泊まった日・朝

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眩しい光に照らされて、目を覚ます。
もう、朝か……。
開けっ放しの窓から、小鳥の囀りが聞こえてくる。

……お約束だなあ。
夜は長いと思ってたけど、やっぱり短くて。やっぱり朝が来て。

少しだけ、夜を反芻する。
まだ数時間しか経ってないのに、ずいぶん前のようで、それでいて、ついさっきのことのような、不思議な感じだ。

あれから、二人で私のベッドに入って……。
色々、した。いや、されたのかな。
何だか記憶が曖昧だ。
全体の雰囲気は覚えてるけど、細かく何をされたかまでは覚えてない。

隣を見ると、かがみがすぐ近くですやすやと眠っている。
寝顔も可愛いなあ……。
かがみを起こさないようにして、そっと起き上がる。

そういえば、つかさとみゆきさんはどうしてるかな。
昨日は結構悪いことをしてしまったと思う。二人ともほとんど空気だったし。
いや、それ以前に。
あの時は全然気にしてなかったけど、二人に対してどういう顔をすればいいんだろう。
何というか、尋常じゃなく恥ずかしい。

まだ、好きな人がいるよー、なんていうのならいいけど。
二人の目の前で告白して、抱きついて、二人を外に追い出すくらいになったんだから、会わせる顔がない。

コンコン
「こなちゃん、お姉ちゃん、起きてる?」
ノックする音。
つかさの声。

あ~、どうしよう。何て言えばいいのかな。
「お、起きてるよ……」
勝手に語尾が小さくなる。
恥ずかしいなぁ……。
ドアを開けてつかさとみゆきさんが入ってきた。

「あ、あの、その、昨日は、ごめんね……」
「ううん。気にしてないよ」
「で、でも……」
「泉さん、私たちはこれでもう帰りますね」
「……えっ、何で?」

みゆきさんが顔に笑みを浮かべた。
「ええ。このままここにいても、お二人にとってはお邪魔でしょうから」
「そ、そんなことないって……」
「いえ。お気になさらなくて構いませんよ。これは、私たちが勝手に決めたことですから」
「私達、二人には幸せになって欲しいから……」
「ですから、この日を有意義に過ごしてください。それに……」

みゆきさんは少し口を噤ませて、
それからすぐ、笑みの表情を戻した。
「いえ、なんでもありません。じゃあ、つかささん。行きましょうか」
「うん。こなちゃん、頑張ってね」

二人はそう言って部屋から去っていった。そして家からも。
それで、この家には私とかがみの二人っきり……。
同棲……って言うのかな、これ。

つかさとみゆきさんは、こうなるように自分たちから出て行ったのかな。
ありがとう、二人とも……。

今日一日、かがみと一緒に暮らせるんだ。

●●●

話し声と足音と、何かの物音で目が覚めた。
見慣れない天井。
ここはどこだろう。
考えて、すぐに全てが蘇ってきた。

こなたの家の、こなたの部屋の、こなたのベッド。
ここでこなたと、一緒に寝たんだ。
いや、その、額面通りの意味じゃなくて……その、そういう意味で……。

……結果的には良かったのかな。
それとも悪かったのかな。
今の私には分からない。

これから分かるようになるのかな。
いや、これから答えを見つけないといけないんだ。
でも、もし悪かったのなら……。

隣を見ると、こなたはいなかった。
でも、やっぱりこのベッドにいると、こなたに包まれているような気分だ。
まさか、ここで、こなたと一緒に、寝れるなんて思わなかった。

上半身を起こす。
部屋の中は、今度は太陽の光で暑くなっていた。

「あ、かがみ、起きてたの?」
振り向くと、ドアを開けてこなたが入ってきたところだった。

「あ」
と口を開いて、言葉に詰まった。
何て言えばいいんだろう。
今更ながら、気恥ずかしさが生まれてきた。
あの時はもう何が何だか分からなかったけど、今、落ち着いた状態になって、昨夜のことを思い出すと……。

「どうしたの、かがみ。顔真っ赤だよ~」
「あ、う……」
「もしかして、昨日のこと考えてたの? あの時のかがみは凄かったね~。凄い積極的でさ」
「や、やめてよその話は……」
「ごめんごめん。ほら、そんな緊張してないで、リラックスしよ」
「う、うん……」

こなたは、昨日のことを気にしてないのかな。

「あ、それから、つかさとみゆきさん、帰ったよ」
「え? どういうことよ」
「え、と。その、二人で仲良く暮らして、ってさ」

それって、つまり……。
こなたと二人、この家で過ごすってこと……。

「かがみ~!」
急にこなたが私に抱きついてきた。
されるがままになる。
「今日一日、一緒に暮らせるね~」
「そ、そうね……」

よっぽど嬉しいのかな?
もちろん、私だって嬉しい。
こなたみたいに感情をそのまま動作には表せないけど……。

「あ、何か朝ごはん作ってくるね。かがみはここで待っててよ」

そういってこなたは部屋に外へと出て行った。
また、待つのか……。

でも今度は、手持ち無沙汰でもないし、居場所を見失うこともない。
ここが、私の居場所なんだから。

ベッドから降りてテーブルの前に座る。
新婚の夫婦って言うのは、こういう感じかな。
こうやって待っている時間も、なんだか楽しい。

叶わないって思ってた夢が、現実になってるんだ。

これから、どんなことが起こるんだろう。
こなたと一つ屋根の下で過ごす、この一日。
今日の夜には帰る予定だけど、それでもまだ十数時間もある。
いっぱい、いろんなことが出来るな……。

けど、これでよかったのかな。
考えようとして、でも、すぐにやめた。

今は、せめて今だけは、そんな現実を捨てて、この幻想のような限られた時間を、何の不安もなく心から……。

今日のことを考える。まだまだ時間はたっぷりあるから、何でも出来る。
二人で買い物に行ってもいいし、二人で何処かに遊びに行ってもいいし、
二人でここにいて、新婚生活っていうのを満喫するのもいい。
とにかく今日は、ずっと二人で……。

窓の外を見ると、青空と、右から迫ってくる雲。
夜には降り出すかもしれないな。

「かがみー。ご飯できたよー。おいでー」

何分経っただろう。数分かもしれないし、一時間くらいかもしれない。
ぼんやりと、何かを考えていた気がするけど、すぐに忘れてしまった。
ドア越しに、こなたの声が聞こえた。

「今行くー」
とだけ返して、部屋の外に出る。
食欲をそそる美味しそうな匂いが漂ってくる。
こなたは何を使ったんだろう。気になるけど、なんでもいいとも思う。

食卓の上には、ご飯と、お味噌汁と、焼いた鮭とお漬物。
それが、二人分のお皿に盛り付けられていた。

「いや~、簡単なのにしようかとも思ったんだけど……。遅くなってごめんね」
すでに食卓の前に座っていたこなたが、少しばつの悪そうな表情で言った。

「大丈夫よ。別に気にしてないから」
何時間でも待てたと思うのは、決して誇張ではないはずだ。
こなたと向かい合うようにして、食卓の前に座る。

「うん、ありがと。じゃあ、食べよー。いただきまーす」
「いただきます」

……あれ?
こなたは箸を持たずに、食卓の端を掴んで、こっちをじーっと見てくる。
真剣な眼差しで。期待と不安の入り混じった表情で。
私が食べるのを待ってるのかな。

それなら、最初はこれだな。
お味噌汁の器を持って、口へと運んだ。
「どう? おいしい?」
間髪いれずにこなたが尋ねてくる。

口の中いっぱいに広がった初めての味を飲み干して、
「おいしいわよ。とっても」
「ほんと? よかった~」

こなたはほっとしたようにため息を吐いて、すぐに顔を綻ばせた。
それにつられるように私の顔も笑みになる。

それから二人で少し遅めの朝食をとった。

こなたが作った料理は本当に上手で、今まで食べたどんな朝ごはんよりも美味しかった。
多分この味は、一生忘れないと思う。
忘れたくないな。


洗い物くらいは出来るから。
作ってもらったんだから、後片付けくらいはやらせて。
そう言ってこなたを部屋に返した。

こなたは絶対に割るからやめてなんて言ってたけど、私はそこまでドジじゃない。
ただ、料理が出来ないだけ。これはもう才能の問題かもしれない。
私には家庭的な才能がないのかな。

それでもいいと思う。
こなたはそういうのが得意だから。
二人で役割分担していけばいいんだ。
この先、本当にあるのか分からないけど。

そういう生活が、本当にくるのなら。

そんなことを考えながら、お皿を洗っていく。

水の落ちる音と、お皿の擦れあう音。
鮭をつつきながら話していたなんでもない会話。
それは、いつも学校で話してたような他愛もない内容だったけど、一つだけ。
こなたが何気なく言ったこと。
本人は気づいてないかもしれないけど、それはとてもとても重かった。

――こんなところ、お父さんが見たらびっくりするだろうね~。

お皿を擦った。強く強く、力任せに。
左手のスポンジが潰れて泡が吹き出してくるほど。
茶碗も、コップも、何もかもを洗剤の泡で洗っていく。
激流となった水道水で泡を流していく。

今は、これに集中しよう。
跳ね返った水は顔や服に飛び散り、両腕は肘の辺りまで濡れていた。
とにかく手を動かしていたかった。

でも、仕事はすぐに終わる。量はあまりないんだから、当たり前だ。
この速さをこなたが見たら、驚くだろうな。
達成感でため息を吐きながら、手の甲で額を拭う。
そう、多分いい仕事をしたという、自己満足。それだけのはずだ。

僅かな間の、独りの時間。
考えないようにしてたことは、考えないようにすればするほど自然と頭に浮かんでくる。
忘れようとしていたことなのに、思い出したくないのに。

……こなた。
もっと、近くにいたい……。

こなたといれば、こんなことなんて忘れられる。
こなたといれば、どんな気分の時だって楽しくなれる。

ほんの数メートル先なのに、離れ離れになったような感じ。
声をかければ返事は来るし、走ればすぐにたどり着く。
たったそれだけの距離だけど、見えないだけで、傍にいないだけで、言いようのない不安に襲われる。

私が、私たちが、今望んでいるのは、きっと普通じゃないこと。
世間からはまず非難の目を向けられるだろう。
そもそも家族は認めてくれるのか。
私たちは、これからどうなるんだろう。

気がつくと、家の中を走っていて、こなたの部屋の前にいた。

ドアを開けると、テーブルの傍で横になっているこなたが目に入る。
「あ、かがみお疲れ~。意外と早かったね」
上半身を持ち上げて、あ、と呟き首をかしげて、
「そういえば、急いでたみたいだけど、何かあったの? お皿割っちゃったとか」
「な、なんでもないわよ……」

こんな不安なんて言っても恥ずかしいだけだ。
それに、こなたが気づいてないなら、知らないままでいて欲しい。
私だけで何とか解決できたら、それが一番だ。

とりあえず、とりあえず忘れよう。
まだ先は長いんだ。きっといい考えが浮かんでくる。
それよりも今を満喫しないと。
もしかしたら、これが、最初で最後の……。

こなたと向かい合うようにテーブルの前に座る。
「……ね、ねえ、こなた。今日、どこか行きたいところとかある? まだ時間はあるし、結構遠くまで行けると思うけど」
「あれ~? かがみから誘ってくるなんて、珍しいね~」
「な、そ、そんなんじゃないわよ……」

あ~、しまった。ついうっかり口を滑らせたなー。
でも、他に話すようなこと思いつかなかったし、何か別の話題で話したかったし……。

「さすがかがみん、こういう状況だと積極的になるなんてまさにツンデレだよ~」
「だから違うってば……」
でも、こなたはそれには応えずに、代わりにテーブルの下をくぐって、私の膝のある辺りから顔を出した。

「私は、かがみと一緒なら何処にいてもいいよ」
「え? こなた……」

……なんでこの子は、こんなにも素直なんだろう。
私なんて言いたいことがいつも言えなくて、昨日だって、こなたが強引に聞き出さなかったら、こんな展開にはなってなかったはずだ。
多分、この先ずっと……。

「んしょ……」
こなたがテーブルの下から這い出してきて、私の膝の上にちょこんと座る。
思わず、自分が乗ったときの体重計の数値が頭に浮かんで、慌てて払いのけた。

……あー、どうしよ。
両手が文字通り手持ち無沙汰で、こなたに近づいたり離れたり。
あと一歩が踏み出せなくて、空中で居場所を失ってる。

その両手が急に掴まれて、こなたのお腹の前で組まされる。
「こういう時は自然にこういう状態にしないと~。全くかがみは気が利かないんだから」


「ねえ、かがみ……」
こなたは、私の手をぎゅっと握って。
振り向かないで、そのまま少し上を向いて。

「かがみは、どうして私を好きになったの?」
そっと、囁くように。

え?
「そ、そんなの別に言わなくたって、いいでしょ……」
でも、こなたはおどけることもなく、ただ上を向いたまま、
「恥ずかしいよね? でも、教えてよ。私も話すから……。知りたいんだ。かがみが何で私を好きになったのかを……」

同じように、少し上を見つめる。

……何でだろうな。

何で、私は、こなたのことを……。

いつの間にかその感情は芽生えていた。
直視しないようにしてたけど、気づいたらこなたのことばかり考えていた。
前は、こんな気持ちじゃなかったと思う。
前までは、大切な親友で、でも、そこまでだった。
いつからだろう。どうしてだろう。
きっかけは何なんだろう。

自分に正直に、思考を過去へと遡らせる。
このまま理由をはっきりさせなくても、今のこの気持ちは本物なんだから。
私がこなたを、好きだってことは真実だから、これからのことに何の影響もない。

でも、原因があるんだから、結果がある。
もちろん、この感情が生まれてきたことにも。
原因がはっきりしてない結果なんて、成立しない。

理由の分からない愛なんて、すぐに消えてしまう。
それは、一時期の気の迷いでしかないと思う。
忘れてしまわないうちに、はっきりさせたい。
これから先、理由も分からないままこなたを愛していくなんて、嫌だった。

恥ずかしくて、思わず目を背けてしまうだろうけど。
自分の気持ちを。自分の素直な気持ちを。
見つめ直そう。

目を瞑る。
よし、と心の中でつぶやいた。
後は言葉にして、声にするだけ。
ストレートに言うのは苦手だから、曲げて曲げて曲げて……。

少し深呼吸をする。
うまく言えるかな。
自分の本心を話すのは、本当に苦手だ。
言葉にするのも、声に出すのも。

普段嘘ついてるってわけじゃないけど、
いつも自分の本当の気持ちを押し殺してきたから。
いつの間にか、外に出すのが怖くなってたんだ。

だけど今は、自分の思いを外に出さないと。
いつまでもこなたに引っ張られているわけにはいかないから。

お腹からゆっくり空気を出して、喉が震えて声になる。

「そ、その、え……っと……」
言葉には、ならなかった。
いつもこうだ。大事なことは、全然言えない。

「大丈夫だよ、かがみ。落ち着こう。かがみの本当の気持ちなんだから、自信持っていいんだよ?
自分の思いは、自分以外の誰にも否定できないんだから」
「う、うん……」
こなたの暖かさが、手を通して伝わってくる。

自分に正直に。自分の気持ちを伝えられるように。
やっぱりそれは恥ずかしいけど、
こなたに、それから自分に言い聞かせるように……。

「私、知ってるわよ。こなたは、自分勝手な奴に見えるけど、本当はいつもみんなの事を考えてるんだって。
みゆきのことも、つかさのことも……それから私のことも」

少し考える。
こなたは返事もしなかったし、頷きもしなかった。
ただ、私が次の言葉を紡ぐのを待っているんだろう。
だから、続けた。

「辛いことがあっても、こなたが元気づけてくれたから、私はずっと笑ってこれたんだよ」

頭に浮かんでくるのは修学旅行で行った京都の思い出。
あの時は、自分の身の程知らずな想像のせいで、期待を裏切られて、不貞腐れてたし、相当落ち込んだし、辛かった。
多分あのままだったら修学旅行の思い出は、何の輝きも持たないまま、心の奥深くに抑圧されていたと思う。

それに、それからの生活にも、尾を引いていたかもしれない。
自分で勝手に走って、自分で勝手に転んだだけだけど、でも、こなたは私を立ち上がらせてくれた。
何の過程もなくて、結果だけを期待していたなんて、馬鹿だったな。
そんな幻想より、もっと近くに……。
それは失恋ってほどのものじゃなかったけど、でも、それから立ち直って、そこから何かが始まった気がする。

こなたは、家に帰ってからも電話してくれた。
実際何があったかなんて、こなたは知らないと思う。
でも、何かがあって私が動揺してるっていうのは分かったんだろう。
或いは、それがどういう系統のものであるかも。

相手の考えてることを読み取れる。
こなたにはそれが出来ると思う。
それは、周囲に常に気を配れる人じゃないと出来ないこと。注意力がないと出来ないこと。

まあ、不貞寝はしてなかったけど。
でも、そんな励ましにもならないような言葉が、あの時は本当にうれしかった。
誰にも話してないのに、こなたは分かってくれてたんだな、って。

「こなたはきっと、誰よりも優しい心を持ってるんだと思うよ。
でも、そういう気持ちを悟られたくないから、オタクっていうことで本心を隠して、
我が道を進んでるように思わせてるのよね」

勝手にこなたの心を推測して、ちょっと自分勝手かな。
でも、私が感じたことだし、多分これであってると思う。
理由は分からないけど、そう思える。

「よくふざけたりしてるのも、誰かに構ってもらいたいからなんでしょ。
それに、誰も傷つけないで、みんなを元気付けたり喜ばせたりするには、自分がおどけるしかないから。
本当は、寂しいのよね。明るく振舞ってるのも、それの裏返しで……」

こなたの体が小さく震えた。
それは、私の話の中で始めての反応。

「あ、ご、ごめん、こなた……。こなたの気持ち、自分勝手に考えて、酷いこと言っちゃって……」
「……ううん。いいんだよ。……それで、あってるから……」

泣いてるのかな。
顔を覗こうかと思ったけど、やめておいた。
見られたくないかもしれないし、こなたもこっちを見てはいないんだから。
そのまま、何事もなかったように続けた。

「あの時も、あの時も、こなたは私のことを気遣ってくれたし、言葉にしなくても、それはずっと伝わってきてたよ。
それで、私は、ずっとこなたの傍にいたいって思った……。こなたに寂しい思いをして欲しくないし、
私もこなたがいないと駄目だから。友達とかそういうのじゃなくて、もっと深いところで、繋がっていたいって……。
それにこなたは、私のことを分かってくれてるから。……こなただけだよ、気づいてくれたの」

だから。
一度だけ、深く深く息を吸って、吐き出す。
後少し。自分の言葉で、自分の体が熱くなってくる。
最後に、一言告げないと。

違う。
始めるために、一言を。

「……だから。私は、そういうこなたが、大好き」

大きく息を吐く。
なんだか嬉しいな。……自分の気持ちを、こなたに伝えられた。
でも、なんだろう。
少しだけ、心のそこから喜べないって気持ちがある。
それは……。

「かがみ」
こなたがゆっくりと、話しかけてきた。

「それなら、かがみも一緒だよ」
え?
どういう意味だろう。何が一緒なんだろう。
気になるけど、声には出さなかった。
待ってれば、こなたが答えてくれるだろうから。

「かがみだって、いつもみんなのこと考えてるじゃない。
何かあったら本当に心配してくれるし、困ってたら助けてくれるし」

そうなのかな。
自分のことなんて考えたことがなかったけど、こなたからはそういう風に見られてたんだ。

「……けど、自分に辛いことがあったら、我慢して強がってるよね。
かがみはしっかり者だから、周りに心配かけたくなくて、それで、いつの間にか
自分の気持ちを素直に表せなくなったんだよね。だから、自分を分かってくれる人が
いなくて寂しがり屋になったんでしょ」

こなたは、ここまで私のことを考えてくれてるんだ。
分かってくれてるんだ。
そういうのが、改めて伝わってくる。
こなたの言葉は的確で、だから私に鋭く刺さってくる。
でも、それがこなたから見た私だし、客観的な私だし、本当の私なんだと思う。

「それに、かがみも私のことを分かってくれてるよ。それは多分、かがみだけ……。
 さっき、かがみの気持ちを聞いたとき、気づいたんだよ。
 私もかがみと一緒なんだな、って。
 寂しがりなのも、自分の気持ちを外に出さないのも。
 だから、私、かがみと離れたくない。ずっと一緒にいたい」

こなたが初めて私の方を振り向いた。
その目は、少しだけ赤くなっていた。

私の腕の中で、体ごと反転して、
「ん……」
抱きついて、キスをしてきた。
そのまま後ろに押し倒される。

びっくりしたけど、それ以上に、幸いを感じた。
こなたと繋がってるという、温かい感触。
それに応えるように、両手をこなたの背中に回す。
ようやく居場所を見つけた手で、抱きしめ返す。

一緒って、こういうことか。
私たちは似てるから、お互いの気持ちが分かって、だから……。
それに、やっぱりこなたは私以上に私のことを理解してるんだって分かった。
本当に、本当に嬉しい。

目の前、ほとんど密着状態のこなたは、目を瞑っていた。
それは、哀しそうな、嬉しそうな、そんな表情だった。
いや、多分後者だ。そうに違いない。

瞼を閉じる。

頭に浮かぶのは半吉の恋愛成就のおみくじ。その上に貼ったプリクラ。
調べてみたら、半吉って言うのは吉と凶が両方あるってことらしい。
凶はもう体験したから、今度来るのは吉。
そう信じてたし、その願いは叶ったと思う。

だけど、少ない時間はどんどん削られていく。
出来ることなら、ずっと二人で、重なっていたい……。

終わり




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  • いいねいいね -- あめちゃん (2013-10-01 23:59:17)
  • 誤)wiki内のアップローダー
    正)旧wiki内のアップローダー -- 名無しさん (2009-02-10 15:41:41)
  • 画像のアドレスを、wiki内のアップローダーからfc2の方に変更しました。 -- 名無しさん (2009-02-10 03:01:56)

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