運命を駆ける猫【第一章】

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昔、小さな田舎町に一匹の野良猫が住み着いていた。

その猫は体中が白い毛に覆われ、更に透き通るような淡い紫色の瞳を持っていた。
白猫はとても人懐こく、町中の人から可愛がられ、愛されていた。

そんなある日、この田舎町にもう一匹野良猫がやってきた。

その猫は白猫と対照的に真っ黒な毛をしていて、瞳の美しいエメラルドグリーンが映えていた。
黒猫は人に慣れておらず…噛み付いたり引っ掻いたり、店のモノを盗んだりを繰り返し、町の人達は大変困った。

ところがそんな黒猫は白猫と出会い運命が変わる。
白猫の真っ直ぐな生き方に心を打たれた黒猫は今までの生活を悔い改めた。
白猫はそんな黒猫の姿を見て心惹かれていった。

…二匹が恋に落ちるのはあっという間だった。

白猫との出会いで心を入れ替えた黒猫を、町の人は暖かく迎え入れた。
町の人は二匹に餌を与え、寝床を作り、そして家の中まで迎え入れたりもした。

何一つ不自由無い二匹はとても幸せに過ごしていた。

そんなある日、黒猫は白猫に提案した。もっと大きな街に出てみよう…と。
白猫は始めはそんな気はなかった。なぜなら白猫はこの町が大好きだった。
しかし黒猫は少しだけだと念を押すと、白猫は仕方なく了承した。

街へ向かう道を歩く二匹。
大きな期待と不安を胸に。

…だが、辿り着いた街は想像外のものだった。

多くの人が行き交い、多くの車が走り…そこに自分達の居場所なんて無かった。白猫と黒猫はすぐに元の町に帰ることに決めた。
たった今来たばかりの道を引き返し、町へ急いだ

その時…黒猫は一台の暴走車が全速力を出してこちらに向かって来ていたことに気付いた。
黒猫は自分より数メートル先を行っていた白猫に精一杯の声で叫んだ。

逃げて…と。

しかしその言葉も虚しく、既に走り出していた白猫に止まるのことは無理だった。白猫は暴走車のバンパーに接触し、宙を舞った。

道路の端に落ちた白い猫。街の人が気まずそうな顔をして通り過ぎていく。
黒猫は急いで白猫のもとに駆け付けた。だが白猫は既に息絶えていた。

黒猫は街中を走り回り、精一杯の声で鳴いた。
人々に助けを求めて。
しかし、この町の中には黒猫の声を聞く者などいなかった。

結局何も出来なかった黒猫は、白猫が倒れていた場所まで戻ってきた。
しかし既に白猫の体はそこにはなかった。
探しても探しても、白猫を見つけることは出来なかった。

白猫を探すことを諦めざるをえなかった黒猫は、この街の中の公園に白猫の墓を作った。
そしてその前で三日三晩泣き続けた。

黒猫の綺麗なエメラルドグリーン色の瞳は、泣き続けた所為で真っ赤な血色に染まっていた。
それでも墓の前に居続けた黒猫は、その真っ赤な瞳ため街の人に忌み嫌われた。

稀に餌を置いていく人もいたが、時には石を投げ付けられることもあり、黒猫は段々と衰弱していった。


―――。


白猫の墓の前に居続けて一月がたった。

黒猫はすでに立つことも出来ず、墓の前に倒れていた。
倒れている猫に哀れみを感じたか、黒猫の前に菓子パンをひとかけら置いた人がいた。
しかし黒猫にはそれを食べる力も、誰が置いたか確認する力もなく、心の中で精一杯の礼を言った。
全ての感覚を序々に失いながら、最後に黒猫はこんな言葉を思い出した。

『もし私達が出会ったのが運命なら…別れが来ても、いつかまた必ず会える』

大好きだった白猫が言った言葉。
黒猫は一筋の涙を流した。

その翌日、黒猫は死んだ。

パンのかけらを白猫への手土産に…。       

―――。


それから数年後、話はとある人々を中心に移る。



春休みも終わり、今日から新学期が始まる。

私、柊かがみは二年間で見慣れた通学路を歩く。桜の木は既に満開で、これからの私の道を明るく色付けてくれているようだった。

「今日も良い天気だねー」「そうね、新学期を迎えるには最高だと思うわ」

私の隣でのんびりと話すこの子は柊つかさ。
天然でちょっとおっちょこちょいだけど…とても可愛い私の双子の妹。

「うんうん、何か良いことがありそうだよねー!」
「こらこら、そんなに過度の期待をしないの」
「はーい、えへへ…」
「ホントに分かってるのか…」

脳天気なつかさの考えに少し頭を痛めながら、学校へ足を進める。

「おーい、柊ぃ~!」

ふと、後ろから呼ばれた声に振り返る。その声の主が誰だか分かっているから、別に振り返る必要なんか無いんだけど。

「はぁ…、日下部さ。そんなに呼ばなくても聞こえてるってば」
「やっと三年になれたのにその態度はなんだよ…。なんだ、どうせまた私と同じクラスが良いとか思ってんだろ?」
「はいはい…。しかしまぁ、私もついに三年か…」
「そーだぜ、最高学年なんだってば!」

馴れ馴れしく肩を組んでくるこいつは日下部みさお。中学の時から今まで、ずっとクラスが同じという腐れ縁。お調子者でとにかく明るいのが取り柄の奴。

「もぅ、みさちゃん…騒ぎ過ぎよ」
「うぅ~…あやのまで冷たい」
「峰岸、おはよ!」
「柊ちゃん、おはよう」

騒ぐ日下部を横から注意するこの子は峰岸あやの。
日下部と同じく、中学からの腐れ縁仲間。
とても穏やかで、日下部と一緒にいるのが不思議なくらいね。

「皆さん、おはようございます」
「あ、ゆきちゃんだー!おはよう」
「みゆき、おはよう」
「ふふふ、皆さん相変わらずお元気ですね」

今日も独自のオーラを放っている彼女は高良みゆき。品行方正で勉強もスポーツもお手のものの完璧超人。まぁ少しドジなとこもあるけれども、全く問題にはなっていないと思う。

今日も良い天気で、いつもと変わらないメンバーでの登校。ただ一つ、いつもと違うのは今日が新学期ってことだけ。
私達は今日から高校三年になるんだ。


学校に近付くと、いかにも真新しい制服を着た子達がたくさん歩いていた。きっとこの子達は新入生だろう。いかにも初々しさがあって可愛いな。
そんなことを考えながら、ふと前をみると…生徒達の間から小さな影がこちらに向かって歩いて来ているのが見えた。

今は学校方面に向かっている学生ばかりだから、逆方向に歩いている人なんて余計目につく。
目を懲らして良く見てみると女の子のようで、身長は私よりもかなり低かった。うちの制服を着ているから…一年生か?

そんな観察を続けている間に彼女との距離がどんどん近づく。その姿がはっきりと見える位置まで。
その時、気が付いた…。

彼女は空に溶け込んでしまいそうな蒼くて長い髪と…そして、赤い…深紅の目をしていた。

綺麗…ただそう思った。

「お姉ちゃん、どうかした?」
「…え?」

彼女に見とれて、知らない間に立ち止まっていたらしい。つかさが私を心配して呼び掛けてきた。
私がつかさに視線を送った瞬間…彼女とすれ違った。
ふと、甘い匂いが漂う。

「お姉ちゃん、大丈夫?」「あ…うん。それより…誰か、お菓子か何か食べてる?」
「いや、食べてないぞ~!あやのか?」
「私は知らないわ」
「私も食べてないよー」
「…申し訳ありませんが、私も違います」
「そっか、ならいいんだけど…」
「…お姉ちゃん?」

気になって後ろを振り返る。しかしそこには既に、彼女の姿は無かった。

何だったんだろう…あの子。

「そ、そんなことより早く学校行かないとねっ!」
「柊が止まったんだろー」「うるさいわねっ!」


この時、私はまだ何も気付いていなかった。
普通の何の変哲もない一日が始まると思ってたから。


今の私に気付けるハズなんて…


to be continued?



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