1月12日・中編

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 さて、‘前編’と銘打ったわけだから当然続きがあるわけで、そして今回は中編に当たるわけなのだが、まず、書かなければならないことがある。
 とはいえ、前書きが長いと読む気が萎えてしまうので手短に行こう。
 場面は、前編終了から3分前、こなた、つかさ部屋において、こなたが自分の気持ちに葛藤している所から中編が始まる事をご理解いただきたい。それだけ。

 ――この気持ちは、何だろう?

「どうしたの、こなちゃん?」
 ぼんやりとしていた所にかけられたつかさの言葉。思いに沈んでいたこなたはハッと現実に引き戻された。
 時計を見ると、勉強開始からもう20分以上が経過。
 さて、一応は勉強合宿と言う名目なのだ。従姉も来ている手前、成果無しでは少々格好が付かない。
 だが、過ぎた時間は戻らない、ならば、
「いやぁ、もしかしたらかがみが私と一緒の部屋になれなくて寂しがってるんじゃないかなって思ってさ」
 理由をつけよう。いつもの自分らしく。
 こなたの言葉につかさは頷くと、
「あ~、それはあるかもね。だってお姉ちゃん、いっつもこなちゃんのこと言ってるし、本当は凄く心配してるし……内緒なんだけど、お部屋にこなちゃんの写真飾って、いつも話しかけてるんだよ」
 ドキッとした。自分の部屋にあるPC、その中にある「kagami」フォルダ、そこに納められたかがみの写真の数々、それに自分がしてきたことが思い返される。

 ――かがみも同じじゃん。私と、さ。

 嬉しいような、くすぐったいような、はたまた、むず痒いような。とはいえ、そんな事自分もしてるとは口が裂けても言えないわけだが。
 さて、でもいい事を聞いたぞ。と、こなたはニヤリとする。
「そうなんだ~。全くかがみはさびしんぼうのうさちゃんだね~」
「うさちゃん?」
 首を傾げるつかさに、ピシ、と指を立てて頷き返す。
「そう、うさちゃんだよぉ~。前にも言ったけどね、ツインテールもウサギっぽいし」
「ふ~ん……」
 まぁ、ツインテールと言われてもつかさにはピンと来ないだろうが。それでもこなたの言わんとしてることは伝わっていると思いたい。
「写真に話しかけるようじゃあ、末期だね~。あ、そうそうウサギって寂しいと死んじゃうんだってね、知ってる?」
「へぇ~、そうなんだね。私知らなかったよ」
 つかさの言葉に調子付いたのか、先程から高潮気味だった気分が更に天元を突破し、こなたの口に潤滑油を塗る。
「あ~、じゃあ、かがみには私が付いてないとダメかな?寂しくて、夜ごと‘こなた~’って、その内写真じゃ我慢できなくなって」
「あ、それいい考えかもね。こなちゃんが来てくれれば、お姉ちゃん写真に話しかけなくてもいいもんね」
「そだね~。いやぁ、どう見てもかがみは立派なこなフェ――」

「誰がさびしんぼうだ!!」

 ハッとした。つかさが振り向くより刹那に早く、振り向いた。
 開け放たれた扉の向こうに、話題の人物、かがみが立っていた。
 その姿を見た瞬間、その声を聞いた瞬間、こなたの中に生まれる感情。いや、生まれるのではない、元々あるのだ。顔を出す、というべきか。
「人が聞いてないと思って散々言ってくれるわね。つかさも、余計なこと言うんじゃない!!」
「えへへ、めんご~」
 赤い顔をして怒鳴るかがみ。舌を出して謝るつかさ。でも、こなたにはそれを気にするより先に、思う。
「どうして、かがみは、ここに?」
 思い、口から出た。

 そして、それ聞いたかがみはビクッとする。

 ――何で、来ちゃったんだろう?

 かがみの中にもあるこなたに対する特別な感情。さて、それが答えを訴えるのだが、まだ、届かない。
「ト、トイレの帰りに部屋を間違えただけよ!!」
 先程みゆきから聞いた事を、理由にする。が、一番納得できないのは本人だ。だって、間違えるはず無い、中から、声がするのだから。向かいにあっても別の部屋だと分かる。

 こなたとかがみ。二人の間で変わる空気。つかさは蚊帳の外。だって仕方が無い、二人だけの空気なんだから。
 でも、危うい。感情と理性の狭間で揺れる二人。故に少しの切欠で歪むこの空気、関係。
 だから、打破する。まだ早いと。その人物は――高良みゆきは扉を開ける。
「盛り上がっているようで、何よりです」
 みゆきは思う。着実に駒は進んでいる。だが、焦ってはならない。いつだって、結果は最後に出るのだから。今はまだ、局の途中。キングは遠い。
「時間も良い頃合ですし、そろそろみなみさん達の所へ参りましょうか?」
 だから進める、一手ずつ。ゆっくりと、ゆっくりと。長考したって構わない、時間制限まではまだ間がある、必要なのは全体を見て状況を把握すること。
 みゆきの記憶の中のチェス板、その中の駒を一手、動かした。


 さて、場面転換の書き出しはいつも困るのだが、取りあえずここは別荘のリビング。
 センターを控えていない一年生、岩崎みなみと、小早川ゆたかはくつろぎ、談笑していた。
 ああ、ここまで運んでくれた成実ゆい、ゆい姉さん?あの人は自分の部屋で寝ている。
 みなみとゆたかの会話の内容は、以前、ゆたかがこなたのバイト先に行った時にあったことが中心、なのだがやはり話の本筋には関わりが薄いので割愛させていただこう。

「ヤフ~、ゆーちゃん、みなみちゃん」
 と、こなた達がリビングにやってきた。
 こなたとかがみの間にあった微妙な空気は、既に霧散している。
 さて、気分転換とは言え、何もやることが無いのは困る。そこで、というべきか、みゆきはコホンと咳払いをしてから、
「お恥ずかしながら、みんなで出来るようにとUNOを持ってきたんですよ。6人では少々多いのでチーム戦にしません?くじもありますし」
 と言うと、部屋割りを決めたくじをかがみの前にズイと差し出した。反論する間は与えない。UNOをやることは決定付けられた。
 ゴク、とかがみは唾を飲み込むと、運命、そして因縁のくじを引く。また、赤。
「次は泉さん」
 こなたは、かがみのほうを、そのくじの色をチラチラ見ながら、思い切って、引いた。緑。
 さてはて、ここまでくれば分かるだろう。このくじにも細工は当然、ある。絶対運命決定力とでも言うべき細工が。
 離れた距離が気持ちを育てる。婉曲的だが、効果的。みゆきはこれを選んだ。

 チームは、こなたみゆきチーム、みなみゆたかチーム、かがみつかさチームと相成った。
 最初、本人に自覚は無いようだが、顔を暗くさせていたこなた。しかし、気分を切り替えたのか、
「あ~、みゆきさんと一緒か。こりゃ勝ったね。悪いねぇ、かがみん」
 と、言い出した。さて、そう言われるとかがみも黙ってはいられない。
「うっ、確かにみゆき相手じゃきついかもしれないけど……あんたには負けないわよ!!」
 グッと拳を握って返す。
「お姉ちゃん、チーム戦だってば……」
 珍しく突っ込み役のつかさ。でも、かがみにはこなたしか見えていないようでおろおろとしている。
「みなみちゃん、頑張ろうね」
「うん……ゆたかと一緒なら、きっと勝てる」
 こちらの一年生達は妙な雰囲気を醸し出しながらも乗り気だ。
 さてはて、盛り上がってきたのではないか?ならば、
「ただ勝負するのでは少し面白みに欠けますね。優勝したチームが、一番負けたチームに何か一つ言うことを聞いていただく、と言うのはいかがでしょう?」
 この提案もなんら不自然ではないだろう。
「お~、みゆきさんにしては過激な提案じゃん?でもいいね!さて、かがみんには何をして貰おうかな?」
「ま、まだ負けたわけじゃないでしょ!あんたこそ、覚悟しなさいよ!」
 にらみ合うこなたとかがみ。狐とウサギが背景に火花を散らす。
「では、カードを配りますね」
 こうして、戦いの火蓋は切って落とされた。


「ダブルのカードは今使うべきか否か……悩むわね」
 つかさを置いて一人唸るかがみ。だが、言ってることはだだ漏れだ。そんなかがみを見てこなたはクックと忍び笑いを漏らす。
「いやぁ、あんなに必死になって、かがみは負けず嫌いだねぇ」
 そんなこなたを眺めながら、みゆきは脳内でUNOの戦略とは別の一手、次なる駒をどう動かすか考えていた。さて、こんなのはどうだろうか。
「そういえば、もしかがみさん達がビリだった場合、泉さんなら何をお願いしますか?」
 と聞いた。勿論、答えは分かってる、きっと、
「え?そんなの決まってるじゃん。かがみにはツンデレて貰うんだよ」
 そう言うと思った、だが面には出さず、成る程、と緩やかに頷いておくに留める。
「それは面白そうですね」
「でしょ?かがみんのツンデレ度は世界平和の鍵だよ、萌えるんだよ!」
 力説するこなた。みゆきは笑みを崩さず聞き手に回る。
「どうやってツンデレしてもらおうかねぇ……今から楽しみだよ」
 そうですか、と言いながらカードを出す。持ち札は少なくなりゲームの終局は近い。では、盤面に集中しよう。
 勝負事、しかも別チーム。と言うことで二人の間にはまた別の意味での空気が漂っている。その空気に先程の雰囲気を少し混ぜれば、あるいは……
「ところで泉さん?」
「ン、何?」
「泉さんは、かがみさんに誰に対してツンデレて貰うつもりですか?」
「え……?」
 この問いは予想していなかったのだろう。戸惑うこなた。そこに、みゆきは微笑み君のまま畳み掛ける
「ツンデレにはあまり詳しくないのですが、そもそもがツンとデレを発揮する、と、いうことはそこに何かしら特別な感情、例えば好意があるのではないですか?」
「……」
「つまり、好きな子に程素直になれないと言うヤツでしょう。誰にでもそういった部分はありますが、特に強く出したものがツンデレ、違いますか?」
「……あ」
「すみません、勝手な事を言って。こういったことは泉さんの方がお詳しいですよね。さて、泉さんはかがみさんの誰に対するツンデレを、期待しているのですか?」
 こなたは答えなかった。その瞳はみゆきを見、次いでかがみを見、固定された。
 さて、こなたが何を思ってかがみを見ているのか、みゆきにも分からない。ただ、これも切欠、種である。もし、その意味を考えたらすぐそこに答えがあるよといったヒント。しかも特別大ヒントだ。

 しばらくこなたを見ていたが、結局果々しい返事は無かった。みゆきはそっと頭を振ると、
「UNOです」
 と言った。



 さてはて、結果のほうなのだが、こなたみゆきチームが優勝。最下位はみなみゆたかチーム。
 かがみは残しておいたダブルを最後の切り札として使い逆転した。
「さて、お約束のお願い事なのですが……」
 頬に手を当てて苦笑するみゆき。これは予想外、みなみとゆたかはどちらかと言えば優秀な方なので、こなたとの勝負に熱くなったかがみ(つかさは戦力として最初から入ってない)くらいなら楽勝、と思っていたのだが。
「……」
「……」
 この二人を組ませると心ここに在らずといった感で、ゲームに集中していなかった。さて、何故でしょう?
「私は考えてなかったので、泉さん、何かお願いできますか?」
「ふぇ!?私!!」
 そんなに驚くことも無いだろうに、こなたもかがみを見たまま心ここに在らず。ホッとしているような、残念なような。みゆきの苦笑が更に深くなった。
「う~ん……そだね~、じゃあ、みなみちゃんがゆーちゃんに振り向きながら‘大好き’って言ってよ」

 映像とってひよりんに送るから、と携帯を取り出すこなた。言われた二人は真っ赤なのだが、約束事を無下に出来る人達ではない。
「いくよ、ゆたか」
「う、うん」
 みなみは後ろを向くと大きく息を吸い込んだ、そして、
「……大好き」
 振り向いた。爆発した二人。だが、こなたには不満なようで。
「む~、それじゃあダメだよ。もっとこう……なんて言うか感情込めてさぁ」
 と、無茶難題を吹っかける。

「では、誰かがお手本を見せる、というのはどうでしょう?」
 みゆきの言葉に、ナイス提案と頷くこなた。みゆきはぐるりと場を見渡して、
「かがみさん、泉さんに同じ事をしてくださいますか?」
 と言った。こなたもかがみも、え、と固まる。
「な、なんで私がこなたによ!!」
 立ち上がると、みゆきに食って掛かるかがみ。だが、みゆきはその剣幕にも微笑みは崩さない。
「無作為抽出の結果です。それとも、嫌なんですか?なら、仕方ありませんね。私がやりましょうか」
「そ、そうよ、みゆきがやりなさいよ……」
 力なく座り込んだかがみ。だが、その目はこなたをチラ、と見たのを見逃さない。
「本当によろしいんですか?」
「何で確認するのよ……好きにすればいいじゃない」
「本当に、嫌なんですか?」

 念を押すみゆき。かがみは‘嫌なんですか’と言うフレーズに引っ掛かりを覚えた。だって、私は……
「嫌なんて言ってないじゃない!!!」
 叫んでしまった。う、と思ったらもう遅い。みゆきがあまりにも落書きしたくなるような人畜無害なスマイルで、
「では、お願いします」
 とだけ言ったのが恨めしかった。だけど、こなたはその間、茶化すようなことも何も言わなかった、何で?
「こ、こなた、い、一度だけだからね」
「う、うん……」
 声が震えている二人。今、二人は同じ事を思っている。

 ――なんでこんなに、緊張して、ドキドキするんだろう。

 後ろを向いて、スウ、とかがみはは息を吸い込んだ。そして、
「大好きっ!!」
「!!!」
 こなたとかがみ、二人の時が一瞬止まった。刹那にして永遠。
 みゆきは、ふ、と口元を歪めると、
「大変お見事でした。みなみさん、ゆたかさん。今の感じでお願いします」
 と言った。




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コメント:
  • みゆきさんスゲェェ -- うに2 (2014-05-14 13:47:00)
  • これはニヤニヤせざるを得ない。 -- 名無しさん (2013-01-15 22:42:37)
  • ニヤニヤw w w w w -- 名無しさん (2010-03-28 17:58:27)
  • にッ!?
    やべぇw
    にやにやがとまらないぃ -- 白夜 (2009-10-12 00:36:59)
  • 悔しいっ…けど……2828が止まらないっ…ビクビクッ/// -- 名無しさん (2009-05-12 10:00:04)
  • 誘導巧いな -- 名無しさん (2009-04-27 01:32:25)

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