を遣わせちゃって」
「気にしない気にしない。かがみは私の嫁なんだから」
「さらりと大胆なことを言うなぁ」
「だって、夕べは激しかったじゃん。かがみんったらあんなに大胆に…」
「ちょ、ちょっと待って!わ、私あれ以上のことは…」
「いやぁ、ウサギがオオカミに変身する貴重な瞬間を見られたよ」
「え…」
絶句する私。一体、何が起きたというんだ。
「いや、冗談だから。そんな真面目に固まられても困る…」
「こ…こーなーたーー」
「怒ったかがみんもかわいい~」
恥ずかしすぎる。こいつはひょっとすると、人間の皮をかぶった狐なのか。
「あ、そう言えばさ。鍵あったよ」
「え、ど…どこに」
「財布の間に挟まってた」
「ちょっと、人の財布勝手に見たのか」
「いや、床に落ちててさ。拾い上げたら落ちてきたんだよ」
「あ、そうだったの。…ありがと」
「むふふ、かがみんはつかさ以上の天然だったりして」
「うっ…うるさいっ」

素直になれない性格は、なんとかならないのだろうか。
本当は、すごく嬉しい。


こなた…ありがとう…。


大好き。




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コメント:
  • 頑張れ〜! -- かがみんラブ (2012-09-17 23:33:05)
  • 色んな経験を積んだ後に「やっぱり貴女が好き」と言える二人が好きです。


    作者様GJ!! -- 名無しさん (2011-01-09 11:25:42)
  • このあと同棲ですかね? -- 名無しさん (2010-05-12 16:17:14)
  • コメントありがとうございます。
    悩んだ末に告白するというシーンが書きたかったのです。
    普段能天気に見えても、実は繊細な面がある、というのが個人的に好きでして…。
    やっぱりこの二人には幸せになって欲しいです。 -- 13-351 (2008-04-16 00:22:18)
  • こなたが告白するシーンがちょっと切なくていいです。幸せになれてよかった… -- 名無しさん (2008-04-14 14:11:51)

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