クリスマスプレゼント

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「やふー」
「おはよ、こなた」
「おはよう、こなちゃん」

こなたと…その、付き合いだしてから半年が経っただろうか。
あの頃、さわさわと頬を優しく撫でていた柔らかい風は今は肌に
冷たく突き刺さり、銀杏の木もすっかり裸になって、喋る度に白い呼気が唇の端から漏れる。
付き合っていることはまだみゆきとつかさにしか話してないけれど、
二人とも意外なほどすんなりと受け入れてくれた。こっちとしては有り難かったけど
何となく拍子抜けした気分だった。こなたいわくあの二人もフラグ立ってるからね、とのこと。
言われてみれば、みゆきはつかさと話している時、いつもよりももっと
表情が柔らかい気がするし、つかさもまんざらじゃなさそうだ。
ここは姉として温かく見守るべきところかしらね。


ぼんやりそんなことを考えていると、甲高いブレーキ音を響かせながら電車がやってきて
ホームへと車体を滑らせて来た。通勤ラッシュに被ってしまうせいか
席に座れることは少ないんだけど、今日は運よく四人用の席が空いていた。
暫くしてこなたがあ、と声を上げた。

「そだ、かがみ、つかさ、イブの日予定ある?」
「ないけど…なんで?」
「暇だったらウチでパーティーしない?クリスマスは家族で過ごしたいだろうから
一日だけ泊まってさ。みゆきさんも誘って」

少しだけ、ほんの少ーしだけ二人きりで過ごしたいな、とか思っていたから
ちょっと残念に思ったけれど、その機会はこれからいくらでもあるんだし、と思い直して頷く。
「私はいいわよ。つかさは?」
「うん、行くー!今から楽しみだね!」
「よし、決定だね。実はもうみゆきさんには話してあるからさ。
じゃあ、その日プレゼント一つ持って来てね」
心底嬉しそうにこなたが笑う。
「やっぱり醍醐味はプレゼント交換だからねっ!」

師走とはよくいったもので十二月は特に一日一日が短く感じる。
一週間前、こなたに誘われたのが昨日のことのように思えてしまう。学校は一昨日から冬期休暇に
入っていて、私とつかさは着替えやら交換用のプレゼントやらが入った鞄を手にこなたの家の前に居た。
チャイムを鳴らすと直ぐに足音が聞こえ、玄関の扉が開かれる。

「よこそー、みゆきさんももう来てるよー。さ、あがってあがって」
こなたに促され部屋に入る。今まで外に居たせいか、ストーブの熱が少し暑いぐらいに感じた。

それから私たちはゲームをしたり、他愛のない話に花を咲かせたりして午後の一時を過ごした。


クリスマス仕様の豪華な夕食やケーキを食べ、お風呂に入り終わると
私たちはご飯を食べる前のようにこなたの部屋に集まっていた。
夕食時、おじさんが「クリスマスイブに美少女達に囲まれるなんて眼福眼福ゥ!!」
とか叫んでこなたに中段回し蹴りをくらい、呻いてたりしたけど
今までで一番楽しいイブだったように思う。

「さて、そろそろ本日のメインイベント、プレゼント交換と参りますか」
こなたがそう切り出して、CDコンポの電源を入れた。
「何すんのよ?」
「小学生の時とかやんなかった?音楽が鳴ってる間プレゼントを回して、
音楽が止まった時持ってるのを貰うってやつ」
「やったやったー!私、いつも変なのばっかりきちゃうんだよね」
「明らかに用意するの忘れてて、持ってる消しゴム半分にしたやつとかね」
「私は初めてなので…楽しみです」
「解って貰えたかな?じゃ、みゅーじっくすたーと!ポチっとな」
こなたが再生ボタンを押すとシャンシャンシャン、と鈴の音が聞こえ始める。
何だっけこの曲?この時期よく聞く――そうだ、ジングルベルだ。
私から見て右隣りがみゆき、左がつかさ、正面にこなたがいて、プレゼントは反時計回りに回る。

突然ぴたりと止まった音楽に少々驚きつつ手の中のプレゼントを見ると……
つかさが用意したものだった。最初の位置から一つだけ動いたということになる。

「開けてもいいの?」
聞くと、何故かこなたからご自由にー、と返って来た。
綺麗にラッピングされたそれを開けると、鮮やかな色のボール状のものと
手の平サイズの四角い固形のものが入っていた。
「わ!綺麗!つかさ、これ何?」
「あ、それね入浴剤とボディソープだよ。四角い方がボディソープで丸いのが入浴剤。
入浴剤の方はお湯を張る時に砕いて入れると泡ブロになるんだって」
「へぇー、今度使わせて貰うわね。あ、こなたは何だったの?」
「ん?これ」
下を向いていたこなたが私を見て、手の中にあるものを見せる。
「コロン?」
…似合わない…!っていうかこなたはそのままでも甘くていい匂いが…
いやいや、何考えてるんだ私。
「む、似合わないって顔してるよ、かがみ。でも、これ好きな香りかも。
そだ、つかさ。私のプレゼントはまだ開けないでね?」
「?うん、解ったよー」
「みゆきさんのは?」
あ、私のプレゼントね。オススメのラノベにしようかと思ったんだけど、
こなたやつかさに渡っても読まなさそうだから別の物にしたのよね。
「あ……かわいらしいポーチですね。ありがとうございます、かがみさん」
「や、そんなたいした物じゃないし…」
「かがみんセンス良いよねー」
「本当、よかったねゆきちゃん」
つかさが笑って自分のことのように嬉しがると、みゆきも頬を赤らめて頷く。
やっぱりこの二人…。

「さて、メインイベントも終わったことだし、そろそろ寝ますかね。もう11時だし」
え?慌てて時計を見ると確かに針はその時刻を指していた。
あんまり楽しかったから、時間の経つのも忘れていたらしい。
「そうですね。そろそろ寝ましょうか」
「四人じゃ狭いから、隣の部屋に二人寝て貰うことになるけどいいかな?」
周りを見渡すと、確かにテーブルとかを寄せれば四人寝れないこともないだろうけど
少し窮屈そうだった。というか、積んであるゲームや漫画のせいだと思う。
…だけど…なんだ、そのニヤニヤ顔。

「部屋割りは私とかがみがこっち、みゆきさんとつかさがあっち。これで良い人っ!はいっ!」
「は、はいっ!」
こなたの勢いにつられてか、つかさが元気に右手を挙げる。
ちょっと待て!なんだその意図的な部屋割り!
ってなにげにみゆきも手、挙げてるし!しかもなんか顔赤いし!!
「……し、しょうがないわね。みんなそれでいいなら私もいいわよ」
「むふ、まったくツンデレなんだからー。それじゃ決定だね。
かがみちょっと待ってて。二人の布団出して来るから。
あ、つかさ、あっちの部屋に行って私が居なくなったらあれ開けていいから」
「うん、おやすみお姉ちゃん」
「おやすみなさい、かがみさん」
「ん。おやすみ」

部屋を出る前にみゆきがにっこり意味ありげに微笑み、つかさがばちこーんと
ウインクをしたのは気のせい……よね?

「ふぃー…ただいま、かがみん」
なにもすることがなくて手持ち無沙汰になってしまい、こなたのベッドに座りながら待っていると
15分くらいしてこなたが戻って来た。
「おかえり。私の布団は?出すの手伝うけど」
「え?いいじゃん。二人で寝よーよう」
「ばっ…何言ってんのよ!!」
かああっと一気に熱が顔に集中する。いくら私とこなたが付き合っていて
肌も重ねたこともあるとは言え、隣にはみゆきとつかさがいる。
いなかったら……まあ、一緒に寝るぐらいは了承したかもしれないけど。

「ふふ、それはさておきかがみんや」
「?」
「一年間、いい子にしてたかね?」
「は?」
急な話題転換には慣れたつもりだったけれど、さすがに今のにはついていけなかった。
私の頭の上にはクエスチョンマークが浮かんでいるに違いない。

こなたが通学鞄からごそごそと何かを取り出し、頭にかぶせる。
サンタクロースが付けているような赤い帽子をかぶったこなたが振り向いて、
また同じ質問をする。
「いい子に、してた?」
顎に手をあてて一年間のことを思い浮かべる。
…色々やったけれど、悪いことはしてないはずだ。…なんでこんなに律儀に考えてるんだ、私。

「まあ…」
曖昧に答えると、こなたがくすっと笑う。
「いい子にしてたかがみにはコナタクロースからプレゼントだよ」
笑みを大きくしたこなたが私に近づいて、首に手を回して来る。
体が密着し、まるで抱きしめられているみたいな恰好になる。
瞬間、心臓が面白いぐらいに高鳴った。
チャリッと微かな音が耳朶を打ったかと思うとこなたの体が離れていく。

「え……あ……!!」
胸元に光るのはペンダントだった。ペンダントトップは雪の結晶を象ったもので。
「メリークリスマス、かがみ」
「ありがとうこなた…あ、私も…」
言って、私も持って来た鞄に手を入れて、出した小包をこなたに渡した。
「メリークリスマス、こなた」
「おおっ!開けるよ?」
私の返事を聞かないうちに包装を解いたこなたが歓喜の声を上げた。
うんうん、悩んだかいがあったってものよね。

「指輪だー!何なに?かがみ、これエンゲージリング?」
「ちがっ!ピンキーリングよ。ほら、つけてあげるから手貸しなさい……あれ?」
小指用のそれは十分に口径が小さいにも関わらず、こなたの細い指には
それでも少し大きかったらしい。根元まで嵌めてみてもまだ余裕がある。
……ちゃんと測っておけばよかった。

「やっぱり、こっち用じゃん」
くふ、とこなたがのどで笑って、小指に嵌めていた指輪を抜いて薬指に嵌め直した。
…もちろん、左手の。
「ほら、ぴったり」
「……………っ!!」
プロポーズしたみたいな恥ずかしさとか、照れ臭さとか、
躊躇いも見せずその指に嵌めてくれた嬉しさだとかがないまぜになって、もう何も
口にすることが出来なかった。

ああ、でも、一つだけ伝えるのなら。

「こなた…」
「んー?」
「好き…」
「私も、大好きだよ」

こなたが一歩踏み出して来て、私に抱き着いて来る。頭の上に乗っていた
サンタの帽子がパサリと床に落ちて。
それが、合図だった。

みゆきから貰ったコロンの香りなのか、ふわりと果物みたいな匂いが鼻孔をくすぐって
唇同士が触れてしまえば、後はもう、お互いの体温を求め合うだけだった。


願わくば、来年も再来年も、これから先ずっとこなたとクリスマスを迎えられますよう――。

~おまけ~

「そういえば、こなた」
「何?」
「つかさのは結局何だったの?」
「あー、あれね。特濃級の百合同人誌。もちろん18禁の!」
「おまっ!人の妹になんてものを…!っていうかもしみゆきにいってたら
どうするつもりだったんだ!!」
「結果オーライじゃーん。それに、どっちにしてもいい予習になったんじゃない?
かがみは自分のことでいっぱいいっぱいで気付いてなかったみたいだけど、
隣の部屋から昨日の夜……」
「わーーーー!!!?危ない発言禁止ーーーーっ!
マ…マジですかこなたさん!!」
「マジだよ」
「な…なんかショック…」




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コメント:
  • ダブルカップル出現w
    アツアツでいいなあ。 -- 名無しさん (2008-12-17 23:33:17)
  • みゆきはつかさとかぁ、おもしろいね。  -- 5244 (2008-08-29 00:43:40)

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