さんにんきりでなにしてる?

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「それでですね……」
「ああ、そうするわ」
「お姉ちゃん、大丈夫なの?」
帰り道、何故かかがみとつかさとみゆきさんは、私に隠れてこそこそ話している。
何の話だろう。気になる。
その間、私は三人の後ろを独りで歩いていた。
無理矢理話に参加したり、何の話をしてたか聞こうか。でも、さすがにそれは強引過ぎるかな。
みんなにもプライバシーとかがあるし。
でも、今日こんなことがあると、疎外感で少し悲しくなる。



明日は五月二十八日。私の誕生日。
ちょうど土日と重なったし、かがみたちとどっかに遊びに行きたい。そう思ってる。
話が一段落したようなので、さりげなくかがみに聞いてみた。



「ねえ、かがみ。明日どこかに遊びに行かない?」
「こなた、急いでるからまた今度にしてくれる?」
「え、かがみ……」
かがみは走り去ってしまった。
何でだろう。話しかけただけなのに。そこまでツンデレだったっけ?



「つかさ。かがみ何かあったの?」
「え、な、なんでもないよ。じゃ、私も急いでるから、またね、こなちゃん」
つかさもかがみの後を追うように走って行った。
なんだか避けられてるような気がする。
みんな、明日が私の誕生日だってこと忘れてるのかな? それとも……。



いつの間にか、私とみゆきさんだけになっていた。
「みゆきさん、明日何の日か知ってる?」
ほんの小さな不安に駆られて、思わず聞いてみた。
本当は、本人がこういうのを言うべきじゃないんだろうけど、確かめずに入られなかった。



「明日ですか? 日本海海戦が開戦した日でもありませんし、何かありましたっけ?」
「え……」
「あの、私も少し用事がありますので、失礼します」
みゆきさんも小走りで去っていく。



そして誰もいなくなった……か。
「みんな忘れっぽいなあ。何とか気づかせてあげないとね」
でも、忘れてるだけなら分かるけど、どうして皆いなくなっちゃったんだろう。
急いでるとか用事があるとか、典型的な言い訳のネタだ。



私の知らないところで、何してるんだろ。
不意にお腹の辺りが冷たくなってきた。この気持ちは何なんだろう。
怖いのかな。不安なのかな。分からないや。



家に帰ってから、かがみに電話してみた。
不安を消したくて、たまらなかった。
きっと、かがみも普通に話してくれるよ。さっきは本当に用事があって忙しかっただけ。そうに違いない。
「もしもし、かがみ?」



「こなた? ちょっと今手が離せないの。ごめんなさい」
「あ、まっ……」
ツー、ツー、ツー



布団に入った。
明日誕生日なのに、全然嬉しくなかった。
みんなに避けられてる。
つかさにも、みゆきさんにも、かがみにも。



何がなんだか分からなかった。知らないうちに、何か気に障るようなことをしてしまったのだろうか。
でも、三人はそれくらいで私を避けたりしない。勘だけど、自信を持って言える。
もう訳が分かんないよ……。



ツー、ツー、ツー
頭の中で無機質な電子音が駆け回っている。

朝が来た。
今までで一番悲しい誕生日。自分でケーキでも買ってささやかに祝おうかな。



もう少し寝ておこうか。目が覚めたら明日になってくれるかもしれないし。
でも、これ以上はどうしても寝れなかった。
仕方なく目を開けて、立ち上がる。



パンッ! パンッ! パンッ!



「わっ!」
目が完全に覚めるほどの破裂音。
何? 戦争で始まったのかな?
上から何かが大量に降ってきた。手にかかったそれを見ると、紙テープだった。



「ハッピーバースデー」
その後は何を言ってるか聞き取れなかった。
でも、振り向くと、ベッドの横に。
かがみとつかさとみゆきさんがいた。
どうなってるんだろう。私は避けられてたはずなのに。



「誕生日おめでとう」
「びっくりさせようと思って秘密にしといたの、ごめんね、こなちゃん」
これは、現実かな。夢だったりしないかな。
みんな、私を避けてたわけじゃなかったんだ。私を驚かせようとしてただけだったんだ。
良かったぁ。本当に、良かった……。



「このケーキ、かがみさんが一人で作ったんですよ」
「どうしても自分だけで作りたいって言うからね」
「ちょ、二人とも、そんなこと言わないでよ」
「ほら、お姉ちゃん。早く渡して」
「わ、分かってるわよ。はい、こなた。ケーキよ」



目が熱くなってきた。緩まないように、ぐっとこらえる。
でも、我慢するのは無理だった。すぐに弾けた。
滲んで、何も見えないや。
かがみ、つかさ、みゆきさん、ありがとう。本当に、ありがとう。



「ど、どうしたのよこなた。いきなり泣き出して」
「ううん。なんでもないよ。ただ、みんな粋な計らいをするなぁって。それで嬉しくなって……。ありがとう、みんな」
目を擦って、笑みを作る。
起き上がって、ベッドに腰を下ろした。
いつの間にか、用意されていたテーブルに、かがみがラッピングされた箱を置く。
リボンがついた、まさにプレゼントといった箱だ。



「泉さん、あけてください」
「うん」
リボンをほどいて、箱を開ける。



生クリームのケーキが出てきた。
でもそれは、ケーキではあるのだが、なんと言うか、見てくれが悪い。
「何か……変な形だね」
「悪かったわね。変な形で。これでも頑張った方なのよ」
「まあまあ、お姉ちゃん。それより、ろうそく立てよう」



ケーキに十八本のろうそくが刺さっていく。それにみゆきさんが火をつけていく。
私はそれをぼんやりと見つめていた。
十八の明かりが、カーテンで薄暗い部屋に浮かび上がった。
「こなちゃん、一息で消してね」
「任せてよ」



大きく息を吸い込む。思いっきり吐き出す。
一気に炎は消えていった。
拍手の音が生まれる。



それから、つかさがナイフでケーキを四等分にして、お皿に乗せた。
「じゃあ、朝からで変な感じだけど、食べよう。いただきます」
その言葉に、私はフォークでケーキを口に運んだ。
「変な形で、変な味になっちゃったけど……」



これは、甘すぎるような……。でも、今はこれくらいがちょうどいいかな。
それに、味なんて関係ないよ。おいしくないわけがない。
何しろあのかがみが作ってくれたんだから。料理が苦手なのに、一人で頑張って。私の為に。
「こんなおいしいケーキは、初めてだよ」


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  • わらしにも!わらしにも一口! -- ぷにゃねこ (2013-02-07 19:10:42)

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