模擬挙式編「彼方への誓い」

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それは、6月初めの自宅でのこと……

「お姉ちゃん、ちょっといい……?」
「何、つかさ?」
「その、大事な話……」
「……?」

改まった様子のつかさ。
一体、何の用かしら?

「……単刀直入に聞くね。
 お姉ちゃん、こなちゃんと付き合ってる……?」
「……!?」

突然の言葉に、私は言葉を失った。
普段はのほほんとしてるつかさだが、
時折、妙な鋭さを見せることがある。

「どうして……」」
「やっぱり、そうだったんだね……。
 お姉ちゃん、こなちゃんのこと
 名前でずっと呼ぶようになってたから……」

そういえばあの日以来、こなたのことは
ずっと名前で呼ぶようになっていた。
そう考えると、私達といつも一緒にいたつかさが
その些細な変化に気がつくのも、当然と言えば当然だろう。

「その……つかさ……」
「あ、えと! それでこれ!」

少し混乱気味の私をまくしたてるように
つかさがチケットを2枚渡す。

「これは……?」
「今度の休日に、東京の方のおっきな教会で
 模擬挙式とウェディング試着会をやるんだって。
 それで、ゆきちゃんがお母さんからそのチケットを3枚貰ったんだけど、
 使わないからって私にくれたんだ」
「模擬挙式……」
「でも、その日は私、専門学校の見学会で行けないから……。
 だから、こなちゃんとゆきちゃんと3人で行ってきてよ!
 ゆきちゃんが日帰りでは大変だから、
 家に泊まっていいって言ってたし」
「ねえ……もしかして、みゆきも私達のこと……」
「うん……でも大丈夫! ゆきちゃんも私も
 お姉ちゃん達のこと応援してるから……。
 だから、今回のも二人の思い出になるように、って!」
「つかさ……。ありがとね」
「どういたしまして!

二人には感謝してもしきれない。
今度、みゆきに会った時にもきちんとお礼言わないと。

「……それに……私の…も二人には……」
「え……?」

つかさが、何か言ったようだけど
よく聞き取れなかった。

「ううん、何でもないの!
 あ……もしかして、二人きりの方が良かった?」
「え!? そ、そんなことないわよ!!」

つかさには悪気が無いんだろうけど、
その言葉は私の動揺を誘うには十分すぎる。

「そ、その……みゆきにも
 きちんとお礼言わなきゃいけないしね」
「そ、そうだよね……」

心を落ち着けてチケットを改めて見直す。

(模擬挙式にウェディング試着、か……
 こなたと挙式……結婚……)

そこまで考えて、私は思わず赤面してしまう。
って、今からこんなんで、どうするんだ私!?

「お、お姉ちゃん……?」
「な、何でもない!
 それより、今日はもうそろそろ寝るね」
「うん、分かった。おやすみお姉ちゃん」

つかさが部屋を出て行ったのを確認し、
私は恋人を誘うべく電話を掛けた。

6月某日……

「ほほ~、ここがコスプレ会場ですな~」
「第一声がそれか……」

私、こなた、みゆきの三人は
都内の某教会に来ていた。

「みゆき、今日はわざわざごめんね」
「いえ、私こそお二人の邪魔なのではないかと思うと……」
「いいんだよ、みゆきさん。
 私達二人だけだったら、理性が持つか分からないしね~」
「えっ……!?」
「誤解を招くような言い方はやめてくれ……」

あの日から、私とこなたの関係はどうなったのかというと
特に大きくは変わっていない。
二人きりの時に手を繋いだり、なるべく名前で呼ぶようにしたりと
細かい変化はあった。
が、その……一歩というか一線というか、その辺は未だ越えていない。

「とりあえず、中入ろうよ~」

こなたが先頭を進んでいき、
受付でチケットを見せて入場する。
私達もそれに続いた。

既に、いくつかの組――当然ながら男女のカップルが
試着や模擬挙式を行っていた。

「お~、皆さん見事なコスプレっぷりですな~かがみさんや」
「いい加減、そっちの方向から離れたらどうだ……」
「お二人とも、あちらでドレスを試着できるようですよ」
「みゆきさんはドレス着ないの?」
「すみません、私は別に着るものがありまして……。
 お二人は先にドレスに着替えていてください」
「……? とりあえず、分かったわ。
 行きましょ、こなた」
「オッケ~。じゃ、また後でね、みゆきさん」

係員の人に手伝って貰い、ウェディングドレスへと着替える。
無論、人生で袖を通すのは初めて。
こなたは、どう思ってくれるかな……?

着替えを終え試着室を出ると、
そこには純白のドレスに身を包んだこなたがいた。

「あ……」
「こなた、先に着替え終わってたんだ」

小さな体躯にドレスで身を包んでいるこなた。
こなたには悪いけど、綺麗とか美しいという言葉よりも
可愛いという言葉が、真っ先に脳裏をよぎっていった。
でも、その可愛さがまた、愛おしいんだけど。

「……」
「……こなた……?」

上の空になっているこなた。
一体、どうしたのか?

「ちょっと、大丈夫?」
「あ、ご、ごめん……!
 その……かがみが凄く綺麗だから……」
「え……!?」

いきなりの爆弾発言。

「い、いきなり何言い出すのよ……!
 もう……」
「かがみ、顔真っ赤♪ やっぱ、照れてるんだ?」
「……あんたも人のこと言えないでしょ」

そういって、優しくこなたの額にでこぴん。

「あう……!
 む~……最近、かがみを一方的に弄れないな~」
「ふふっ……♪」

いつまでも、弄られるだけの私じゃないってね。

「ほら、みゆきが待ってるだろうし、行こ!」
「……うん!」

こなたに手を差し伸ばし、こなたも手を伸ばす。
やがて、白い手袋に包まれた二人の手が重なった。

「お二人とも、凄くお似合いですよ」

みゆきは待合室に先にいた。
だが、服装がさっきまでとは違う。

「みゆきさん、それは何のコスプレ~?」

……最早、突っ込むまい。

「これは牧師の服装です。
 お二人の模擬挙式は、私が進行を務めさせていただきますね」

なるほど。だから、みゆきはドレスを着なかったんだ。

「でも、よく牧師の服を用意して貰えたわね?」
「この教会で働いている方の中に母の知人がいて、
 その方に相談したら、快く引き受けてくださったんです。
 それとその……女性同士ということで、人目も気になるでしょうから
 特別に係の人や他の招待客も退席して貰うよう頼んでおきました」
「何から何まで……本当に感謝してるわ、みゆき」
「うん、ホントありがとね、みゆきさん」
「お礼には及びません。それでは、お二人が良ければ
 すぐにでも始めようと思うのですが……」
「そうね。それじゃあ、お願……」
「ちょ、ちょっと待って!!」

こなたが唐突に話を遮る。

「どうしたのよ?」
「今、私もかがみもドレス姿じゃん?
 かがみのドレス姿が嫌って訳じゃないけど、
 どっちか一人は、タキシード姿になった方が
 いいんじゃないかな?」
「いいんじゃないかな、って……
 そもそも、女性用のタキシードなんてあるの?」
「そうですね……ちょっと聞いてきてみましょう」


「かがみん、良く似合ってるよ♪」
「……何か、引っ掛かる言い方ね……」

みゆきの交渉の結果、
特別に男性用に用意してあるタキシードの使用も
OKということになった。
しかし、こなたのサイズに合うタキシードが無く、
私が渋々着ることに。

「みゆきさん、ちょっといい?
 式の進め方でお願いがあってさ……」

こなたがみゆきと式の進め方で何か話している。
聞かない方がいいのかな?


「それでは、始めますね」

みゆきの進行の下、式が始まった。
扉が開き、こなたとヴァージンロードを歩いていく。

「この前さ……」
「……?」
「いつかは本当にこういう式挙げたいって、言ったよね?
 でも、思ったより早く実現しちゃったね、って……」
「そうね……」

お互い緊張しながら、歩みを進めていく。
その後の式の進行は、どこか既視感を感じた。

「ねえ、こなた。この進め方ってもしかして……」
「うん。大体はこの前のネトゲのそのまんまだよ。
 みゆきさんに頼んで、変えて貰ったんだ」
「やっぱりね。どおりで、スムーズに
 聖書の言葉が出る訳よね」
「へへ♪ 粋な計らいでしょ?」

そう言って、子供のようにあどけなく笑うこなた。
みゆきの見ている手前もあり、その笑顔の眩しさは
逆にこちらが恥ずかしくなるくらいだ。

「それでは、次に誓いの言葉です。
 ……汝、泉こなたは、柊かがみを生涯のパートナーとすることを――

みゆきの言葉が、一瞬途切れた。
そして


  「――生涯のパートナーとすることを、母・泉かなたに誓いますか?」


  「――誓います」


真剣に、正面を見据えて、一片の迷いも無く、こなたが答えた。


「では、汝、柊かがみは、泉こなたを生涯のパートナーとすることを
 故人・泉かなたに誓いますか?」

「――誓います」

正直、いきなりこなたのお母さん
――かなたさんの名前が出たことには驚いた。
恐らく、これもこなたがみゆきさんに頼んだのだろう。

(……かなたさん、私の声が聞こえているかどうか分かりませんが、
もし聞こえていたら、どうか私達のこと、ずっと見守っていてください。
私もこなたも、まだまだ未熟で至らない身ですが、
二人で精一杯支えあって、頑張っていこうと思います)

私は心の中で、そっと誓いの言葉を述べた。

「続いて、指輪の交換です」

みゆきに促されて、指輪の交換に入る。

「ネトゲの時のキャラの動作、覚えてるよね?」
「まあ、大体はね」

あの時の記憶を頼りに、互いの指輪を交換していく。
こなたの左手の薬指に、美しく輝く銀の指輪をはめる。

「持ち帰れないのが、ちょっと残念かな」
「……いつか、二人で選んで買える日も来るわよ」
「ん……そだね……」


「では、最後に誓いのキスを。
 ……私は後ろを向いてますね」

そう言って赤面しながら、みゆきが後ろを向いた。
御丁寧に、目をつぶって耳も塞いでくれている。

「……ファーストキス、だね……」
「……」

恥ずかしさと緊張で何も言い返せない。
こなたが、そのまま言葉を続ける。

「私、今幸せだよ、かがみ……。
 色んな人に支えられて、見守られて、今日ここに立つことができて……
 大好きな人と結ばれるんだから……」
「こなた……」
「……なんてね。今のは、ギャルゲの受け売り」
「……この期に及んで、それかい……」
「でも……私自身の気持ちも、ほとんど今言ったとおりだよ……」
「……私だって……」

彼女の背丈に合わせて、私が少し前屈みになる。

「こなた……」
「かがみ……」

――もう、これ以上の言葉はいらない。

初めて触れたこなたの唇はとても柔らかかった。

今という時が永遠に続けばいいのに……。
幸せを噛み締めながら、心の中で私はそう考えていた。


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  • 結婚しちゃうのか…素晴らしい!! -- 七誌 (2010-03-29 23:27:29)

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