こなた×かがみSS保管庫

追われて、追って。

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匿名ユーザー

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 ――あれから、ただただ単調な日々だけが過ぎてゆく。
 見るものは色彩を失い、ご飯も味を感じられなくて砂を噛んでいるかのよう。

 冷静になってあの時のことを思い出すと、何てことを言ってしまったんだ、と後悔、そして
罪悪感だけが押し寄せる。

(このまま、ぎくしゃくしたままになっちゃうのかな…)

 それだけは、何としても避けたい。ただの友達としてでもいいからまた、アニメショップへ
行くのに付き合ったり勉強会やお泊り会をしたい。
 …だけど、それは叶わないことも解っている。あの二人が付き合っている限り、私は前のようには
こなたに接することが出来ない。

(最低だ私…)

 そうは思っても、今の二人を見るのは拷問に等しい。つかさからも『こなちゃんと何かあったの?
仲直りしなきゃダメだよ』と言われたし、こなた自身からの電話も何度も鳴ったけれど
一度も出ることは出来なかった。


 夕食を食べてから自分の部屋で冬休みの課題を開いて一時間。未だ真っ白なままのノートを
見つめながら、私はくるりとペンを回した。ため息をつくと幸せが逃げるって言うけど、それなら
私の幸せは一生来ないに違いない。

 ジリリリリリリ…

 家の黒電話がなる音が聞こえる。少ししてその音が止むと、代わりにつかさの話し声が聞こえ始めた。
「お姉ちゃん電話だよ」
「誰から? こなただったら――…」
「…ううん、ゆきちゃんからだよ。委員会の連絡だって」

 みゆきから?
 …正直みゆきともあんまり話したくない。だけど委員会のことだったらしょうがない、と割り切って
受話器を取る。
「もしもし」
「あ、かがみさんですか?実は明日緊急の委員会がありまして…。連絡が遅くなってしまい申し訳ありません…。
来年度の目標について話し合われるそうで」
 まったく。そういうのはもっと早く決めておくものじゃないんだろうか?
 学校側の手際の悪さに呆れつつも、ボールペンを電話の横にあるメモ帳に走らせる。時間は一時で
場所はいつもの教室、か。
「解ったわ。ありがと、みゆき」
「いえいえ、こちらこそ。それでは失礼しますね」
 ……? 何で『こちらこそ』なんだろう?
 若干の疑問が浮かんだけどそれを解消する前に電話はガチャン、と切れてしまっていた。

「お姉ちゃん、一緒にお風呂入らない?」
 電話が切れてしばらくした後、つかさが部屋に入って来て突然そんなことを言い出した。
 手にはすでに着替えが抱えられている。
 相変わらず、つかさは私のためにいろいろと気を遣ってくれていて。…もしかしたら、あの日
私を買い物に誘ったことに責任を感じているのかもしれない。つかさのせいじゃないのに。

 とにかく何が起こっているのか把握出来ていないにせよ、なるべくこなたの話題を出さないように
しているし、代わりにというべきか、こうやって私とのスキンシップをいつもより多く取ってくる。
(妹にまで気を回させちゃうなんて姉として失格だよね…。)
 つかさのそんな気遣いを無駄になんて出来ない。
「…ん、一緒に入ろ」


 つかさと二人でお風呂に入るのなんて、どれくらいぶりだろう? 熱いお湯で体が解れるのと同時に
気も緩んでいく。
 おかげで、つかさとの会話も自然と弾んだものになって。私は久しぶりに楽しい一時を過ごしていた。


「そういえば、明日クリスマスだけどつかさは何か予定あるの?」
「え?…えー、と。私は…あ、新しいお友達の所に遊びに行くんだ!」
 あ。目が泳いでる。隠し事が苦手なつかさはすぐにそれが顔に出てしまう。
「つかさ、あんた何――」
「お姉ちゃん!! こういう時は…えと、その…あ…恋愛の話だよ! 好…好きな人とか居ないの!?」
「え………」
「……あ、言いたくなかったら良いんだけど…」
 私の声音の変化に気付いたつかさが、慌ててフォローを入れる。
「…ううん。いいの。…私の好きな人には…好きな人が居て――この前両想いになったみたいなの。
私はどっちとも仲が良いから…ちょっと今はキツイ感じ、かな…」
「そっ……か、…それは辛い、よね。お姉ちゃんは優しいからどっちの人も嫌うなんて出来ないよね…」
「優しいなんて……」
 本当に優しいならあんなこと……。
「ううん、お姉ちゃんは優しいよ。大丈夫、きっとお姉ちゃんは幸せになれるよ」
「――っ!!それよりっ!あんたはどうなの!?」
 にっこり笑いながら言われて照れてしまう。なまじ、からかいが入っていない分余計にたちが悪い。

 顔の熱を自覚しながら、話を逸らすためにつかさに話を振った。
「わ、私!?」
「私だって言ったんだからつかさも言いなさいよっ!」
「うー…私も居る、けど…。…その人は勉強もスポーツも人を思いやることも出来る人で、
私なんかとは全然釣り合わなくて…。ええと、何て言うんだっけ?…高目の花?」
「高嶺の花、ね。へぇー、みゆきみたいな人ね」
「え!? う、うん!ゆきちゃんみたいな人っ!! …え、と。…だから、片思いで終わりそうかなーって」
「そんなことない!!」

 いきなり大きな声を出した私に、つかさがびっくりして目を見開いたのが解る。
 水面に小さな波が出来て、浴槽の壁に当たって消えた。
「まだ、なんにもしてないんでしょ!?だったらまだ可能性はいくらでもあるじゃない!」
 つかさに言っているようで、実質それは自分自身に向けた言葉だった。二度も逃げてしまった私への。
「う、うん…。解った私、頑張ってみるね!」

 そうだ。私もやらなきゃいけない。

 私はただ、見ないようにしてただけじゃないか。まだ、なにも伝えてないじゃないか。
 たとえ、もうあの頃の私たちに戻れなくなったとしても。




 それでも私は、こなたが好きなんだから。



☆☆☆




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