夜更けに降る雨

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夜更けに降る雨…というのは何となく人恋しくさせる気がする。
特に台風が近づき大雨が降る今日のような夜は。



何度も開いた枕もとの携帯電話を見ると、時間は深夜0時を回っていた。



窓の外の雨音を聞きながらわたしはベッドに横たわって考える。
これはきっと人がまだ洞窟などに住んでいた頃から今にいたるまで、ずっと続いてきた想いなのではないだろうか?
寒さに震え、外敵の足音を消す雨音に怯えながら、暗い洞窟の中で横たわり眠る。



そんな時、誰か傍にいて欲しいと願うのは昔も今も同じはずだ。
その誰かというのが、自分にとって――な人であるということも。



室内灯も卓上灯も消したまま暗い天井を見上げると、ふと記憶が昔に飛んだ。



子どもの頃、雨降りの夜には無性に寂しくなって、よくお父さんたちのベッドにもぐりこんだものだ。
いつもお母さんのベッドにはつかさが先にいて、わたしはお父さんと一緒に寝ていた気がする。



そういえばわたしたちがお父さんたちの部屋で寝るようになってから、まつりお姉ちゃんは一人で寝れない夜にいのりお姉ちゃんの部屋に行くようになったのだと、いつだったお母さんが教えてくれた。



さすがに18歳の高校三年生になってまで、両親の部屋に行きたいと思うわけではないが、やっぱり寂しくなってしまうのは昔のままだ。
つかさは今もそんな風に感じるのだろうか。
あの子は中一までよくお母さんやお姉ちゃんに抱きついて甘えていた。
寂しい夜や怖い番組を見たときなどは、きまって枕を持ってわたしやお母さんたちの部屋を訪れていた。



こなたはどうだったのだろう。
やっぱりおじさんと――ひょっとしたらお母さんとも一緒に寝ていたのだろうか。



何度も開いた枕もとの携帯電話を見る。
時間は1時近くになっていた。



(こんな遅くに電話なんてしたら迷惑よね)



そう思いながら着信履歴を見て、耳にあてて通話ボタンに指をかける。
でもやっぱり押せない。
通話ボタンを押す――そんな簡単なことが出来なくて、こんな時間になってしまった。



明日は学校、そんなことはわかっている。
でも何となくおさまりがつかない。



雨もまだやみそうにない。



(ワ、ワンコールだけなら問題ないわよね。
もし寝てても迷惑じゃないだろうし…)
延々と朝までこうしていてもしかたがない。
意を決して、通話ボタンを押す―



「―も、もしもし、かがみ?夜遅くにごめんね」
「へっ!?」


突然耳元で聞こえたこなたの声に、わたしは寝ぼけたような声を出してしまった。
通話を押してからコンマ5秒とかからなかっただろう。
いや、むしろダイヤル音すらなっていない。



「もしかして寝てた?」
「いや、起きてたけど…」
電話の向こうでこなたがほっと息をつく。
なんだか話の流れが変だ。



「いや~、なんとな~く電話をワンコールだけかけてみようかな~って思ったんだけどね。
ワンコールもしないうちにかがみが出るからビックリしちゃったよ」
トクン、と胸がはずむ。



どうやらお互い同時に電話をかけあったようだ。
そして偶然、こなたの方が一瞬早かったらしい。
それにしてもこなたがこんな遅くに電話をしてくるなんて珍しい。



「ま、まあそれはいいとして…ど、どうしたのよ?
深夜にいきなり電話してくるなんて、珍しいじゃない」



自分のことは棚に上げてこなたに尋ねる。
『わたしもちょうどかけようと思ってたの』なんてセリフは絶対に言えない。
……言えるはずがない。



「…だったから」
少しだけ沈黙した後、こなたが言った言葉は雨音で聞こえなかった。
「ごめん…雨の音で聞こえなかった…もう一回言ってもらってもいい?」



「『かがみが寂しがってるだろうから』って言ったの」
ちょっと怒ったような声のこなたをわたしはイジワルな声でまぜっ返す。
「うそつき、そんなに長くなかったわよ」



うっ、と息をつまらせながらもこなたは電話の向こうでニヤリとわらう。



「いいじゃん、どうせ図星でしょ。
かがみはウサちゃんだから、寂しんぼさんなんだもんねぇ」
一瞬返答に詰まる。
それを肯定と捉らえたのか、こなたは笑いながら言った。



「意外とかがみも私に電話したがってたんじゃないの~?」
「ち、違うわよ!」
心なしか否定に力がこもっていないように感じるのはわたしの気のせいだろう。
…そうに違いない。



「いや~、やっぱりかがみんは可愛いなあ。
ところでいきなり話は変わるけど、明日台風で学校休みにならないかなぁ?」
「ちょっ、本当にいきなり話変わるな…」



こなたと話をしているうちに、わたしは電話をしたかった理由を忘れてしまった。
今わたしが心配しているのは明日こなたが学校をサボるかもしれないということくらいだ。




夜更けに降る雨…というのは何となく人恋しくさせる気がする。
特に台風が近づき大雨が降る今日のような夜は。



それはきっと人がまだ洞窟などに住んでいた頃から今にいたるまで、ずっと続いてきた想いなのではないだろうか?
そして――そんな夜に誰かがいてくれるという喜びを感じることも。





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