鏡に映る此方

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―私には好きな人がいる。
え?どうせいつもみたくエロゲのキャラとか二次元だろうって?
ふふーん、残念ながら今回はそうじゃないんだよね。驚いた?そりゃそうだよねー。だって自分自身が1番驚いてるんだからさ。
まさか私がこんなにも………あ、そうこう言ってる間に来たみたい。



「おーす、来たわよ」
「さっすがかがみ。ご飯となれば行動が早いねー!」「うっさい」
「お姉ちゃんいらっしゃい!」
「お待ちしておりましたよ」



お弁当を片手に私たちの教室に入ってきた女の子。
薄紫の髪は左右で綺麗に纏められて、彼女の存在をより一層引き立たせている。
―柊かがみ。



それが彼女の名前。そして私の想い人。
同性には興味がないんじゃなかったのかって?
うーん、確かにそうなんだけどさ。彼女は…かがみだけは特別なのかもしれない。
だって私をここまで魅了する女の子に出会ったのは初めてだから。
これが運命の人ってやつなのかな?まぁ、あくまで私側の考えとしてだよ?だって、かがみが私のことをどう思ってるかは分からないし…。




「今日のお弁当はつかさが作ったのかな?」
「うん、そうだよー」
「流石はつかさ!誰かさんと違ってお弁当にも華があるねー」
「…あんたは私を怒らせたいのか?」
「いやいや、これはかがみからの手作りお弁当フラグを立てているのに他ならないのだよ」
「はいはい、良かったわね」
「私を見返す為、夜中に必死で料理の練習するかがみ萌えー」
「や、やらないわよそんなことっ!勝手に変な妄想するな!」



普段はこんな風に少しキツイ性格で怖いけど、本当は友達想いの優しい人だってことは良く知ってる。
だから、かがみの周りには自然に人が集まるし…皆はかがみのことが大好きなんだ。かがみだって皆のことを大事な友達だって思ってるんだろう。
そしてきっと…私もかがみにとってはその友達の中の一人なんだと思う。



「お姉ちゃん、次の時間にこの問題が当たりそうなんだけど…」
「どれどれ、見せてみな」「おーい、柊ぃ!」
「ん?日下部に峰岸じゃん。何か用?」
「特に用はないんだけどね…お昼食べ終わって暇だったから、みさちゃんが行ってみようって」
「ふーん、そうなの。まぁ折角だし座ったら?」
「それじゃ遠慮なくー」



誰にだって同じように接するかがみ。周りから見れば、とても中身が出来た子なんだと思う。
だけど私はそれを良い風には思えない。だって…



―私はかがみの特別になりたい。



こんな愚かな考えがいつも頭を駆け巡る。
友達に…特別も何もない。だからいつまでも友達でいられるんだから。



「柊ちゃん、そろそろ休み終わるよ?」
「あー、もうそんな時間か。じゃあ私達は戻るわ」
「またなー」
「また後でね、お姉ちゃん」



本当はもっと一緒にいたかったけど、クラスが違うのでそれは叶わない。
私とかがみが一緒に過ごす時間なんてたかが知れてる。だから…



「あ、かがみんかがみん!」
「何よ?」
「今日の放課後付き合ってー」
「あんた、また何か買うのか?」
「まぁそんなとこー」
「ったく、しょうがないわね。いつものとこ?」
「うん」
「分かった。じゃあまた放課後ね」



こうやって、何かと理由を付けてはかがみと過ごせる時間を作る。
我ながら何とも女々しいことをしてるけど、なりふり構ってはいられない。
少しでも多く、かがみといられたらそれで…。




―――。



「今終わったわよ」
「かがみ待ってたよー」



学校での長い一日が終わりここから自由な時間。
放課後ならかがみと長くいられる…そんな考えが私の授業での疲れを吹き飛ばした。



「それじゃあ行こっか。つかさも来るでしょ?」
「あ、そのことなんだけど…」
「どうかしたの?」
「今からね、ゆきちゃんと勉強会することになったの」
「へぇ、えらく急ね。みゆきから誘われたの?」
「うん。だから今日はお姉ちゃんとこなちゃんの二人で行ってくれたらいいよ」「そっか…それなら二人で行こっか?こなた」
「………」
「こなた、聞いてる?」
「え!?き、聞いてるよ!うんうん、つかさとみゆきさんの逢引を邪魔しちゃいけないし、二人で行こう!」「こここ、こなちゃん!?」「ふふ…冗談だよ、冗談」「もう、こなちゃんってば…」
「ほら、馬鹿やってないで早く行くわよ」
「あ~、待ってよかがみー!」



つかさの思いがけない急用のおかげで、今日はかがみと二人きりということになった。
やばい…さっきからニヤニヤしっぱなしだよ、私。
おまけに変に動揺しちゃってる。
買い物をしている間、私がかがみの顔をまともに見れなかったのは、言うまでもないんだろうね。



―――。



「今日も大漁大漁ー♪」
「あんたってば…何処からさんなお金が出るのかしらね」
「金は天下の回りものって言うじゃない?使わなきゃダメだよー」
「ならもっと為になることに使いなさいよ」
「ダメなのだよ、かがみ君。数々グッズ達が私を助けを求めているのだから!」「はぁ、頭が痛くなるわ…」



帰り道、大きな袋を下げながらゆっくりと歩く。
というか、かがみが私のペースに合わせてくれてるんだけど。こーゆーとこが優しくて惚れ直しちゃうんだ。



ホントにさ…これ以上好きにさせるのはやめてほしいよね。
今の関係、大事にしたいもん。もちろん、これ以上の関係になれるなら話は別だけど…。



「かがみはさー」
「んー?」
「好きな人いるの?」



出してはいけない話題のハズだった…だけど突然口から零れてしまった。



「はぁー!?あんたいきなり何聞くのよ!」
「いやいや、やはり女性は恋愛話が好きなのではと思ってね」
「あんたも女でしょ!」
「ん?まぁそうだったかもね。それよりどうなのさー?」



もしかしたら…なんて期待してる自分がいる。
何してるのさ、ホント。
馬鹿を通り越して呆れるね。



「い、いきなりそんなこと言われても…」
「いいねぇ、恥じらうかがみ萌え」
「うるさい!そ、それよりこなたはどうなのよ?」
「私?」
「あんたからそんな話は聞かないからね、いい機会だわ」



ここでいないって言えば話は終わるのかもしれない。また明日からは笑ってオタク話が出来るんだろう。
自分の気持ちを、ただ隠し通せばいいだけ…



「私はいるよ、好きな人」「え!?ほ、ホントに!誰なのよ、それは」
「言っていいの?」
「だって気になるし…」
「聞いて後悔しない?」
「そんなもんしないわよ!」
「それじゃあ言うね」
「うん」



そんなに目を輝かせて私を見ないでよ。
私の口からは、かがみの望んでる言葉は多分出ないよ?



「………かがみ」
「へ?」
「…だから、私はかがみが好きなんだってば」
「………ホントに?」
「この雰囲気で冗談言う程空気読めなくはないよ」
「…だけど私は女だし………」
「関係ないよ。好きの気持ちに性別なんて。私はかがみの気持ちが聞きたい…」「…………」
「…かがみ」
「わ、私は………」




―――。



知らずに後悔するか、知って後悔するか、どちらかを選べと言われたら…私はどちらも取りたくない。
どちらにもリスクは存在するし、それなりメリットだってある。だけど最後には後悔に行き着くんでしょ?
でも人は知りたがる。
必然的に後者を取ろうとする。私がそうであったように…。



―――。



かがみとの買い物を終えた後、精神的に疲れきってしばらく眠っていたらしい。頭がボーッとして上手く働かない。



「顔洗お…」



フラフラと立ち上がり洗面所へと向かう。
洗面台の前に立ち、蛇口に手を伸ばそうとした瞬間…ふと鏡に映った自分が目に入った。



胸から上しか映らない小さな身体。
ボサボサになった髪。
眠たそうに開かれた目。
一文字に結ばれた口。



こんな私の姿、かがみにはどう映っているんだろう。無愛想な子に見えるのか、それとも幼い子供みたいに見えるのか。
私がそれを知る時が来る?
―かがみの目に、私だけが映る日は来るのかな…。



蛇口に再び手を伸ばし、適量の水をだす。
それを両手に溜めて勢いよく顔を洗った。
そして濡れた顔のまま、もう一度鏡を見る。
頬を何かが伝っている気がした。水のような何かが。
鏡を見ても何も変わらない。何も変わらないはずなんだけど…




目の前の鏡に写った自分は泣いているように見えた。




fin.




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コメント:
  • 切ない(;_;) -- 名無しさん (2010-03-06 22:30:22)
  • 今まで読んだ中で一番切ない… -- 名無しさん (2008-10-03 23:23:52)
  • 悲しい話ですねぇ。 -- 名無しさん (2008-08-27 00:16:28)
  • 切ねえ・・・ -- 名無しさん (2008-02-13 09:21:02)

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