光の射す方へ

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 それは遠い日の記憶。小学生の時…かな?
私の脳裏に響くのは、妹の泣き声だった。

『うわぁぁん!ひっぐ…』

校庭の砂場で何人かの男子に囲まれて、つかさは一人泣いていた。
ある男子の笑っている顔が見えて、私はすぐに奴らが犯人だと分かった。

『こらー!誰よ、つかさを泣かせたのは!!』
『お姉、ちゃん……』

私はその集団に駆け寄り、男子達に掴み掛かろうと躍起になった。

『ヤバイ、かがみが来たぞ!逃げるぞっ!!』

男の子達それに反応して四方に散らばる。私は逃がすまいとそのうちの一人は必死に追い掛けた。

『待ちなさいっ!』
『うるせー!この男女っ』『な、なんですって!!』

つかさを虐めたこともだけど、それ以上に男女という言葉に妙に反応してしまい、私の頭の中は爆発寸前だった。

『凶暴かがみめ!そんなんじゃ誰も怖がって近寄って来ないぞー!』
『なっ…』

…誰も近寄ってこない。
たかが小学生のじゃれ合いかもしれないけど、その言葉は私の心を深く傷付けた。

『……るさいわね…』
『は?』
『うるさい!余計なお世話よっ!!』

私の怒鳴り声を聞いた男子は、怯えた様子で走り去って行った。その後ろ姿を呆然と見送った私は、すぐにつかさの方へ駆け寄り、震える身体をそっと抱きしめてあげる。

『大丈夫だった?つかさ』『うん…』
『全くあいつらは…』
『ごめんなさい。お姉ちゃんにまで迷惑かけて…』

つかさは鼻をグスグス言わせながら、何度も何度も謝ってきた。その頭を優しく撫でながら、私は言った。

『いいの、気にしなくて。私はもう…慣れたから』

私はいつだって強かった。幼稚園の時も、小学生の時も、中学生の時も…泣いた記憶はほとんど無い。
周りからはキツイ性格とか一匹狼だなんて呼ばれて、皆から恐い女だと思われていた。周りの目を気にしていないワケじゃない。けどそれでも構わなかった。私は強くならないと…。

姉という立場もあるが、それ以前に自分自身の自立の為に強くなることを…私は選んだ。
人に頼らず、自分の力で生きていくことが大切だと。甘えを捨てて威厳を持ち、何事にも優れているべき存在でなければと考える。
有能な人間と言う肩書きの裏に隠されていた努力を見せることもなく、私は世間の人々が望む“良い子”を立派に演じていた。

…これでいいんだ。これが私の生きていく糧になる。…そんな考え、所詮は只の自己満足に過ぎないのに。

本当は強くなんてない…。もっと他人に甘えていたかった。本当の私に気付いて欲しかった。誰かの手を掴みたかった。
だけど…私の思いも虚しく、世間の目は厳しかった。

そんな中、私は一筋の光を見付けた。どんな概念にも捕われること無く、本当の自分でいられる場所。

…それがこなたの存在だった。

 ―――。


「かがみはやっぱりツンデレだね、可愛い可愛い」
「うっさい。お前に言われると真剣に腹が立つ…」
「うはー!顔を赤くして反論するかがみ萌えー」
「い、いちいち変な反応をするなっ!」

私はこなたと暗い夜道を歩く。その手は固く繋がれており、彼女の存在をより近くに感じさせてくれる。

私とこなたは…いわゆる恋人関係にある。
同性の恋愛に関して偏見を抱いていた私は、こんな関係になる気などなかった。いつまでも変わらない友達関係でいるつもりだった。
でも…私にとってこなたはそれ以上に値する人で、最終的には自分の方がこなたに依存していることに気付いた。いけないと考えながらも、私は自分の気持ちを抑えられなかった。

こなたは私に色々なことを教えてくれた。
その中でも特に気付かされたことは…人の弱さ。
人は独りでは生きていくことが出来ない生き物。
誰かと支え合って生きていくものなんだと…。

前まで私なら鼻で笑っていたかもしれない。
あぁ…ダメだよね。昔のことなんて考えちゃいけない。私は変われたんだ…こなたに出会えて。ねぇ、そうでしょ?

「ねぇ、こなた」
「んー、どしたの?」
「こなたは…何で私と一緒にいてくれるの?」
「…え?」

こなたが驚きの声を上げた後、しばらく沈黙が続いた。いきなりワケの分からない質問をされて、すぐに答えられるハズがない。
いつの間にか離されている手は、どこか寂しさを感じる。

「かがみ、その質問の意図は何かな?」

こなたの疑問はとても的確なものだった。正直、私の質問に明確な意図なんて何も無かった。
敢えて言うなら、昔の回想浸って不安になった心を…癒したかった。

「…分からないの」
「そっか…」

こなたは小さな唸り声を上げた後、真面目な顔で私を見る。真っ直ぐに届くこなたの視線が、私の何かを擽る。

「私には、かがみが必要」「………ホントに?」
「もちろんだよ。かがみだって…私がいないと困るでしょ?」
「………うん」

何ともむず痒い言葉だったけど、本当のことだったから素直に頷く。でもまだ足りない。不安は私の頭の中をグルグル巡る。

「でも私みたいな性格じゃ、きっと知らない間に人を傷付けてる…」
「………」
「こなただって…酷いこと言われて傷付いて、迷惑に感じてるよね?」

こなたはその言葉に瞳を大きく開く。
…怒ったのかな?きっと、そうだよね。今更こんなこと話されたらさ。

「でもさ、そーゆーことを考えてる…かがみ自身も傷付いてるじゃない?」
「ぁ…」

こなたの意外な言葉に、私は呆気に取られる。
いつだってそう。こなたは誰か一人だけを咎めたりはしない。

「それであいこになっているでしょ?」
「………そう、なの?」

こなたは力強く頷くと、いつものほのぼのとした表情に戻っていた。そして右手の人差し指をピンと立てる。

「人は何でも分け合って生きてるんだよ。喜びも悲しみも…。かがみの痛みは私の痛みになるし、かがみの喜びは私の喜びになる」
「こなた…」
「分かったかな、かがみん?」
「………うんっ」

目頭が熱くなる。私の中の不安は涙となって、頬を流れた。こなたはその涙をそっと拭う。

「かがみは何も心配しなくていいよ。私がついてるから…」

私の強さや弱さ、全てを包んでくれる光が此処にある。それはきっと、二人の未来を明るく照らしてくれる。私はそう信じている。

「あ…かがみ。一緒にいる理由ね、必要なら…教えてあげるよ」

そして今日も、私はこなたに教えられる。
こなたは暖かい微笑みを携えながら、私に手を差し出した。


「気まぐれなキツネが、本当は寂しがり屋のウサギさんに恋をしたまで…だよ」


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