きみのおくりもの

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 ねえ、みんな。恋するキッカケって、どんなものだと思う?
 私はね、普段、何気なくあるほんの些細なことが、そうなんじゃないかなって思うの。
 だって、私が……そうだったから。

 私が恋した相手は、私の親友。名前は泉こなた。
 キッカケは本当に些細なこと。こなたが携帯を変えて、カメラの使い方を覚えたって言ってきたとき、その後の一言に惚れたの。
 なんて言ったと思う?
「やっぱり最初は好きな人を取りたいじゃん?」
 そう言って、私をファインダーに納めてパシャリ。

 こなたは、いつものじゃれあいの一環と思ってやったのかもしれないけど、その一言が私をドキリとさせた。
 それから、すごくこなたの事を意識するようになった。同性なんてことは関係ない。まぁ、日下部って言うライバルもいるけど、こなたへの気持ちは負けてないつもり。
 だから、いつもは照れくさくて中々素直になれないけど、本当はどんな時もこなたと一緒にいたい。


特に、奇跡が舞い降りる聖なる夜には……。

――12月24日、クリスマスイヴ。

街には電飾が飾られ、巨大なクリスマスツリーが駅前に出現。さらにはサンタの格好をした人がビラを配っていたり、プレゼントを物色する親子連れで賑わっていたりと、皆が浮き足立つこの日。
神社であり、直接的にはこのイベントに関わりの無い我が家でさえ、ご馳走を振舞う。まぁ、なんて言うか、みんなお祭りが好きなのよね。

「じゃあ、お姉ちゃん、行って来ます」
「気をつけなさいよ?夜道は暗いんだから」
「は~い」
普段より気合を入れて化粧をし、可愛らしさ3倍増のつかさが家を出て行く。何でも、峰岸に呼ばれてパーティをしに行くそうだ。
私もどうかって誘われてたけど、断った。だって、私には、他に誘いたい人が……いたから。

「こなたの……バカ」
小声で、愛しい人の名を呼び、その人がこの場にいないことを悔しがる。
こなたは、こんなイベントの日に限って……いやこんなイベントの日だからこそか、バイトだそうだ。

自分の部屋に戻り、ベッドに身を沈める。階下からは家族の笑い声が聞こえる。こんな気持ちがなければ、私もそこに交じっていたか、峰岸の家にお呼ばれしていただろう。
「ふぅ……」
会えないことは分かってる。でも、もしかして、と淡い期待を持って携帯を開く。
着信履歴を確認。続いて新着メール。しかし、やっぱりこなたからの連絡は無い。
待ち受けに画面を戻した。私とこなたのツーショット。フレームに納まるようにと、スキンシップというにはいささか過剰に寄り添っている。
さり気なく私の腰に回されたこなたの腕。それは私の事を誘っているようにも見えて、こなたも私の気持ちに気がついているんじゃないかな、と思う。
でも、こなたはいつも飄々としていて、捉え所が無い。本当に私の気持ちに気がついているかは……私には分からない。
分かっても、こなたが私をどう見ているか、分からない。親友?私はそれ以上を求めているのに……。

現在20時、私は駅前を一人、ぶらついていた。
家にいてもやることは何も無い。かといって、外に出てもそれは見つからなかった。

今から峰岸の家に行ってパーティに混ぜてもらおうかな。みゆきも行ってるみたいだし。
でも……こなたのいないクリスマスパーティに何の価値も見出せない。じゃあ、どうしようか。

ため息をつくと、再び目的もなく歩き出そうとした。その時、
「あれ、柊やないか?どないしたん、こんな所で?」

黒井先生だった。コンビニの帰りらしく、ビールと、つまみが入った袋を抱えている。
「泉は?一緒やないんか?」
「こなたは……バイトだそうです」
本当に自分の声かと思うくらい低い声だった。黒井先生も驚いたようで、
「なんや、暗いな?何かあったん?」
「いえ……何も」
目を伏せる。黒井先生の視線が痛かった。こんな自分を誰かに見せたくなかった。

黒井先生はしばらく私の事をじっと見ていたが、やがて、
「柊、今、暇か?」
「え?は、はい……」
「そうか、じゃあ、ちょっと付き合うてくれへん?ウチ今から寄るところがあるんや」
そう言って、私の返事も聞かずに歩き出した。こんな気分だし、本当は行きたくなど無かったけど、年上の頼みだ、無下にも出来ない。
私は、俯いたまま黒井先生の後に続いた。

「ここや、ここ」
 そう言って黒井先生の示した場所は……こなたの、バイト先のコスプレ喫茶?
「さ、入るで」
 あ。止める間もなく黒井先生はドアノブに手を掛け、引いた。中の暖かい空気が外に漏れてくる。
「お帰りなさいませ、ご主人さ……ま?」
 出迎えてくれたのは、こなただった。期間限定のサンタコス。店側もこなたに合うサイズを確保できなかったらしく、裾が大分余っていた。
 コレはコレで可愛い……。
「よ、泉。ちょっと邪魔するで」
 黒井先生は気軽に片手を上げると、こなたの案内を待つことなく、近くにあった二人分の席に座る。
「お~い、柊も早く来んかい。それと泉、メニュー、早よ持ってきたってな」
「もう、しょうがないなぁ、先生は。かがみも座ってて、今メニュー持ってくるから」
 そう言うとこなたは店の奥に引っ込んだ。私は黒井先生向かいに腰を下ろす。
「あの、黒井先生……?」
 問いかける私を手で制すと、黒井先生はポケットから一枚の紙切れを取り出した。これは……?
「これ、ここの特別優待券。30分だけ好きな店員を指名して一緒にいられるんや。ウチのクラメンにここの常連がいてな。そいつから貰ったんや。でも、ウチは興味ないし、柊にあげるわ」
 え……?
「これ使うて、折角のクリスマスやし、泉と一緒に過ごしや。な?」
 私の手に優待券を握らせると、黒井先生は席を立ち、店の外に出て行った。去り際に「一人モンは寂しいわ」って聞こえたけど、見えた顔は心なしか、嬉しそうだった。
「お待たせ、かがみ。あれ?先生は?」
 こなたが戻ってきた。緊張して、手が震える。私はそっと、優待券をテーブルの上に置いた。
 こなたの目が丸くなる。
「かがみ、それ……」
「……私は、泉こなたを指名します」

「……」
「……」
カチャカチャ――フォークとナイフを繰る音だけが響く。

優待券を提示したことで、私は30分だけ、こなたと食事を共に出来ることになった。
一緒にご飯を食べるのは初めてじゃない。お昼休みはほとんどこなたのクラスで食べているのだから。

でも、会話が出来ない。
その原因が分からなかった。いつもはこんなこと無いのに。

何か喋らないと、折角こなたと一緒にいられるのに。気持ちばかりが焦り、言葉を喉の奥に押し込む。

こなたぁ……。
ぎゅ、と目をつぶる。頬を熱いものが流れる。口から嗚咽が漏れる。
「かがみ……」
え……?

フワ、と暖かいものに包まれた。目を開けると、そこにはこなたの顔が。
あぁ、神に誓ってもいい。きっと今、私の顔は真っ赤になっている。
「来てくれたんだね、かがみ」
こなたは、ただ、それだけを言った。でも、それだけで、伝わった。

――こなたは、私を待っていてくれた。私の想いは、伝わっていた。

「こな……うっ……っ」
「かがみ……」
こなたと視線が絡み合う。瞬間、世界は、閉ざされ、そこには私とこなたが二人きり。
自然に、ごく自然に、唇同士が惹かれあう。もう、遮るものなど何も無い。

――ピピピ。
テーブルの上に置かれた時計が30分を示すアラームを発した。閉ざされた世界が開かれ、シンデレラの魔法は解ける。
「もう、行かなくちゃ」
こなたは少し、寂しそうに笑った。

こなたにエスコートされ、私は店の出口へ向かう。本当は帰りたくない。魔法が解けたシンデレラの気持ちが、今ならよく分かる。
「ねえ、かがみ」
こなたが背伸びをして耳元でささやいた。
「今日、靴下用意して、早く寝てね」
私がその意味を問い返す前に、扉は目の前で閉まった。

――12月25日、朝。

私が目覚ますと、昨日の夜用意した靴下が視界に入った。
あれ……用意した時より膨らんで見える?
訝って中を開けると、丁寧にラッピングされた包みと、メッセージカードが入っていた。

『サンタさんは寝ている良い子にプレゼントをあげるんだからね。
                  フライングはダメだよ?
                         こなたより』
こなた……。
それは、今まで貰った中で最高のクリスマスプレゼントだった。


~オマケ~

私は着替えると、朝食を取りに向かった。
途中、起きてきたまつり姉さんと出くわす。
「あ、かがみ。昨日さ~夜中にこなたちゃんが来たんだよ」
知ってるわよ。こなたから貰ったプレゼントのお返しに何をあげようかしら?
「で、こなたちゃんの格好が可愛いのなんのって。私、なんかこなたちゃんの事好きになったかも」
……ハイ?
それは、私に恋敵が増えた瞬間だった。








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