これからを、君と

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『私、こなたのことがずっと好きだった』
『卒業してからも、ずっと一緒にいたいって思ってる』
好きな人に想いを伝えるのは勇気がいることだと思う。
だけど私があの日こなたに告白したのは、寧ろ逃げだった。
断られても、次の日には私は地元を離れるから。
引きずるぐらいなら、振られてふっ切れてしまおうと。

叶わない恋だと、解っていたから。
こなたの私に対する感情は『友情』。
知らないでしょ?こなた。私の想いはとっくに『愛情』になってたって。
だけどこなたの答えは意外なもので。
『ちょっと考えさせて』
返事を聞かないまま、ここを去ってしまうことに悲しめばいいのか、
振られなかったことに喜べはいいのか。
ごちゃごちゃになる心を抑えて、精一杯の笑顔で私は言った。
『待ってるから。私、何年でも…待ってるから…』

その時の返事を聞かないまま一ヶ月が過ぎ、一年が過ぎ、そして四年が過ぎようとしている。
気まずさからか、こなたとは月に何度かのメールをするだけで、結局会うことは一度もなかった。
答えを聞いてない状態で、どんな顔をして会えばいいのか解らなかったから私から誘うことも無く。
会わなければ想いも褪せるかと思っていたら、自分でも思っていた以上に私はこなたが好きみたいで。

――いい加減、諦めた方がいいのかも。
そういくどとなく自分に言ってみたけれど、その度にもう一人の私がその考えを否定する。
だって、私はあの時言った。
『何年でも待ってる』って…。

(ダメだな……)
この時期になると、いつもあの日を思い出してしまう。
そして自分でも呆れるぐらいのこなたへの想いの深さも。
大学からアパートに帰って来てから30分程、ぼんやり物思いに耽っていた
頭をふるりと振って、別のことに集中することにする。
今日の夕飯は何にしよう?料理が苦手だった私も、一人暮らしを
するようになってそれなりに、本当にそれなりにだけど
料理と呼べるものを作れるようになっていた。
冷蔵庫の中身を確かめながら、今日のメニューを考えていると
携帯の着信音が聞こえてきた。

(―――え……?)
この曲は…こなたの着メロなはず。
でも、なんで?用事なんて、無いはずなのに。
高校の頃は毎日のようにしていた電話もめっきりと減って。
―最後にしたのはいつだったっけ?
それすらも思い出せないぐらい久しぶりの、こなたからの電話。
携帯を手に取り、緊張で震える指で通話ボタンを押す。
すうっと息を吸ってから、唇を近づけた。

「もしもし?」
「あ、かがみ?」

変わらない。最後に電話で話した日から。四年前のあの日から。
それにしても、声を聞いただけで涙が零れそうになるなんて。
「わかったよ。私、かがみのこと好き、だよ」
唐突な、こなたからの告白。
いきなり過ぎて脳内での処理が追い付かない。
数十秒の沈黙の後、私は搾り出すようにして聞き返していた。

「…こな、た…?今、なんて…?」
「…だから、気付いたんだ。私はかがみのことがずっと好きだったんだ、って…」


そこから先は、正直よく覚えていない。
ただ、今から会えないかと言われて承諾し、時間と場所を指定されたことだけは
しっかりと聞き取っていた。
そして私はろくに荷物も持たずにアパートを飛び出していて。
酔った時みたいに頭がふわふわしていて、
うまく考えがまとまらない。
こなたも、私を……?

(夢、みたいだ――……)
いや、もしかしたら本当に夢なのかもしれない。
これは私が見ている都合のいい夢。
でも、それでも構わなかった。
目が醒めて、現実とのギャップに絶望することになったとしても。
こんなに甘い夢なら。
予定の時間より15分程早く待ち合わせ場所に着いた私は、
高鳴る胸を押さえながらそんなことを考えていた。

「やほ、かがみ。会うのは久しぶりだね」
呼ばれて振り向くと、頭のてっぺんからぴょこんと飛び出ている青いアホ毛が見えた。
それを認識するのと同時に私は、目の前にある小さな体を掻き抱いていた。

「わわっ!?」
ここは外だとか、周りには通行人もいるとか、そんなことは吹っ飛んでしまっていて。
腕の中の温もりだけが、すべてで。
触れ合っている場所から伝わる体温が、これは夢なんかじゃないってことを告げる。
「こなたっ…こなたぁ…!好き…っ好きなの…!! …ずっと、まってたんだからぁ……っ!!」
電話が来た時から必死に押し止めていた涙が
堰を切ったように溢れ出す。
「うん…うん、私もかがみが好きだよ…誰よりも、好きだよ…。…待たせちゃってごめん。
あぁもう、そんなに泣かないでよ」
こなたが自分の袖で流れる涙を拭ってくれるけど、涙腺が壊れたみたいにぽろぽろ頬を伝う
それは止まってくれなかった。


どれくらいそうしていたんだろう。
肩に顔を押し付けて泣きじゃくっていた私を黙って抱きしめてくれていたこなたが、
私が落ち着いたのを見計らってぼそりと耳元で言う。
「ね、かがみ。時間、大丈夫? なんか人も集まって来ちゃったみたいだし、移動しよっか」
こくりと頷いた私の手を引いて、それでも歩調は私に合わせて、ゆっくりこなたは歩き始めた。


…で、なんで私はこんな所に?
連れて来られたのは、失礼かもしれないけどこなたのイメージからはほど遠い小洒落たレストラン。
こなたは店員と二言三言話したかと思うと、手招きをして私を一番奥の部屋に案内する。
展開にいまいちついていけない私を置いて、手早く注文するとこなたは私の隣に座る。
「え…と、こな、た…?」
「…あ、もしかして、ごはん食べて来た?」
「いや、そうじゃなくて」
私が首を振ると、ああ、とこなたが頷く。
「お父さんがね、編集さんとの打ち合わせでよく来るから私の顔も利くのだよ」
そういって、すごいでしょ!とでも言うように得意げ胸を張る。
…まったく、全然変わってないなあ、こいつは…。


それから私たちは会わなかった四年間を埋めるように色んな話をした。
大学のこと、最近のこと、これからのこと…。
「え、あんたあそこに勤めるの?」
「そだよー。コネを使ってね」
こなたの口から聞いた就職先は、私のアパートから二駅先にある
大手出版社だった。
私は今住んでる所の近くの法律事務所に、就職が決まっているし……。

「…ね、こなた。もし…もし良かったらなんだけど、その…一緒に住まない…?」

勇気を振り絞ってこなたに聞いてみる。
ああ、今私の顔は真っ赤になっているに違いない。
こなたは一瞬、ほけっとした表情を見せたけど、みるみる内に笑顔になっていく。
しかも、いつものからかうような笑顔じゃなく、本当に嬉しそうな笑顔。
「うん、良いよ…」
「そ、そんなあっさり決めちゃっていいの!?」
自分から言っといて、と言われるかもしれないけど
本当にこんなにあっさりと良いよ、と言われるとは思わなくて
思わず聞き返してしまった。
「良いよ。今度住むことになってた所はキャンセルすれば良いだけだし。
…それに、待たせちゃったお詫びっていうわけじゃないけどなんでもお願いきこうと思ってるんだヨ。
…もちろん、私もかがみと一緒に居たいしね」
「な、んでも…」
「そ。…あ、今やらしーこと考えたでしょ」

にやにや笑いながら言われて、引きかけてた熱が振り返す。
やらしいことなんて……ちょっとしか……考えてないわよ!
もちろん、そんなことは言えなくて、ごまかすように少し大きめの声で言い返す。
「…そんなの考えてないって…!」
「ふふー、かがみんは全部顔に出るからねー。ま、今はこれでガマンして、ね?」

床についていた私の手に、こなたの手が重ねられ、
そのまま顔が近づいて来る。
私はゆっくりとまぶたを閉じて、こなたとの初めてのキスを交わした――




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  • すごく…、良かったです。 この後の二人のイチャイチャ生活も書いて -- 名無しさん (2010-04-25 22:25:36)
  • 卒業後に再び出会って結ばれるという展開もいいですな… -- 名無しさん (2008-11-20 14:25:48)

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