じんぐる、べる

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12月24日─────

事の始まりは、終業式の後。
こなたたちのクラスで4人で談笑していたんだけど、こなたが

「今日、みんなでうちでクリスマスパーティしない?」

と突然言い出した。

クリスマスはバイトじゃなかったのかと聞いたけど、なんでも人手が足りて急遽休みなったらしい。
なんかいまいち不自然な理由な気はしたけど、
ともあれ、クリスマスをこなたとすごせるなんて、諦めてただけに嬉しかったから気にしないことに。

でもみんな、ってことはふたりっきりじゃないのかー。
ちょっとだけ残念、まぁみんなでわいわい過ごすのもいいか、なんて思ってたんだけど。

「ごめん、こなちゃん。今日はこのあと予定がはいちゃってて~」
「すみません、泉さん。私も今夜は先約がありまして」

あとの二人が申し訳なさそうに言う。
前からこなたが今日はバイトといっていたし、すでに予定を入れてしまったのだろう。
でも、みゆきは家族やみなみちゃん一家とパーティでもするのかもしれないけど、
つかさに今日何か用事があるなんて聞いてないぞ。

「そっかぁ。んじゃ、来るのはかがみだけだね」

私の返答を待つことなく強制参加のようだ。もとよりそのつもりだけど。

「それじゃ一度家に帰って、支度してからいくわ。どうせ泊まりでしょ」

つかさたちは不参加だけど、おじさんやゆたかちゃん達が居るだろうし、
どうせ皆で夜通しで遊ぶものだと思ってたし。
きわめて冷静に答えたつもりだったけど、嬉しかったのがちょっと顔にでてたかな。

なにかこなたの表情がニヤニヤしてた気がする。気のせいか?
つかさとみゆきはいつにも増して生暖かい視線を送ってきてるし。

「お姉ちゃん、こなちゃん。お幸せにね~」
「素敵なイブをお過ごし下さいね」

なっ!?

「かがみん、顔真っ赤だよ~」
「う、うるさいっ!」

今振り返れば、つかさたちの発言も意味深だったなぁと思う。

そうしたわけでこなたの部屋。私はひとり待たされていた。

───遅いなー、なにやってるんだろ。

家に帰り、支度をして……予め買っておいたこなたへのプレゼントも持って、泉宅へ。
こなたに部屋へ案内され、ジュースと茶菓子持ってくるから待っててといわれ早10分。
お茶菓子の用意にそんな時間かかるとは思えないし。

まさか今作ってる最中とかだったり。あいつの腕前ならお菓子の1つ2つ作るのはわけないだろうし。
だとしたらちょっと早く来すぎたかな。

そういえば、パーティをやるといった割にはゆたかちゃんもおじさんも
今日は出かけてて帰ってこないらしい。
おじさんはこんな日に原稿の打合せかよ、と涙して訴えてたそうな。
ゆたかちゃんは一年生の皆とみなみちゃんの家でパーティらしい。みゆき家とは一緒なのかな。
でもだとしたら、ゆたかちゃん経由でこなたも知ってそうだし、わざわざ誘わない気がするが……。
成実さんも旦那さんと過ごすらしいし。

って、ちょっとまて。てことは今日はずっとこなたとふたりっきり!?
いや、その。二人っきりだったらいいのに、とは思ったけど。
泊まりで二人っきりなんて初めてだし。
こなたがニヤニヤしてた気がしたのはそのせいか。あいつは状況分かってたのか。
うぅ~~~~~。

落ち着け、おちつけー私。どっかの誰かのように心を落ち着かせようとする。
こんな状態こなたに見られたらまた何ていわれるかー。

余計なことを考えないようにあたりをきょろきょろ見回すとふと気づいた。
テーブルにひかれたクロスの上に、ベルが一つ。何でこんなものが……ジングルベルつながりか?
手にとってみる。こいつには見覚えがった。
確かこなたが、鳴らしたらメイドがきてくれるんじゃないかなー、とかいってたやつだ。
あいつらしいと言えばそうだけど、そんなわけないだろうに────

……チリ~ン

軽く振ると、静かな部屋に鈴の音がひろがる。
綺麗な響きにちょっと心が落ち着くかも。なんて思っていたら……

「お呼びですか、かがみお嬢様」

は? お嬢様?
声のほうをみてみると、こなたがいた────ただし、メイド服を着ていたが。

「おまっ、なんて格好してんだよ!?」
「なにって、メイドだよ。今日は一日かがみのメイドさんになってご奉仕するつもりだヨ」
「ご奉仕って……なんか悪いものでも食べたか?」
「ぶー、ひどいなぁ。心からかがみに尽くしてあげようと思ってるのに~。
っと、とりあえず、お茶菓子もってくるね」
「ってまだもって来てなかったんかい」
「かがみがいつになってもベル鳴らしてくれないからさー。メールで促そうかと思ったよ。
それとも早くお菓子が食べたかったですか、食いしん坊なお嬢様?」
「なんだとー!?」
「ほわぁっ!!」

お得意の猫口スタイルで、メイド口調でとても敬ってるとは思えん言葉をいい残して、
こなたは今度こそお茶菓子を取りに行った。
まったく、あいつの考えることはいつも斜め上だ。ていうか凝りすぎだ。
しかし、何の風の吹き回しだろうか。あいつから尽くすだなんて。

しばらくして、こなたは今度はちゃんとジュースとお茶菓子を持ってきた。

「今料理とケーキ仕上げてるとだから。適当にくつろいでていいよ。
あ、何かあったらソレで呼んでね~」
「あんた一人で準備するつもり? 私も何か手伝うわよ」
「いやいや、今日はかがみんは大事なお客様だから、なーんもしなくていいよ。
全部わたしにまかせたまへ。」

そういい残して台所に戻っていった。
普段なら「かがみが料理したらなべが大爆発しちゃうよー」とか言いつつも、
手伝わせてくれそうなものなのにな。

────何もしなくていい、っていわれても一人じゃ退屈だよ……

今日が私の誕生日とかならまだ分からなくも無いんだけど、
二人っきりとはいえ、クリスマスパーティなんだし、一緒に準備とかしたいんだけどなぁ。

こなた、本気で何もさせてくれないつもりらしい。
さっきもジュースのお代わりをもらいに台所行ったら、
「ちゃんとベルで呼んでくれなきゃー、ジュースはすぐ持ってくから」と、
追い立てられるように部屋に戻されそうになったし。
かといって、私を驚かせようと秘密の準備でもしてるわけでもないっぽい。


何か調子狂うなぁ。口調はいつもとあんま変わらないんだけど。


恋人同士になってからもあいつの態度はそれほど変わらなかった。
むしろ今まで以上に弄られる事が多くなった。私もいつものようにお返しする。

それは私たち自身が、恋人でもあり親友でもありつづける、ってことを望んだから。

あいつの気はよーく知ってるし、私の気持ちもあいつはよく分かってるから、普段はこれで十分。
"二人だけの時間"には恋人らしいことしてるし。

それだけに、今日みたいなこなたはちょっと珍しい。
いつもの"恋人の私"へしてくれる感じではないし、かといって"親友の私"への態度ともちょっと違うし。
単にメイドさんごっこでもしたいだけだろうか。

あまりに退屈すぎて、準備してると分かっていつつも、用も無くベルを鳴らす。
こなたが部屋にやってきて、ちょっと他愛も無い話をしてすぐもどる。
その度に、「やっぱ私も手伝う」といったけど、あいつは断固として拒否。

幾度となくそれを繰り返して、そしてまた。


……チリ~ン


「どったのー、かがみ?」
「んー、特に何も無いけど」
「でもこれで5回目だよ。なんかしてほしいことあるんじゃないの? 
ほら、何でもいってよ。出来る事ならなんでもしてあげるから」

心から尽くしてくれるのは嬉しいけど、理由もいまいち分からないままじゃ。
こなたも嫌がらせでしてるわけじゃないのはわかってる。きっと何か思うところあってのことだろう。

でも、これは私の望む形じゃないから。
それにしたいことならいっぱいあるけど、してほしい事は────

「それなら、メイドさんごっこはもう終わりにしてもらっていい……かな?」

できるだけ傷つけない言い方で。

「あはは。迷惑……、だったかな」

それでも、こなたの表情が一瞬にして曇る。

たまらず、

「迷惑じゃないわよ。……ほら、ここおいで」

座ってる私の足をぽんぽんと叩いてうながす。こいつだけの特等席だ。

すこし戸惑ってたけど、やがてこなたは私の上に座った。
体を私に預けてくるが、とっても軽い。
私も後ろから腕を回してぎゅっと抱きかかえてあげる。
こなたを拒絶したわけじゃないってこと、わかって欲しいから。

「かがみ、おこってない?」
「ううん、ぜんぜん」

ゆっくりとこなたの綺麗な青髪を手ですいてあげると、気持ちよさそうな顔してる。
よかった、安心してくれたみたい。悲しい顔したこなたなんて見たくないしね。


すこし落ち着いたところで、ずっと気になったことを聞いてみた。

「ねぇ、どうして急にこんなことしようと思ったの?」
「ん、日ごろ宿題とか勉強とかお世話になってるからさ。
かがみのためになんかしてあげられたらなぁと思って」
「だからって、メイドでご奉仕はないでしょうが。ふふ、でもあんたらしいわね」

こいつのことだから、今日のためにいろいろ準備とか無理したりしたんだろうな。
つかさたちに、ふたりっきりなれるように協力してもらってそうだし、
バイトにしても、仕事柄、今日は人の手が足りなくなることはあっても余るなんてことないだろうし、
何とか休み貰ったんだと思う。

でも、あえて聞かない。こいつにもプライドがあるだろう。
その分、こいつの気持ちにこたえてあげることにする。

「ありがと、こなた。そう思ってくれるだけで私は嬉しいわよ」
「かがみ……」
「でも、心から尽くす、っていうのは何でもかんでもしてあげればいいって事じゃないでしょ。
ほんとにして欲しいことしてあげなきゃ、ね」
「じゃぁさ、かがみ。あらためて、何かして欲しいことある?」
「そうね。一緒にパーティの準備して、一緒にクリスマスを祝って、それから────」

ちょっとだけ照れから口詰まったけど。もう大丈夫、さっきみたいに動揺はない。

「それから?」
「それから、恋人の聖夜をすごしましょ。ふたりっきりの」
「それだけでいいの?」

難しいこと考える必要はないよ、こなた。

「私がして欲しいことは、こなたがそばにいてくれること。それだけよ」
「かがみ……うん!」
「ふふ。それじゃ、早速はじめましょうかね。っと、その前に」
「ん?」

私は持ってきたプレゼントを取り出して、こなたの目の前にかざす。
あとで渡そうかと思ったけど、なんか今わたしくなっちゃったから。

こなたが手に取り、その小さな箱をあける。

「早めにだけど、こなたへ私からのプレゼント」
「綺麗なペンダントだね。ありがと、かがみ。
わたし、こういうのほとんど持ってないし、とっても嬉しいよ。
あぁ、でもどうしよ。わたしプレゼント用意してないや」

もしかして、私に一日尽くすのがそのつもりだった、のかな。
だったらちょっと悪いことしちゃったかなぁ。

「気にしなくていいわよ。こなたからは心のプレゼントもらったから」
「でも、それじゃわたしの気がすまないよ~。むむー何かいいものは」

辺りを見回してめぼしいものを探してるようだけど、流石に限定グッズとかは勘弁よ。

「ん~~~~~。そうだ!!」

と、こなたは立ち上がると、あのベルをもってきて私に手渡す。

「わたしからかがみへのプレゼント。これからもずっとかがみに心尽くすよ、ってことで。
……なんちゃって。あとでちゃんとした物買ってわたすね」

こいつらしい、今できる最大限のプレゼント。

「ううん。これがいいよ。こなた、ありがとね」
「かがみ……えへへ。
寂しくなったらそれで呼んでくれたまへ~。そしたら、恋人としてかがみのとこいくから……ね」

こなたったら、真っ赤になっちゃって。でも、きっと私の顔も真っ赤だな。

「こなた……」
「かがみ……」

もう言葉はいらない。そっとこなたの唇にくちづけた。
このあとまってる、素敵な一夜を思いながら。


……チリ~ン


幸せな私たちの、ジングルベル。









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