私だけのサンタ

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吐き出す息が既に真っ白に染まり、本格的に冬の到来を告げようとしていた。
道の両側に植えられた木々は既にその葉を散らし、この時期独特の雰囲気を演出している。



そんな殺風景にも見える並木道を、私とこなたは二人並んで歩いていた。
繋がれた手から感じるこなたの体温はとても暖かく、風の冷たさを忘れさせてくれる程のものだった。



「かがみはさー…」
「んー?」



こなたが急に足を止め、興味深々といった顔でこちらを見上げてくる。相変わらず手は繋いだままで。
私は話の続きを聞くために同じく足を止め、こなたの視線を正面から受け止める。



「サンタの存在信じる?」「へ!?さ、サンタ?」



突拍子の無い質問に、思わず声が上擦ってしまう。
こなたはそんな私の反応に少しニヤニヤしながら言葉を続ける。



「うん、サンタクロースだよ。トナカイに乗ってやってくるやつ」
「それは分かってるけど…サンタって、あんた一体何歳なんだ?」



小学生ならまだしも、もう高校生だ。しかも卒業間近の。



「…永遠の小学生?なんてね~」



マジで小学生気分か!
思わず口走ってしまいそうだったけど、どうにか心の中で叫ぶだけで済んだ。
私は落ち着き、会話を軽く流す。



「はいはい。…ったく、どう考えてもサンタ云々を語る歳じゃないでしょ?」



私だって最初から信じてなかったワケじゃないし、色々と期待していた時もあった。けど、それはもう遠い昔の話。だからこんな話、全く真剣に聞く気はなかった。



「いいじゃーん。だって何でも欲しい物くれるんだよ?白髭ヨボヨボのじいさんが1年で1番頑張る日なんだよー?」
「敬っている割りにその言いようはなんだ、サンタに謝れ」
「えー」



こなたはおねだりを聞いてもらえなかった子供のみたく、残念そうに口を尖らせていた。
私はそれに返すことはなく再び歩き出そうとした。
繋いだ手をゆっくりと離し、二、三歩進んではみる。
…だけどここで放っておけないのが私なわけで。すぐに振り返り、再びこなたの顔を見る。




「…あんたが欲しい物なんて、どうせ限定物のグッズか何かでしょ?それなら貰わなくても自分でゲット出来るじゃない」
「な、なぬ!?かがみんは私がサンタにそんなことを頼むと思ってたのか」
「そりゃあね」



そんな私の返答を聞いたこなたは腕組みをしながら少し不服そうに『むぅ~』と唸り声を上げている。



「何か不満でも?」
「…いや、まぁ確かに…」「何が?」
「去年までならそうだったかもしれないねってこと。」
「?」



こなたは腕を組んだまま、少し意味深な顔で空を見上げた。
ふと気が付く。この子がこういう表情をする時は、大体真面目なことを考えている時が多い。
どうして今、こんな表情になったのかは分からないけど、私はようやくこの話に何か重要な意味があるんだと感じ、こなたの話を真面目に聞こうと思った。



「今年はね…もっと違うモノが欲しくなったんだよ」「ふーん、あんたがオタクを捨ててまで欲しい物とは…」



表向きにはいつもの調子で返す。が、内心はどんな話なのかと緊張していた。
当のこなた相変わらず表情を崩さない。



「当たり前だよ。私はそれ以外に何もいらないんだもん」
「あんたにそこまで言わせる一品か。…それって何なのよ?」
「ふ…」
「な、何だよ!」
「むふふ、教えて欲しい?」



こなたの顔が一転する。それはこの子特有の線のような目と猫口によるもので、ニヤニヤという擬音がとても似合いそうな表情だった。な、なんでここでその表情なのか…。なんだか調子が狂ってくる。



「そ、そりゃあ一応…」
「私について色々知りたがるかがみ萌えー」
「ば、馬鹿言ってんじゃないわよ!あんたが話したそうだから仕方なくっ…」
「もう、相変わらずツンデレだなぁ」
「うるさーい!」



こなたに良いように遊ばれて、顔を真っ赤にしてしまう。おまけにあたふたしっぱなし。こうなってしまってはもうこなたのペース。こなたはそんな私のスキをついて、真正面から抱き着いてきた。




「ちょ!こなっ…」
「教えてあげる…」
「え?」
「私の、欲しいもの」



私の胸辺りに顔を埋めながら、こなたは話す。
こなたの吐く息がなんとなく自分の素肌まで伝わっている気がして、身体全体が熱くなった。
このままキスでもしたい勢いだったけど、こなたがまだ話している途中だったので必死で我慢する。



「私が欲しいもの。それは…」
「…それは?」
「心も、身体も…」
「え?」
「かがみの………全てが欲しい」
「…っ!?」



…あまりの驚きと恥ずかしさで心臓が止まるかと思った。
でもそれ以上に嬉しくて…きっと私の顔は季節に合わない、紅葉のような赤になっているんだろう。そんな嬉しいことを、躊躇いなく言ってくれるこの子がとても愛おしくて…力強く抱きしめた。



「やっぱダメかなぁ?」
「…ば、馬鹿ね」
「?」
「ダメなワケ、ないじゃない…」



そう言った途端、こなたは埋めていた顔を上げた。その表情はとても幸せそうだった。その顔を見て、私まで幸せな気分になってしまう。



「…でも、サンタさんも用意するのが大変そうだね。こんなプレゼントだと」
「あんたねぇ…」
「あ!それじゃあさ…」
「んー、何よ?」



こなたは再び猫口になりながら人差し指ピンと立てている。漫画でいう、何か閃いた時のポーズ。



「…かがみが私のサンタになればいいんだ!」
「はい?」
「でさ………私が欲しいもの、全部くれる?」
「………」
「…かがみ?」
「ふふ…。全く、しょうがない奴ね…あんたは」



やっぱりこの子には敵わない。きっとこなたのお願いなら、私は何でも聞くんだろう。
私の言葉を聞いたこなたは今日1番の笑顔を見せた。そして更に強く私に抱き着いてきた。



「ふふふ、優しいかがみだーいすき!」
「こっ、こなた!?力入れすぎだって…」
「…このまま押し倒していい?」
「や、やめろー!」



―――。



そういえば、こなたに一つ言いそびれたことがある。空気に流されてしまい、てっきり忘れていたけど…。大事なことだ。必ず…クリスマスに伝えよう…。



―私はもう全部、こなたにあげてるんだよ?



って…



fin.




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コメント:
  • ニヤニヤが止まりませんな( ̄▽ ̄) -- 名無しさん (2010-08-27 14:33:12)
  • 甘いなぁぁぁ。 -- 白夜 (2009-10-20 23:29:21)
  • いいね、、、、 -- 名無しさん (2008-08-27 00:01:32)

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