環状線を走ってた

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 触れ合っていた唇同士が離れる。互いに回していた腕が少し緩み、視界がちょうど相手の顔で
満たされるくらいの距離を置く。なんだか胸の真ん中辺りがほわっと暖かいような、穏やかで幸せな気持ちになる。

 このまま、かがみのほっぺや胸にすりついてみたくなってくる。心も体も、なにか優しいもので
満たされていくような心地よさを感じて、自然と目尻が下がる。
 この緩やかな幸せの中に、ずっと浸っていたいと感じる。


 でも。
 わたしの目の前のかがみは、切なそうに熱を押し込んだような瞳を潤ませて、じっとわたしを
見つめている。息も少し乱れているけど、それを隠そうとしてるのが分かる。わたしの背に
回している腕だって、少し強張って震えている。


 かがみは、我慢している。それは、わたしのせい。


 かがみは、もっと多くのことを望んでいる。
 わたしは、今、この状態に満足していて、先に進みたいって気持ちがまだない。でも
かがみの中では、恋愛感情と欲求とがより近しいところにあるんだと思う。

 そして、わたしはと言うと、どうもこの二つはあまり近くにはないみたいで。
 かがみは、わたしのそんなところを察しているんだと思う。
 一度だって強引なことをされたことはなかったし、もっと強く抱き寄せたりしようとすれば
出来るのに、かがみはしない。

 それは、わたしに歩調を合わせようとしてくれているから。本当は物足りないだろうに。
 わたしばっかり満たされて、いつもかがみは満たされない。不公平だと思うし、
申し訳ないとも思っている。

 でも、その気のないわたしが行為としてかがみの望んでいることを受け入れたとしても、それではだめだ。
 そんなかりそめの行為では、かがみは満たされないし、そもそもそんなのはかがみに対する裏切りだと思う。
 かがみがわたしを好きで、わたしがかがみを好きで、お互いの信頼、安らぎ、幸せを育てたい、
分かち合いたい。わたしたちが望んでいるのは、こういうことなんだから。

 確かに、今は、わたしに先に進もうって気持ちはない。
 でも、付き合い始めた頃に思っていたほど、次の一歩を踏み出すのは遠い先のことでもないような気がしてきた。
 かがみがこんなにも誠実で、わたしを大事にしてくれるもんだから、逆に欲求が焦らされて
少しずつ表に上ってきているのかもしれない。

 にまっと猫口をたたえ、わたしは切ないかがみの瞳の間、眉間を軽く人差し指で弾く。
 それまでの感情が吹き飛んだように、かがみは気の抜けたような顔で文句を言いたそうにしていた。
 そんなかがみの様子に、わたしの顔はますますほころんで、かがみは呆れ顔を作っていく。

 近いうちに自然とわたしもかがみと同じようなことを望むようになるからさ、それまでのおあずけだね、かがみん。


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  • きっと数分経ったら したいって思うようになるよ -- 名無しさん (2010-04-20 20:09:29)

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