決戦はバレンタイン!当日編

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「…まだ降ってたんだ、雪」
「あ、お姉ちゃん。おはよう!」
「ゆーちゃん、おはよ」
「雪、積もるのかなぁ?」「どうだろうね、今の調子じゃわかんないよ」
「そっか、そうだよね」
「こけたりしないよう、気をつけて登校しなよ?岩崎さんにあげるチョコ、割れたら大変だから」
「え!?な、なんでそのことを知って…」
「むふふー、昨日遅くまで頑張ってたみたいだしね。可愛いね、ゆーちゃんは」「あわわわ…」
「顔真っ赤にしちゃってー」
「も、もう!…それじゃあ私行くねっ」
「あらら、逃げちゃった…ちょっといじり過ぎたかな?」
「こなた、お前も早く学校に行くんだぞー」
「分かってるよ、お父さん!」
「バレンタイン、楽しんでこいよ!」
「ふぅ………バレンタイン、か」



―――決戦はバレンタイン(当日編)―――



家を出ると、空には昨日から引き続き雪が舞っていた。ゆーちゃんにも言った通り、今の段階で積もるかどうかは分からないけど、もう少し激しく降ってきたら十分に有り得るだろう。

傘をさしながら、いつもの待ち合わせ場所へ急ぐ。
舞う雪に視界を遮られつつあったが、どうにか時間までに着くことが出来た。

「おっす、こなた」
「おはよう、こなちゃん。今日は一段と冷えるねー」「二人共おはよー。見て見て!この寒さで髪が跳ねたまま凍ってさ…アホ毛みたいになっちゃった」
「あんたのアホ毛はいつものことでしょうが…」
「あはは!それ面白いねー」
「つかさの反応は温かいねぇ。それに比べてかがみんは…雪より冷たい」
「冷たい女で悪かったな!」

今日もいつもみたいな馬鹿げたやり取りをして、学校へ向かう。
相変わらず、こんな時期でも色恋沙汰には縁が無かったりするんだよねー。

朝一から寒い教室の中で授業浸り。夜更かしして眠たいんだけど…暖房も休みごとで切られるから、おちおち昼寝も出来ないよ。
昼休みだけは例外で、唯一暖房が入れっぱなしになる休み時間だから暖かくて過ごしやすいんだよね。

「泉さん、眠たそうですね…。さっきから食事が進んでいませんよ?」
「うん、眠いんだけど…今日は授業中に一睡も出来なかったから」
「授業中に寝ようとか考えるな!」
「あはは、そうだねー」
「つかさ、あんたも人のこと言えないから…」

皆の声をBGMに、食べかけのチョココロネを口に運ぶ。
あ、これはもしかして自分から自分へのバレンタインチョコになるんじゃ?うわ…虚しい。どうせ食べるなら…ちゃんとしたチョコ、欲しいよね。
そう思った直後、私は自然にかがみの方を見ていた。あれ?何でだろう…。

でも、もしかがみからチョコ貰えたら嬉しいだろうな。ツンデレだもんね…絶対萌えるよ、これは。うん、だって私…かがみから貰えることだけを期待してる。

「ねぇ、こなた。…今日の放課後、ちょっと時間ある?」
「へ?」

私の頭がかがみのことでいっぱいになりそうだった時、その抑制がかがみ本人によって行われた。

「放課後、空いてるか聞いてるの」
「放課後?構わないけど。つかさは…」

つかさの方に目をやると、何やら照れ臭そうに笑っている。いや、私が色目使ったんじゃないからね。

「あのね、私はゆきちゃんと用事があるんだー。だから気にしなくていいよ!」「泉さんは何も心配することありませんよ。つかささんは、私がしっかりお預かりしますので」

さらにみゆきさんがとびきりの笑顔で答える。そっか、二人も用事があるんだね。

「それなら大丈夫だね」
「コホン、それじゃあこなた。授業が終わり次第、私のクラスに来てくれる?」「うん、分かった」

かがみはそれだけ言い残すと、さっさと教室を出て行った。昼休み、まだ少しあるのに…。

午後の授業は午前より幾分過ごしやすく、昼寝と説教を繰り返しながらもあっという間に放課後に差し掛かろうとしていた。

「こなちゃん、また明日ねー」
「それでは失礼します、泉さん」
「んー、またね」

HRが終わり、つかさとみゆきさんは仲よさ気に教室を出て行った。
あの二人…明らかに怪しいよね?きっと二人でバレンタインのチョコのやり取りでもするんだ…。
なーんだ、意外とすぐ近くに色恋沙汰があったのか。

「そうだ、私もかがみのクラスに行かないと…」

ふと、かがみからの呼び出しを思い出す。
今日は何の用事だろう?ラノベの新刊か?それとも…男の子にあげるチョコを一緒に選ばされたり…。

想像して何だか身震いをしてしまった。急いでコートを羽織り、足早に隣のクラスへ向かう。

~~~♪~♪

「ふぇ…?」

廊下に出た瞬間、かがみと電話する時以外は滅多に鳴ることのない携帯が、やけに短い着信音を響かせた。

「………メール?」

その着信音の短さから、メールということはすぐに分かった。
私の携帯宛てに来るメールなんて…きっと大したものじゃない。そんな風に思ったけど、念の為に携帯を開いて受信ボックスを確認する。

無題のメールが並ぶ画面の中…たった今届いたメールだけ、妙な題名が付いていた。

『ハッピーバレンタイン、こなちゃん♪』

「…つかさ?」

題名しか見ていないけど、私はすぐに送信者が分かった。私のことをこなちゃんって呼ぶ人なんて、つかさくらいしかいないから。
題名に困惑しながらも、私はとりあえずメールを開いてみた。

“今日はこなちゃんに指令を与えます。”

「は?」

一行目から既にワケの分からない、つかさクオリティ全開だった。
何でいきなり指令なのさ…何時からつかさは私の上官になったわけ?そんなことを考えながら、私は続きを読み進める。

“指令って言っても、本当に簡単なこと。こなちゃんならきっと出来るよ!”

いやいや、つかさ指令官殿。いきなりそんなこと言われてもね、私にも色々と聞きたいことがありまして…

“それで、指令の内容なんだけど…”

私の意見は無視ですか、ああそうですか。
メールにも携帯にも文句を言うことなんて出来ない。もはやつかさクオリティに巻き込まれるしか無いと察した私は、画面をゆっくりとスクロールさせる。

“義理の中の本命を見付けてあげて欲しいの”

「義理の中の…本命?」

意味不明な文が続く中で、この一文は妙に気に掛かった。いや、相変わらず意味が理解出来ないのは確かなんだけどさ…。
義理って言うのは、義理チョコのことだよね?じゃあ本命は本命チョコのこと?…義理なのに本命ってどういうこと?
つかさは私に何を伝えたいのさ?

何か答えに繋がることが書いていないか気になって、ボタンを押す指の動きを速くする。

“これだけじゃ分かりづらいと思うから…ヒントをあげるね。”

上手いタイミングにヒントという言葉を見付けて、私は妙に期待しまう。つかさの奇妙な文に魅力を感じ始めるくらいに。

“答えは…こなちゃんとお姉ちゃんの中にある。”

「…はい?」

ちょっと待ってよ。かがみならまだしも、このメールの意図が全く理解出来ていない私自身が答えに関わってるのは…おかし過ぎるでしょ?

“もしお姉ちゃんが勇者になっていたなら、この指令は私の独り言にしていいから。でも違ったら…こなちゃんが見付けあげて。”

「はぁ…」

勇者?ネトゲの話ですか?そんな疑問を受け流すよう、文の最後に“私は二人を応援してるから”なんて書いてあったけど、正直知ったこっちゃない。

「もういいや…」

理解することを諦めた私は静かに携帯を閉じる。
そして止めていた足を再び進めた。

「かがみ、来たよー!」
「お疲れ、それじゃあ行こっか」
「今日はゲマズ?それともメイト?」
「違う…帰るのよ」
「え、用事って一緒に帰るだけ?」
「ま、まぁそうね…」
「ふーん、まぁいいけど」

うん、ただ帰るだけなのは予想外だった。いや、別に全然構わないんだけどさ。二人で並んで校門を抜け、いつもの道を逆方向に歩く。その間、絶えずたわいもない会話が続いていた。

「こなた、ちょっと…近くの公園に寄っていい?」

かがみはたわいもない会話の中にたわいもないお願いをしてきた。

「公園?いいけど…ブランコにでも乗るの?」
「乗らないわよ…」

しっかりボケたつもりなのに、返ってきたツッコミは余りにも弱かった。かがみ、どうしたのかな?
気になりながらも、私はかがみの後を着いて行く。

立ち寄った公園にはいくつか小さい街頭があるだけで人は一人もいなかった。

「これ…あんたにあげる」「は、はぃ?」

いきなりかがみから上擦った声が出たのと同時に、何か赤いものを押し付けられた。掌に乗せてよく眺めてみる。
これは所謂…バレンタインチョコだ。ま、まさか本当に貰えるなんて…。


「こ、これは…」
「勘違いしないでよ!ぎ、義理よ!義理チョコなんだからね!!」
「義理…チョコ………」
「そうよ義理……あっ………」

私がチョコを貰えた感動とそれが義理チョコだと聞いて複雑な心境になっていた時、かがみの鞄の中から何かが落ちた。

「あれ、それは?」
「え!?こ、これは……もう一つ…良さそうなのがあったから。一応、予備にって思って………」

かがみは急いで落ちた物を拾い上げ、鞄に押し込む。どうやらそれもバレンタインのチョコだったみたい。

「予備?私への…?」
「そ、そうよ!あんたは…チョコの好き嫌いがありそうだから。ね、念の為に………」
「念の為?」


…かがみの話、何だか胡散臭い。それに違和感を感じる。少なくとも私が普通のチョコ好きなのは、毎日のお昼ご飯から分かるハズだよね?それなら予備なんか用意するより、普通のチョコを買って来た方が早くない?

それに、あっちのチョコ…チラッと見えたけど、青っぽい包装紙に、薄い紫のリボンが巻かれたチョコ。とてもじゃないけどバレンタインには似合わない色合いだった。コンビニで売ってるバレンタインチョコに…あんな変な配色包装がされたチョコ、あったっけ?

…良く考えてみれば青と紫って、何か見覚えのあるような…。

………待てよ?
ふと、つかさのメールの内容が頭をよぎった。

義理の中の本命見付ける。私とかがみの中にある。

用意された二つのチョコ。青と紫のおかしな包装。

「そういうことか…」
「…どうしたのよ?」

つかさの伝えたかったことが、なんとなく分かった。うん…本命は私とかがみの中にある。

「かがみ、私…いらない」「え?」

そう言って、やけに赤い包装が目立つ箱をかがみの手の中に返した。突然の私の拒絶に、かがみの表情は一気に曇る。

「…そ、そっか!別に私から貰っても、嬉しくとも何とも無いわよねっ!」
「違うよ、かがみ」
「…え?」
「こっちのチョコはいらないの。…私はそっちのチョコが欲しい」

そう言ってかがみの手にある赤いチョコと、鞄から少しはみ出た青いチョコを交互に指差す。

「こ、これ…?」
「うん、それだよ」

かがみは私からの予想外の言葉に焦り始めていた。
けど私は、逆にこの反応を見て確信を持った。

「で、でもこれは…」
「私に渡す為の…予備の義理チョコなんでしょ?なら別にどっちを貰ってもいいよね?」

ちょっと意地悪なやり方かもしれない。だけど、折角のかがみの努力…無駄にするなんて絶対嫌だもん。

「うぅ…でも………」
「私はさ、義理でも何でも良いんだ」

でも本当は…ちょっとだけ本命チョコを期待してる。

「…」
「ただ…かがみからの気持ちが欲しい」

本命という最高の形を、かがみに貰いたい。

「…っ」
「かがみ…」

かがみは私の熱弁に観念したのか、鞄に入った方のチョコを怖ず怖ずと前に出してくる。
受け取ろうと手を前に出した瞬間、かがみは口を開いた。

「こ、こなた…っ!このチョコ…ね………」
「ん、どうしたの?」
「その……わ、私が………作った、の」
「…そうなの?」

やっぱりか…。何と無く分かってはいたけど、改めてみると凄く嬉しい。でも私は、敢えて何も知らなかった素振りを続ける。

「で、でもとても見せられるような出来じゃなくて…や、やっぱり………」
「私に…作ってくれたんでしょ?」
「そ、そうだけど…」
「ならありがたく貰うしかないじゃん!」

かがみの不安に震えた手をそっと握り、そのまま自然な形でチョコを受け取る。かがみは複雑な表情を浮かべていたけど、私はそれに最高の笑顔で返した。

「………」
「かがみんお手製かー」

箱を裏返したりしながらじっくり眺める。
私とかがみを象徴する色合いが、今はやけに愛おしく見えた。

「………こなた」
「どしたの、かがみん?」「それ………本命だから…」

急な言葉を聞いて、顔の温度が2度くらい上がったような気がする。
あはは、私らしくないな。そ、そりゃあ手作りならほぼ高確率で本命だよね。私ってば馬鹿だね、全く。
そんなことを考えながらかがみを見ると、あっちはもっと順調に顔面温暖化が進んでるみたいだった。

「…好きなの、こなた」
「うん…」
「うん、って…?」
「私も…かがみのこと好きだよ」

私は二人の間にある距離を縮めていく。自然と顔の熱は引いていて、かがみだけが真っ赤なままだった。
やっぱりかがみは照れ屋な嫁だね。

「こなたぁ…」
「大好きだよ、かがみ」

夕日が沈みそうな寒空の中、私達はチョコよりも甘くとろけるキスをした。

甘い一時を終えた私達は、少し落ち着くためベンチに腰をかけていた。

「何で最初からこっちを渡してくれなかったの?」
「だって…見た目は悪いし、味も分からないし、こんなチョコ渡す勇気が無かったのよ」
「つまり…かがみは勇者になれなかったワケか」

つかさの言ってた勇者の話はこれのことか。
かがみが最初からこのチョコを渡していたなら勇者。違ったなら私にこのチョコを見付けろってことだった。

でも良く考えてみたら…かがみがドジだったからたまたま二つのチョコの存在が私にバレたけど、普通は見付けるとかほぼ不可能だよね…?

「ねぇ…勇者って何のこと?またネトゲの話?」
「指令官殿のお話だよ」
「はぁ…?」

まぁいいよ、結果オーライだったから。

「よし!折角だから二人でチョコ食べよっか」
「え?私にもくれるの!」「ダメだよー。これはかがみが私の為に作ったんだから私が大事に食べるの!かがみは赤い包装のやつ!」「あ…そ、そうね」

かがみってば、また顔が赤くなってる。いちいち反応が可愛すぎるよ…全く。

そんなことを考えながら、私は自分のチョコの包装を解いていく。うん、お店で売ってても可笑しくないような包装の仕方だと思う。包装の下から洒落た箱が現れたので蓋を外すと…この世で一つしかない、かがみが私の為に作ってくれたチョコが並んでいた。
雰囲気からして…生チョコかな?ちょっと斜めった感じがあるけど、それすら何かしら素敵な演出にしか見えない。

ああ、本当に頑張って作ってくれたんだ。

感動に浸りながらチョコを口へ運ぼうとしたその時…

「…なんじゃこりゃぁ!!」「ふぇぇぇ!?ど、どしたの…かがみん?」
「どうしてこれが………私のがこの中に入ってるのよー!!?!」

かがみが突然、意味不明な奇声を発した。
自分のチョコの箱を、瞳孔が開ききった目で見ながら、肩で息をしている…。
な、何か怖いよ…かがみ。

「まさか…つかさ!?もしかしてあいつ、昨日の晩に………」
「か、かがみ?大丈夫…」

指令官殿、あなたは一体どこまで伏線を張っているんですか?かがみが獣化しつつある今、もう私は何も理解したくありません。

「あのバルサミコ…帰ったら覚えてろ………」

その最後の一言を…私は多分忘れない。

ハッピーバレンタイン…かがみ。
そしてさようなら…つかさ指令官。


―――。


「ガトーショコラがうにょーん………」
「つかささん、どうかしました?ガトーショコラはうにょーん出来ませんよ?」「うーん。こなちゃん達が上手くやってるか気になって…」
「何か不安なことがあるんですか?」
「私のおまじないが、効いてるかなぁって…」
「おまじない…ですか?」「うん。こなちゃんがね、本命を見付けるおまじない…」
「…本命を見付ける?」
「実はね、かくかくしかじかで………」


―――。


「ああ、そういうことでしたか」
「ゆきちゃんはどう思う?」
「それならば大丈夫ですよ。必ず…上手くいきます」「こういうのは…備えあれば憂い無しって言うんだよね?」
「はい、そうですね。…こなたさんに与えられた指令は、本命の中から本命を探すことなんですから」
「そうだねー。あ、ゆきちゃん……私のガトーショコラだけど、美味しくできてる?」
「はい、とても美味しいですよ。つかささんのお気持ちが心に響いてきます」
「えへへ、嬉しいなぁ。」「うふふ…」
「今日はハッピーバレンタインだね、ゆきちゃん!」「そうですね、つかささん」



―Happy Valentine for you!―


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コメント:
  • つかさとみゆきも結ばれる・・
    うまい話だぁ
    つかさ司令官GJ!
    かがみんやっぱりかわいい
    -- 名無しさん (2009-11-17 01:25:54)
  • つかさ指令官ナイス! -- 白夜 (2009-10-20 19:47:16)

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