1話 同居人の作り方

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もしライオンが道路を歩いていたらどう思うだろう?もし車が線路を走っていたらどう思うだろう?
もしUFOが自分の家の庭に着陸したらどう思うだろう? きっとあっけにとられるだろう。
今の私がそんな状態。

「あの、ここって3号室です、よね?」
「・・・そうですよ。」

ドアを開けて、目の前に広がる風景はまだ荷物も何も置かれてない、殺風景な部屋だと思っていた。
でもそれは間違い。目に映るのたくさんの段ボール。ちょっと開いてある荷物とマンガの山。

「幸運星荘の3号室は、私が入居するはずなんですが・・・」

マンガの山に埋もれている小さな人影。よく全体像が見えない。でもはっきりと分かるのは、まるで海のような深い青。

「あの・・・私、柊かがみって言うんですけど、この前、管理人さんとも確認しあったんです。」

上手く働かない頭をフル回転させる。こんな状況になったら誰でもあせるわよ。
小さな女の子は何も言葉を発さない。じっ、と私を見つめる。
美しいエメラルド。あまり開いていない目。それでも吸い込まれそうな、美しい輝き。ちょっと、鼓動が早くなった。

「この近くに陵桜学園ってあるじゃないですか?私、今年からそこの高校に通うんですよ。それで、妹とアパート借りたんですが・・・」

さっきから動かないコバルトブルー。頭にちょこんと生えているアホ毛。なんか、可愛らしい。何歳ぐらいの女の子なんだろう?
でも、本当にさっきから、エメラルドの目が私を捕まえて離さない。

「あの、私の顔に何か付いてますか?」

無気力?無感心?なんて言ったらいいか分からない表情。そんな表情が、ちょっとだけ崩れ、くすっと笑ったような、気がした。

「・・・あなた、ツンデレだね。」
「はぁ!?」

そんな奇妙なファーストコンタクト。


‐‐‐‐


「はい・・・そうなんですか・・・分かりました・・・はい。」
「お姉ちゃん、管理人さん何て言ってた?」
「手続きのミスだってさ。他に空いてる部屋もないってさ。」

最悪。前途多難だ。これから始まる学園生活。ムリ言って妹のつかさと二人でアパートを借りた。
小学校の遠足の時みたいに、ワクワクしていた。なのに、手続きミスだから、当事者で話し合え。無責任にも程がある。

「名前、まだ聞いてなかったね。何て言うの?」
「こなた。泉こなた、です。」
「可愛い名前だね。私は柊つかさ。お姉ちゃんとは双子なんだ。」

そして私が頭を抱えて悩んでいるのに、後ろでは自己紹介している。めまいまでしてきた。

「えっと、泉さん?どうしよっか?」
「・・・柊さんは、どうしたいんですか?」

どうしたい、って言われても正直困る。つかさの部屋は2号室。でも3号室よりは狭い。二人で暮らせる広さではない。
かと言って私がここに住みたい、とワガママも言えない。どうしたものか。

「あっ!ケロロ軍曹!」
「って、あんたは何やってんの!?」
「すごいね!泉さん、たくさんマンガ持ってるんだね!」
「マンガとゲームが趣味だから。」
「無視かい。」

確かにすごい量のマンガやゲーム機やゲームカセット。おまけにパソコンまで段ボールに入っている。
しかもその中には。

「あ、これラノベで読んだことある・・・」
「・・・柊さんも結構通なんですね。」
「べ、別に通じゃないわよ!ただ面白そうだったから・・・前に衝動買いしちゃって。」
「・・・やっぱり、ツンデレか。」
「え?何か言った?」
「いえ、別に。」

無気力な話し方。半端にしか開いていない目。興味なさそうな声。
でも、不思議な気分。イヤじゃない。この感じ。なんて表したらいいか分からない感情。
高揚感。春だから、浮かれてるのか、何なのか分からない。でも、私は、バクチをしてみようと思った。
1回しかない、人生。楽しまなきゃ損、だよね?


‐‐‐‐


「泉さん?」
「はい?」

首をこてっと傾ける泉さん。小動物みたいで、愛らしい。私は、ここで賽を投げた。

「料理は得意?」
「・・・どちらかと言えば得意です。」
「掃除は苦手?」
「・・・苦手と言うより嫌いです。」
「勉強は?」
「・・・ゲームの方が得意です。」
「お姉ちゃん?」

理想の答えが帰ってきた。あとは、泉さんしだい。私は、楽しみたい。こんな不思議な状況を。

「じゃ、同居、しない?」
「え?」
「同居ってお姉ちゃん、一人が良かったんじゃないの?」
「だってさ、こうするしかないでしょ?」

実際はもっと方法はある。でも、私は泉こなたさんと同居してみたい。
魅了された、とまではいかないけど、何か惹かれたんだ。
コバルトブルー。エメラルド。アホ毛。泣きホクロ。小さい体躯。半開きの目。
泉さんの人となりなんてまだ全然分からない。でも、私は、自分のインスピレーションを信じてみたくなった。

「私、料理は得意じゃないけど・・・」
「苦手だよね、お姉ちゃん?」
「う、うるさいっ!・・・私は料理は苦手だけど、泉さんは得意。その代わり、身の回りの事は私が何とかする。どう?ギブアンドテイク、悪くないと思うんだけど・・・」

泉さんの表情は変わらない。さっきのように、じっと私を見つめる。
そして今度はさっきみたいにくすっとではない。にこっと笑った。

「いいよー。それなら、私も楽ですし。」

笑った顔は、すごくあどけなかった。無気力な表情はどこへ行ったのだろう?
でも、賭けは私の勝ち。賽は私に幸運をくれた。

「じゃ、決まりね!改めまして、私は柊かがみ。柊さんじゃなくて、かがみで良いわよ。あと、敬語も無しにしましょ?」
「よろしく、お願いします、かがみ。私も泉さんじゃなくてこなたでいいよ。」
「よろしく、こなた。」


隣の部屋はつかさ。可愛い双子の妹です。
私の部屋は3号室です。同居人がいます。名前はこなた。不思議な少女です。これから仲良くしていきたいです。
これから始まる、幸運星荘での生活。今日の出来事は1つめの幸運。明日も幸運が訪れますように。




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