決戦はバレンタイン!準備編

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「ついに…決戦の2月がやって来たわね」
「お姉ちゃん?何だか意気込んでるけど、今月に何かあるの?」
「意気込むも何も…2月よ、2月?一大決戦日があるじゃない!」
「えと、2月だよね?…なんかあったっけ?」
「良く考えてみなさいよ。あともう少しで…」
「もう少し………あ、そうか分かった!」
「全く…鈍いわね、つかさは」
「えへへ、ついつい忘れてたよ」
「ダメじゃない、あんたもみゆきに…」
「やっぱり2月と言えば“節分”だよねー!」
「っておぃぃ!?そっちかよ!!」


―――決戦はバレンタイン(準備編)―――


今日は2月1日。
年を越えて1月もあっと言う間に終わり、気が付けば恋が色めく2月。
何故恋が色めくかって?そんなの決まってるじゃない。2月と言えば女の子にとっての一大イベント『バレンタイン』があるから。

とは言っても、当日までは2週間も猶予がある。焦るにはまだまだ早いと言って良いハズなのに…私の気持ちは既にその日のことでいっぱいだった。

「あー、バレンタインのことだったんだね」
「それ以外に何があるのよ。豆まきを期待してる姉なんて嫌じゃない!」
「けどお姉ちゃん、いつも力いっぱい豆まきしてるからね。てっきり好きなんだと………」

いつもの通学路を歩きながら、私はつかさの思い違いに訂正を入れる。
2月のイベントと聞いて節分が出るなんて、この子の精神年齢はいくつなんだ?てゆーか待て、私が無駄に豆まきとかを張り切ってることをバラすな!

「そ、それとこれとは話が別よ!それよりつかさ、あんたはみゆきにチョコあげるの?」
「んーとね、まだ細かくは決めてないんだけど…何か作ってあげれたらいいなって思うよ?」

つかさはみゆきのことが好きだから、当日にはきっと素敵なチョコ菓子をプレゼントするんだろう。
私はこなたに…何を渡せばいいのかな?
チョココロネ?いや、これは流石にKYだな。
市販のを買ってあげるのが無難だけど…どうせなら手作りを贈りたいし。

「いいわね、あんたは得意で…」
「へ?」
「料理よ、料理。私はそーゆーの苦手だから、もし作るなら早めに考えてとかないと絶対無理だわ………」

料理がダメダメな私に、お菓子を作ることなんて0パーセントに近いと思う。
だから今の時点でこんなにも考え込んでるんだから。いくら勉強が出来たところで、こういう時に役立たないと意味が無いって痛感して、嫌になってきた。
家庭的なつかさを、唯一羨ましく思う瞬間かもしれない。

「んー、ならお姉ちゃん。今日から練習しようよ!」「へ?な、何を?」
「チョコ作るのを。今日からやれば前日には完璧になってるよ!」
「そ、そうかな…」
「そうだよ~!」

確かにつかさに教えてもらいながらやれば、それなりの物が期待できそうだ。
まだ2週間あるんだし、今日から頑張れば!

「…そうね。なら折角だし、ちょっとやってみようかな?」
「うん!私も出来る限りで教えるから…頑張ろうね。こなちゃん絶対喜ぶよー」「うん!」

こなたの喜んだ顔を想像しただけで、不安が吹き飛ぶ私はなんて単純なんだろう。寧ろただの馬鹿よ、馬鹿。

けど………こんな時くらいは頑張ってみてもいいよね?

そんな秘密の特訓計画が立てられた直後、前方からこなたの姿が見えてきた。

「つかさにかがみ、おはよー。二人共何か熱心に話してたみたいだけど、どうかした?」
「な、何でもないわよ!」「えへへ~、禁則事項だよ」
「えー、二人ともケチ!」

こなたの疑問を適当に逸らしながら、私達は学校へ向かった。

廊下で二人と別れる時、つかさが私にそっと耳打ちをしてきた。


“何作るか考えといてね”

そんなこと言われてもなぁ…お菓子作り超初心者の資格を持った私に、相応な案が浮かぶハズはない。
でも、ここらで一つ勝負に出ないと…。バレンタインは女の戦い、言わばチョコレートとの戦争なのよ!

「柊、次のページ読んでくれるか?」
「は、はい!チョコレート戦争ですっ!!」
「はぁ?」
「あ……ぇ………」

しまった…今は黒井先生の授業中だったんだ。
私ってば何唐突にチョコレート戦争なんて…。
クラスに響き渡る笑い声に、恥ずかしくて周りが全く見れなかった。

「柊…ボケっとせんと、ウチの授業を真面目に聞かんかい!」
「す、すいません…」
「せやけどそんなマニアックな戦争、よお知っとるな…」

先生が後付けしていたけど、チョコレート戦争とは実在した戦争の名前だったらしい…。とにかく、変な戦争妄想者だと思われないだけ良かった…か。
そんな辛い世界史の時間が終わり、救いの休み時間になった。
この時間を有効に使って、作るものを考えるとしよう。と思ったその時、廊下を歩くみゆきの姿が見えた。そうだ!みゆきなら何か良い案をくれるかもしれない。料理もそれなりに出来るし、学識もあるし…私でも上手に作れるレシピを教えてくれそうだ。
そうと決まれば急いで廊下を飛び出し、みゆきを引き止める。

「かがみさん?おはようございます」
「お、おはよ…みゆき」
「どうかされました?慌てていらしているようですが…」
「あ、あのね…」

な、何て聞けばいいかな?最近ブームのチョコってどんなの?…流石にここまでは分からないわよね。
こなたに何をあげれば喜ぶ?…ってのはストレートすぎて恥ずかしいし、みゆきに聞くことじゃない気が。あぁ!ならどうすれば…

「かがみさん?」
「あ、いや…あのね………」

あー、もう!こうなりゃヤケよ!!当たって砕けろかがみ!

「実はさ、好きな人にバレンタインチョコをあげたいと思ってるのよ。で、どんなチョコをあげたら喜んでくれるのかなって…。やっぱりある程度は凝るべきじゃない?」
「バレンタインですか…」「うん、チョコの種類とか作り方とかあまり知らないしさ…勉強したいなって」「そうですか」
「何か良い案ある、みゆき?」
「そうですね…」

みゆきは顎に手を当てながら考えるポーズを取っている。これは期待できそう!きっとこの聖人君子様なら、素晴らしき案を…

「…お恥ずかしながら申し上げますが、私から助言できることはありません」
「へ?」

ちょっと待て、聖人君子さん?いくらなんでも何も無いっていうのはあんまりじゃありませんか?
今日はお休みしたい気分なんですか?それとも私の料理レベルはもはや語るに至りませんか、ああそうですか。

私が顔を引き攣らせながらみゆきを見ていると、彼女は私とは対象的に満面の笑みを浮かべた。

「特に変な意味はありませんよ?」
「はぁ…」
「だってその人は…かがみさんが作った物なら何でも喜んでくれるハズですから」
「…!?」

そんな恥ずかしい台詞を、相変わらず満面の笑みで崩さないで言えるこの女はやはり聖人君子だった。とてもじゃないが侮れない。
とても簡単なことを、私に気付かせてくれた。形や質じゃなく、気持ちが大事なんだって。
私が頑張って作れば、きっとこなたは笑顔で答えてくれるんだって。

「頑張って下さいね。泉さんも楽しみにしているでしょうし。それでは、失礼しますね」
「う、うん!ありがとね、みゆき!」

ニコニコとその場を立ち去る姿はもはや神の領域。やっぱりみゆきに聞いて良かった。明確な答えは得られなかったけど、大事なことに気付いたから。
…そういえばみゆき、最後に泉さんって言ってたわね?私は一言もこなたのこと話してないのに………あの策士家め。

「気持で勝負よね、うん」
これ以上細かく考えても意味はないので、私はその後の授業はいつも通り真面目に受けることにした。

そして授業が終わり、今度は昼休みになりいつもの4人でご飯を食べることになる。つまり、こなたがいるので下手にバレンタインの話題を出していけない。
ついうっかり話したりしたら計画が台なしだもんね。そう考えて、そう思って必死だったのに…

「そういやもうすぐでバレンタインだよねー」
「ぶはぁっ!?」

こなたの口からいきなり出た言葉に、私は口の中の物を盛大に吐き出してしまった。

「ちょ!?か、かがみん…どしたのさ?」
「ケホッ……ったく、あんたがいきなりなこと言うからよ!」

咳込みながらつかさとみゆきを見る。

「お姉ちゃん、どんだけー」
「うふふ…」

つかさは良く分からないような顔をして、みゆきは余裕の笑顔だった。
ああ、平常心って羨ましい…。

「いやぁ、だってバイト先のイベントでね?その日はお客さんにチョコ配るんだって言ってたから…」
「あー、例のバイトね」
「いいよねぇ、無条件にチョコ貰えるなんてさー。どうせ私には関係ないんだもん」

そう言った途端、こなたの顔がつまらなさそうになったのが分かった。
私には期待してないってワケ…か?

何だか悔しい。
そして寂しい。
私がそんな日を忘れるハズないのに…。

―――。


学校が終わり家に帰る途中、買い物をして適当な材料を揃えた。と言っても全部つかさ任せだったけど。
私はただの荷物持ちってとこ。いや、でも何事も雑用が肝心なワケよね!

家に着いて早速、私とつかさは台所に直行して、材料を広げる。
凄いな、この量は…流石はチョコレート会社の陰謀の日だけはある。

「あはは、沢山買いすぎちゃったねー」
「まぁ有るに越したことはないわよ。」
「そっか。じゃあお姉ちゃん、材料は用意できたから…何作る?」
「実はまだ決まってはないのよ…。ねぇ、つかさ。初心者でも簡単に作れるのって、何かな?」
「そうだねー…生チョコなんてどうかな?簡単だし、とても美味しいよ?」

生チョコ…響き的には全く悪くないし、バレンタインにピッタリな感じがする。私はこんな意味不明の解釈をしながら、自分を納得させていた。

「生チョコ…か。いいわね、それにしよ!」
「うん!それなら…私が先に作ってみるね」
「つかさ、頼んだわよ」

そう言うとつかさはテキパキと必要な材料と道具を選び出し、準備を始めた。
ヤバイ…この段階で少し追いつけてない。

「チョコをね、こうやって細かく刻んで…」

たちまちチョコが細かくなっていく。この子に包丁使いは一生叶わないだろうな。

「湯煎で溶かすんだよ」

湯煎って何だろう?
ボウルが二枚重なってるのは仕様なのか…それともつかさのボケなのか?

「溶けたら次は生クリームを入れて…」

あれ?生クリームってあんな液状だったの?牛乳と間違えてるんじゃ…

「ここでワンポイント。ハチミツを入れるともっと美味しくなるんだよ」

チョコだけでも甘いのに、ハチミツだなんて…また体重が増えるじゃない。あ、私が食べるんじゃないか。

「後はチョコが固まらない内に…クッキングシートを引いたバットにチョコを流し込む」

か、紙の上にチョコ流して大丈夫なの!?
そのままプレートに流せばいいんじゃ…

「後は冷蔵庫で半日冷やす。固まったら一口サイズに切って、ココアパウダーを塗して完成だよ」

あれ…もう完成だったの?私ってば何一つまともに覚えて………

「お姉ちゃん、何か分からなかったとこある?」
「いやぁ、あはは…」

ありすぎて聞くのが恥ずかしくなる。
ただ視線を逸らして、苦笑するしかなかった。

「まぁ見ているより、やってみた方がいいよね。お姉ちゃん、絶対上手くいくから頑張って!」
「わ、分かった…やれるだけやってみるわ」
「その意気だよ、ファイトー!」


私の戦いはまだ始まったばかり………と言うか寧ろ今から始まるところ。
決戦本番は2月14日。

見てなさいよ、こなた。
私は絶対にあんたを喜ばせてみせるんだから!



―バレンタインまで、あと2週間―



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