聖夜は素直に(前編)

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12月21日 朝
期末試験を終えて、高校最後の冬休みに入った。
久しぶりの休みでゆっくりしたいところだが、今年はそうは言ってられない。
それは私に限らず、妹も友達も…そしてあいつもそのはずだ。

朝起きて、数学と英語の勉強を一通り終えた今、休憩時間としてこたつに入っている。
外は寒さが厳しくなり、とてもじゃないが散歩に出ようとは思えない。
こたつの中でぬくぬくしているのが一番だと断言できる気温だ。

姉二人と一緒にテレビを見ながら、ボーっとしている。
でも、どこか温まりきれない、何かが抜けている気がする。
そう、毎朝見ていたあいつを、今日は見れていないから…。

ガチャ

「ふわあぁ…お姉ちゃんたち、おはよう~…」
『おはよう~』
「今日もよく寝てたわねぇ」
「まったく…つかさ。あんた今何時だと思ってるのよ?」

ようやくつかさが起きてきたが、時計は既に11時をまわっている。いつもなら大遅刻だ。
姉さんたちはいつものことだと流しているが、私はいつものように注意する。
「ふぇ、もうこんな時間?で、でも久しぶりの休みだし、いいよね?」
「まぁ、気持ちは分かるけどね。ほら、早く着替えてきな。もうすぐ昼ご飯だよ」
「うん、そうするね。でも、お姉ちゃんはいつも早く起きれて羨ましいなぁ」
「そこは意志の強さよ。朝早く起きようと強く思えば、起きられるわよ」
うんうん、と頷いてるまつり姉さんといのり姉さん。
まつり姉さん、言っとくけどが、あなたは決して早起きじゃないからな?

「寒いとどうしても布団に入っていたくて、つい寝ちゃうんだよね、えへへっ」
「つかさ、あんたは年がら年中眠いじゃないの!」
とすかさず突っ込みを入れる。いつもなら突っ込むべき相手がもう1人いる。
疲れなくてすむといえばそうだが、どこか物足りない。

とりあえず昼ご飯を食べようと、それを頭の隅へ追いやることにした。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
12月21日 昼
昼ごはんを終えて、勉強にとりかかろうとするが落ち着かない。
しばらく頑張って続けていたが、朝のような集中力は出せなかった。
そんな状態でどんどんと時間だけが過ぎ、あっという間に時計は3時を指していた。

あいつに会えないだけで、こうも私生活に支障が出てくるとは、私も重症だ。
(学校の休みがこれほど嫌だと思うのも初めてだわ…。夏はまだ一緒にいられたけど…)
冬休みとなると受験直前。受験生には夏休みでさえ厳しいのに、冬休みは本当に修羅場だ。
友達と遊びに行くことなんておそらくほとんどできないだろう。できて3日がいいほうだ。

ただ、周りから見ても親友といえるような間柄でも、普通は生活に支障などでない。
つまり、自分はそれ以上の感情をあいつに対して抱いていることになる。
同性だというのも、自分でもおかしいとは分かっているつもりだ。

けど、きっと私はあいつのことが…こなたのことが好きになっている。それも随分前から。
もちろんこれで勉強に集中できるわけもなく、思わず声を上げた。
「あぁ、もう!全っぜん、集中できない!」

コンコン

その時、ドアに控え目なノックがあった。声がそんなに響いてただろうか?

「お姉ちゃん、入ってもいい?」
「ん、つかさ?いいわよ」
私が答えると、つかさはクッキーが盛られた皿と飲み物を持って入ってきた。
どうやら私の声が原因ではないらしい。とりあえず、それに安心した。
「クッキー作ったんだけど、一緒に食べない?気分転換にどうかな?」
「おぉ、サンキュー。丁度行き詰まってて、困ってたところなのよ」

つかさのクッキーはいつ見ても美味しそうで、いつ食べても美味しい。
自分が作ろうとしても、この味を出すには10年はかかるだろう。

「やっぱ、つかさのクッキーはいつ食べても美味しいわね~」
「お姉ちゃんも練習すれば作れるよ~。今度教えてあげるね」

それからしばらくおしゃべりしていたのだが、つかさが不意に

「…ねぇ、お姉ちゃん。もしかしてこなちゃんがいないの、寂しい?」
「んなっ!い、いきなり何?!べ、別に寂しくなんてないわよ!」
突然の発言に、私は顔を真っ赤にして大声で否定するが、おそらく説得力はゼロだ。
「だって、さっきからこなちゃんの話ばっかりだよ?」
「そ、それはあいつと一緒にいる時間が長いから、自然と話題が多いだけよ」
「じゃあ、やっぱり寂しいんだね。いつも一緒にいる人が、いないんだもんね」
「うっ…」

ときたま鋭い発言をするつかさには、わが妹ながら油断できない。
図星を指されているため、これ以上の言い訳も思いつかず、ここは認めるしかない。
ただ、素直になれない性格と、つかさには知られたくない想いがあるわけで、
「そうね、いつも突っ込んでる相手がいないと、少し物足りないわ」
「確かに、お姉ちゃんが突っ込んでるの、ほとんどこなちゃんだしね~」
と、我ながらナイス!と思うほどスムーズにごまかせる言葉が出た。
そして、さっきあんたに突っ込んだでしょうが!と心の中で再び突っ込んだ。

…しかし、私はどうやらつかさを甘く見ていた。

「でも、それだけじゃないよね、お姉ちゃん?」
(つかさ、今日は一体どうしたというの。何故、そんなに追究してくるのよ!)
心の中で焦りが生じているためか、まともな言葉が見つからない。

そして、少し混乱気味のそんな頭に、つかさが止めの一言
「お姉ちゃん、こなちゃんのこと好きなんじゃない?」
「(な、何で!)!!!!!!」

声にならないほどの驚きを隠せない私は、ただ口をパクパクさせながらつかさを見ている。
今の状況であいつがいたら、猫口をニマニマさせながら私を見ていただろう。

「やっぱり~。そうなんじゃないかと思ったんだよね~」
「ち、違うわよ!い、い、いきなり何を言い出すの?!」
ようやく声が出せるようになった私は、すぐさま否定の言葉を入れる。
が、声が裏返ってる上に、口が回らない。いくら天然で、少し抜けている彼女でも
「もう、バレバレだよぅ。隠さなくてもいいよ~。私応援してるからね♪」
「ううっ…」

(やっぱり……って、あれ?)

「…あんた、何とも思わないの?」
「ほえ?何を?」
(何をって、一つしかないに決まってるじゃない!)
「いや、だから、その…女の子同士だって言うこと…」

「そんなの関係ないよ~。私、こなちゃんも、お姉ちゃんも大好きなんだよ?だから二人が楽しくしててくれればいいと思ってるんだ!いつも助けてもらってばかりだし、こういうときだけでも私が応援するよ♪…あ、もちろんゆきちゃんも大好きだよ!」

いつもは穏やかでぽやぽやしてるけど、こういう時は本当に心強い。
私がいつも支えてあげてるのと同時に、少なからず私も支えられていたんだなと感じた。
当たり前のことだけど、今改めて妹の理解に感謝するばかりだ。

「そう…。ありがとね、つかさ」
「ううん、私は何もしてないよ。あとはお姉ちゃんが素直になるかだからね♪」
「って、私、告白なんて出来ないわよ。こなたがどうか分からないし…」
「そんなの誰だってそうだよぅ。言わなきゃ伝わらないんだよ?言わなきゃダメだよ!」

確かにそうなのだが、相手が男ならともかく同性というのが大きな障壁になっている。
それにあまり知らない相手ならまだいい。嫌われたって、すぐに立ち直れる自信がある。
でも、誰よりも信頼を寄せられる親友が相手なのだ。そう簡単には行かない。

「だって、あいつ同性趣味はないって前に言ってたし、フラれて嫌われたら取り返しがつかないかもしれないし…。私のせいで、今の4人の状態を壊したくないのよ…」
「こなちゃんに限って、お姉ちゃんを嫌うことなんてないよ!例え断られても、友達だってことは変わらないよ。少しの間気まずいかもしれないけど、きっとすぐ元に戻るよ~」
「あんたねぇ、その根拠はどこから来るのよ、全く…」
「とにかく、言わないと後悔するのはお姉ちゃんだよ?最後の一年なんだし、ね?」 

多少なりともこの状況を楽しんでいるようだったが、私の支えになれることがよほど嬉しいのだろう。少しでも力になろうと必死なのが伝わってくる。

「わ、分かったわよ。考えておくわ…」
「あ、それと私だけじゃなくて、皆も感づいてると思うよ、お姉ちゃんの気持ち」
一度落ち着いたはずの焦りが、よみがえってきた。つかさだけだと思っていたからだ。 
「えぇっ?!私ってそんなに分かりやすかった…?」
「うん、こなちゃんと他の人に対する接し方が違うんだもん。何か言い争ってても、どこか見てて暖かいんだよ~」
なんてこった。じゃあ、まさかあいつも気づいてるんじゃ…?

「多分ゆきちゃんと峰岸さんは気づいてると思うよ~。文化祭の時に3人でそんな話になって、私もそのとき初めて気づいたんだもん。ゆたかちゃんも気づいてるんじゃないかなぁ?こなちゃんは…分かんないや」
「そう…なんだ」
「取り敢えず、ゆきちゃんには言っておいたらどうかな?分かってくれると思うよ」
「そうね、そうするわ。…正直そこまで気づかれてるとは思わなかったけど…」

ここまで知られてるとなると、自分が逆に情けなくなってくる。
自分なりに、いつもと変わらないように接していたつもりだったが、4人一緒にいるみゆきは鋭いからまだ分かるけど、峰岸やゆたかちゃんにまで気づかれてるなんて、ね。

「あ、もうこんな時間だね。じゃあ、お姉ちゃん頑張ってね~」
「うん、あんたも頑張りなさいよ」
「勉強もそうだけど、こなちゃんのこともね♪」
「わ、分かってるわよ!」

そういって、つかさは部屋から出て行った。…どこかご機嫌だったのも気のせいじゃない。
とりあえず、今の話を一旦置いておいて、私は勉強に戻ることにした。

つかさのクッキーのおかげか、自分の中だけに留めていたものを他人に打ち明けたからか、
先ほどまで集中できていなかったのが嘘のように、勉強が進んだ。

12月21日 夜
「ふぅ、よく食べたわ。それにしても、つかさ、あんなのも作れるのね…」
今日はつかさが夕飯を全員分作るといきなり言い張って、何から何まで1人で作ったのだ。
普段のつかさからは想像できない強気な発言と、あまりに真剣なまなざしだった。
誰も止めようとはしなかったし、おそらく出来なかっただろう。

出来も素晴らしく、いつもドジな彼女からは想像できない料理の数々が並べられていた。
味もとても美味しく、どれだけ食べたのかを覚えていないほどだ。
(…体重計が怖くて乗れないわね、これは…)

しかし、そんなことが気にならないほど本当に美味しかった。
姉さんたちや、両親もお箸が止まらない勢いで、つかさは絶賛されていた。
つかさも満足したのと、疲れたので今はもう寝ている…まだ9時前だというのに。

…これが、おそらく彼女なりの応援だというのも分かった。
ここで何もしないまま終わったら、とんだ親不孝ならぬ、妹不孝だ。
ある意味追い詰められた感じもするが、今の私にはチャンスだと感じられていた。
(ホント、やってくれるわね、まったく…ありがたいんだけどね)
こんな形ででも告白する決意をさせてくれた、つかさには感謝しなければならない。
おそらく、つかさに言われなければ、私もこの想いは胸に秘めたままだっただろう。

(さて、言われたとおりにみゆきに電話をかけようかしらね…)
そう思い、携帯に手を取る。そしてアドレス張から『みゆき』を引っ張り出した。
(…別にみゆきに告白するわけじゃないのに、なに緊張してんだ、私…)
数回のコール音の後、その音が途切れた。

「もしもし、みゆき?い、今ちょっと時間とか大丈夫?」
「かがみさん?はい、時間ならありますよ。どうかしましたか?」
私は、今日つかさとした会話の内容と、自分自身の気持ちを簡潔に話した。
その間、何も言わずに聞いてくれたみゆきは、私にとってとてもありがたかった。
「って、いうわけなんだけど…」
「そうですか、分かりました。そういうことでしたら、私も応援させてもらいますね」
「…みゆきもやっぱり気づいてたの?」
「はい、すいません…。最初にそう思ったのは、かがみさんがバレンタインのチョコレートを渡した時でしょうか。つかささんがやっていたから、とおっしゃっていましたが、渡す時に唯一顔を赤くしていらしたのが、泉さんに渡す時でしたから…」
「えぇっ!あの時から?!」
私も、好きだと思い始めたのはあれの直前ぐらいなのに…、なんという観察力…。

「はい…。それ以前から特別仲が良いと思っていましたが、あのときは確信がなく、それほど気には止めませんでした。確信に変わったのは、その後のかがみさんに注目していると、泉さんに対する行動や言葉に暖かみが極端に感じられ、視線がほとんど泉さんに向けられていましたから…」
雰囲気とかはともかく、そんなに分かるほどこなたのことを見てたのか?
もしそうなら、無意識に見ていたことになる。そして、それに気づくみゆきも凄い。

しばらく話した後、つかさにも投げかけた質問を、みゆきにもした。

「今更な質問何だけど、みゆきも何とも思わないの?同性だってことに…」
「そうですね、普通なら奇異に思う方が多いと思われます。それに私も、全くそういう考えがなかったかといえば、嘘になります。ですが、今の私は心からお二人を応援したいと考えています。同性愛が認められる国も世界には少なからずありますし、私自身も愛の形は自由だと思っていますので。そうでなくても、親友であるお二人を応援しようと思うのは、普通じゃないでしょうか。まだ泉さんの気持ちは分かりませんが、きっと…いえ、絶対かがみさんの想いは伝わると思いますよ」

私はみゆきの言葉が、そしてさっきのつかさの言葉が頭の中に響き渡った。
自分を支えてくれる親友と妹の優しさに、思わず涙腺が緩くなってしまった。
「あ、ありがとね、みゆき…」
「かがみさん…?大丈夫ですか?」

間が空き、少しばかり流れてしまった涙もあったが、どうにか持ち直して、
「…っ、ええ、平気よ。本当にありがとう。私、幸せ何だなって改めて思ったわ。」
「いえ、そんな。ただ、その言葉、つかささんにも言ってあげてくださいね。この話は私からはとてもじゃないですけど、言い出せませんでしたから。」
もちろん、自分でも気づいていたし、明日言うつもりだ。
「ええ、分かってるわ。…それじゃあ、そろそろ…」
「そうですね、少しばかり長くなりましたし、寝ましょうか」
「うん、おやすみなさい、みゆき」
「はい、おやすみなさい。叶うことを願っていますよ。では、失礼します」

カチャという音と共に、電話が切れたのが分かる。
そして、色々と疲れたのもあってか、私自身も意識が切れ掛かっている。

まだ10時前だが、たまには早く寝ることにした。
これからどうしようかと、あれこれ考えながらベッドに入った。

12月22日
翌日、私の気持ちは固まっていた。
こなたに告白する、それもクリスマス・イヴに。

そのために、私は色々と準備を進めた。
まず、こなたに電話をして、24日・25日の予定を空けておいて貰うようにした。

プルルル…カチャ
「もしもし、かがみん?どったの?」
(こなたの声だ!)
たった2日聞いてない声だというのに、1ヶ月会っていないかのように胸を躍らせた。
「も、もしもし、こなた?あの、ちょっと聞きたいんだけど…」
「何々?何でも聞きたまへ~」
「あんた、クリスマス・イヴとクリスマス当日、空いてない?」
「ん~、一応バイト入ってるけど、どうして?」
(うっ、やっぱりバイト入れちゃってたんだ…)
さっきまで踊っていた気持ちが急に落ち込んでしまった。でも、諦めずに説明を続ける。
「…こ、高校最後の年だから、4人でみゆきの家でパーティでも、って思ったんだけど…。ごめん、忙しいなら仕方ないし…、無理にとは言わないわよ……」
「だったら、バイトをキャンセルするよ~(≡ω≡.)」
「なっ!そんな簡単に決めちゃっていいのかよ!バイトのシフトだってあるだろうし…」
正直嬉しいのだが、あまりにあっさり了承したので、つい突っ込んでしまった。
「だって、皆との思い出は少しでも多い方がいいしね~。ゆーちゃん達もみなみちゃんの家でやるみたいだし、家に残るのはおとーさんだけだから。何より、私がいないとかがみんが寂しいだろうしね~♪」
「な、だ、だれが寂しいってのよ!べ、別に寂しいなんて…」
「もう、かがみんは素直じゃないなぁ~。さっきの声の調子でバレバレだよ?」
「う、うるさ~い!」
図星を付かれて顔は真っ赤になってしまい、心から電話で良かったと思った。
目の前にいたら、絶対にやけた顔でこっちをニマニマ見てくるに違いない。
…決して、その絡みが嫌いではない…むしろ好きなのだが…。

冷静に話を戻して、もう一度確認しておく。
「…とりあえず、来るのね?」
「もち!こんな美味しいイベントを逃すわけにも行かないしね~」
「それじゃ、泊まりだから24日にみゆきの家でね。4時に集合よ」
「らじゃ!んじゃ、wktkで全裸待機してるよ!」
「はいはい…。せいぜい風邪引かないように気をつけないさいよ」
「さすがツンデレ。なんだかんだいいながら、私の心配するかがみ萌え。」
「だ~もう、切るわよ!じゃあ、遅れないでよ」
「分かってるって。じゃにー!」 …ピッ
(ふぅ…。良かった…これで一安心ね…)

両親もこなたにした説明と同じ内容で納得してくれたようで、受験前とはいえ、
高校最後のクリスマスに思い出を作りたいということには賛成してくれた。

(※ちなみに峰岸は彼氏とデート。日下部は、峰岸が来ないなら行かないと言ったので欠席することになった。決して、ハブにしたわけじゃないからね?)

そして、最後の難関がクリスマスプレゼントとなった…。
何をあげるか色々考えた挙句、手作りのチョコにすることにした。

チョコレートは、普通はバレンタインの時にあげるものだが、今年は失敗していた。
実はつかさと同じような形のチョコを作っていたのだが、なぜか固めた時に割れてしまったのだ。
あの時こなたにあげたのは、作る過程で分量を間違え、多めに余ってしまったチョコで作っていた、
小型の自分用チョコだったのである。もちろん、作る段階では愛情も込められていない…。
そのため、形がいびつだったり、大きさがまちまちだったりしたのだ。
その時のリベンジとして、今度こそ、気持ちを込めた大きなハート型チョコを作ることにしたのだ。

そして…

「お姉ちゃん、凄いよ!一発で綺麗に出来ちゃったよ!」
「私もびっくりよ…。まさか一回で出来るなんて思わなかったわ」
つかさの褒め方が若干ひっかかるが、まぁ、気にしないでおこう。
あの時と違い、告白する決意を持っていたためか、すんなりと出来上がった。
(気持ちがこもってれば大丈夫とか、全く信じてなかったけど、少しは信じてみようかしら…)

目の前に出来上がったチョコレートは、前につかさが作ったのと見劣りしなかった。
むしろ、それ以上と断言できる自信もあるほどだ。…つかさにアドバイスはもらったけど…。

後は「Merry Christmas」って書いて終わろうとしたら、つかさが
「ダメだよ、お姉ちゃん。そこは『I Love You』って書かなきゃ♪」
「んなっ!で、出来るわけないでしょ、そんなこと!」
「えー、告白するんでしょ?だったら、ちゃんと書いた方がいいって、絶対!」
(つかさ!あんた、絶対私で遊んでるでしょ!)
とも言えず、そして本心にも逆らえず、その下に「I Love You Konata」と書き足してしまった。
(…これ、人に見られるの物凄く恥ずかしいんだけど…)

「これでばっちりだよ、お姉ちゃん!こなちゃん、どんな反応するか楽しみだね♪」
こういう時は鈍いつかさ、人の恥ずかしさも知らずに一人ではしゃいでいる。
(…あまりはしゃぐと姉さん達が寄ってくるから、できれば静かにね?…って、まずい!!)

「あら、つかさにかがみ。二人してどうしたの?」
「あ、お、お母さん!いや、これは、その、あの…」
そう、お母さんが入ってきてしまったのだ。…台所でやっているのだから、想定外ではないけど。

「あら…、これこなたちゃんに?」
「うん、お姉ちゃんが一人で作ったんだよぉ~♪」
「ば、ちがっ!こ、これは二人からってことであって、別に私からって訳じゃ…」
「へぇ、そうなの…かがみがねぇ…」
「だ、だから、違うのよ…っ!」
さすがに親に今ばれるのは非常にまずいと思い、必死に弁解しようとしたが、無駄な抵抗に見えた。
しかし、気まずい雰囲気になるかと思っていたけど、お母さんはなぜか鼻歌交じりで去ってしまった。

「~~~♪…」
「…今のは、ばれてないってことかしら…?」
「ううん、多分、分かってるんじゃないかな?でも、許してくれたんだよ、きっと!」
「って、あんたが余計な事いうからじゃないのよ!」
「だって、本当のことだもん♪お母さんにはいずれ言うんだし、変わらないよ~」
「いや、色々と変わるから!まだ、私自身告白してないんだし、まだOKかどうか分からないし!」
「絶対大丈夫だって。それにあらかじめ認めてもらってたら、やりやすいよ~」
「まぁ、確かにそれは…そうだけど…」

と、危うく波乱になるところかと思われたが、いろんな意味で拍子抜けするほどスムーズに終わった。
つかさは、自分もプレゼントの準備があるからと言って、満足そうに自分の部屋に戻った。

(でも、何か…足りない…これだけじゃ…)
「ねぇ、お父さん、頼みがあるんだけど……」



12月24日
ジリリリリッ!カチャ!…
目が覚めると、朝日が煌々と窓から入ってきていた。
…いよいよ、当日の朝を迎えてしまったのだと実感する。
(ついに来たわね…当日が)
少なからず不安が沸いてきたは否めない。決意をしていても、不安なものは不安だ。
朝起きて、いきなりネガティブ思考に走りかけたところで、誰かが部屋に入ってきた。

コンコン…、ガチャ!

「お姉ちゃん、おはよう!いい天気だよ~!」
「んー…、おはよう………っ?!?!」
「どうしたの、お姉ちゃん?」
(つかさが私より早く起きてる!?!?)

そう、つかさがなんと自分より早く、しかも着替えて起きていたのだ。正直、驚きを隠せない。
今の時刻は朝の7時、普段のつかさなら、今頃ふかふかのベッドで熟睡中だ。
そんな彼女が、今満面の笑みで私の前にいる。
その笑顔を見て、自分の頭の中に渦巻いていた闇は消え去った。恐るべし、天然スマイル。

「つ、つかさ、あんた今日、自分で起きたの?」
「うん!凄いでしょ、えへへ♪」
「信じられん…」
「あー、お姉ちゃん酷いよ~;;」
「確かに、あんたにしちゃ凄いわね。でも、普段からこの時間に起きるのが普通だから」
「うぅ…」
嬉しそうな顔、膨れた顔、しゅんとした顔と様々な顔を見せるつかさ。
しかし、そんな彼女に痛烈な突っ込みを入れる私…頑張って起きたのに、ちょっと可哀相だったかしら。

「ごめんごめん。でも、本当にどうしたの?昨日は私に付き合ってくれて、遅かったはずなのに…」
「だって記念の日になると思うと、わくわくしちゃってパッて目が覚めちゃったよ」
「修学旅行か!…まったく、嬉しいやら恥ずかしいやら…。でも、ありがとう」
「ううん、別にいいよ~。ご飯できてるから、皆も起こして一緒に食べよう♪」

そして、起こされた家族はつかさが作った朝食を、まるで幻であるかのように取ることになった。
あのつかさが?といった顔で、皆驚いた顔でつかさをまじまじと見るしかなかった。
…唯一、母さんだけはあまり驚いてなかったけど。

ひと段落して、姉さん達がつかさを「何々、デートか何か?」といじっていたが、
今日のクリスマスパーティが楽しみなだけだと知り、「なんだ、つまんないの」と言って、
いのり姉さんは自分の部屋に戻り、まつり姉さんは居間でテレビを見始めた。

「はうぅ、さっきのまつりお姉ちゃん達ちょっと怖かったよぅ…」
「つかさがこの時間に起きて、朝食まで作ってたら何事かと思うわよ、誰だって」
「や、やっぱり、皆そう思ってるんだね…」
「それに姉さん達も、一番年下の妹であるあんたに、最初に彼氏ができたら焦るわよ。『先を越されたー!』とか『つかさのくせにー!』とか言うんじゃないかしら」
「そ、そんなぁ;;」
「でも、気にしなくていいと思うわ。ある意味、ただのやつあたりだしね」
確かに、自分の妹や弟に先に彼氏が出来たらどうしよう、と焦る気持ちは分からなくもないが、
もう少し大人になってもいいと思う。もう大学生・社会人であるのだから…。
まぁ、まつり姉さんはともかく、いのり姉さん…普段はのんびりしてるけど、やっぱり気にしてたのね。


自分の部屋に戻り、少し早いが支度を始める。
(えっと、服はこの袋に入れて、歯ブラシとかはこっちと…。後は、ラノベも何冊か持ってくか)
大き目のカバンに次から次へとものを入れていく。あっという間に満杯だ。
(やばっ、ちょっと色々入れすぎたかしら。みゆきの家って、何があるか分からないのよね…)
とりあえず、小物はポーチに入れることにした。…もちろん、プレゼントも丁寧に。

そして、最後に入れようとしたのは、自分のお気に入りのハンカチ。
これのおかげで、今まで他人にあまり涙をみせることはなかった。
(できれば、使わないことを願うんだけど…一応ね…)

朝、起きた時に渦巻いていた闇が再び沸いてきて、最悪のパターンを思い浮かべてしまう。
フラレて、友達としても避けられるようになってしまう、そんなパターンを…。
大丈夫と言ってくれた、つかさとみゆきを信じたいし、誰よりあいつを信じたい。

でも、今までとは違う一歩を踏み出そうとしていて、それが社会の常識から外れる行動である事が、
現実的に生きてきた自分をどこかで引っ張ってしまう。
(今日だけ、素直になればいい…か。なれると…いや、ならないといけないわよね)

そうして、ボーっとベッドの上に横になる。
素直になるということを考えていると、そこであることに気づく。
(私、プレゼントとか色々やってたけど、肝心の告白の言葉考えてなかったわ!)

「あいつには変化球で…いやいや、それだとからかわれるからストレートか…ブツブツ」
こんなことを考えているあたり、私も乙女だったんだなぁと思う。
(今、「嘘だ!」とか思った奴、手あげろ!あとでコッペパンを要求しに行く!)

と、誰もいないはずなのに、とっさに突っ込むあたり、似合わないのを自覚しているのだろう。
そしてネタに走るあたり、こなたに毒されてきたのだろうか…。

いろんなパターンを頭の中で考えては、全てに駄目だしをするということを続けていた…。


「…ね……ゃん」
「…う~ん…」
「ね…、お……ちゃ…ん」
「…好きだよ、こなたぁ……」
「お姉ちゃんってば!」
「うわっ?!こ…じゃなくて、つかさ?」
どうやらいつの間にか寝ていたようだ。寝言を聞かれたのがかなり恥ずかしい。

「早くしないと、パーティに遅刻しちゃうよ~!」
「え、ええっ!;;」
相当な焦りを覚え、まさか本番でやってしまったかと嫌な汗が吹き出る。…ところが、
「…なんてね♪まだお昼だよ~。皆、下で待ってるよ~」
「つ、つかさぁー!もう、びっくりさせないでよ…。相当焦ったわ…」
「でも、ちゃんと起きたでしょ♪」
天使の笑顔に隠れて、小悪魔がのぞいている気がしたが、今は素直に降りる。
(つかさ…時々だけど、ちょっと黒いと思うときがあるわ…)
「でも、珍しいね、お姉ちゃんが昼寝なんて。何かあったの?」
「え?なんでもないわよ。早く降りましょう。皆待ってるんでしょ?」
そそくさと部屋を後にする。心当たりがあるけど、今は言えない。いや、おそらく言わない。

昼を食べ終え、すぐに出かけるための最終準備に取り掛かる。
荷物をまとめたら、後は化粧タイムだ。だが、女子にとってはこれが一番時間がかかる。
今日は特に、化粧、服装やアクセサリーにもいつも以上に気を配る。
上は白いブラウス、下は青いロングスカートで冬っぽさを基調とした、まだあいつも知らない服。
化粧も納得いくまでやって、ネックレスやイヤリングなども服に合うものを選んでつける。
何かするたびに、(あいつは気にいってくれるだろうか…)と考えてたら、動作が遅くなるのは自然で、
終わった頃には、あと少しで家を出なければならない時間になっていた。
そこへ、つかさが入ってきた。

「お姉ちゃん、そろそろだよ」
「うん…、分かってる。もう終わるわ」
明らかに緊張しているのが、声からでも分かるような返答になってしまう。
「絶対大丈夫だから、ね?私、本気で応援してるから!」
「うん、ありがとう。おかげで少し気が楽になったわ」
ここにきても意地を張る自分が情けなくなってくる。




ピンポーン
ガチャ

『こんばんは~。今日、明日とお世話になりますが、よろしくお願いします』
「あらぁ、いらっしゃい、つかさちゃんにかがみちゃん。ご丁寧にありがとう♪みゆきは中で準備しているわよぉ。ちょっと手間取っちゃってねぇ」

中に入ると、いたるところにデコレーションがしてある。
クリスマスツリーはもちろん、様々な色のライトや、トナカイに天使といった置物が美しく輝いている。
(一体どれだけ時間とお金をかけたんだ…。さすが高良家、色々違うわね)

そして居間に入ると、その一角でみゆきが最後の仕上げをしていた。
どうやらこちらに気づいたらしく、挨拶をしようと脚立から降りた。
「かがみさん、つかささん、こんばんは。慌しいところをお見せして、すいません」
『こんにちは、みゆき(ゆきちゃん)!』
「いいのよ。わざわざ飾り付けしてくれてたんだし。それにしても、凄いわ…」
「ホント、ゆきちゃん凄いねー。ツリーもすっごく綺麗だったよー♪」
「いえ、大したものでは…。でも、お褒めいただき、ありがとうございます」

謙遜はしているものの、やはり相当頑張ったのか、かなり嬉しそうだ。
ただ褒められたというよりかは、努力が報われた感じを受ける。
まぁ、これだけやれば、そう思うのも当然だろう。正直、凄すぎる。

「そういえば、泉さん遅いですね…。もう4時を回ったのですが…」
「どうせあいつのことだから、普通に20分ぐらい遅刻してくるわよ」
(全く、皆で集まるっていう日もこれか…。人の気持ちも知らないで)
ピンポーン
「…噂をすればなんとやらね」

遠くでゆかりさんの声が聞こえ、続いてあいつの声が聞こえてきた。私達は玄関に向かった。
「こなちゃん、こんばんは~♪」
「いらっしゃい、泉さん。お待ちしてましたよ」 
「ちわーっす」
玄関に行くと、そこには手を軽く上げて、いつものこなたがいた。
(久しぶりにこなたの顔を見た気がするわ…)
まだ学校が終わってから1週間も経ってないのに、会えたのが凄く嬉しい。
でも、そんなことは言えず、
「遅いわよ、こなた!こんな時ぐらい、ちゃんと時間通りに来なさいよ」
「いやぁ、ごめんごめん。大宮で時間潰してたら、レジでトラブっちゃってさ」
「ちょ、あんたここ来るまでずっと大宮にいたわけ?…全く、ある意味尊敬するわよ」
いつもと変わりない返事が出来てる自分に安心を覚えつつ、どこかで悟られないかとドキドキしている。

「なにかご用事でもあったのですか?」
「いやぁ、寝坊やゲームが原因で遅れる事が多いからさ、大宮で時間潰してれば遅刻しないかと…」
「あんた、結局ギリギリまで買い物しようとしてたでしょ?それじゃ、家でゲームしてるのと変わらないじゃないの!キリが悪くて、一区切りするまでやるのもある意味トラブルじゃない。」
「うぐっ…。ま、まぁ、細かいことは気にしないでおくれよ、かがみん」
ちょっと困ったような顔をするこなた。
「皆そろったし、居間に行こうよ~。ここだと冷えるし。」
「そうですね。とりあえず、居間に行きましょうか。温かいお茶を用意しますね」
「おぉ、助かるよみゆきさ~ん。ほら、かがみも行こう?」
(話をそらしやがったわね…まぁ、いいわ。今日はそんなことはどうでもいいもの…)

「この時期でも臭くってさー」
「そうだよね、まだ臭いよね~」
「いつまで経っても慣れないんですよね」
「それでさぁ、・・・・・・・・」
場所を居間に移し、こたつに入って、私たちはいつもと変わらない雰囲気でしゃべっている。
…いや、正しくは3人が、である。玄関では普通に対応できたものの、今はどこかで意識している。
ずっとこなたの方を見てしまうのも、ここ数日会えていなかったからだけじゃないだろう。 

「だよねー。…あれ?どったの、かがみん?さっきからあまりしゃべってないけど」
(やばっ、まさかずっと見てたのばれてないわよね?と、とりあえずごまかさないと!)
「え、いや、な、なんでもないわよ。ただ、この雰囲気が好きだなって改めて思っただけよ」
「やっぱり、かがみは寂しがりのうさちゃんなんだね~♪そんなに私に会いたかったのかな?」
「ば、違っ!そんなんじゃないわよ!だ、だれがあんたのこと何か…」

なんだかんだで、いつもの流れに戻すことができて安心できるのもつかの間だった。
「えー、だってさっきからずっと私の方見てたじゃん?」
「……っ!?」
顔は真っ赤、頭の中の思考回路も一時停止した。
まさか、ばれてるとは思わなくて、それ以上に悟られているんじゃないかという不安が大きくなる。
「ねぇ、図星?ねぇ、図星ぃ?」
「それは、違う!絶対違うっ!そう、あんたの気のせいよ!」
自分でも強引だと思ったが、とりあえずこの場から逃れようと必死になった。
「えー、だってかがみを見るたびに、かがみが私の方見てたよ?」
「た、たまたまよ。ちゃんと、つかさやみゆきの方だって、み、見てたわよ」
「んもぅ、隠さなくたっていいじゃん~。…でも、さすがツンデレだねぇ♪」
「ツンデレ言うな!それに、本当に違うから!」

やっと一息つくことができた…。
でも、いつもこなたのペースに乗せられることも嫌いじゃない。
むしろ、こういうやり取りが自然とできるのが嬉しい。
この流れを作れるのは私以外にいない、っていう自信さえある。
そうこう考えていると、突然…
「ふふっ、本当に仲良しさんなのね、こなたちゃんとかがみちゃんは♪」
「…っ?!と、突然何を、言って…?!」
不意に後ろからかけられた声に、思わず叫んでしまった。
「そうなんですよ、お母さん。いつも楽しそうで羨ましい限りです。ですよね、つかささん」
「うん!お姉ちゃんとここまで仲良く出来るのは、こなちゃんしかいないよー」
「ちょ、ちょっと、みゆきにつかさまで!」
「あらまぁ。それじゃあ、運命のパートナーねぇ♪うふふっ」
「えっ?!」
「そうだね~、かがみんは私がいないとダメだもんね~」
(運命のパートナー…?それって…こなたも否定してないし…。
いやこれは、流れに乗った話であって、こなたの本心じゃ…でも…いや…)
ゆかりさんの言葉に反応し、思考を巡らせていると、突っ込みがないのを不思議に思ったのか、こなたが問いかけてきた。
「かがみ~、大丈夫?今日、何か変だよ?」
「えっ!そ、そんなことないわよ。いつも通りの私よ?」
「異議有り!普段のかがみなら、そんなところで噛まないし、さっきみたいに驚かない!」
「うっ…」
人の心配してる時もゲームネタか、と言いたいところだが、図星を指された私にそんな余裕はない。






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