タマゴのこころ、ニワトリのこころ(前編)

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(お昼休みの3年B組)
(BGM:ランランラン♪だよ、らき☆すた)

少年犯罪が多発し、治安が悪化し続ける日本。
この事態を止めるためにわたしは声を大にして言いたい。
まずは『人のものを勝手にとってはいけない』と言うような、
人間として基本中の基本である道徳教育を幼少の頃から徹底するべきであると。

「今日のお弁当はなっにかな~
おお~今日はオムライスだ~」
「な、なに勝手に開けてるのよ!」
道徳教育の遅れは致命的に深刻なようだ。
気づいた時には、わたしのお弁当箱は本来の持ち主ではない者の手によって開けられていた。
わたしが内閣総理大臣なら『人のお弁当を勝手に開けてはいけない法案』をすぐに立法審議にかけたいと思う。

「この盛り付けの豪快さは…今日はかがみ作だね」
…『盛り付けに失敗してしまったお弁当を勝手に開けてはいけない法案』の緊急審議が必要らしい。
「わ、悪かったわね。
手元が狂ってタマゴで上手く包めなかったのよ」
金色の衣をまとって輝くはずのオムライスは、まるでメッキがはがれているかのように所々穴が開き、
中に隠れるはずケチャップライスが恥ずかしそうに顔を出している。

「でもおねえちゃんのオムライスおいしいよ。
ちゃんと小さく刻んだ玉ねぎを飴色になるまで炒めてるし、タマゴと親子で鳥肉も入ってるんだよね」
具も少なく、見てくれもあまり良くないのだが、料理の得意なつかさにそう言われると少しだけ気持ちが和んだ。

「卵には人間が生きていく上で必要な栄養素のうち、ビタミンCと食物繊維意外は全てを含まれていまして、『完全栄養食品』と言われているそうですよ。
鶏肉も脂質が少なく、たんぱく質も豊富ですから健康にもいいですね」
重ねてみゆきのフォローが入る。
嬉しいけれど別にそこまで考えてた訳じゃない。
ただ、ちょっと、ほんのちょっとだけ鶏肉使った料理上手くなりたかったから…

「そう言われると確かに美味しそうかも…あたし鳥肉好きだし」
こなたは机の上においてあるチョココロネと自らの手の内のお弁当を見比べて何やら悩んでいる。
「あんたはいつものコロネがあるでしょ」
あまり良い予感がしないので、わたしはしっかりと自分のお弁当箱を取り戻した。

「あ~~~~私のお昼ご飯が~~~~最近まともなお昼食べてないのにぃぃぃぃ」
やっぱり食べる気満々だったようだ。
どうせ食べるなら、ちゃんと完成したものを…って、何考えてるんだわたしは。

こなたは滝のような涙を流しながら、未練がましい目でわたしのお弁当箱を見ている。
…そんなに食べたかったのかな?なんかちょっとだけくすぐったい。
そうね、一口くらいならあげてもいいかもしれない。
でもわたしから声をかけるのも変よね。

(じゃあ一口だけよ?…も変か。
しょうがないわね、一口だけよ?ってところかな)

「しょ、しょ「―そういえばみゆきさん」うが…」
う、うわっ被った。
熱くなる顔を隠すように下を向く。
ちらりと目を上げるとみゆきと目が合った。
みゆきは小さくクスリと(わたしには真似できないくらい可愛く)笑ってこなたの質問に応じる。

(BGM:こなたのテーマ、普通バージョン)

「タマゴが先かニワトリが先か、ですか?」
「そ、みゆきさんだったら知ってるかな~って」
それにしてもいつもながら唐突な質問だ。
…ひょっとしてわたしのオムライスからの連想なのかな?

「あ~それ、わたしも寝る前とかときどき考えるよ~。
ニワトリはタマゴから生まれてくるよね?
でもそのタマゴはニワトリが産んで…そのニワトリはタマゴから生まれて…
だからタマゴがニワトリを産んで…ニワトリからタマゴが生まれて…
あれ?あれれ?」
頭を抱えて悩み始めるつかさ。
気のせいかぷすぷすと煙があがっている。

そんなつかさに微笑みながらみゆきは解説を始めた。

(BGM:うんちくだよ、らき☆すた)

「それでは…こほん。
昔から有名なこの命題ですが、結論から言いますとタマゴが先なようですね。
進化遺伝子学によりますと、生物が生きている間に遺伝物質が変化することはなく、
ニワトリ以外の鳥がいきなりニワトリに進化したということはあり得ないとのことです。

…考えてみれば、生物はDNAという設計図に基づいて形作られる訳ですから、
突然変異によってタマゴの中の設計図が書き換わりでもしない限りニワトリとして誕生するはずはないのでしょうね。

ちなみにニワトリの祖先はセキショクヤケイと言われておりまして、
この鳥を家畜化したものが現在のニワトリにつながっているとされています。
このセキショクヤケイですが、現在のニワトリのように白くなく、赤色(セキショク)――つまり赤い色をしていたそうです。
ですから、セキショクヤケイが突然変異で白いニワトリの元となる卵を産んだことから、今のニワトリが誕生したと考えられます。
つまりニワトリよりもタマゴの方が先にあったということですね」

思わず、うーんとうなってしまった。
相変わらずものすごい知識量だ。
つかさも尊敬のまなざしでみゆきを見ている。
こなたも…あれ?こなた?
こなたは首を軽くかしげて不思議そうな顔をしていた。

「みゆきさんどうかしたの?」
「えっ?」
突然の問いかけにみゆきは焦ったような声をあげた。
なぜかつかさも一緒にびっくりしている。

「いや、なんか今みゆきさんちょっといつもと違う感じがしたからさ」
みゆきはゆっくりと2秒カウントするくらいの間固まっていたが、天使のような微笑みをうかべて返事をした。

「ご心配いただいてありがとうございます。
ですが、私はいつも通りですよ。」
「なーんだ、気のせいか~」
こなたも笑い返す。
「いきなりこなちゃんが気になること言ったから、わたしもびっくりしちゃったよ」
つかさもそれに加わる。
「まったくもう」
わたしも笑いながらこなたを小突く。
そして頭の中で考える。

前から思っていたことだが、わたしはどこか少し鈍いのだろうか。
別にみゆきにおかしな様子はなかったように感じたけど、こなたは『いつもと違うみゆき』を感じたのだろう。
心配か…それは――ううん、みゆきも気のせいだって言ってるし、勘違いよねきっと。
わたしは頭に浮かんだ言葉を振り払って、みんなに声をかけた。

「さ、早くご飯食べ始めないと昼休み終わっちゃうわよ」
でもやっぱり心のどこかにさっきの言葉がひっかかる。

――それは『こなただから』感じた違和感だったのか、『みゆきだから』こなたは感じられたのだろうか。

あぁ、もう。
こんなくだらない事をうじうじ考えているなんて、わたしらしくない。
というか、なんでわたしがこなたのことでこんなに悩まなきゃいけないのよ。
なんというか、わたしばっかりでズル…いや理不尽だ。

「かがみのお弁当とあたしのチョココロネちぇーんじ!!」
「こ、こらこなた!!」
少し考え事をしていたら、きらりと目を光らせたこなたにお弁当を奪われてしまった。
「いいじゃん、明日は私が作ってきたお弁当あげるからさ」
「そういう問題か!」
まったく油断も隙もない。
けれど、お弁当の交換というのは魅力的な提案に思えた。

「…しょ、しょうがないわね、今日だけよ」
まあもともと一口はあげようと思っていたんだし、
こな――いや、他の人の家の味を覚えておくというのもいいかもしれない…

「どしたのかがみ?顔赤いよ?」
「な、なんでもないわよ」
ニヤニヤしながらのこなたの指摘に、つかさやみゆきがクスクスと笑う。
今日はつかさの席だから、私の隣にこなたとつかさ、そして向かいがみゆき。
いつも通りの昼ごはんの風景だ。
「だいじょうぶだよ、心配しなくてもチョココロネだけでお腹すかないように、私のお弁当も少し分けてあげるからさ」
「それは元々わたしのでしょ?…って、どういう意味よそれ!」

怒るわたしとおどけるこなた。
わたしは怒りながら笑う。
こなたも笑っている。

やっぱりいつものパターンだ。
まったく、こなたといるとちょっとしたもやもやはすぐ吹き飛ばされてしまう。
まるでタマゴが親鳥に守られ、あたためられているように。

それはきっと、とても幸せなことに違いない。
うん、ぜったいに間違いない。


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