メルトダウン

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「やっほ~、つかさにかがみん♪」
「こなちゃん、いらっしゃい。」
「おーっす、こなた。」
「かがみの太る時期の到来だね~」
「って、おい、なんだと!?」
雪もそろそろ限界を迎え始め、溶ける物が他にもたくさん出てくる時期である。
今日はまさしくその当日であるが、私の場合は受験で脳まで溶けそうな勢いだった。
そう、大学入試が数日後に差し迫った日なのである。

『メルトダウン』 

「いやぁ、チョコレートの季節だからね。かがみは注意しないt…いはいいはい!」
「余計な事を言うからよ。」
「かがひ、いはいっへは!」
「お、お姉ちゃん、そろそろ放してあげたら?」
そう言われて、ようやくこなたの頬を放す。この感触が良くて放したくなくなるのよねぇ。
「かがみ…もう少し手加減してよ…。私だってデリケートなんだからサ。」
「なーにがデリケートよ、化粧とかあんまりしてないくせに。」
「そりゃ、いつもはしてないけど、たまにはしてるんだよ?」
「じゃあ例えば、いつしてたのよ?」
「ん~、入学式とか写真撮る時とか?あと、かがみとのデート前は欠かさずしてるね♪」
不意打ちに顔が熱くなる。でも、付き合い始めて数ヶ月も経つ。さすがに慣れてきた。
「へ、へぇ、あんたしてたんだ。全然気付かなかったわ。」
「ひどっ!せっかく時間かけてるのに…。」
「仕方ないでしょ、あんたと行くような場所じゃ気付きにくいわよ。」
私の反応がいたって普通だったのに対してか、今まで気づいてなかった事に対してか、
どことなくがっかりしてるようだったが、後者の場合は仕方がないと思う。
行くところはゲマズやアニメイト、良くて映画かお互いの家だし、最近は受験でそれらすらいけない。
それでも気付くべきかもしれないが、相手の顔が良く見れる場所じゃないと気付けないと思う。
正直、ムードのあるデートなんぞ行った事がないし、こっちから計画しない限りないだろう。
前に一度計画したものの、雨で計画崩れして、その後は受験で忙しくて実行できてない。
今日は受験を控えた直前かつ、最終となる息抜きである。

「結構大変なんだよ?このさらさら感を保つのって。」
「そうだよねぇ、それだけ長いと大変そう…。お姉ちゃんも結構苦労してるよねー。」
「…さらさらって、髪かい!」
「うん、そだヨ。かなり大変なんだよねぇ。最近はゆーちゃんにも手伝ったりしてもらったり…」
「ほっぺた関係ないじゃないのよ!」
「ばれた?でも、ちゃんと手入れはしてるよ~。化粧はしてないけどね。」
「手入れぐらいなら誰だってやるわよ、まったく。」
「でも、あんなに長くやんなくたっていいじゃん。いくら受験でストレス貯まるからってさぁ…」
「やつあたりじゃないわよ!ただ、あんたの…!!な、なんでもない…」
思わず、柔らかくて気持ちいいからやりすぎたって言いそうになってしまった。
素直に言ってしまえばいいと思う人もいるだろうが、弄られると分かって言うのは特定の人しかいない。
そして私は弄られるのは嫌いではないが、だからと言って自分から志願する気は毛頭ない。

「ん~~?なにかなぁ、かがみん。気にせずデレてごらん♪」
「言えるかぁ!そして、デレとか言うな!」
「いいじゃん、減るもんでもないし~。それにこれじゃあ、私が理不尽な怒りを食らったみたいだし。」
「だから、違うって言ってるでしょ!た、ただ…柔らかったから…つい…。」
それでも言ってしまうのは私の心の弱さか…決して弄られるのを望んでるわけじゃないからね!
「確かにこなちゃんのほっぺたって柔らかそうだね~。」
「素直に言えばいいのに~。むふふっ、照れたり怒ったり、相変わらずかがみは可愛いねぇ。」
「だぁー!人前で恥ずかしいこと言うなー!!」
「お姉ちゃん、お、落ち着いて!」

しばらく弄り倒された上に、つかさの天然発言も重なって、私は抵抗できないままだった。
お決まりのパターン、結局いつもこうなるのよね…だ、誰も嫌だなんて言ってないわよ?
ただ、こう男女で言う尻に敷かれる感じかしら…怒られたわけじゃないんだけど、敵わないのよね。
たまに勝てても、すぐに切り返されて結局弄られるのは私になるから、完全勝利したことないし…。
どうにかして完全勝利、つまりこなたが弄られっぱなしになる方法を考えていると、
「かがみんや、本来の目的を忘れていないかね?」
「本来の目的?」
言われなくても分かってる。でも、ここであることにピンと来た。
「私がなんのために今日ここに来たのか分かってない?」
「受験前の最後の息抜きよね?」
「そうだけど、そうじゃなくて!…かがみ、わざとやってる?」
「冗談よ、バレンタインでしょ?わざわざ言わなくても分かるわよ。」
「んじゃあ、はい。」
こなたはおねだりの顔をしながらこっちを見て、手を出している。明らかに催促してる体勢だ。
あちらからチョコを差し出してくるかと思ったが、これはかえって好都合だ。
「あー、ごめん。今年は受験で忙しいから作ってないんだわ。受験後でいいなら作るけど?」
「え、だっt(むぐっ)」

一度制止して、つかさにしばらく黙っているか、話をあわせるように言って、解放する。
つかさは素直すぎるから、あらかじめ止めておかないと何から何まで話す危険があるからね。
「ねぇ、つかさ、何を言おうとしたの?」
「ふえっ?そ、それはお姉ちゃんが…。」
「あんたが作ってくれるかなって少し期待してたのよ。
でも、少し考えればこなたも私達と同じで、忙しいのにね。ただそれだけよ。」
「えーっ!それじゃあ、今年は私チョコ0個じゃん!そりゃないよー…。」
よっぽど私からのチョコを期待してたのか、心からがっかりしたようだ。
顔だけじゃなくて、体全体から気が抜けたようになってる。青菜に塩とはこの状態を指すのね。
「ゆたかちゃんとか、バイト先からもらえるんじゃないの?」
「ゆーちゃんはみなみちゃんので手一杯だったし、バイトは受験で行ってないからもらえないよ…。」
「ご、ごめんね、こなちゃん。私も実は料理学校のことで忙しくて何もしてないんだ…。」
「私達だって貰ってないんだし、お互い様よ。今年ぐらい諦めたっていいじゃ…?。」
こなたが持っていたカバンから出してきたのは二つのチョコレート。
片方はハート型の箱でリボンに結ばれ、もう一つは袋に包んであって、同じようにリボンで結ばれてる。
「これ…かがみに。こっちはつかさに。」
「あんた、この時期に手作りしたの?」
「だ、だって、かがみと…付き合ってからの初めての…バレンタインだから…。」
こなたは俯きながら、恥ずかしそうに私達にそれを渡し、私とつかさはそれを受け取る。

照れて恥ずかしそうな、普段とあまりにも違う雰囲気のこなた。
何回か見たことのある状態だけど、それはいつも私がちょっとした意地悪をした時ばかりだ。
こなたは、相手からの反応があってからこそ、それを盾に相手を茶化すことが出来る。
自分だけが何かをした時は、それをおおっぴらにするのが恥ずかしいタイプなのだ(多分)。
もちろん、その都度、相手となる対象の輪を大きくしたり、小さくしたりしていて、
オタクという輪にしたり、家族内の輪にしたりしているため、普段は恥ずかしがらない。
でも、今回は私達3人の中で、極端に言えば私とこなただけでの輪だったのだろう。
ただ、私が作っていないだけであれば、恥ずかしがることなくがっかりしただけだった。
しかし、料理好きのつかさですら作ってないと聞いたら、自分だけという意識の上に、
私が作れなかったのも仕方が無いという考えから、恥ずかしいという感情が成り立つのだろう。
もちろん、これも作戦のうちである。ちょっと可哀相ではあるけど、いつものお返しだし、いいわよね?

「(お姉ちゃん、凄いね。本当に言った通りの反応だよ~。でも、可哀相かも…)」
「(そうね、これ以上はやりすぎになるわね。そろそろあれを出すか…)」
そうつかさに耳打ちして、私はベッドの下から『それ』を取り出す。
「ほら、こなた。私からのチョコ、しっかり受け取りなさい。」
「ふえっ?だ、だって、さっき…」
さっきの表情から一転、目を丸くして私のことを見てくる。
「う・そ・よ。ちゃんと作ったわよ、昨日の夜にね。」
「…っ!もう、かがみの意地悪!本当にもらえないかと思って、私すごくショックだったんだから!」
「ふふ、いつものお返しよ、たまにはいいでしょ?あんたに負けっぱなしじゃ、つまらないもんね♪」
「ぶーっ、私は弄るだけなのに、かがみはいつも意地悪だ!」
「し、仕方ないでしょ。人を弄ることにおいては、あんたに敵う人なんていないじゃないのよ。」
おもいっきり頬を膨らませて講義してくるこなたは、どうみても可愛らしい子供だ。

でも、そんなことを考えている暇も僅かしか与えられなかった。
「…まぁ、いっか。かがみの愛をちゃんともらえたし、満足、満足♪」
「それにお姉ちゃんが意地悪するのは、こなちゃんがお姉ちゃんを弄るのと同じで、愛情の裏返しだよ♪」
「つ、つかさっ!」
「そんなのは分かりきったことだよ、つかさ。ただこうしないと、かがみが不満だからさぁ。」
「あんたもさっきまで思いっきりしおれてたのに、何を言うか!」
「私はちゃんとかがみが作ってくれたって信じてたヨ?だから、いつくれるか待ってたのさ。」
絶対嘘に決まってる。チョコを出した時の顔の表情や、あの後の反応は絶対素のはずよ。
でも、そんなことを冷静に言える状態じゃなく、つい大声になってしまう。
「う、う、嘘だっ!だって、さっき思いっきり驚いてたじゃない!」
「確かに、こなちゃん凄いびっくりした顔だったよ?」
「いやぁ、私って演技派だよねぇ~。残念ながら、かがみがやることはお見通しだよ♪
…それにしても、会話に自然とアニメネタが入るあたり、かがみもずいぶんオタクっぽく…。」
「うぐぅ…」
「ほら、その台詞もね♪」
「今のは素だ!ってか、私はオタクじゃない!」
「じゃあ、あれだね、きっと。オタクの才能!」
「わぁ、お姉ちゃん才能あるんだって!良かったね♪」
「そんな才能嬉しくない!というか、私は認めないわよ!!」
(くっ、結局弄られるのは私だけじゃない!私が甘いのか、こなたが上手いのか…きっと両方ね。)

☆★☆

「それじゃあ、そろそろチョコを開けましょー!」
「おぉーっ!(おー…)」
その後、二重の攻撃にあった私は、ほとんど何も言う元気もなかった。
そもそも、受験勉強の息抜きなのに、なんでこんなに疲れてるのかしら…。
「ほら、かがみが先に開けてよ。」
「う、うん。」
「あ、それじゃあ私は牛乳取って来るね~。」
つかさはそういって、そそくさと出て行ってしまった。
空気を読んだのか、それとも居辛かったのか。どっちでもいいけど、ありがたい。

改めて箱を手に取り、丁寧にリボンを緩ませ、箱を開けるとそこには「かがみは私の嫁!」と書いてある。
一体全体、こいつはどうしてこう恥ずかしいことを堂々と出来るのかが不思議だ。
こなたでも恥ずかしいと思うことはあっても、さっき言った理論のその範囲がやたら狭い気がする。
「あ、あんたねぇ…。」
「かがみは私の嫁じゃ不満?」
「そうじゃなくて、少しはムードとかさぁ…まぁ、あんたらしいっちゃ、あんたらしいけどね。」
「でも、かなり気合入れたから味は保証するヨ。あ、もちろん愛も入れたけどネ♪」
「恥ずかしい台詞禁止っ!…でも、忙しいのに作ってくれてありがと。」
「なになに、かがみのためならお安いご用だヨ!それじゃあ、私もかがみのを~。」

すぐさまこなたは私があげた箱を開け始めた。
一応、昨晩数時間かけて作ったものだし、それなりに自信はあるけど、ドキドキの瞬間だ。
「どれどれ~、かがみが作ってくれたチョコの出来栄えは、っと!おぉ、ちゃんと出来てる!」
「ちょ、なによそれ!褒められても、嬉しくないんだけど?」
「いやいや、美味しそうだよ、かがみん♪それにしても、〈I Love You Konata〉って、ベタだね~。」
「べ、ベタで悪かったわね!」
「でも、ちゃんとかがみの愛は受け取ったよ~♪額縁にでもいれよっかなー。」
「入れんな!ちゃんと食べなさいよ、人が苦労して作ったんだから。」
「冗談だよ、かがみ~。それじゃあ、一口もらうとしま…って、ん?何かまだ箱に入ってる。」
こなたの言うとおり、ハートの箱の底にはカードが一枚張り付いていた。って、え?!そ、それは…!
止める間もなくこなたはそれを手に取り、読み始める。
「ま、待ってこなた、それは!!」
途端にこなたの顔が真っ赤になり、釣られて私の顔も朱に染まる。

「〈こなたへ これから一生、私と一緒に居てください。これが私の気持ちです。 かがみより〉
…かがみ、これってプロポーズ…?」
「あ、いや、ち、違うの!それは、そ、その…」
このカードが何故ここにあったのかという焦りと、おまけにそれを読まれた恥ずかしさで私は気が気でない。
おまけにこなたは真剣な顔でこっちを見てくるし、私は半パニック状態に陥っている。

少しの間が空いて、不思議そうな顔になり始めたこなたを見て、何かを言わなければならないと思うも、
それでも私は混乱から抜けられず、紡ぎだせる言葉は本当のことしかなかった。
「き、気持ちが通じ合ってるならチョコだけじゃ足りないかと思って、カードを書こうと思ったのよ…。
何を書いたらいいのか分からなくて、つかさに素直な気持ちでって言われたんだけど、書いてみたの…。
でも、は、恥ずかしくて渡せたもんじゃないから、捨てたはずだったのに…何故かそこに入ったの!!」
半分やけになりながら一気にまくし立てて、私はすぐに俯いてしまった。
本当のことだし、今更なことだけど、これはそのまま読んだら本当にプロポーズだ。
でも、私の複雑な気持ちは全てこなたによって消えうせた。
「ぷふっ、相変わらずかがみって素直じゃないね~。」
「だ、だからそれが素直な気持ちよ!」
「違うよかがみん。私が言ってるのは、そこまで書いてるのに素直に渡そうとしなかってことだよ~。
それに、こんな分かりきってることを書かなくても、私は前からそのつもりだったんだけど?」

その言葉に、私の全ての脳細胞が感極まったけど、それと同時にオーバーヒートしそうだった。
(えぇ?!これはどういう展開?プロポーズとして受けられたことを、Okされたってこと?!
別にプロポーズのつもりなかったんだけど…。い、いや、私も前からずっとそのつもりだったけど、
でも、そうじゃなかったというか、まだそこまで考えてなかったけど…えーと、でもOKされた=結婚?
って、何考えてんだ私!いや、ゆくゆくはそうありたいけど、ってかこの展開はそういうことよね?)
などと、私は暴走と妄想、どちらとも取れることをしていた。
「おーい、かがみんやー、戻ってこーい。」
「…はっ!こ、こなた、何か言った?」
「いんや、まだ何も。でも、そんなに顔を真っ赤にして何を考えてたのかなぁ?」
ここぞとばかしに、ニヤニヤした顔でこなたが擦り寄ってくる。
猫口+ニヤニヤ顔というのは一見ムカつくように思えるが、こいつの場合は反則的に可愛い。
これが見れるから、私はこなたに弄られるこの立場が好k、コホン、嫌じゃないのよ。
「な、なんでもないわよ。…ただ、ちょっと嬉しかっただけよ。」
「おぉ、さっすがかがみん!ツンデレの本領発揮だネ!」
「だから、私はツンデレじゃない!」
「普段は素直じゃないのに、私と二人きりの時はデレてくるんだから、まさしくツンデレだよ~♪」
「素直じゃないのは認めるけど、デレてくるってなんだ!それに、二人きりの時に限らないでしょうが。」
「いやいや、今日だってつかさがいなくなってからじゃないと、素直さのカケラも無かったよ。」
「そ、そんなことなかったわy…」
「はい、かがみ、あ~ん。」
「?!な、何よ突然!」

何の脈絡もなく、いきなりこなたが自分で作ったチョコを一口サイズに割って、私の口元に運んできた。
…というか、いつの間に私の手から取ったかしら…さっきまで握ってたのに。
「ほら、やってよかがみぃ。それとも口移しがいい?」
「ば、馬鹿言ってんじゃないわよ!」
「んじゃ、はい。あ~ん♪」
「…あ、あ~ん。」
口に入れた瞬間、チョコレートの風味が一杯に広がる。
でも甘すぎず、ほど良い苦味を持った本格チョコの味で、チョコが溶けるのと同時に口もとろけそうだ。
私が今まで食べた中で一番美味しいものだった。もちろんこなたの気持ちが入っているからこそだ。
私の中では世界一、宇宙一のものだけど、味だけで純粋に見ても、市販のとは比べ物にならない。
「私の自信作なんだけど…どうかな?」
「正直、言葉で言い表せないぐらい美味しいわ。ただ甘いだけじゃないし、凄い深い味かも…。
チョコレートでこんなの初めてよ!」
「良かったぁ、愛を込めた甲斐があったヨ!…それに、やっぱりかがみはツンデレだと確認できたし♪」
「ど、どういうことよ?」
「だって、ちゃんとあ~んってしてくれたし。つかさがいたら絶対やってないでしょ?公の前じゃなおさら。」
「うっ…そ、それは…。だぁ、もう!素直に褒めたんだから、あんたも純粋に喜びなさいよ!」
(ったく、こいつは常に私を弄ることしか考えてないんじゃないかしら…不満じゃないけどね。)
「いやぁ、気に入ってもらえて心から嬉しいよ。糖分控え目、味も色々調整したオリジナルだからネ。」
「ちょっと引っかかるわね…でも、ありがとう、こなた。」
「愛しい嫁のためだもん、当たり前だよ。それじゃ、今度はかがみ・を食べる番だね♪」
「わ、私?!」
思わずビクッと擬音が似合うような反応をしてしまい、こなたも何事かとこちらを見てる。

(ええぇ!?!?さ、さっきのOKしたから?!で、でも、いくらなんでも展開が速すぎよ!
バレンタイン効果?知らないわよそんなの!い、嫌じゃないけど…心の準備とか…色々時間がまだ…!)
「かがみどうしたの?この流れからしたらフツーじゃん。そんなに驚かなくてもいいんじゃない?」
「ふ、普通?!あ、いや、ま、まだ心の準備が!!つ、つかさだって戻ってくるかもしれないし!!」
「別に戻ってきたって問題ないじゃん?それとも他の人がいるとやっぱり素直になれないとか?
かがみんもついにツンデレを自覚し始めたのかな、かな?」
「いや、問題大有りでしょ!そ、そんなのつかさに見られたら…」
「…?かがみ、なにか勘違いしてない?チョコを食べようって話をしてるんだヨ?」
「えっ?!あ、ああ、そうよね、なんでもないわ。」
(もしかして、さっきのは聞き間違い?そうだとしら恥ずかしすぎる…こなたの顔がまともに見れないわ…)
「でも、勘違いするような話をしたっけな??確かあの時は…愛しい嫁の…ブツブツ。」
真剣な顔でさっきのフレーズを思い出しているらしい。そ、そんなに真剣にならなくていいから!
むしろ思い出さないで居てくれた方が、私のためだから!私のためを思って、ね?

「い、いいじゃないのよ、その話はもう。私のチョコを食べる番なんでしょ?」
「…!ああ、そうかぁ~」
再度ニヤニヤ顔になったこなた。あぁ、嫌な予感がするというか、もはや確信かしら。
私の必死かつ切実な願いは通じず、このあとの言葉により無残に散ることとなった。
「な、何よ。」
「さっき私が〈かがみのを食べる番〉ってやつを聞き間違えて、私がかがみを食べると思ったんでしょ?
もう、かがみはエッチなんだから~♪」
「うっ…ち、ちがっ」
「何がどう違うのかなあ?ねぇ?」
「うぅ、うるさい。と、溶けないうちにチョコ食べなさいよ!せっかく作ったんだから。」
「…それも、そだね。んじゃ、かがみよろしく~」
今度は冷静に考えて、どうすればいいかを判断する。これ以上弄られるネタを提供したら、私が持たない。
受験後ならいいかなぁ?なんて悠長に考えている自分も中にはいたが、それはまたいつか脳内会議しよう。
「は、はい、あ~ん…」
「あ~ん♪…パクッ」
「っ?!?!」
「かがみもちょっとだけ食べちゃった♪あはっ」
私が差し出した指を軽く咥えられただけなのだけど、それがいかほどの破壊力を誇るものか分かるでしょ?
(お、お、おおおおお落ち着け、私!ゆ、指を咥えられただけよ!そう、咥えられた…だ…ふおおお!!)
「顔の沸騰具合、過去最大だね~。初々しくて、可愛いなぁ、もう♪」
「…っ!ち、ち、ちち、チョコの味はどうだったのよ!」
「もちろん、最高においしかったよ♪随分腕を上げたんじゃないかな?」
「ほ、本当?」
「クリスマスのやつよりは美味しくなってるよ。ほら…」
私の口に入れてくれるもんだと思って待っていたら、自分の口に入れ…!!
「ん~っ!!(く、口移し?!?!)」
「ありがと、かがみ。来年も期待してるヨ。ご馳走様でした…かがみも美味しかったよ♪」
ボンッ!!…プシュー………。柊かがみ、オーバーヒートにより離脱。
「あちゃー、ちょっとかがみにはまだこのシチュは刺激が強かったかな?」
ドタドタドタ、ガチャッ!
「ごめーん、牛乳なくってコンビニまで買いに行ってたら遅くなっちゃったよ~…お姉ちゃんどうしたの?」
「いやぁ、ちょっと弄りすぎちゃったかなぁ?あははっ。」
「顔真っ赤だよ?熱とかじゃなくって?」
「さすがつかさ、そっちの発想か。いや、そうじゃなくってね、実は…」
「言うなーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」
私の声が家中にこだました。

☆★☆

つかさが戻り、私が復活したところでつかさにもチョコを渡し、つかさも私に用意してくれていた。
といってもつかさは、調理師免許用の専門学校にすでに合格しているから、暇なんだけどね。
こなたとつかさもお互いにチョコレートの交換を終えて、皆で遅めのおやつとなった。
つかさのチョコは相変わらず手が込んでいて、私にもこなたにも大きなハートのものだった。
前にこなたが、義理でも渡したら本命と勘違いされると言っていたけど、それを再認識するわね。

「ふぅ、美味しかった。さすがつかさ、中々やるね。」
「そりゃ、専門学校に通うことになったんだから、当たり前でしょ。腕前は文句なしよ。」
「て、照れるよ、お姉ちゃん…」
「まぁ、普通の受験だったらつかさには辛かったかもネ。」
「な、なに~!」
「否定は出来ないけど、それはちょっと酷いかも…」
「お、お姉ちゃんまで…」
ごめん、つかさ。私でもそれはフォローしづらいわ。こなたも人のことは言えない立場だけどね。って…
「そういえば、あんたはどこ受けるのよ?まさか大学には行かないとか言い出さないでしょうね?」
「うん、行かないよ。」
「ちょ、おまっ!大学行かないでどうするつもりよ!」
思わぬ告白につい大声になってしまう。
大学に行かないって、こいつ本当に自宅警備員、またの名をニートになるつもりなんだろうか?

そう思って、真意を問いただそうと意気込んだところで、
「いやだなぁ、冗談だよ冗談。」
「じ、冗談かぁ、そうだよね~。びっくりしたよ、こなちゃん。」
「はぁ…ビックリさせんじゃないわよ。どうするか真剣に考えちゃったじゃない。」
「なにを言っても私の心配をしてくれるかがみ萌え~♪」
「し、心配ぐらいしたっていいじゃない!それで、結局どこに行くつもりなのよ?」
「う~ん…ひ・み・つ♪ってことで。」
「ぶっ」
こなたの似合わない台詞に思わず吹き出してしまったが、これはこれでこなたらしくないけど、可愛らしい。
でも、今はそこに気を取られてはいけない。私が言えたことじゃないけど。
「秘密って、どういうことよ?隠し事は…」
「大丈夫、ちゃんと教えるからさ。ただ、今はってことだよヨ。3月になったら教えるから。」
「まぁ、合格したらの話になるんでしょうね。」
「む~、ちゃんと合格するもん。おとーさんとまた賭けもしてるしね。」
この陵桜にも合格したのも、父親との賭け事に勝つためという不順極まりない理由だったからね。
でも、そのおかげで私はこなたに出会えたんだから、どうあれ感謝しないといけないけど。
「こなちゃん、今度はなにを賭けたの?WiiやPS3とか?」
「いや、Wiiはもう既に購入済みだよつかさ。PS3もバイトでどうにかなるしね。」
「じゃあ、新しいパソコンとか?」
「そんなのよりよっぽど私にとって大きなものなのだよ♪まぁ、それもその時教えるよ。」
こなたの趣味に合いそうで、高額なものか何か珍しいものと言われても今の以外あまり思いつかない。
何か限定者のフィギュアとかだろうか?でも、あの言い方だと物じゃないのかな?う~ん…まぁ、いいか。
「…ふ~ん。でも、その代わり3月に入ったら絶対教えないさいよ?」
「合格発表が終わった時にでも教える、それは約束するよ、かがみん。もちろんつかさにも言うよ。」
「わ~、楽しみだね、お姉ちゃん!」
果たしてそれは楽しいことなのかは分からないが、気になるというのは認めよう。

それより、何故行きたい大学を隠す必要があるのかに対して疑問が残るわけだ。
あまりにも低レベルだから?でも、あいつならそんなことは気にしないはずだと思う。
逆に実は相当難しいところで、逆に恥ずかしいとか?…なくはないけど、隠すことはないわね。
ここから遠くて、私にそうそう会えなくなる?それはあるかもしれないけど…あまり考えたくない。
一番ありそうなのが最悪のパターンってのが気になって、私は一応聞いてみた。
「こなた、一つだけ答えて。」
「ん、怖い顔してどったの?」
「その希望してる大学って、私が…いつでも会える場所にあるの?他の地方とかじゃないわよね?」
「むふっ、かがみはその心配してたのか~。それならご安心あれ、かがみと近くに居る事が最優先だからネ♪」
「じゃ、じゃあ!」
「かがみの家、というかここと、かがみの志望大学の近くどっちかだヨ。」
「良かった、ひとまず安心だわ。」
最悪のパターンでない上に、こなたがそこまで気を使ってくれたのが何より嬉しかった。
でも、気になる点はもう一つある、というより、いま浮かんだ。
「…ここまで素直なかがみんって、何か違和感あるなぁ。口調だけは相変わらずツンデレだけど。」
「ちょ、それどういう意味よ!…まぁ、それは置いておいて、近くの大学を優先してくれたのはいいんだけど、その条件に縛られて自分のやりたいことは制限してないわよね?こなたを縛ってるようなら、嫌だから…。」
「大丈夫だよ、かがみん。ちゃんと自分のやりたいことはやるようにしてるからさ。」
「そう?ほんとに?…ならいいんだけどね。」
「もう、そんなに心配しなくていいって。気軽に生きようよ、かがみん♪」
「あんたが軽すぎるから心配になるんでしょ?!二人して突っ走ったら誰が止めるのよ?」
「まぁ、それもそうだね~。でも、二人で突っ走る愛の道は誰にも止められないよ、ね?かがみん♪」
〈ね?〉のあたりで私の首に腕をまわして抱きついてきた。
「ちょ、ちょっと。恥ずかしい台詞禁止って言ったでしょ、もう…。」

1ヶ月強の時間が経っても、不意に抱きつかれるのには未だに恥ずかしい。
こなたに、キスするのには慣れたんじゃないかと言われたけど、内心はもちろん活火山状態だ。
正月も徹夜で若干ハイになってたから、こなたの寝起きにキスなんてしてたけど、今思い出しても…
「…どんだけ~」
(そうそう、どんだけ~…って!)
「こ、こなた!つかさが見てるから、離れなさいって!」
「周りの視線は気にしないって言ったじゃーん、かがみぃ。」
「屁理屈はいいから、離れろぉ!!」
半ば強引に引き離されたこなたはもちろん、空気化しかけていたつかさもどこか不満そうだ。
その後、こなたの機嫌をとりつつ、つかさにも話題を振りながら過ごすという何とも疲れる時間になった。
少なくても、私にとっては…やれやれ。

☆★☆

その後も、臭いものや机に書いてある落書きのユニークさ、物価高騰によるお菓子の値段上昇などについて話した。こなたがネタに走り、つかさがボケて、私が突っ込むか弄られるいつもの雰囲気だった。
4人で過ごしてきた高校3年間、こういう空気の中でずっと過ごしてきたからか、どこよりも心地よい。
弄られたり、気苦労があったりしても、息抜きとして最高のものとなった。みゆきがいないのが残念だけどね。

「つかさー、ちょっと来て手伝ってー!」
下から突然いのり姉さんの声がする。時間を見ると6時前、おそらく夕飯の手伝いで呼んだのだろう。
…悔しいけど、料理の手伝いで私が呼ばれたことは中学に入ってから一度もない。せいぜい皿洗いだ。
「すぐ行くから、ちょっと待ってー!…ごめん、ちょっと行ってくるね。」
「いってら~(いってらっしゃい)」
つかさはすぐに立ち上がって降りていった。
「もうこんな時間かぁ、私もそろそろ帰らないとね。」
「そうね、おじさんも心配するだろうし。」
「かがみも、そろそろ『おじさん』じゃなくて、『おとーさん』って呼んでみたら?絶対喜ぶと思うよ♪」
「な、なななに馬鹿なこと言ってんのよ!出来るわけないでしょ、そんなこと!」
「うぶで余計な事ばかり考えては、顔を赤くするかがみ萌え~」
「うぅ、うるさい!」
「その反応!最高だよ~、やっぱ可愛いねぇ~♪」
さっき突き放したのを根に持ってるのか、執拗に弄り続けてくるこなたと反撃が出来ない私。
擦り寄ったり、上目遣いで見上げてきたり、後ろから抱き付いてきたり、やられ放題だ。
私も少なからず抵抗してみるも、こなたには逆効果なのか、私が恥ずかしいだけで終わる。
この小動物みたいなこなたの連続攻撃に私の『理性』という精神はボロボロになりつつある。
ひたすら顔を赤くしてる私にこなたの行動はエスカレートし、ついには…
「ひゃうっ!…こ、こなたぁ!!」
「おぉ、予想以上の反応だね。」
「いい、いきなり、うなじを舐めないでよ!」
「じゃあ、いきなりじゃなきゃいいの?」
「そ、そういう意味じゃないわよ。私にも理性ってのがあるんだから…その…ほどほどにしなさいよね…。」
「かがみん、それって…「みんみんみらくる、みーくるんるん~」」

突如、恐ろしく音程を外した声と共に、音楽が流れ始めた。これは確か…こなたの携帯だ。
「ごめん、かがみちょっと待っててね。
〈もしもし、なーにおとーさん?…うん、まだかがみんちだよ。…えっ?ああ、そうだごめん!
今からすぐ帰るから、下準備だけ済ませてて!…分かったよ、だから悪かったって。…うん、じゃあ。〉ピッ
かがみ、ごめん!今日夕飯の当番だったのすっかり忘れてたよ!!今から帰って作らないと…。」
「いいのよ、そんなの。また受験後にいつでも来てよ。今度はそっちにいくかもしれないし、遊びに行ってもいいしね。二人切りもいいけど、みゆきとつかさを呼んでもいいしね。もちろんゆたかちゃんとかも。」
「そだネ、何か考えておいてよ。私も私なりに考えておくからさ。んじゃ!」
「あ、待ってよ。玄関までは送るから。」
「夫を送るのが嫁の仕事だしね~♪」
「それは朝の話でしょ?夜の場合は、嫁を見送る夫でしょ。ほらいったいった。」
「えぇ、それこそ屁理t…って、うわ押さないでよ、危ないって!」

こなたの反論を無視し、玄関にたどり着く。
「それじゃあ、気をつけて帰りなさいよ。夜道は危ないんだし。」
「格闘技やってたから平気だよ~。万が一があっても、かがみが助けてくれるだろうしネ。」
「…万が一、何かあったらな。」
「んじゃ、またね~、かがみん。今度は〈かがみを〉食べに来るから、覚悟しといてよ♪」
満面の笑みを浮かべて最後に言った一言は、本気なのか冗談なのか、期待と不安を抱きつつ、
私はつかさに揺すられて正気に戻るまで、呆然と玄関前で立ち尽くしていた。

- Fin -


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