こなた庇護計画発動

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 ヴェルレーヌも詩ったように秋というものは、人をセンチメンタルな気持ちにさせる。
 揺れて舞い散る落ち葉の、悲しげな舞踊のせいか。
 纏うものを無くした木々の、哀愁漂う立ち振る舞いのせいか。
 はたまた、食欲の秋を布石として生まれる、余分な脂肪からか。
 個々によって原因は違うにしろ、その気持ちを紛らわすために、人々は温もりを求める。
 そしてそれは、異性同士にばかり言えたもの、というわけでもない。



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『こなた庇護計画発動』

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「はぁ……」

 意味もなく大きな溜息をつくのは、薄紫色の髪を頭の両端で結ったツリ目の女の子。柊かがみだ。
 首を回して窓の外を見ては、視線を前方に戻して溜息をついていた。
 すれ違う生徒達はいずれも笑顔で、並んで歩く友人と他愛もない話をしている。
 かく言うかがみもそれは変わらず、隣には少し不釣合いな身長の少女が付き添って、楽しそうに話していた。

「ねぇかがみぃ、少し歩くの早いって」
「え? あ、ご、ごめん」
「何かあったの? 溜息までついて」
「……いや、別に。なんでもないわよ」

 そう言いながらも目は泳ぎ、隣の少女はどうにかしてその視線を捕らえようと、体を傾けて追いかける。
 こっち向いてよ、という青髪の少女、泉こなたの言葉に、1度は目線を交えたものの、すぐにまた反らしてしまう。

「悩み事なら私が聞いたげるよ?」
「……言えたら苦労しないっての。まったく、誰のせいだと……ブツブツ」
「?」

 普段ちょっとした相手の変化には鋭いこなただが、自分のこととなるとこれでもかと言うほどに鈍感になる。
 かがみの悩みの原因が自分だとは、気づきもしないようだ。

 2人して前を向かずに階段を下りる。危険だと言ってくれる人は近くにいない。
 そして案の定……。

「むぅ、教えてよぉ……気にな、ひゃぁあ!?」
「こなた!?」

 残り7段ほどのところでこなたが足を踏み外し、転げ落ちてしまった。
 かがみが真っ青な顔をして駆け寄る。
 うつ伏せになってプルプルと震えているこなた。
 スカートが捲れて、可愛らしいショーツが丸見えだ。

「ぱ、パンツ……じゃなくて!! だ、大丈夫!? こなた!!」
「いったぁ~……大丈夫大丈夫。いやはや、私としたことが」

 やっちゃったよぉ、と軽く言うのはかがみに心配させないように、という
気配りからなんだろうが、痛々しく膝から滲む血と、既に青あざになりかけている脛が
かがみを追い込んだ。

「ひぃ!? こなた……こなたぁ!!」

 目尻に涙を溜めながら、こなたに抱きつくかがみ。
 突然のかがみの豹変に、こなたはあたふたして背中をさすってあげている。

「お、落ち着いて? 大丈夫だから、ね?」
「ぐすっ……あ、ごめん」
「もぉ、いきなりどうしたのさ」
「いや、その……すごく、びっくりしちゃって」

 こなたはポケットからハンカチを取り出して涙を拭いてあげる。
 かがみは赤くなりながら、されるがままだ。

「なんかこれは逆じゃないのかな?」
「そ、そうかもね……」

 怪我をしたこなたが泣いて、それをかがみが受け止めてあげる、というのが普通だろう。
 かがみを慰めるこなたは、そこに密かに萌えていたりした。

「まぁいいや、取り敢えず保健室行ってくるね」
「え!? わ、私もついてくわよ!!」

 当然の反応だ。友人が目の前で怪我をしているのに『わかった、いってらっしゃい』
なんて言う人はいないだろう。
 しかも心配性のかがみのことだ。ついていくだけじゃなくて、そのあとも付き添って
ずっと面倒を見るとか言い出すだろう。

 それを分かっているからか。

「かがみは教室戻りなよ。もうすぐで授業始まるよ?」

 こなたはかがみに、教室へと戻るように言った。

「で、でも……心配で」
「大丈夫大丈夫♪ 膝擦り剥いただけで大した痛みもないし、1人でいけるよ」
「でも……」

 やたらに助詞を連発するかがみを制しながら、ゆっくりと立ち上がるこなた。
 大丈夫大丈夫とかがみに言い聞かせながら、一歩踏み出した。
 ところが……。

「……っ!!」
「こなた!?」

 足首を押さえながら蹲ったこなたの肩に手を置いて、しゃがみこむかがみ。
 しかしこなたは、何事もなかったような笑顔をかがみに向けている。

「な、なんでもないよ」
「……こなた」

 かがみはさっきと打って変わって、怒ったような顔をしていた。
 コロコロと表情の変わるかがみに、こなたはついていけず戸惑っている。

「な、何?」
「右足見せなさい」

 疑問でも願望でもなく、命令。相手の返事を必要としない、確認としてのその言葉を
言い放ったかがみは、こなたの右足を――脹脛を掴んで自分の方に近づけると、ソックスを
優しく下ろした。

「やっぱり……」
「えっと……かがみ?」

 外気に晒されたこなたの足首は真っ赤に腫れ上がり、ピクピクと痙攣している。捻挫して
いるのかもしれない。
 かがみは意を決したように、こなたの背中と太ももに手を回して持ち上げた。

「ちょ!! か、かがみ!? だから大丈夫だって!! 私一人でも」
「何言われても、連れてくからね!!」
「う゛……は、はい……」

 かがみのあまりの剣幕に、こなたはもう何も言わずにお姫様抱っこされている。
 あまりこなたに負担をかけないように、かがみは保健室へと向かった。



「こなた、痛くない? 揺れとかで」
「ん、大丈夫」

 体勢上、2人の顔はかなりの至近距離にある。
 自然と顔が上気してしまう。
 すると、珍しくこなたの方から目を反らした。


「どうかした?」
「え? いや、その……」

 言い淀むこなた。いつもズバズバ言葉を発して、かがみを赤面させるこなたにしては
珍しいことだった。
 そのためか、かがみも少し強気になっている。

「何よ、気になるじゃない。……言いなさいよ」
「……え? いや、その……かがみ、なんかかっこいいなって……思って」
「っ!?」

 不意打ちの嬉しい言葉に、かがみの顔はみるみるうちに真っ赤になる。
 まるで熟れたトマトのようだ。
 何か言いたいけど言葉が見つからない。そんな状況に、口をパクパクさせている。

「やっぱりかがみ、私より体……おっきいんだね……なんか安心する」

 そう言葉を紡ぎながら弱弱しく体を授けてくるこなたに、ついにかがみは理性が崩壊してしまった。

「……」



 保健室のドアを荒々しく足で開ける。しかし、どうやらふゆき先生はいないようだ。
 『一番奥のベッド』へとこなたを下ろしてから、足首と足を弾性包帯で固定し、氷嚢を
作って患部に当てた。

「冷た!!」
「当たり前でしょ。……はい、ここに足乗せて」
「はーい……でも、こんなにしなくても大丈夫だよかがみ」
「だーめ、もしも捻挫だったらどうするのよ。捻挫は骨折よりも怖いんだからね?」

 右足を台の上に乗せて、心臓よりも高い位置にする。
 これが一般的に知られる家庭医療だろう……と思う。

「さて、これ以上のことは先生に任せるとして」
「うん、ありがとかがみ。もう戻っていいよ」
「何言ってるのよ。他に怪我した場所を確認するに決まってるでしょ」
「えぇ!?」
「取り敢えず膝と脛のところは確認できたわね……他にも怪我してるかもしれないわ。というわけで脱いで」
「なにおぉ!?」

 然も当たり前のように力強く言うかがみ。
 流石のこなたも、この言葉には首を全力で横に振った。

「あ、ごめん、カーテン開いてたら恥ずかしいわよね。今閉めるから」
「ちょ!! 違!!」

 こなたが言い終わる前にカーテンを閉め、洗濯バサミでしっかりと止めた。

「あぁ……逃げ道が……」
「脱がすわよ」
「かがみ、積極的すぎ……うわ!!」

 あっという間に下着姿にされたこなたは、恥ずかしさでもじもじと身動きをした。
 かがみはその様子を凝視している。

「……」

「あの、かがみ?」
「あ、あぁ、それじゃあ怪我見るわね」

 そう言いながら、こなたの肌に手を沿わせるかがみ。
 ここは? じゃあここは? と痛いところを探っているみたいだが
 明らかに触るところがおかしい。胸やお尻の周辺ばかりだ。

「かがみ、同じところ触ってるんだけど」
「あら、そうだった?」

 やっと理性が戻ってきたのか、触る掌が妙にプルプル震えている。
 まるで豆腐か何かを、崩れないように触っているようだ。
 とてもじゃないが、痛いところを見つけようとしているとは思えない。恋人のそれを触るような手つきだ。

「か、かがみ、他のところは大丈夫だよ。痛むところもないし」
「そ、そうね。じゃじゃじゃじゃじゃじゃあ、服着て」
「動揺しすぎだよ」

 完全に理性が戻り、自分の行為の恥ずかしさを実感しているかがみを尻目に、こなたは制服を着始めた。
 すぐにふゆき先生が戻ってきたが、なんとか服を着終わることができたようだ。



「捻挫ね」

 ふゆき先生がこなたの足首を診て、すぐにそう言った。

「あぁー、やっぱり」
「えぇ、今日はもう帰って、病院に行ったほうがいいわ。捻挫は怖いからね」
「あ、それかがみも言ってました」

 氷嚢を足首に当てながらこなたが言う。
 さっきよりも赤く腫れて、中心の部分が紫がかっている。
 とても痛そうだ。

「でも軽い捻挫だから入院はしないと思うの。それで、普通に学校これると思うんだけど
学校で面倒見てあげる人が必要なのね? だから」
「はい!!」

 いままで生きてきて一番元気なんじゃないか、とすら思えるほどに元気よくはっきりとした返事をするかがみ。
 その目はらんらんと輝いている。それとは正反対に、少し不安そうな目をしているこなたがいた。

「あら、引き受けてくれるのね。じゃあお願いするわ」

 そういい残すと、泉家に電話してくるといって、ふゆき先生は保健室を後にした。
 残されたのはこなたとかがみ。

「大丈夫なのかな……かがみで」
「な、なんでよ」
「だって……不必要に面倒見そう。おしっこしてる時までトイレの個室の中で待ってたりとか」

 具体的でピンポイントな指摘に、かがみは顔を真っ赤にした。
 その反応にはいったい、どのような意味が込められているのだろうか。

「そ、そんなことしない!! ……と思う」
「……やっぱり不安だよ」
「……こなたは……私に世話されるの……いや?」

 少し涙目になりながら悲しげに言うかがみにこなたは、突き放す言葉を言えるわけもなく……

「……そんなわけない。うれしいに……決まってるじゃん」
「こなた……」
「治るまでお願いね……かがみ……んっ」

 そう言って、かがみの頬にキスをした。
 当のかがみは、頬を紅潮させながらも満面の笑みを浮かべて……

「任せなさい!!」

 かがみは何か悟ったのか、こなたまで元気にさせてくれるような笑顔でそう言った。

「そういえばかがみ、悩み事は?」
「ん? あぁ、あれね……なんかもう吹き飛んじゃったわよ……だって、ね」
「え?」
「ふふ、なんでもない♪」

 意味深に微笑んだかがみは、ぎゅっと愛しい人を抱きしめて、その唇に自分の唇を重ねたのだった。



 ちなみに、うまく身動きを取れないこなたが、かがみにいいようにされてしまうのは

 ――また、別のお話


【 fin 】

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  • こなただいじょうぶ? -- かがみんラブ (2012-09-15 05:01:13)
  • 「別のお話」とやらをお願いします。 -- 名無しさん (2012-06-10 21:02:31)
  • 是非これを別の展開で!! -- 八トタ (2010-03-29 23:36:37)
  • 是非別のお話を
    読みたいです! -- 無垢無垢 (2009-02-27 00:45:28)
  • べ、別のお話をーーーーーーーッ!! -- 名無しさん (2008-12-02 20:58:52)
  • いい話だなww -- 名無しさん (2008-12-02 03:24:09)

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