寒くない雪の日

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「今日は寒いねぇ~」
私の口から、思わずその言葉が出ていた。
「そうね。朝、天気予報で今年一番の寒さを記録するって言ってたしね」
隣を歩くかがみの言葉通り、お天気お姉さんがそんなことを言っていた。
「夜中、すごい寒くて風邪でもひいたのかと思ったよ。
天気のせいだーってわかってれば、もっと経験値稼いでたんだけどな~」
「神様の早く寝なさいっていうお告げよ」
「酷い神様もいるもんだねぇ~」
人の楽しみを奪うなんて、憲法違反もいいところじゃないか。
「こなたのためを思ってる、いい神様じゃない」
かがみめ。言ってくれるねぇ~?
「私のためを思ってくれてるのは、かがみだけで十分だよ」
「なっ!?あ、アンタは何突然変なこと言い出すのよッ!!」
むふふ、予想通り~!
このくらいで顔を真っ赤にしちゃうなんて、かがみはやっぱり可愛いなぁ~♪
ダメって分かってるけど、ついついもっといじめたくなっちゃうよ~♪
「え?何か私、変なことでもいった?何が変なのかな~?」
「な、何で私がアンタのことなんか心配しなくちゃいけないのよ!」
「え?だって、ねぇ?」
「ねぇ?って……また、嫁が~とか言うんじゃないんでしょうね」
「な~んだ、聞かなくても分かってるんじゃん」
「まったく、アンタはいっつもそんなバカみたいな冗談ばっかり言って……」
呆れながらそう言うかがみ。
不意に私は立ち止まった。
少し歩いてからそれに気づいたかがみが、私のほうを不思議そうに見る。
「ん、こなた、どうかしたの?」
私は、かがみの目をじっと見つめる。

「冗談だと…………思う…………?」
「えっ…………?」
私の言葉に、かがみが顔をまた真っ赤にして驚いている。


お互い何も言わないで見詰め合ったまま、しばらく音がない時が流れる。


その静寂を破ったのは私。
「……今やってるギャルゲーのヒロインっぽく言ってみたんだけど、どきどきした?」
「な……っ!ば、バカ!するわけないでしょ!!」
「かがみ~、それだと肯定してるようなものだよぉ~?」
「知るかぁッ!!」
「必死に隠そうとするかがみ萌え~♪」
「萌えとか言うなぁ!」


『いつも』のやり取り。
私とかがみ。
ちょっと他の人とは違うかもしれないけど、私たちにとってはこれが『いつも』。


「風邪っていったら、私よりかがみのほうが心配だよ」
「え?なんでよ」
「だって、かがみってよく風邪ひくイメージがあるし」
「変なイメージつけるな。そんな言われるほどひいてないわよ」
「そう?」
「そうよ」
むむ、そうだったっけー?


―――くしゅん――。

その音は、私のすぐ隣から聞こえてきた。

そちらを見ると、顔を真っ赤にしているかがみがいた。
「あれあれ~、かがみ~、今の音なんだろうね?」
「う、うるさい……」
小さい声で言うかがみ。
ぐうの音も出ないってやつかな?

やっぱり照れてるかがみも、可愛いなぁ~♪


――――『いつも』。
―――その境界線を、ちょっと越えても……良いよね?

「ね、かがみ、手つなごうよ」
「な、なによ、突然」
「だって、そっちのほうがあったかいじゃん~?」
「で、でも……」
「嫁に風邪をひかれたら困っちゃうからね」

本当の気持ちを伝えたい。
でもそれは出来ない。
だからこれくらいで我慢。

かがみ、これくらいなら良いでしょ?

「……し、仕方ないわね……」
かがみは照れながらも左手を差し出してくれた。
すごく嬉しい。
けれど、それを隠すために、いつもの調子で言う。
「むふふ、照れながらも手を差し出すかがみ萌え~♪」
「ば、バカ!変なこと言ってないで早くしなさいよ!」
「焦らなくても大丈夫だよ~♪」
……そう言っていながらも、焦ってるのは私だった。
求めていたものがそこにある。
それなのに―――。
それなのに、何故か私は躊躇っていた。
「こなた……?」
かがみが不思議そうな顔で私を見てくる。
……ええい、泉こなた!男を見せるんだ!!
え?私は男じゃないって?
夜はいつでもPCの中で男だから問題ナシィッ!!
私はかがみの差し出した小さな、でも私のより大きな手を、しっかりと握った。
冷たい手。でも、とっても温かい。
まるで、かがみの心が伝わってきてるみたい。
「……温かいね」
思わず、そんな言葉が出ていた。
「そ、そうね……」
かがみも、顔を真っ赤にしながら同意してくれた。


その時、私たちの前に舞い降りてきた白いもの。

「「わぁ……」」
それをみて、私もかがみも声を上げていた。

「雪だ………」
ふわりふわりと舞い落ちるそれは、まるで神様からの贈り物。

「どうりで寒いわけね」
「もう、かがみ、現実的だなぁ~」
「じゃあ、なんていうのよ?」
「そうだなぁ……。まるでゲームの中みたい、とか?」
「アンタはもっと現実を見なさい」
「ひどいなぁ、夢みることは大事だよ~?」
だから今――――。
「あんたの場合は見すぎなのよ」
呆れたような顔をするかがみをみつめて、私は言った
「ねぇ、かがみ。雪降ってるじゃん―――」
「そうね、でもそれがどうしたの?」
「でもさ………全然寒くないね」
かがみも、私を見つめ返して笑顔で言った。
「そうね」

雪がひらひらと舞い降りる冬の日。
でも私たちだけはとっても暖かい、そんな日―――。



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