1月12日・中編その2

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 中編その2にするか、後編としてしまうか相当迷ったが、ここはあえて中編その2とさせて頂いて、まだ合宿を続けよう。
 さて、色々なドタバタがあったUNOの後、一旦解散。各々部屋に戻ってくつろいだり、或いは勉強したり、また或いはリビングに残り談笑をしている。
「う~……」
 と、唸り声を上げながら宛がわれた部屋のベッドに倒れこんだのはかがみ。枕に顔を埋めて唸り続ける。
 どうしてもさっきのことが頭から離れない。

 ――大好きっ!!

 何も叫ぶ必要はなかった……そう思うと恥ずかしくて顔が上げられない。と、いうか何でそもそもあんな事を言うハメになったのか。
「こなたもこなたよ……なんか言いなさいよね」
 かがみが叫んだとき、こなたは何も言わなかった。ただ、驚いたような顔をしていただけ。
 だから、ただの罰ゲーム、まぁ、本来受ける立場にはいなかったにも拘らずやらされるハメになったわけなのだが、それを、こなたが何も言わなかったせいで罰ゲームと笑い飛ばせなかった。
「何であそこで黙るのよ……いつもみたいに‘萌え~’とか言いなさいよ……」
 何でこんな気持ちになるのだろう?何で?何で?何で?
 思い返されるこなたの顔、その細部まで完全に脳内再生できる。出来てしまう。
「く……こなたの、ばかぁ……」
 理不尽。だけど言わずにはいられない。この気持ちの奥を覗けない。それを誰かのせいにしたかった。

 いつも一緒にいるこなた。こなたが茶化して、かがみが突っ込んで。楽しい、毎日。
 でも、最近ちょっとずつ変わってきた。何かに悩むこなた。それが最初。相談されなくて、落ち込んだ。
 次は……何だろう?そういえば、みゆきに‘以心伝心’という言葉を使われた。あの日の電話、その時思った。これが以心伝心だと。言葉無しで伝わる、私達の関係。
 そして、今日。‘ずっと一緒じゃん’こなたに電話で言われたのに部屋は別。ゲームでもチームは別。
「どこが一緒なのよ……私、今、一人じゃない……」

 さて、そんな様子を扉の隙間から伺っていたみゆきは、深々とため息をついた。
「流石に、やりすぎでしたかね……」
 こなたとかがみ、二人の恋を応援する為にと、持てる知識を使い、また、新たに獲得しながら、動いてきた。
 チェスに例えて、駒を動かし、二人の距離――キングへの道は近づいた。そう思っていたのだが。思わぬところで返しの一手をくらったようだ。
「困りましたね」
 頬に手を当て、考える。
 こんなに回りくどくしなくても良かったのかもしれない。ただ一言「それは恋です」と告げるだけでも。
 相思相愛の二人なら受け入れただろう。親友をここまで悩ませるのは、みゆきとしても辛い。
 だが、とみゆきは頭を振った。軽くはない、軽くはないのだ二人の恋路は。
 自分はどんな時でも二人の味方だ。でも、世間は?同性愛、それは少なくともこの国では異端視される。
 だから尚更、二人には自分の力で乗り越えてもらいたい。親友だからこそ、敢えて答えは与えない。自力で恋だと気が付いて欲しい。
 チェックは至るまでの道は自分がかけても、チェックメイトは二人で取ってもらわなくては意味が無い。
「何かないものでしょうか……」
 誰にともなく呟いた。本当に、逆転を逆転させる一手……そんな都合のいいものは、とそこまで考えた時、微かに衣擦れの音がしてハッと振り返った。

 誰か来る。そう思った瞬間、何故か、本能的に身を隠した。物陰からそっと、その誰か、を伺う。
(あれは、泉さん?)
 そう、こなただった。こなたはしきりに辺りを気にしながら、かがみの部屋の前まで来ると、躊躇いがちに、ノックした。

 コンコン……ノックの音がする。起きたくは無かったが仕方が無い。かがみは枕から顔を上げた。枕には濡れた後。
「……誰?」
 鬱陶しい、そう思いながら扉を開け、前に立つ人物を認め、固まった。
「こなた……」
「かがみ……」
 こなたは、いつものこなたらしくなかった。物憂げに瞳を細め、視線は落ち着かず、手がせわしなく動いている。
「今、いいかな?」
 聞かれ、是とも否とも言わず、こなたを招き入れた。もはや無意識の行動。何も考えられなかった。

 部屋に入ったこなたは、やはり落ち着かず、口を開いては閉じ開いては閉じを繰り返し、5回目にようやっと言いにくそうに、
「えっと、あのさ、さっきの……あの、罰ゲームでのことなんだけど」
 と言った。
「……何?」
 思っていたより低い声が出て、かがみは自身でも驚いた、そして後悔した。こなたが、ビクッとしたから。
「いや、あの……」
 オドオドしているこなたはまるで、天敵に出会ってしまった小動物。そんな印象をかがみに与えた。
「あのさ……さっき……」
 あぁ、と、かがみは思う。いつものこなたらしくない。そうしたのは私か。それとも?
 そして、どうしてそこまで分かる?こなたらしいって何?私にとってのこなたって何?
 親友?そう、親友。

 ――大好きっ!!

 親友なら、なんでこんな気持ちになるのか。これは親友に対する気持ち、それだけなのか。本人を目の前にしてなら、その奥を覗けるかもしれない。
 かがみがそこまで思ったとき、
「さっきのかがみ……萌えたよ!!」
「はぁ!?」

 外で二人のやり取りをハラハラしつつ聞いていたみゆきは、思い切り苦笑した。
 部屋の中から、こなたの得意そうな声が続く。
「いやぁ、もう、あの大好きっ!!って言葉がさ、感情こもりまくり!!まさにツンデレ!!」
「ちょ……おまっ、わざわざそれ言いに来たのか?」
「そだよ~、だってあの後すぐにかがみ部屋に帰っちゃうんだもん」
 こなたが頬を膨らませている姿が容易に想像できる。
「もう、ホントはあの場で萌え~って言いたかったんだけどねぇ、ま、そこは流石に自重したよ。ホントはゆーちゃんとみなみちゃんの罰ゲームだったしね」
「じゃあ、もしあの罰ゲームが私のだったら?」
「勿論、萌え~!!って言ったね。そのまま勢いでかがみんは俺の嫁とか言っちゃったかも」
「な、なによ、それ!!」
「ん~?何々、照れてんの?お~、愛いヤツめ」
「やめろ、触るな、暑苦しい!!」
 廊下まで聞こえる大騒ぎ、全くいつもの二人の様子。
 なんと言うか、もう苦笑するしかない。逆転の一手、それは本人達が持っていた。
(そうですね、元々はお二人の恋ですからね)
 今回は出る幕は無し。さて、とは言えまだチェックはかけれない。
 でも、それはそう遠くないことかもしれない。
「早く気がついてくださいね、泉さん、かがみさん」
 みゆきは苦笑を微笑みへと変えると、騒ぎ続ける二人の声を心地良く聞きながら歩き出した。



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